ヒマワリが太陽を追って向きを変えるのは、若いうちだけ
定番雑学の"その先"No.101

ヒマワリが太陽を追って向きを変えるのは、若いうちだけ

咲いた花は、ずっと東を向いている。

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この判定の対象「ヒマワリは、太陽を追って向きを変える」

うなり度 読む時間7分 出典6件 確認した事実17件
もくじ
  1. ヒマワリが太陽を追うのは、花が咲く前の若いころだけ
  2. 若いヒマワリが首をふるのは、茎の東側と西側が交代で伸びるから
  3. ヒマワリの首ふりは、植物がふだん光のほうへ曲がるときとは、違うしくみで起きていた
  4. 東を向いて咲いたヒマワリは、朝あたたかくなり、虫が早く来る
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

夏の朝、ヒマワリ畑に立ってみてください。満開の花が、そろって同じ方向を向いています。その方向は東。朝日がのぼってくる方角です。

では、お昼や夕方にもう一度見に行くと、花は南や西を向いているでしょうか。答えは「いいえ」。咲いたヒマワリは、一日じゅう東を向いたままです。

漢字で「向日葵」と書くヒマワリは、太陽を追いかける花として知られています。でも、太陽を追うのは、花が咲く前の若いころだけ。しかも若いヒマワリは、夜のうちにこっそり向きを戻して、朝日を待っています。

この記事では、まず、若いヒマワリが太陽を追うしくみを説明します。次に、咲いた花が東を向く理由を調べた研究を紹介します。最後に、東を向く理由について、まだ決着していない説を並べます。

01ヒマワリが太陽を追うのは、花が咲く前の若いころだけ

2016年、科学雑誌「サイエンス」に、ヒマワリの首ふりの論文がのりました。書いたのは、アメリカのカリフォルニア大学デービス校(UCデービス)のハゴップ・アタミアン(Hagop Atamian)や、ステイシー・ハーマー(Stacey Harmer)らです。

論文によると、若いヒマワリは、昼のあいだに東から西へ太陽を追いかけます。そして夜になると、西から東へ向きを戻します。夜明けより前に、もう東を向いて待っているのです。

ところが、育ちきったヒマワリは、動くのをやめます。花は東を向いたまま止まります。UCデービスの解説によると、花が育って茎がかたく木のようになるにつれて、首ふりは小さくなっていきます。そして最後には、どの花も朝日のほうを向いて落ち着くのです。

02若いヒマワリが首をふるのは、茎の東側と西側が交代で伸びるから

ヒマワリには、首を回す関節があるわけではありません。ヒマワリは、茎が伸びる(成長する)ことで、向きを変えます。

昼のあいだは、茎の東側がよく伸びます。東側が長くなると、茎は西へ傾きます。だから花は西へ向いていきます。夜になると反対に、西側がよく伸びます。すると茎は東へ傾き、朝には東を向いています。

東側と西側が交代で伸びるリズムを決めているのは、体内時計(約24時間でくり返す体の中の時計)です。研究チームは、畑のヒマワリを、真上から光が当たる部屋に移しました。この部屋では、光の来る向きが一日じゅう変わりません。それでも、東西に曲がる動きが数日つづきました。

ヒマワリは、目の前の太陽を見て動いているだけではありません。「そろそろ夜明けだ」と体内時計で予想して、先回りして東を向いているのです。論文は、この体内時計のしくみのおかげで、葉や茎がよく育ち、花に来る虫も増えると書いています。

若いヒマワリは、昼は太陽を追って西へ、夜のうちに東へ戻る。
若いヒマワリは、昼は太陽を追って西へ、夜のうちに東へ戻る。

03ヒマワリの首ふりは、植物がふだん光のほうへ曲がるときとは、違うしくみで起きていた

植物が光のほうへ曲がって育つ性質を、光屈性と言います。ヒマワリの首ふりも、光屈性の一種だと考えられてきました。

ところが2023年、同じUCデービスの研究室のクリストファー・ブルックス(Christopher Brooks)らが、意外な結果を発表しました。ブルックスらは、太陽を追う茎の中で、どの遺伝子がはたらいているかを調べました。すると、遺伝子のはたらき方は、普通の光屈性(青い光に向かって曲がるしくみ)のときとは、かなり違っていました。

研究チームは、畑で光の種類を変える実験もしました。赤い光と、赤よりさらに波長が長い光を減らしても、首ふりは始まり、つづきました。青い光を減らしても同じでした。つまりヒマワリの首ふりは、どれか1種類の光のセンサー(植物が光を感じとるしくみ)だけにたよっているわけではないのです。論文は、いくつもの光の信号が組み合わさって、首ふりを動かしていると考えています。

04東を向いて咲いたヒマワリは、朝あたたかくなり、虫が早く来る

では、咲いた花はなぜ東を向くのでしょう。2021年、UCデービスのニッキー・クルー(Nicky Creux)とハーマーらが、その理由を調べました。

研究チームは、鉢の向きを回して、西を向いた花を作りました。そして、東を向いた花と比べました。すると東向きの花のほうに、特に朝、ずっと多くのハチが来たのです。花の温度を測ると、東向きの花は、朝の温度が西向きの花よりはっきり高くなっていました。

東向きの花は、めしべが伸びるのも、花粉が出るのも、虫が来るのも早くなりました。東向きの花の花粉は、西向きの花の花粉より、多くの子ども(次の世代の種)を残しました。条件によっては、重くて中身のつまった種もできました。

研究チームは、西向きの花を携帯用のヒーターで温める実験もしました。すると、温めた西向きの花でも、東向きの花と似た結果になりました。東向きの花が得をしていたのは、「朝の温度」が高いためだったのです。UCデービスの解説によると、まっすぐ当たる日の光は、花びらにある紫外線の模様も照らします。ハチには見えて、人には見えない模様です。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

ヒマワリの首ふりのリズムは、約24時間でくり返す体内時計が作っている

植物の多くは、約24時間の周期でくり返すリズムをもっています。このリズムを「概日リズム」、リズムを作るしくみを「概日時計」と呼びます。明るさや温度が一定のままでも、しばらくはリズムがつづくのが特徴です。ヒマワリが、光の向きが変わらない部屋で数日首をふりつづけたのは、この性質のためです。

アタミアンらの論文は、体内時計と首ふりの関係も調べています。茎の東側と西側で、はたらく量が違っていた遺伝子は、光に向かって曲がる成長に関わる遺伝子でした。体内時計の遺伝子そのものではありません。つまり体内時計は、茎の片側を直接伸ばしているのではありません。「成長のスイッチを入れやすい時間」を決めている、と考えられます。

では、体内時計に「太陽がどこにあるか」を伝えているのは、どの光のセンサーなのでしょう。2023年のブルックスらの実験では、赤い光を減らしても、青い光を減らしても、首ふりは止まりませんでした。いくつもの光の信号が組み合わさっていると考えられています。ただ、詳しいしくみはまだ分かっていません。

学説:咲いたヒマワリがなぜ東を向くのかは、まだ決着していない

咲いたヒマワリが東を向く理由は、実は決着していません。2025年のハンガリーの研究チームの論文は、少なくとも8つの説を挙げています。鳥に種を食べられにくい。昼の暑さを避ける。朝露を早く乾かしてカビを防ぐ。花粉を暑さから守る。花の温度を下げる。虫を呼ぶ。光のエネルギーをいちばん多く受けとる。風に回される。どれか1つが正しいとは限りません。

「虫を呼ぶ」説には、反論も出ています。2024年、ホルバート(G. Horváth)らは、ヒマワリ畑で3つの実験をしました。虫がくっつくベタベタの花の模型を、北・東・南・西に向けて置きました。向きを回した本物の花も使いました。そして、やって来る虫の数を数えたのです。結果は、一日を通して来る虫(主にハチ)の数は、花の向きと関係がない、というものでした。

ここで、それぞれの研究が何を調べたかを整理します。クルーらの2021年の論文が示したのは、東向きの花では、虫が来る時間が早くなることでした。一方、2016年の論文とUCデービスの解説は、東向きの花に来るハチの数が多いと書いています。ホルバートらが数えたのは、一日全体で来た虫の数です。つまり、「虫が何匹来るか」については、研究によって結果が分かれています。「虫がいつ来るか」と「虫が何匹来るか」は、分けて考える必要があります。

「風に回される」説も、本当かどうか調べられました。西から東へ吹く風が、花を東へ回すのではないか。2023年8月にブダペストの学会で出された考えです。2025年の論文は、1940〜2023年の5〜8月の風のデータを調べました。ほぼ東へ向かう風がふく地域の割合は、ハンガリーで2.6%、ヨーロッパで11.4%、アメリカで13.7%でした。花は世界中でほぼ東を向くのに、東へ向かう風がふく場所は一部しかない。だから風では説明できない、という結論です。

「光のエネルギーをいちばん多く受けとる」説もあります。2020年の計算では、午後のほうが朝よりくもりやすい地域なら、東向きの花がいちばん多く光を受けとります。北アメリカ東部がそういう気候で、ここは人がヒマワリを作物として育て始めた地域です。

用語ミニ整理

  • 向日性(ヘリオトロピズム):太陽の動きに合わせて、葉や花の向きを変える性質
  • 光屈性:光の来る方へ曲がって成長する性質
  • 概日時計:約24時間のリズムを作る体の中のしくみ
  • 送粉者:花粉を運んで受粉を助ける生き物。ヒマワリでは主にハチ

05まとめ

ヒマワリが太陽を追うのは、花が咲く前の若いころだけです。昼は東から西へ、夜のうちに西から東へ戻り、朝日を待ちます。そのリズムを決めているのは体内時計でした。咲いた花は、ほぼ真東を向いたまま止まります。

東向きの花は朝あたたかく、花粉を出すのも虫が来るのも早くなります。ただ、なぜ東なのかは、今も研究者の間で議論が続いています。夏の朝にヒマワリ畑を見かけたら、花がそろって向いているほうに、朝日が見えるはずです。

人に話すなら、こう言おう

ヒマワリって太陽を追いかけるって言うけど、それは若いうちだけなんだって。花が咲くと、ずっと東を向いたまま止まっちゃう。しかも若いころは、夜のうちに西から東へ首を戻して、朝日を待ってるらしいよ。
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英語で読む

Sunflowers Wait for the Sunrise

CEFR A2226 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

On a summer morning, look at a field of sunflowers.夏の朝、ヒマワリ畑を見てみましょう。 All the open flowers face the same way.咲いている花はみんな同じ方向を向いています。 They face east, toward the rising sun.のぼってくる太陽のほう、つまり東を向いているのです。 Come back in the evening, and they still face east.夕方にもう一度来ても、花はまだ東を向いています。

Many people believe that sunflowers follow the sun all day.ヒマワリは一日じゅう太陽を追う、と多くの人が信じています。 But only young plants do this.でも、そうするのは若い株だけです。 In 2016, scientists at the University of California, Davis, reported how they move.2016年、カリフォルニア大学デービス校の科学者たちが、その動き方を報告しました。 During the day, a young plant turns from east to west.昼のあいだ、若い株は東から西へ向きを変えます。 At night, it turns back to the east and waits for the sunrise.夜になると東へ向きを戻し、日の出を待ちます。

How does a plant turn without a neck?首のない植物が、どうやって向きを変えるのでしょう。 It grows.成長するのです。 In the day, the east side of the stem grows more.昼は、茎の東側がよくのびます。 At night, the west side grows more.夜は、西側がよくのびます。 An inner clock, a kind of body clock, controls this timing.体の中の時計、つまり体内時計が、このタイミングを決めています。 The plants kept moving for several days even in a room with a light that did not move.光が動かない部屋の中でも、ヒマワリは数日のあいだ動きつづけました。

When the flowers open, the stems become hard, and the moving stops.花が咲くと茎はかたくなり、動きは止まります。 Why east?なぜ東なのでしょう。 In 2021, the same team turned some pots to make the flowers face west.2021年、同じチームは鉢を回して、花が西を向くようにしました。 The east-facing flowers were warmer in the morning.東向きの花は、朝のうちあたたかくなりました。 They let out pollen earlier, and bees came to them earlier.花粉を出すのも早く、ハチが来るのも早かったのです。

Still, scientists have not agreed on one answer.それでも、科学者たちは一つの答えにまとまっていません。 In a 2024 study, the total number of bees in a day did not change with the direction of the flowers.2024年の研究では、一日に来るハチの合計の数は、花の向きによって変わりませんでした。 The question is still open.この問いは、まだ答えが出ていないのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2What does a young sunflower do at night?

    若いヒマワリは夜に何をしますか。

  3. Q3Why does a young sunflower turn to the west during the day?

    若いヒマワリが昼のあいだ西へ向くのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "controls" is closest in meaning to

    第3段落の "controls" という語にもっとも意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話の内容と合っているのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • face動詞
    ~の方を向く

    My room faces the sea.

    私の部屋は海に面している。

    💡 名詞の face(顔)から。顔を向ける→「向く」。

  • follow動詞
    ~についていく、追う

    The puppy followed me home.

    子犬が家までついてきた。

    💡 SNS で「フォローする」もこの語。

  • stem名詞
    (植物の)茎

    Cut the stem of the rose before you put it in water.

    水に入れる前にバラの茎を切りなさい。

    💡 STEM 教育の STEM(理科・技術・工学・数学)とは別の語。

  • pollen名詞
    花粉

    Many people are allergic to pollen in spring.

    春には多くの人が花粉のアレルギーになる。

    💡 pollinate は「受粉させる」。

  • sunrise名詞
    日の出

    We got up early to see the sunrise.

    私たちは日の出を見るために早起きした。

    💡 反対は sunset(日の入り)。

  • control動詞
    管理する、コントロールする

    You should control how much sugar you eat.

    砂糖を食べる量を管理したほうがいい。

    💡 名詞も同じ形。remote control は「リモコン」。

  • agree動詞
    意見が一致する、賛成する

    I agree with you.

    あなたに賛成です。

    💡 agree with + 人、agree to + 提案。反対は disagree。

  • several形容詞
    いくつかの

    I have read this book several times.

    この本は何回か読んだことがある。

    💡 a few より少し多いイメージ。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 17件)。

  1. Atamian, H. S. et al. (2016) Circadian regulation of sunflower heliotropism, floral orientation, and pollinator visits, Science 353(6299):587–590doi.org
  2. Creux, N. M. et al. (2021) Flower orientation influences floral temperature, pollinator visits and plant fitness, New Phytologist 232:868–879doi.org
  3. Why Sunflowers Face East(UC Davis, 2021年8月10日)ucdavis.edu
  4. Brooks, C. J., Atamian, H. S. & Harmer, S. L. (2023) Multiple light signaling pathways control solar tracking in sunflowers, PLoS Biology 21(10):e3002344doi.org
  5. Horváth, G. et al. (2024) The all-day pollinator visits of sunflower inflorescences in Helianthus annuus plantations are independent of head orientation, The Plant Journaldoi.org
  6. Rajna, E., Weidinger, T. & Horváth, G. (2025) Regional prevailing wind directions cannot explain the global east facing of mature sunflower inflorescences, Plantadoi.org

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