空は、なぜ紫ではなく青く見えるのか
定番雑学の"その先"No.038

空は、なぜ紫ではなく青く見えるのか

人の目が、紫の光をあまり感じないから。

うなり度 読む時間8分 出典4件 確認した事実17件
もくじ
  1. 空気が光を散らす強さだけで考えると、空は紫に見えてもおかしくない
  2. 人の目のしくみを入れて計算すると、空の色は「青に白を混ぜた色」と同じになる
  3. 空が紫に見えないおもな理由は、紫の光が少ないことより、人の目が紫を感じにくいことらしい
  4. 夕焼けが赤いのも、空気が青い光を散らすため。夕暮れの真上の青には、オゾンも関わる
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

「空はなぜ青いの?」と聞かれたら、「レイリー散乱のせい」と答える人は多いでしょう。空気の分子は、波長(光の波の長さ)の短い光ほど強く散らす。だから、青い光が空いっぱいに広がる。教科書にも、そう書いてあります。

でも、この説明には、足りないところがあります。青より波長が短いのは、紫です。短いほど散らされるなら、空は紫に見えるはずではないでしょうか。

2005年、グレン・スミス(Glenn S. Smith)が、物理教育の学術誌に論文を書きました。スミスは当時、アメリカのジョージア工科大学で電気工学を研究していました。論文の中身は、こうです。散乱の計算だけなら、空は紫だと言ってもかまわないことになる。説明を完成させるには、人の目のしくみを計算に入れる必要がある。計算の結果、平均的な人の目にとって、晴れた空の光は「波長474nmの青い光に、白い光を混ぜたもの」と同じ色になりました。

この記事では、まず光の散らばり方だけで計算すると、空が紫になってしまう理由を見ます。次に、目のしくみを計算に入れると、空が「白っぽい青」になる理由を説明します。最後に、夕焼けや夕暮れの空の色にも触れます。

01空気が光を散らす強さだけで考えると、空は紫に見えてもおかしくない

太陽の光は、白く見えます。でも実は、虹の7色をはじめ、いろいろな波長の光が混ざっています。大気に入った光は、主に窒素と酸素の分子にぶつかり、四方八方に散らされます。これが、レイリー散乱です。

散らされる強さは、波長の4乗に反比例します。たとえば波長が2分の1になると、散らされる強さは16倍になります。つまり、波長が短い光ほど、ぐんと強く散らされます。少し計算してみましょう。波長400nm(ナノメートル、100万分の1ミリ)の紫は、700nmの赤より約9.4倍強く散らされます。450nmの青は、赤の約5.9倍です。

空を見上げたときに目に入るのは、この散らされた光です。スミスの論文は、まず太陽の光を考えました。太陽の光は、およそ6000K(Kは温度の単位)の物体が出す光に近いものです。その光の色ごとの強さに、散らされる強さをかけ合わせました。こうして、空から届く光に、どの色がどれだけ含まれるかを計算したのです。計算の結果をグラフにすると、波長が短いほど、光が強くなっていました。論文は、ここまでの考えだけなら、空は紫だと言ってもよいことになる、と書いています。そして、多くの教科書の説明はここで終わっている、とも指摘しています。

02人の目のしくみを入れて計算すると、空の色は「青に白を混ぜた色」と同じになる

人の目の奥(網膜)には、光を感じる細胞が2種類あります。暗いところではたらく「桿体(かんたい)」が、およそ1億個。明るいところで色を見分ける「錐体(すいたい)」が、およそ500万個です。

錐体には、3種類あります。長い波長(赤っぽい光)によく反応するのが、L錐体です。中くらいの波長(緑っぽい光)ならM錐体、短い波長(青っぽい光)ならS錐体と呼ばれます。錐体の90%以上は、LとMです。

私たちが感じる色は、3種類の錐体がそれぞれどれだけ反応したか、その割合で決まります。逆に言えば、光の成分がまったく違っても、3種類の反応の割合が同じなら、同じ色に見えます。これを「等色(メタメリズム)」と言います。

スミスは、空の光が3種類の錐体をどれだけ反応させるかを計算しました。そして、同じ反応を起こす「白い光+1つの波長の光」の組み合わせを探しました。その組み合わせは、一つだけ見つかりました。理論で計算した空の光なら474nm、実際に測った空の光なら476nm の青い光に、白い光を混ぜたものです。どちらも、人が「青」と呼ぶ波長です。

空の色は、紫でも純粋な青でもなく、「白っぽく薄めた青」。色の用語で言うと、「飽和していない青」です。白が混ざって、あざやかさが低くなった青のことです。晴れた空の青がどこか白っぽく見えるのは、このためです。

白い光と青い光を重ねると、空と同じ色に見える。スミスの論文は、これを教室でできる実験として紹介している。
白い光と青い光を重ねると、空と同じ色に見える。スミスの論文は、これを教室でできる実験として紹介している。

03空が紫に見えないおもな理由は、紫の光が少ないことより、人の目が紫を感じにくいことらしい

「空はなぜ紫じゃないのか」には、よく2つの理由があげられます。イギリス気象庁(Met Office)の解説も、この2つで説明しています。「目は紫より青のほうに敏感」と、「太陽の光には、もともと紫が少ない」です。

スミスの論文には、2つの理由のどちらが大きいかを考えるヒントがあります。実際に測った空の光は、短い波長のほうで、理論の計算より弱くなっていました。紫のあたりが、少したりないのです。ところが、この差を入れて計算し直しても、空と同じ色に見える青い光の波長は、474nmから476nmに動いただけでした。なぜなら、測った光が理論より弱かった紫のあたりの波長では、もともとS錐体の感度(光への感じやすさ)が小さいからです。そのため、紫が少したりなくても、色の見え方はほとんど変わらないのです。

つまり、「紫が少したりない」ことより、「その波長を目があまり感じない」ことのほうが、空の色を決めるうえで効いている、と読めます。

04夕焼けが赤いのも、空気が青い光を散らすため。夕暮れの真上の青には、オゾンも関わる

夕焼けが赤いのも、同じ散乱で説明できます。太陽が低いと、光は大気の中をななめに、長い距離進みます。そのあいだに、青い光は散らされて、横へそれていきます。まっすぐ目に届くのは、赤やオレンジの光になります。NASAの子ども向け解説によると、空全体が燃えるように赤く見えるときは、ちりや汚れなどの小さな粒も、青い光を散らしています。

昼でも、地平線近くの空は白っぽく見えます。地平線のほうから来る光は、長い距離の空気を通ります。その光は何度も散らされるうちに、いろいろな色が混ざり、白に近づくためです。

スミスの論文には、もう一つ見落とされがちな事実が書かれています。日の入りや夕暮れの時間にも、真上の空は青く見えます。この青は、散乱だけでなく、大気中のオゾンが光を吸いこむ(吸収する)ことが、大きな原因になっている、というのです。昼の空の青と、夕暮れの真上の空の青は、しくみが少し違います。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

空気の分子のような小さな粒は、青や紫の光ほど強く散らす

光は、電場と磁場(電気や磁石の力がはたらく場所)が振動しながら進む波です。空気の分子は、光の波長(数百nm)よりずっと小さい粒です。空気の分子のような小さな粒に光が当たると、分子の中の電子が、光の電場にゆさぶられて振動します。その振動が、四方八方に新しい光を出します。これが散乱です。振動が速いほど、つまり光の波長が短いほど、出てくる光は強くなります。散乱の強さは、波長の4乗に反比例します。この関係が、レイリー散乱のいちばん大事な点です。

レイリー散乱の名前のもとになったのは、レイリー卿(本名ジョン・ウィリアム・ストラット、1842〜1919)です。レイリー卿は1871年に、「空の光、その偏光と色について」という論文を発表しています。28歳か29歳のころの仕事です。

空からどんな光が来るかは物理で決まるが、それが何色に見えるかは目と脳で決まる

空の光の成分(スペクトル)を決めるのは、物理学です。しかし「何色に見えるか」は、目と脳の問題です。スミスの論文は、物理と目をつなぐために、「錐体がどれだけ反応するか」を計算に使いました。

色を見るしくみでは、光の成分が違っても、3種類の錐体の反応の割合が同じなら、同じ色に見えます。テレビやスマートフォンの画面は、赤・緑・青の3色の光だけで、黄色や水色を表せます。この性質を使っているからです。空の光は、紫まで含む、いろいろな波長がなだらかに混ざった光です。それなのに目には、「474nmの青+白」と区別がつきません。

同じレイリー卿が、1881年に色の見え方の実験も記録しています。赤い光と緑の光を混ぜて、黄色い単色の光と同じ色に見せる実験です。空の色の説明には、「光の散乱」と「等色」の2つの考えが必要です。その両方に、レイリー卿の名前が残っているのです。

白い光と青い光のランプを重ねると、教室で空の色が作れる

スミスの論文は、「空の色は、青い光+白い光と同じ」という結論を確かめる実験も紹介しています。まず、ランプを2つ用意します。一つには、白い光の代わりとして、目に見えるいろいろな色の光を、ほぼ同じ強さで出す電球をつけます。もう一つには、470nmか480nmを中心とする光を通す、青いフィルターをつけます。2つの光を重ねて、明るさの比をととのえると、空の色に似た光ができます。470nmのほうが、少し紫がかって見えるそうです。

論文によると、色覚が普通の人なら、青いランプの明るさを自分で調節すると、記憶の中の空の色にもっと近づけられます。また論文は、人口の約8%は色の感じ方が平均と違うことにも触れています。その割合は男性のほうがずっと高い、とも書いています。空の「正しい色」は、物理だけでは決まりません。見る人の目ごとに、少しずつ違っていてもおかしくないのです。

用語のミニ整理

  • レイリー散乱:光の波長よりずっと小さい粒による散乱。強さは波長の4乗に反比例
  • 錐体:網膜で色を見分ける細胞。L・M・Sの3種類
  • 等色(メタメリズム):成分の違う光が、同じ色に見えること
  • 飽和度:色のあざやかさ。白が混ざるほど低くなる。空の青は飽和度の低い青

「空気が青い光を散らすから空は青い」という説明だけでは、目のしくみが抜けている

「空が青いのはレイリー散乱」は、間違いではありません。けれど、それだけでは「なぜ紫ではないか」に答えられません。スミスの論文から分かるのは、次のことです。正しい説明でも、途中で止まっていると、次の疑問に答えられません。空の色なら、物理で光の成分を出したあと、「その光を見ているのは、どんな目か」まで考える必要があります。そこまで考えて、説明が完成します。

05まとめ

「空が青いのはレイリー散乱のせい」という説明は、半分だけです。散乱の計算だけなら、空は紫でもおかしくありません。説明の残りの半分は、私たちの目のしくみです。3種類の錐体で受けとると、空の光は「474nmの青い光に白い光を混ぜた色」と同じに見えます。

晴れた日に空を見上げたら、思い出してください。そこからは、紫の光も降ってきています。その光を「薄い青」に見せているのは、あなたの目の中にある約500万個の錐体です。

人に話すなら、こう言おう

空が青いのは光の散乱のせいって言うけど、それだけなら紫に見えてもいいんだって。目のセンサーで計算すると、空の色は「青い光に白い光を混ぜた色」と同じになるらしいよ。
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英語で読む

Why the Sky Is Not Purple

CEFR A2220 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Why is the sky blue?空はなぜ青いのでしょう。 Many textbooks say that air scatters short light waves more than long ones.多くの教科書は、空気は長い光の波より短い光の波を強く散らすと書いています。 To scatter means to send light in many directions.散らすとは、光をいろいろな方向へ送ることです。 Blue light has short waves, so it fills the sky.青い光は波が短いので、空いっぱいに広がります。

But there is a problem.でも、問題があります。 Violet light has even shorter waves than blue light.紫の光は、青い光よりもさらに波が短いのです。 So why don't we see a violet sky?では、なぜ私たちには紫の空が見えないのでしょう。 In 2005, an American scientist named Glenn Smith wrote a paper about this question.2005年、グレン・スミスというアメリカの科学者が、この疑問について論文を書きました。 He said that the answer is in our eyes.彼は、答えは私たちの目の中にあると言いました。

Our eyes have about 5 million cones, the cells that see color.私たちの目には、色を見る細胞である錐体がおよそ500万個あります。 There are three kinds of cones.錐体には3つの種類があります。 We see a color from how strongly each kind reacts.私たちは、それぞれの種類がどれだけ強く反応するかで色を感じます。 Smith did the math for sky light.スミスは空の光について計算をしました。 He found that it looks the same as white light mixed with pure blue light of 474 nanometers.すると、空の光は、白い光に474ナノメートルの純粋な青い光を混ぜたものと同じに見えることがわかりました。 So the sky is not violet.だから空は紫ではないのです。 It is a pale blue.うすい青なのです。

The same idea explains red sunsets.同じ考え方で、赤い夕焼けも説明できます。 When the sun is low, its light travels through more air.太陽が低いと、その光はより多くの空気の中を通ります。 The blue light is scattered away, and red and orange light reach our eyes.青い光は散らされてそれていき、赤やオレンジの光が目に届きます。 On Mars, it is the other way around.火星では、それが逆になります。 Photos from a NASA lander showed an orange sky in the daytime and a blue-gray sky around the setting sun.NASAの着陸機の写真には、昼はオレンジ色の空、夕方は沈む太陽のまわりに青灰色の空が写っていました。 So next time you look up, remember that violet light is falling on you too.だから次に空を見上げたら、紫の光もあなたに降り注いでいることを思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many cones do our eyes have?

    私たちの目には錐体がいくつありますか。

  3. Q3Why are sunsets red?

    夕焼けが赤いのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 1, the word "scatter" is closest in meaning to

    第1段落の "scatter" という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the sky color in the story?

    本文の空の色について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • scatter動詞
    散らす、ばらまく

    The wind scattered the leaves across the yard.

    風が庭じゅうに葉を散らした。

    💡 scatter A over B で「AをBにばらまく」。

  • wave名詞
    波

    Big waves hit the beach.

    大きな波が浜辺に打ち寄せた。

    💡 光や音も wave(波)。wavelength は「波長」。

  • violet名詞・形容詞
    紫(すみれ色)

    She painted the flowers violet.

    彼女は花を紫にぬった。

    💡 ultraviolet(紫外線)は「紫の外側」という意味。

  • paper名詞
    論文

    The professor wrote a paper about stars.

    教授は星についての論文を書いた。

    💡 数えられる名詞で使うと「論文、レポート」の意味になる。

  • cell名詞
    細胞

    Our bodies are made of many cells.

    私たちの体はたくさんの細胞でできている。

    💡 cell phone の cell は「区画」の意味から。

  • react動詞
    反応する

    How did your mother react to the news?

    その知らせにお母さんはどう反応したの?

    💡 react to ~ で「~に反応する」。名詞は reaction。

  • pale形容詞
    (色が)うすい、青白い

    She wore a pale pink dress.

    彼女はうすいピンクのドレスを着ていた。

    💡 顔色について言うと「青ざめた」。

  • sunset名詞
    日の入り、夕焼け

    We watched the sunset from the hill.

    私たちは丘の上から夕日を見た。

    💡 反対は sunrise(日の出)。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 17件)。

  1. Smith, G. S. (2005) Human color vision and the unsaturated blue color of the daytime sky, American Journal of Physics 73:590–597doi.org
  2. Strutt, J. W. (1871) On the light from the sky, its polarization and colour, Philosophical Magazine 41:107–120doi.org
  3. Why Is the Sky Blue?(NASA Space Place)spaceplace.nasa.gov
  4. Why the sky is blue and sunsets red(Met Office)weather.metoffice.gov.uk

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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