
虹は7色という考えを広めたのはニュートンだが、色の境目を測ったのは助手だった
色の並べ方は、最初「5+2」だった。
この判定の対象「虹が7色になったのは、ニュートンが音階に合わせたから」
もくじ
「赤、だいだい、黄、緑、青、藍、紫」。日本では、虹は7色と習います(だいだいはオレンジのことです)。この7色を決めたのは、イギリスの科学者アイザック・ニュートン(Isaac Newton)だとよく言われます。
ところが、ニュートンが1672年に書いた手紙を読むと、最初から7色だったわけではないと分かります。ニュートンが色の名前として、まず挙げたのは5つでした。また、ニュートンがのちに出した本によると、光の色の境目に線を引いたのは、ニュートン本人ではありませんでした。線を引いたのは、「色を見分ける目が、ニュートンより確かな助手」でした。
この記事では、まずニュートンの手紙と本で、虹の色の数がどう書かれていたかを見ます。次に、虹の色の数が、国や時代によって違うことを紹介します。最後に、虹の色に境目がない理由を説明します。
01ニュートンは最初の手紙で、虹の色を5つ挙げ、そのあとにオレンジと藍を加えていた
1672年2月、ニュートンはイギリスの学者の集まり、王立協会に手紙を送りました。手紙には、光と色についての新しい考えが書かれていました。この手紙は、王立協会の雑誌にのりました。
太陽の光をプリズムに通すと、光が色の帯に分かれます。手紙の中でニュートンは、もとになる色を次のように書いています。赤、黄、緑、青、紫。この5つに、オレンジと藍(あい)、そして数えきれない中間の色が加わる、と。
つまり、1672年の手紙での書き方は「5つ+2つ」です。オレンジと藍は、ほかの5つより後ろに、つけ足すように並んでいます。
02プリズムで分けた光の色の境目に線を引いたのは、ニュートンではなく助手だった
1704年、ニュートンは光の研究をまとめた本『光学(Opticks)』を出しました。その中に、色の境目を決める実験があります。この記事では、1730年に出た第4版で、本の中身を確かめました。
ニュートンは、プリズムで作った色の帯を、紙の上に写しました。そして、その紙を手で持ったまま、助手に、色と色の境目へ線を引かせました。本には、この助手は色を見分ける目がニュートンより確かだった、と書かれています。この実験を何度くり返しても、結果はよく合ったそうです。
そしてニュートンは、色の境目の分かれ方が「楽器の弦のように」なっていると書きました。楽器の弦の長さを、1、9分の8、6分の5、4分の3、3分の2、5分の3、16分の9、2分の1と変えていくと、音階の8つの音が出ます。この8つの長さを順に並べると、となり同士のあいだが7つできます。その7つのあいだが、赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・紫の7つの色の範囲にあたる、というのです。

03ニュートンは、色を円に並べた図も、ドレミの音階に合わせて7つに区切った
『光学』には、色を混ぜたときにどんな色になるかを考えるための「色の円」も出てきます。ニュートンは、円の周りを7つに分けました。分け方は、「ソ・ラ・ファ・ソ・ラ・ミ・ファ・ソ」という8つの音のあいだにある、7つの音程(音の高さのへだたり)に合わせています。そして7つの部分に、赤・オレンジ・黄・緑・青・藍・紫をあてました。
ドレミの音階では、1オクターブの中に7つの音があります。虹の色も7つ。ニュートンは、光の色と音楽の音を、同じ数のきまりで説明しようとしていたようです。
「ニュートンは最初5色と考えたが、音階と結びつけて7色にした」と説明する本もあります。確かに、1672年の手紙は「5つ+2つ」で、1704年の本は「音階に合わせた7つ」です。ただ、「音階に合わせるために7つにした」と、ニュートン自身が書いた文は見つかりませんでした。
04虹の色の数は、国によっても時代によっても違う
虹の色の数は、国によっても違います。岡山県立図書館は、調べものの質問への回答で、ある本の表を紹介しています。それによると、日本・オーストラリア・フランスは7色。アメリカとイギリスは藍がない6色です。ドイツとロシアは藍とオレンジ(だいだい)がない5色、ベルギーは藍と紫がない5色でした。
日本も、昔から7色だったわけではありません。市川市中央図書館も、調べものの回答で本を紹介しています。その本によると、江戸時代中ごろの西川如見(にしかわ・じょけん)の本(1714年)では、虹は4色でした。江戸時代の後半、司馬江漢(しば・こうかん)の本(1808年)では5色です。7色の考えは、江戸時代の終わりごろに西洋から入り、少しずつ広まったとされています。琉球(今の沖縄)では、赤と黒、または赤と青の2色としていた、という本もあります。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
虹の色は、赤から紫まで切れ目なくつながっている
虹は、空にうかぶ水のつぶの中で、太陽の光が曲がったり、はね返ったりしてできます。光は、色(波長)によって曲がる角度が少しずつ違います。そのため、白い光が色ごとに広がって見えるのです。
ここで大事なのは、波長が「なめらかに」変わることです。赤から紫まで、光の波長は切れ目なくつながっています。どこからが黄色で、どこからが緑か。その境目の線は、光そのものには引かれていません。線を引いているのは、見る人の目と頭と、色を表す言葉です。
ニュートンは、光の色の並び方も、音階と同じ比で説明できると考えていたようだ
『光学』にのっている弦の長さの比を、もう一度見てみましょう。弦の長さを2分の1にすると、もとの音より1オクターブ(8度)高い音が出ます。3分の2にすると、5度高い音(ドに対するソ)が出ます。ニュートンは、音の高さの違いを、弦の長さの簡単な比で表しています。
ニュートンは、音と同じ比で、光の色の幅も表しました。「光の世界にも、音と同じような数のきまりがあるのではないか」。ニュートンはそう考えていたと、本から読み取れます。ただし、色の境目を引いたのは、助手の目でした。ニュートンは、人の目で決めた境目を、音楽の比で整理したのです。虹の色を7つとする考えには、光の性質と、人の感覚と、ニュートンの考え方が混ざっています。
色の境目を決めるのが、生まれつきの目のしくみか、言葉や文化かは、まだ決着していない
虹を何色と数えるかは、色の名前がいくつあるかとも関係します。2014年の哲学の論文は、この問題を整理しています。青と緑の境目をどこに引くかは、人の目のしくみで、生まれつき決まっているのか。それとも、文化と言葉が決めるのか。生まれつき決まるという考えを「普遍説」、文化と言葉が決めるという考えを「相対説」といいます。この2つの考えの対立が、長く議論されてきました。論文は、最近の研究から、どちらか一方の考えだけでは説明しきれないことが分かってきた、とまとめています。
日本で虹が4色、5色、7色と変わってきたのは、時代によって数え方が変わった一つの例です。ただ、2014年の論文が言うように、色の数え方を「文化だけ」で説明しきれるかどうかは、まだ議論が続いています。
用語のミニ整理
- スペクトル:光を波長ごとに分けて並べた、色の帯
- 波長:光の波の山から山までの長さ。色の違いは波長の違い
- 音程:2つの音の高さのへだたり。弦の長さの比で表せる
- 色のカテゴリー:連続した色を、言葉でいくつかのまとまりに分けたもの
05まとめ
虹を7色とした考えを広めたのは、確かにニュートンです。けれど1672年の手紙では、まず5つの色を挙げ、オレンジと藍はその後ろに並べていました。1704年に出た『光学』では、7つの色の幅を音階の弦の長さの比に重ねています。そして、その色の境目に線を引いたのは、色を見分ける目がニュートンより確かな助手でした。
次に虹を見たら、色と色のあいだをよく見てください。どこにも線は引かれていません。
人に話すなら、こう言おう
虹の7色を広めたのはニュートンなんだけど、最初の手紙ではまず5つの色を挙げて、オレンジと藍は後ろに並べてたんだ。しかも色の境目に線を引いたのは、色を見る目がニュートンより確かな助手だったんだって。
英語で読む
Who Counted the Colors of the Rainbow?
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
In Japan, children learn that a rainbow has seven colors.日本では、子どもたちは虹には7つの色があると習います。 Many people say that Isaac Newton decided this number.多くの人は、アイザック・ニュートンがこの数を決めたと言います。 But the real story is a little different.しかし、本当の話は少しちがいます。
In 1672, Newton wrote a letter about light and color.1672年、ニュートンは光と色についての手紙を書きました。 He passed sunlight through a prism, a piece of glass with three sides, and saw a band of colors.彼は太陽の光をプリズムという三角の形をしたガラスに通し、色の帯を見ました。 In the letter, he first named five colors: red, yellow, green, blue, and violet.その手紙で、彼はまず赤、黄、緑、青、紫という5つの色を挙げました。 Then he added orange and indigo after them.そして、そのあとにオレンジと藍を加えました。
In 1704, he published a book called Opticks.1704年、彼は『光学』という本を出版しました。 In one test, he did not draw the lines between the colors himself.ある実験で、彼は色と色のあいだの線を自分では引きませんでした。 An assistant with better eyes for color drew them.色を見る目がもっとよい助手が、その線を引きました。 Newton said the lines matched the lengths of strings on a musical instrument.ニュートンは、その線が楽器の弦の長さと合っていると述べました。 So he connected seven colors with the notes of a musical scale.こうして彼は、7つの色を音階の音と結びつけました。
But a rainbow does not really have seven separate colors.しかし、虹には本当は7つの分かれた色があるわけではありません。 The colors change smoothly, with no lines at all.色はなめらかに変わり、線はまったくありません。 People decide where one color ends and the next begins.ひとつの色がどこで終わり、次の色がどこで始まるかを決めるのは人間です。
That is why the number changes by country and by time.だから、その数は国や時代によって変わるのです。 One book says many people in the United States count six colors.ある本によると、アメリカの多くの人は6色と数えます。 In Japan, a book from 1714 described a rainbow with only four colors.日本では、1714年の本が虹をたった4色で説明していました。 Next time you see a rainbow, look closely between the colors.次に虹を見たら、色と色のあいだをよく見てください。
4択問題 Reading Quiz
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Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:C How the idea of seven rainbow colors began
第2〜3段落でニュートンが色を数えた経緯、第4〜5段落で色の数が人の決めごとであることが述べられているので正解はC。Bの虹ができる理由は本文で説明されていません。
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Q2How many colors did Newton name first in his 1672 letter?
1672年の手紙で、ニュートンが最初に挙げた色はいくつでしたか。
正解:A Five
第2段落3文目に he first named five colors とあるので正解はA。オレンジと藍はそのあとに加えられました。Dの4つは1714年の日本の本の数です。
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Q3Who drew the lines between the colors in Newton's test?
ニュートンの実験で、色のあいだの線を引いたのは誰ですか。
正解:D An assistant with better eyes for color
第3段落3文目に An assistant with better eyes for color drew them とあるので正解はD。2文目に自分では線を引かなかったとあるのでAはちがいます。
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Q4In paragraph 4, the word "smoothly" is closest in meaning to ...
第4段落の "smoothly" に最も意味が近いのは…
正解:C without sharp breaks
第4段落2文目は、色がなめらかに変わり、線がまったくないという意味なので、「はっきりした切れ目なしに」のCが正解。Aの suddenly は反対に近い意味です。
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Q5Which is true about the number of rainbow colors?
虹の色の数について正しいものはどれですか。
正解:B It depends on how people draw lines between colors.
第4段落3文目と第5段落1文目に、色の境目は人が決め、数は国や時代で変わるとあるので正解はB。第5段落で国ごとにちがうとあるのでAはちがいます。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
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rainbow名詞虹
We saw a big rainbow after the rain.
雨のあとに大きな虹を見た。
💡 rain(雨)+ bow(弓)。弓の形をした雨の光、という意味。
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prism名詞プリズム
The prism split the light into many colors.
プリズムが光を多くの色に分けた。
💡 光を色に分ける三角柱のガラス。split A into B で「AをBに分ける」。
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violet名詞紫、すみれ色
Violet is the last color of the rainbow.
紫は虹の最後の色だ。
💡 花のスミレも violet。purple は赤みのある紫。
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indigo名詞藍色
Jeans are often dyed with indigo.
ジーンズはよく藍で染められる。
💡 藍という植物から取る青い染料の名前。インド(India)と同じ語源。
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assistant名詞助手
The doctor's assistant gave me a form.
医者の助手が私に用紙をくれた。
💡 assist(手伝う)+ -ant(人)。
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string名詞(楽器の)弦、ひも
One string on my guitar is broken.
私のギターの弦が1本切れている。
💡 弦楽器は string instrument。ひもの意味でもよく使う。
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scale名詞音階
She practices the scale on the piano every day.
彼女は毎日ピアノで音階を練習する。
💡 「規模」「目盛り」「体重計」の意味もある多義語。
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separate形容詞分かれた、別々の
We sleep in separate rooms.
私たちは別々の部屋で寝る。
💡 動詞(分ける)では発音が「セパレイト」、形容詞では「セパレット」に近い。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 10件)。
- Newton, I. (1672) A letter… containing his new theory about light and colors, Philosophical Transactions 6:3075–3087doi.org
- Newton, I. Opticks, 4th ed. (1730)(Project Gutenberg)gutenberg.org
- Rainbows(Met Office)weather.metoffice.gov.uk
- Biernson, G. (1972) Why Did Newton See Indigo in the Spectrum?, American Journal of Physics 40:526–533doi.org
- Jraissati, Y. (2014) On Color Categorization: Why Do We Name Seven Colors in the Rainbow?, Philosophy Compass 9:382–391doi.org
- 虹の色が日本では7色とされるが、ほかの国では何色なのか(レファレンス協同データベース・岡山県立図書館)crd.ndl.go.jp
- 古来、日本では虹は七色ではなかったときいた(レファレンス協同データベース・市川市中央図書館)crd.ndl.go.jp
公式ページで見てみよう
- Rainbows(イギリス気象庁の虹の解説)weather.metoffice.gov.uk
文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。
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