サハラ砂漠は、これまで230回以上も緑の草原になっていた
思わず唸るNo.090

サハラ砂漠は、これまで230回以上も緑の草原になっていた

最後の緑の時代には、湖にカバもいた。

ホントTRUE

この判定の対象「6000年前ごろのサハラ砂漠は、緑だった」

うなり度 読む時間8分 出典5件 確認した事実28件
もくじ
  1. 海の底の泥を調べると、昔のサハラには今の約10倍の雨が降っていた
  2. ニジェールの湖の跡のそばに、サハラでいちばん古い墓地があった
  3. ゴベロには人がいない時期が最長1000年あり、その後は別の人々が住んだ
  4. 約7000年前のミイラのDNAから、これまで知られていなかった北アフリカの人々のグループが見つかった
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

アフリカの北に広がるサハラ砂漠。今は、世界でもっとも乾いた場所の一つです。

ところが、約1万1000年前から5000年前ごろまで、ここには草原と湖が広がっていました。雨の量は、今の約10倍。湖にはカバやワニがすみ、そのほとりで人々が魚をとって暮らしていました。

さらに研究者たちは、サハラが緑になったのは一度だけではないと考えています。過去800万年で、230回以上です。

この記事では、緑だったころのサハラを、3つの手がかりから順に見ていきます。1つ目は海の底の泥で、昔の雨の量が分かります。2つ目は湖のほとりの墓地で、そこに住んだ人々の暮らしが分かります。3つ目は約7000年前のミイラのDNAで、その人々の祖先が分かります。最後に、サハラがなぜ何度も緑になったのかを説明します。

01海の底の泥を調べると、昔のサハラには今の約10倍の雨が降っていた

昔の雨の量は、どうやって分かるのでしょうか。2017年、アメリカの研究者ティアニー(Jessica Tierney)らは、アフリカの西の沖の海底の泥を調べました。

陸の植物の葉の表面には、ロウのような物質がついています。このロウが風で海へ運ばれ、海の底に積もります。植物は、雨の水を使ってロウを作ります。水をつくっている水素には、重いものと軽いものがあります。ロウの中の、重い水素と軽い水素の割合を調べると、植物が育ったころの雨の量を計算できるのです。

チームは、過去2万5000年分の泥を調べました。その結果、約1万1000〜5000年前の西サハラでは、雨が年640ミリほど降っていたと分かりました。640ミリは、調べた地点ごとの値を小さい順に並べたときの、真ん中の値です。実際には、場所と時代によってかなりの幅があります。今の西サハラは、年35〜100ミリです。だいたい10倍の雨が降っていたことになります。

緑の地域は、北緯31度、今のモロッコのあたりまで広がっていました。そこには、草原やサバンナ、木がまばらに生える草地がありました。熱帯の植物も、北緯24度まで広がっていました。

02ニジェールの湖の跡のそばに、サハラでいちばん古い墓地があった

では、緑のサハラに住んでいた人々は、どう暮らしていたのでしょう。手がかりは、西アフリカのニジェールにあります。

テネレ砂漠の西のはしに、ゴベロという場所があります。今はひどく乾いた砂漠です。ゴベロは2000年に見つかった遺跡で、湖の跡のそばから約200もの人の墓が出てきました。2008年、アメリカのセレノ(Paul Sereno)らが、その調査結果を発表しました。

墓は、2つの時代に分かれていました。前半は、紀元前7700〜6200年ごろです。人々はほぼ一か所に住み、魚をとり、動物を狩り、植物を集めて暮らしていました。紀元前7500年ごろの墓は、サハラで記録に残るいちばん古い墓地です。

人々が食べたもののごみの山からは、ナイルパーチという大きな魚や、大きなナマズの骨がたくさん出てきました。カバやワニ、スッポンの骨や歯もありました。今は砂だらけの場所に、カバがすむ湖があったのです。

約9000年前のゴベロのイメージ。今は砂漠の場所に、魚やカバのいる湖があった
約9000年前のゴベロのイメージ。今は砂漠の場所に、魚やカバのいる湖があった

03ゴベロには人がいない時期が最長1000年あり、その後は別の人々が住んだ

ところが、ゴベロには人がいない時期があります。紀元前6200〜5200年ごろです。乾燥がひどくなり、最長で1000年ほど人が住まなくなったと考えられています。

雨がもどった後、ゴベロにやって来たのは、前とは違う人々でした。体つきは、前の人々よりきゃしゃでした。彼らは貝や魚、草原の動物を食べ、少しだけ牛も飼っていました。

この後半の時代の墓の一つに、大人の女性と2人の子どもが一緒に眠っていました。子どもは推定8歳と5歳です。3人は、腕や手や脚をからめ合った姿で埋葬されていました。紀元前3300年ごろのことです。

3人の下の土からは、ケイトウの仲間の花の花粉のかたまりが見つかりました。3人の体に、暴力のあとはありません。3人はほぼ同じときに亡くなり、短い間に一緒に葬られたと考えられています。

ほかにも、カバの牙でできた腕輪をつけた子どもの墓が見つかっています。紀元前2835年ごろのものです。

04約7000年前のミイラのDNAから、これまで知られていなかった北アフリカの人々のグループが見つかった

2025年には、もう一つの手がかりが加わりました。リビア南西部のタカルコリという岩陰(岩がひさしのように張り出した場所)で見つかった、約7000年前の女性2人です。2人の体は、自然にミイラになっていました。

暑い土地では、DNAはなかなか残りません。それでも研究チームは、2人のDNAを読み取ることに成功しました。

その結果、2人の祖先の多くは、これまで知られていなかった北アフリカの系統(同じ祖先から続く人々のグループ)だと分かりました。この系統は、ずっと昔にサハラより南の人々と分かれました。そしてその後も、ほかの人々とあまりまじらずに、長く続いていました。

2人が生きていたのは、サハラが緑で、南と北が草原でつながっていた時代です。それでも、南から北へ移ってきた人は少なかったようです。さらにチームは、牛を飼う暮らし方がどう広まったかも考えました。人が大勢移り住んだのではなく、牛の飼い方だけが伝わって広まったらしい、という考えです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

地球の軸がゆっくり首をふる動きが、サハラの雨の量を変える

サハラが緑になる大もとの原因は、地球の動きにあります。地球の自転の軸は、回るコマの軸のように、ゆっくり首ふり運動をしています。これを歳差運動と言います。

この首ふりのせいで、「北半球が夏のときに、地球が太陽に近い時代」と「遠い時代」が、長い周期でくり返します。夏に太陽に近いと、北アフリカの陸地がよく温まります。すると、陸と海の温度差が大きくなります。温度差が大きいと、海から湿った風を運ぶモンスーン(季節風)が強まります。そうして、雨がサハラの北の奥まで届くのです。

2013年、スペインのララソアーニャ(Juan Larrasoaña)らは、北アフリカとその周りの、昔の気候の記録を集めました。そして、過去800万年に230回以上の「緑のサハラ期」があったと示しました。1回の緑の時期の流れは、こうです。2000〜3000年かけて始まり、4000〜8000年ほど続き、2000〜3000年かけて終わったといいます。

太陽の光の変化だけでは、緑のサハラほどの雨は降らない

ただし、首ふり運動で太陽の光の量が変わるだけでは、今の約10倍もの雨は降りません。ティアニーらによると、コンピュータで昔の気候を計算すると、たいてい、記録より少ない雨の量しか出てきません。たとえばある計算では、北緯20度付近で雨を年124ミリしか増やせませんでした。北緯24度より北では、雨をまったく増やせませんでした。

足りない分の雨を説明するのが、フィードバック(結果が原因をさらに強める仕組み)です。植物が増えると、地面の色が暗くなって、日光をよく吸います。植物から、水分も空気にもどります。そのため、さらに雨が降りやすくなります。雨で植物が増え、植物が増えるとまた雨が降る、というくり返しです。

ティアニーらが紹介した計算では、植物などがどれだけ雨を増やすかが数字で出ています。モンスーンの雨が届く北のはしは、次のように変わりました。

  • 太陽の光の変化だけのとき:約200キロ北へ動いて、北緯16度ほど
  • 植物の効果を加えたとき:北緯26度ほど
  • さらに砂ぼこりを減らしたとき:北緯31度まで

チームが比べた31の計算のうち、記録に近い雨を出せたのは、この最後の1つ(植物を加え、砂ぼこりも減らした計算)だけでした。

緑のサハラが急に終わったか、ゆっくり終わったかは、意見が分かれている

緑のサハラの終わり方には、2つの見方があります。

ティアニーらの西サハラの記録は、緑の時代が「たぶん急に終わった」ことを示していました。一方、2008年、ドイツのクレーペリン(Stefan Kröpelin)らは、チャド北部のヨア湖の泥を調べました。この6000年分の記録では、乾燥はゆっくり進みました。約4300年前から、砂ぼこりが大量に舞い上がるようになりました。今のような砂漠になったのは、約2700年前だといいます。

場所によって、終わり方が違った可能性があります。どちらの見方が正しいかは、今も研究が続いています。

約8000年前に雨が少ない時期があり、そのあとサハラで牛を飼う暮らしが広まった

ティアニーらは、緑の時代の中の約8000年前に、雨が少ない「中休み」の時期があったことも見つけました。そのころ、人々が一時的に住む場所を離れた記録があります。そして、サハラで牛を飼う暮らしが広く広まるのは、この中休みの後でした。

気候が不安定になると、動物を狩る暮らしより、牛をつれて移動できる暮らしのほうが生きのびやすかったのかもしれない。チームはそう考えています。気候の変化が、人の暮らし方を変えた例かもしれません。

05まとめ

サハラ砂漠は、約1万1000〜5000年前、今の約10倍の雨が降る草原と湖の土地でした。ニジェールのゴベロの墓地からは、カバやワニの骨、カバの牙の腕輪が見つかっています。花の花粉の上に眠る3人の墓もありました。

こうした「緑のサハラ」は、一度きりではありません。過去800万年で230回以上くり返してきたと考えられています。

今の砂漠は、長い歴史の中では「乾いている時期」にすぎないのかもしれません。230回以上くり返してきた緑の時代が、いつかまた来ることもありえます。

人に話すなら、こう言おう

サハラ砂漠って、5000年くらい前までは雨が今の10倍も降る草原だったんだって。湖のほとりにはカバやワニがいて、人の墓地まであったらしいよ。しかも緑になったのは、800万年で230回以上なんだって。
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英語で読む

When the Sahara Was Green

CEFR A2224 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

Today, the Sahara is one of the driest places on Earth.今、サハラは地球でもっとも乾いた場所の一つです。 But between about 11,000 and 5,000 years ago, it was full of grass and lakes.でも約1万1000年前から5000年前のあいだ、そこは草と湖でいっぱいでした。 Hippos and crocodiles lived in the water.水の中にはカバやワニがすんでいました。

How do scientists know this?科学者はどうやってこれを知ったのでしょうか。 Wind carries a kind of wax from plant leaves out to the ocean.風は、植物の葉についているロウのようなものを海へ運びます。 It sinks and becomes part of the mud on the ocean floor.それは沈んで、海の底の泥の一部になります。 By studying this mud, a team found that the western Sahara got about 640 millimeters of rain a year.この泥を調べて、あるチームは、西サハラには年に約640ミリの雨が降っていたことを見つけました。 That is about 10 times more than today.それは今の約10倍です。

People lived there too.そこには人も住んでいました。 In Niger, scientists found about 200 graves next to an old lake.ニジェールで、科学者たちは古い湖のそばに約200の墓を見つけました。 The people ate large fish, and their trash had bones of hippos and crocodiles.人々は大きな魚を食べていて、そのごみの中にはカバやワニの骨がありました。 In one grave, a woman and two children were buried together, holding each other.ある墓では、女性と2人の子どもが、たがいに抱き合うように一緒に埋葬されていました。 Under them, there was pollen from flowers.その下には、花の花粉がありました。

In 2025, scientists studied the DNA of two women who lived about 7,000 years ago in Libya.2025年、科学者たちは約7000年前にリビアで暮らしていた2人の女性のDNAを調べました。 Their bodies had become natural mummies.2人の体は自然にミイラになっていました。 Most of their ancestors came from a group in North Africa that nobody knew about before.2人の祖先の多くは、それまでだれも知らなかった北アフリカの集団でした。

The green Sahara was not a one-time event.緑のサハラは、一度だけのできごとではありませんでした。 The Earth slowly wobbles like a spinning top, and this changes the summer sunlight in North Africa.地球はコマのようにゆっくり首をふっていて、それが北アフリカの夏の日光を変えます。 More sunlight brings stronger rains.日光が強いと、雨も強くなります。 One study counted more than 230 green periods in the last 8 million years.ある研究は、過去800万年に230回以上の緑の時期を数えました。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How much rain did the western Sahara get each year in the green period?

    緑の時代、西サハラには毎年どのくらいの雨が降りましたか。

  3. Q3How did scientists learn about the old rain?

    科学者は昔の雨についてどうやって知りましたか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "wobbles" is closest in meaning to

    第5段落の "wobbles" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • dry形容詞
    乾いた

    The ground is dry after a week of sun.

    1週間晴れが続いて、地面は乾いている。

    💡 比較級 drier、最上級 driest。反対語は wet。

  • wax名詞
    ロウ、ワックス

    Candles are made of wax.

    ろうそくはロウでできている。

    💡 床をみがく「ワックス」も同じ語。

  • ocean floor名詞
    海底

    Many strange fish live near the ocean floor.

    海底の近くには不思議な魚がたくさんすんでいる。

    💡 floor は「床」。the sea floor とも言う。

  • grave名詞
    墓

    They put flowers on the grave.

    彼らは墓に花をそなえた。

    💡 形容詞の grave は「重大な」。同じつづりで意味がちがう。

  • bury動詞
    埋める、埋葬する

    The dog buried a bone in the yard.

    犬は庭に骨を埋めた。

    💡 発音は「ベリー」。過去分詞は buried。

  • pollen名詞
    花粉

    Bees carry pollen from flower to flower.

    ハチは花から花へ花粉を運ぶ。

    💡 花粉症は pollen allergy や hay fever と言う。

  • ancestor名詞
    祖先

    My ancestors came from a small island.

    私の祖先は小さな島から来た。

    💡 反対語は descendant(子孫)。

  • wobble動詞
    ぐらぐらゆれる、首をふる

    The table wobbles because one leg is short.

    脚が1本短いので、そのテーブルはぐらぐらする。

    💡 コマが倒れそうに首をふる様子にも使う。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 28件)。

  1. Tierney, J. E., Pausata, F. S. R. & deMenocal, P. B. (2017) Rainfall regimes of the Green Sahara, Science Advances 3doi.org
  2. Larrasoaña, J. C., Roberts, A. P. & Rohling, E. J. (2013) Dynamics of Green Sahara Periods and Their Role in Hominin Evolution, PLOS ONE 8doi.org
  3. Sereno, P. C. et al. (2008) Lakeside Cemeteries in the Sahara: 5000 Years of Holocene Population and Environmental Change, PLOS ONE 3doi.org
  4. Salem, N. et al. (2025) Ancient DNA from the Green Sahara reveals ancestral North African lineage, Nature 641doi.org
  5. Kröpelin, S. et al. (2008) Climate-Driven Ecosystem Succession in the Sahara: The Past 6000 Years, Science 320doi.org

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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