うるう秒は、近いうちになくなるかもしれない
宇宙と地球No.156

うるう秒は、近いうちになくなるかもしれない

2026年10月の国際会議で、なくす案が話し合われる。

ホントTRUE

この判定の対象「うるう秒は、2035年までにやめることが決まっている」

うなり度 読む時間7分 出典7件 確認した事実12件
もくじ
  1. うるう秒は、原子時計と地球の回転のずれを直すための1秒
  2. 1972年からの27回のうるう秒は、すべて1秒を足すものだった
  3. 地球の回転が速くなり、初めて1秒を引く必要が出てきそうになった
  4. 1秒を引くのは一度も試したことがなく、トラブルが心配されている
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

2017年1月1日、日本時間の午前8時59分59秒。普通なら、次は午前9時00分00秒です。でもこの日だけは、そのあいだに「8時59分60秒」という1秒が入りました。

この1秒が「うるう秒」です。1972年から数えて27回目のうるう秒でした。そして今のところ、これが最後のうるう秒になっています。

2022年、時間や長さ、重さなどの単位のきまりを決める国際的な会議が、うるう秒を2035年までにやめることを決めました。さらに2026年10月の会議には、2027年5月20日にうるう秒を止めるという案が出ています。やめることになったきっかけの1つは、まだ一度も行われたことのない「1秒を引く」うるう秒でした。

この記事では、まず、うるう秒が何のためにあるのかを説明します。次に、なぜ「1秒を引く」うるう秒が心配されているのかを見ます。最後に、うるう秒をやめたあと、時計と地球のずれをどうするのかを紹介します。

01うるう秒は、原子時計と地球の回転のずれを直すための1秒

いまの1秒は、地球の動きではなく、原子で決まっています。日本の標準時をつくる情報通信研究機構(NICT)によると、1967年に1秒の決め方が変わりました。セシウムという原子が出す電波の波を、決まった数だけ数えたら1秒、とする決め方です。この決め方で時を刻む原子時計は、とても正確です。

いっぽう、私たちのくらしは、太陽の動き、つまり地球が回ることとつながっています。ところが、地球の回る速さは少しずつ変わります。NICTは、その原因の1つに「潮汐摩擦」を挙げています。潮の満ち引きで海の水が動き、地球の回り方にブレーキがかかるのです。

原子時計はくるいませんが、地球の回転は少し揺らぎます。そのため、原子時計の時刻と、地球の回転で決まる時刻は、少しずつずれていきます。このずれが0.9秒をこえないように、時計に1秒を足したり引いたりする。これが、うるう秒の仕組みです。

くるわない原子時計と、少し揺らぐ地球の回転。そのずれを直すのがうるう秒
くるわない原子時計と、少し揺らぐ地球の回転。そのずれを直すのがうるう秒

021972年からの27回のうるう秒は、すべて1秒を足すものだった

NICTの一覧を見ると、最初のうるう秒は1972年7月1日です。その後、2017年1月1日まで、27回のうるう秒が入りました。日本では、どれも午前9時の直前に入っています。日本の午前9時は、世界の時刻の基準(協定世界時)では、ちょうど真夜中の0時にあたるからです。

そして27回すべてが、1秒を足すうるう秒でした。地球の回転で決まる時刻が、原子時計の時刻より少しずつ遅れていったからです。1972年のはじめには、時刻を10秒ずらす調整もしています。この10秒と27回のうるう秒をあわせて、私たちの使う時刻は、原子時計だけで刻んだ時刻より37秒遅れています。

1秒を引く「負のうるう秒」は、一度も行われたことがありません。

03地球の回転が速くなり、初めて1秒を引く必要が出てきそうになった

ここ数年、地球の回り方は速くなっていました。BIPM(国際度量衡局)の委員会の報告によると、地球が1回転する時間(1日の長さ)が、原子時計で測った1日と同じくらいまで短くなったといいます。このまま地球の回転が速くなると、初めて1秒を引く必要が出てきます。

2024年には、研究者のアグニュー(D. C. Agnew)が、科学誌ネイチャーに論文を出しました。グリーンランドと南極の氷がとけると、地球の回転は遅くなります。アグニューは、その遅くなる分を計算から取りのぞいて考えました。すると、地球の中心にある液体の核の回転が遅くなり、そのぶん核の周りの岩の部分の回転が速くなっていることが分かりました。

アグニューは、今のままなら、2029年までに1秒を引く必要があると計算しました。もし氷がこれほどとけていなければ、1秒を引く日は3年早く来ていた、とも書いています。

041秒を引くのは一度も試したことがなく、トラブルが心配されている

1秒を足すだけでも、コンピューターには大仕事です。2022年の決議には、こう書かれています。うるう秒で時刻の流れがとぎれると、人工衛星で場所を調べる仕組みや、通信、電気を送る仕組みで、大きなトラブルが起きるおそれがある。また、会社ごとにばらばらのやり方でうるう秒に対応していることも、問題として挙げています。

1秒を引くのは、さらに厄介です。一度も試されたことがないからです。2026年の決議案によると、世界の会社などは、1秒を引くことへの備えに、2000年問題のときと同じくらいのお金がかかると見積もっています。2000年問題とは、西暦2000年になるときに起きるおそれがあった、コンピューターの問題です。年を正しく扱えなくなると心配されました。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

時刻には、原子時計で決める時刻と、地球の回転で決める時刻がある

時間には、大きく分けて2つの決め方があります。1つは、原子時計で刻む時間です。世界中の原子時計の時刻を平均したものを、国際原子時(TAI)といいます。もう1つは、地球の回転で決まる時間で、世界時(UT1)と呼ばれます。

私たちがふだん使う協定世界時(UTC)は、この2つを組み合わせた時間です。時を刻む速さは、原子時計と同じです。でも、地球の回転とのずれが大きくなったら、1秒だけ調整して、地球の回転に合わせます。うるう秒は、原子時計の時間と地球の回転の時間を、つなぎ合わせるための1秒だったのです。

地球の回転の速さは、海・核・氷の動きで変わる

地球の回転の速さは、いくつもの原因で変わります。長い目で見ると、潮汐摩擦が回転にブレーキをかけています。月の引力で海がふくらみ、その海と、回転する地球がこすれ合うからです。

でも短い期間では、ほかの原因も効いてきます。アグニューの論文は、その例を2つ挙げています。

1つは、地球の中心にある液体の核です。核の回転が遅くなると、その分、周りの岩の部分の回転が速くなります。

もう1つは、北極や南極の氷です。論文は、氷がとけることで、地球の回転が遅くなっていると示しました。重いものが回転の軸から遠くへ移ると、回転は遅くなります。フィギュアスケートの選手が、腕を広げると回転が遅くなるのと同じ仕組みだと、よく説明されます。

2025年に、BIPMと地球の回転の専門家の会議が開かれました。3つのグループが別々に計算し、よく似た結果が出ました。今後10年で(2035年ごろまでに)、1秒を引くうるう秒が必要になる確率は30%、1秒を足すうるう秒は50%です。どちらになるかは、確かには予測できないのです。

ずれの上限は、1分・1時間・上限なしの3案から1時間が選ばれた

うるう秒をやめると、時計と地球の回転のずれは、少しずつたまっていきます。そのずれを、どこまで許すか。BIPMの時間の委員会は、3つの案を比べました。

  • 上限1分:UTCを約1世紀、調整なしで続けられる
  • 上限1時間:約1000年、続けられる
  • 上限なし

時刻を使う人たちの声は、「できれば、もう二度と調整したくない」でした。いっぽう、ずれの値を世界に知らせるシステムからは、上限を決めてほしいという声が出ました。ずれの値を送るとき、コンピューターで何ビット(数字の入れ物の大きさ)の数字にするかを、決めておく必要があるからです。そこで「上限なし」は外され、1時間の案が出されました。委員会は、1時間なら約1000年続けられると見積もりました。決議案はもっと控えめに、「数世紀」のあいだUTCが途切れずに続く、と書いています。

時刻の決め方は、時刻を使う人たちの事情で変わってきた

うるう秒の歴史を見ると、時刻は自然だけで決まるものではなく、人どうしの約束でもあることが分かります。地球の回転に合わせるか、原子のリズムに合わせるか。その選び方は、時刻を使う人たちの事情で変わってきました。船の航海、天文学、コンピューター、電力網などです。

かつては、天文学者や航海士にとって、地球の回転に合った時刻が大切でした。いまは、ごくわずかな時刻のずれも許されない通信網や人工衛星が、社会を支えています。案どおりに決まれば、1972年に始まったうるう秒は、約55年で役目を終えます。

05まとめ

うるう秒は、原子時計と地球の回転のずれを直すための1秒です。1972年から2017年まで27回入り、すべて1秒を「足す」ものでした。

ところが地球の回転が速くなり、初めて1秒を「引く」必要が出てきそうになりました。2022年、うるう秒は2035年までにやめると決まりました。2026年10月13〜15日の会議には、2027年5月20日からうるう秒を止め、時計と地球の回転のずれは1時間まで調整しないという案が出ています。2017年1月1日の「8時59分60秒」が、最後のうるう秒になるかもしれません。

人に話すなら、こう言おう

時計に1秒足す「うるう秒」って、2035年までにやめることになってるんだって。地球の回転が速くなって、今度は1秒「引く」必要が出そうで、それが怖いかららしいよ。
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英語で読む

The Last Leap Second?

CEFR A2229 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

On January 1, 2017, clocks in Japan showed a very strange time: 8:59:60.2017年1月1日、日本の時計はとても変わった時刻を表示しました。8時59分60秒です。 This extra second is called a leap second.この1秒のおまけは、うるう秒と呼ばれます。 It was the 27th one since 1972.それは1972年から数えて27回目でした。 It may also be the last one.そして、それが最後のうるう秒になるかもしれません。

Why do we need leap seconds?なぜうるう秒が必要なのでしょう。 Our clocks use atomic clocks, which are very accurate.私たちの時計は、とても正確な原子時計をもとにしています。 But the Earth does not turn at the same speed all the time.でも地球は、いつも同じ速さで回っているわけではありません。 So the clocks and the Earth slowly drift apart.そのため、時計と地球は少しずつずれていきます。 When the difference gets close to one second, we add or take away one second.その差が1秒に近づくと、1秒を足したり引いたりします。

All 27 leap seconds added one second.27回のうるう秒は、すべて1秒を足すものでした。 But in recent years, the Earth has been turning faster.でも近年、地球の回る速さが上がってきました。 Experts say there is a 30 percent chance that we will need to take away a second by 2035.専門家は、2035年までに1秒を引く必要が出る確率は30パーセントだと言っています。 Nobody has ever done that before.それは、これまで誰もやったことがありません。 Computers, phones, and power systems might have serious problems.コンピューターや電話、電気のしくみに、深刻なトラブルが起きるかもしれません。

In 2022, an international meeting decided to stop leap seconds by 2035.2022年、ある国際会議が、2035年までにうるう秒をやめると決めました。 In October 2026, a new plan will go to another meeting.2026年10月には、新しい案が次の会議に出されます。 The plan says to stop leap seconds on May 20, 2027.その案は、2027年5月20日にうるう秒をやめるというものです。 After that, clocks and the Earth can drift apart by up to one hour.その後は、時計と地球が最大1時間までずれてもよいことになります。

One hour sounds like a lot, but it will take several hundred years.1時間というと大きく聞こえますが、そこまでずれるには数百年かかります。 In many countries, clock time and sun time can already differ by more than an hour.それに多くの国では、時計の時刻と太陽の時刻が、すでに1時間以上ちがうことがあります。 So you will probably never notice the change.だから、あなたがその変化に気づくことは、たぶんないでしょう。 But 8:59:60 may never come back.でも、8時59分60秒は、もう二度と来ないかもしれません。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many leap seconds were there from 1972 to 2017?

    1972年から2017年までに、うるう秒は何回ありましたか。

  3. Q3Why are people worried about taking away a second?

    人々が1秒を引くことを心配しているのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 2, the word "drift" in "drift apart" is closest in meaning to

    第2段落の "drift apart" の "drift" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the new plan?

    新しい案について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • leap second名詞
    うるう秒

    A leap second was added on January 1, 2017.

    2017年1月1日にうるう秒が足された。

    💡 leap year は「うるう年」。leap は「跳ぶ」。

  • atomic clock名詞
    原子時計

    An atomic clock is very accurate.

    原子時計はとても正確だ。

    💡 atom(原子)の形容詞が atomic。

  • accurate形容詞
    正確な

    Is this watch accurate?

    この腕時計は正確ですか。

    💡 名詞は accuracy(正確さ)。反対は inaccurate。

  • drift動詞
    ただよう、少しずつ離れる

    The boat drifted away from the beach.

    ボートは浜辺から流されていった。

    💡 drift apart で「だんだん離れる」。人間関係にも使う。

  • difference名詞
    差、ちがい

    What is the difference between these two?

    この2つのちがいは何ですか。

    💡 形容詞は different。

  • chance名詞
    可能性、見込み

    There is a good chance of rain today.

    今日は雨が降る見込みが高い。

    💡 「機会」の意味もある。a 30 percent chance で「30%の確率」。

  • international形容詞
    国際的な

    She works for an international company.

    彼女は国際的な会社で働いている。

    💡 inter(〜の間)+ national(国の)。

  • notice動詞
    気づく

    I did not notice the mistake.

    私はその間違いに気づかなかった。

    💡 notice that 〜 で「〜に気づく」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 12件)。

  1. 国際原子時・協定世界時とうるう秒(情報通信研究機構 日本標準時グループ)jjy.nict.go.jp
  2. うるう秒実施日一覧(情報通信研究機構)jjy.nict.go.jp
  3. Resolution 4 of the 27th CGPM (2022) On the use and future development of UTC(国際度量衡局 BIPM)bipm.org
  4. 28th meeting of the CGPM (2026)(国際度量衡局 BIPM)bipm.org
  5. Draft Resolutions for the 28th meeting of the CGPM, Version 5(BIPM、2026年7月)bipm.org
  6. Report from the CCTF on Draft Resolution C(BIPM、2026年7月)bipm.org
  7. Agnew, D. C. (2024) A global timekeeping problem postponed by global warming, Nature 628doi.org

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