
太陽の光は、何年前に太陽の中心で生まれたのか
答えは、本によって大きく違う。
この判定の対象「太陽の光は、中心で生まれてから表面に出るまで約17万年かかる」
もくじ
朝、窓から日の光がさしこみます。この日の光が太陽の表面を出たのは、約8分前です。
では、日の光のもとになったエネルギーが、太陽の中心で生まれたのは、いつでしょう。NASAの太陽の解説によると、そのエネルギーが中心から表面に出てくるまでに「約17万年」かかります。ところが、ほかの解説や本を開くと「1万年」「1000万年」「5000万年」と、答えがばらばらです。
同じ太陽の話なのに、なぜ数字がこんなに違うのでしょうか。この記事では、まず、太陽の中で光が外へ出るのに、なぜ長い時間がかかるのかを説明します。次に、本によって数字が違う理由を、計算の仕方から見ていきます。最後に、古い教科書の数字が、ほかの本に写されて広まった話を紹介します。
01太陽の光は、まっすぐ進めば中心から表面まで2秒ちょっとなのに、実際は何万年もかかる
太陽の半径は約70万キロメートルです。光は1秒間に約30万キロメートル進みます。もし光が中心からまっすぐ外に進めたら、表面まで2秒ちょっとで着く計算です。
でも、実際の光は、まっすぐには進めません。NASAの解説によると、太陽の光は、中心でガンマ線という強い光として生まれます。そして、太陽の中で何十億回もぶつかったあとで、やっと表面に出てきます。
太陽の中は、ものすごく混み合っています。中心の温度は約1500万度です。1立方センチ(1辺1センチのさいころの大きさ)あたりの重さは約150グラムで、金の約8倍もあります。光はほんの少し進んだだけで、電気を帯びた粒にぶつかってしまいます。ぶつかるたびに、光はでたらめな向きに進み直します。
02太陽の中の光は、ぶつかるたびに向きを変え、ふらふらと少しずつ外へ進む
でたらめな向きに1歩ずつ進む動きを、ランダムウォークといいます。酔っぱらった人のふらふらした歩き方(千鳥足)に、たとえられることもあります。
NASAの解説は、ランダムウォークでどれだけ進めるかを、こう説明しています。でたらめな向きに、1メートルずつ進むとします。すると、100歩で、スタートからやっと10メートル離れます。1万歩で100メートル、100万歩で約1キロメートルです。歩く数を100倍にしても、スタートからの距離は10倍にしかなりません。
太陽の中の光も、このランダムウォークで外へ向かいます。しかも、光の1歩はとても短いのです。NASAによると、光が粒にぶつかるまでに進める距離は、中心で約0.01センチ、表面の近くで約0.3センチです。光は、何十万キロメートルもの道のりを、数ミリ以下の歩幅でふらふら進みます。だから、何万年もかかるのです。

03光が1回ぶつかるまでに進む距離をどう決めるかで、かかる年数の答えが大きく変わる
では、なぜ本によって答えが違うのでしょうか。いちばん大きな理由は、光の「1歩の長さ」を、計算でいくつにするかです。
NASAの解説によると、手軽な計算では、太陽の中はどこも同じつまり方(密度)だと考えます。そして、1歩を約1センチとすることが多いといいます。NASAの解説は、この手軽な計算の答えが、天文学の入門書の多くに入りこんでしまった、と書いています。
イタリアのフェラーラ大学のフィオレンティーニ(G. Fiorentini)とリッチ(B. Ricci)は、1997年に短い論文を発表しました。2人は、太陽の中の温度やつまり方を再現した計算用の模型(モデル)を使って、時間を計算しました。答えは約4万年でした。そして2人は、こう指摘しています。
- 中心での1歩の長さ(2人の計算では約50マイクロメートル=0.005センチ)を太陽の中全体に使うと、答えは10倍ほど長すぎる。
- よく使われる1センチを使うと、答えは10倍ほど短すぎる。
太陽の中は、外へ行くほど、つまり方(密度)が下がります。そのため、2人の計算では、光の1歩の長さは、外側へ向かうにつれて20倍ほどに伸びます。1歩の長さが場所によって変わることを、計算に入れるかどうか。それによって、答えがまるで違ってくるのです。
04本に出てくる「何千万年」は、太陽についての別の時間と取り違えたものかもしれない
NASAの解説によると、教科書には「10万年から5000万年」という幅の数字も見られます。何千万年という数字は、どこから来たのでしょうか。
フィオレンティーニとリッチの論文に、手がかりがあります。2人は、光が外に出るまでの時間とは別の、もう1つの時間を紹介しています。
太陽の中心では、核融合(水素がくっついてエネルギーを出す反応)が起きています。もし核融合が急に止まっても、太陽はすぐには暗くなりません。ため込んだ熱と、重力のエネルギー(太陽が自分の重さで少しずつ縮むときに出るエネルギー)を使って、しばらく今の明るさで光り続けます。その時間が約3000万年です。むかし、物理学者のヘルムホルツとケルビンが考えた時間です。
「光が中心から外に出るまでの時間」と、「核融合が止まっても光り続けられる時間」は、まったく別のものです。この記事では、「何千万年」という数字は、2つの時間が混ざって伝わったものかもしれない、と考えておきます。ただし、これを確かめられる資料はなく、推測です。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
でたらめな向きに歩くと、遠くへ行くほど必要な歩数が急に増える
ランダムウォークでは、進みたい距離が2倍になると、必要な歩数は4倍になります。進みたい距離が10倍なら、歩数は100倍です。このように、歩数は「距離×距離」(距離の2乗)に比例して増えます。
そのため、1歩の長さが変わると、かかる時間は大きく変わります。たとえば、1歩の長さが10分の1になったとします。すると、同じ距離でも「何歩分の距離か」は10倍になります。距離が10倍なら歩数は100倍なので、必要な歩数は100倍になります。一方、1歩が短くなるので、1歩にかかる時間は10分の1です。100倍の歩数に10分の1の時間をかけると、全体の時間は10倍になります。
フィオレンティーニらは、「1センチでは10倍短すぎ、50マイクロメートルでは10倍長すぎ」と書いていました。この10倍のずれは、いま説明した関係から生まれます。
太陽の中は、場所によって1歩の長さが違います。そこで研究者は、玉ねぎの皮のように、太陽を何層もの薄い層に分けて考えます。それぞれの層で何歩かかるかを計算し、最後に全部を足し合わせます。NASAの解説も、この方法を紹介しています。
太陽の中には、光がエネルギーを運ぶ層と、ガスの流れが運ぶ層がある
- 放射層:太陽の中心核の外側の層。エネルギーは光のやりとりで、少しずつ外へ運ばれる
- 対流層:放射層のさらに外側。熱いガスが、わき上がる泡のように動いてエネルギーを運ぶ
- 平均自由行程:粒が、ほかの粒にぶつかるまでに進む平均の距離。この記事の「1歩の長さ」
フィオレンティーニらによると、かかる時間のほとんどは、放射層を通るあいだに使われます。その区間は、エネルギーが作られる所(中心から、太陽の半径の約2割の所)から、対流層の底(約7割の所)までです。対流層に入ると、ガスの流れがエネルギーを運ぶので、旅はずっと速くなります。
教科書にのる「何年かかるか」の数字は、古い本から写されてきた
NASAのSun-Earth Dayの解説は、本によって数字がばらばらな理由を、はっきり書いています。この問いは、科学者にとってそれほど重要ではなかった。だから、誰も正確に計算しようとしなかった。そのため、教科書を書く人や編集する人は、自分で計算せず、ほかの本の古い答えを写してきた、というのです。
古い数字が写され続けることは、雑学の数字にもよくあります。最初にその数字を出した人が、どんな条件で計算したのかが忘れられ、数字だけが広まってしまうのです。数字を見たら、「誰が、どんな条件で計算したのか」をたどることが大切です。
太陽の中心からすぐ届く小さな粒を使って、いまの中心の様子を調べた実験
太陽の中心を、直接のぞくことはできません。でも、中心からまっすぐ地球に届く粒があります。ニュートリノという、ほかのものとほとんどぶつからない粒です。
いくつもの国の研究者が参加する「ボレクシーノ実験」は、2014年に、科学誌ネイチャーで発表をしました。太陽の中心で水素がくっつく反応から出るニュートリノを、とらえたという発表です。この実験では、太陽のエネルギーの約99%が、水素がくっつく反応から生まれていることも確かめています。
ニュートリノは、中心からすぐに届くので、「いま」の中心の様子を伝えます。一方、光は、何万年も前に中心で生まれたエネルギーを伝えます。実験でとらえたニュートリノの量は、いまの太陽の明るさから予想される量と合っていました。このことから論文は、太陽が過去10万年ほど、安定して光ってきたと結論しています。
ただし、ボレクシーノ実験の研究者の中でも、中心から表面までの時間の数字には幅があります。同じ共同研究のメンバーが2015年に出した発表では、この時間を「4万年」とし、フィオレンティーニらの論文を引用しています。第一線の研究者どうしでも、中心から表面までの時間は、1つの数字に決まっていないのです。
05まとめ
太陽の光は、表面から地球までは約8分で届きます。でも、そのエネルギーが太陽の中心から表面に出てくるまでには、何万年もかかります。太陽の中では、光が粒にぶつかるたびに向きを変え、ふらふらと少しずつしか進めないからです。
中心から表面までの年数は、本によって1万年から5000万年までばらばらです。NASAは、きちんと計算するとおよそ1万〜17万年になるとしています。明日の朝の日光は、何万年も前に太陽の中心を出発したエネルギーなのです。
人に話すなら、こう言おう
太陽の光って、地球まではたった8分なのに、太陽の中心から表面に出るまでは何万年もかかるんだって。しかも本によって1万年とか5000万年とか、答えがばらばららしいよ。
英語で読む
How Old Is Sunlight?
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
The sunlight on your face left the surface of the Sun about 8 minutes ago.あなたの顔に当たる日光は、約8分前に太陽の表面を出発しました。 But its energy started much deeper, in the center of the Sun.でも、そのエネルギーはもっと深い、太陽の中心で生まれました。 How long did it take to get out?外に出るまで、どのくらいかかったのでしょう。 Some sources say 10,000 years, and some books say 50 million years.1万年とする解説もあれば、5000万年と書く本もあります。
If light could go straight, it would reach the surface in just over 2 seconds.もし光がまっすぐ進めたら、2秒ちょっとで表面に着くでしょう。 But the inside of the Sun is very crowded.でも太陽の中は、とても混み合っています。 Light hits tiny particles again and again.光は小さな粒に何度も何度もぶつかります。 Each time, it goes off in a random direction, like a person who is lost.そのたびに光は、道に迷った人のように、でたらめな方向へ進みます。 Scientists call this a random walk.科学者はこれをランダムウォークと呼びます。
In a random walk, 100 steps of one meter take you only about 10 meters away.ランダムウォークでは、1メートルの歩幅で100歩歩いても、約10メートルしか離れません。 One million steps take you only about one kilometer.100万歩でも、約1キロメートルしか進みません。 Near the center, each step is only about 0.1 millimeters.太陽の中心の近くでは、1歩はわずか約0.1ミリです。 So the trip takes a very long time.だから、旅にはとても長い時間がかかります。
Why do books give different answers?なぜ本によって答えがちがうのでしょう。 The answer depends on the length of each step.答えは、1歩の長さによって変わるのです。 Many simple guesses use one centimeter for every step.手軽な見積もりの多くは、どの1歩も1センチとしています。 But steps are shorter near the center and longer near the surface.でも1歩は、中心の近くでは短く、表面の近くでは長くなります。 Two Italian scientists used a better model and got about 40,000 years.イタリアの2人の科学者は、よりよい模型を使って、約4万年という答えを出しました。 NASA says most careful answers are between 10,000 and 170,000 years.NASAは、ていねいな計算の答えの多くは1万年から17万年の間だと言っています。
Answers of millions of years are probably mistakes.何百万年という答えは、たぶんまちがいです。 Some writers copied old numbers from other books.ほかの本から古い数字を写した書き手もいたのです。 So sunlight's energy began its trip tens of thousands of years ago.つまり日光のエネルギーは、何万年も前に旅を始めたのです。
4択問題 Reading Quiz
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Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:C How long sunlight takes to leave the Sun
第1段落で外に出るまでの時間を問い、第2〜5段落でその理由と答えのちがいを説明しているのでC。A・Dは本文に出てきません。
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Q2How long does sunlight take to travel from the surface of the Sun to us?
太陽の光が太陽の表面から私たちのところまで来るのに、どのくらいかかりますか。
正解:B About 8 minutes
第1段落1文目に「about 8 minutes ago」とあるのでB。Aはまっすぐ進めた場合に中心から表面までかかる時間、Cは中心から外に出るまでの計算の1つです。
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Q3Why does light take so long to get out of the Sun?
光が太陽から出るのにとても長くかかるのはなぜですか。
正解:A It keeps hitting particles and changing direction.
第2段落3〜4文目に、光は小さな粒に何度もぶつかり、そのたびにでたらめな方向へ進むとあるのでA。B・C・Dは本文に書かれていません。
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Q4In paragraph 2, the word "crowded" is closest in meaning to
第2段落の "crowded" に最も意味が近いのはどれですか。
正解:D full of many things
直後の文で、光が小さな粒に何度もぶつかるとあるので、crowded は「混み合った、いっぱいの」。正解はD。Aは反対の意味です。
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Q5Which is true according to the story?
本文によると、正しいものはどれですか。
正解:B The length of each step changes the answer.
第4段落2文目に「The answer depends on the length of each step」とあるのでB。Aは第1段落、Cは第2段落、Dは第4段落6文目(NASAは1万〜17万年)と合いません。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
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surface名詞表面
The surface of the lake was calm.
湖の水面はおだやかだった。
💡 sur(上)+ face(顔)。
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energy名詞エネルギー
The Sun gives us light and energy.
太陽は私たちに光とエネルギーをくれる。
💡 発音は「エナジー」に近い。
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crowded形容詞混み合った
The train was very crowded this morning.
今朝の電車はとても混んでいた。
💡 crowd(群衆)から。be crowded with 〜 で「〜で混んでいる」。
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particle名詞粒、粒子
Tiny particles of dust floated in the air.
小さなちりの粒が空中にただよっていた。
💡 part(部分)と同じ語源。
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random形容詞でたらめな、無作為の
The computer chose a random number.
コンピューターはでたらめな数を選んだ。
💡 at random で「でたらめに、手当たりしだいに」。
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direction名詞方向
The bird flew in the wrong direction.
その鳥はちがう方向へ飛んでいった。
💡 in a ... direction と前置詞 in を使う。
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depend on動詞句〜による、〜しだいである
Our plan depends on the weather.
私たちの計画は天気しだいだ。
💡 It depends. だけで「場合による」。
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mistake名詞まちがい
I made a mistake on the test.
テストでまちがいをした。
💡 make a mistake で「まちがえる」。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 9件)。
- Sun: Facts(NASA Science)science.nasa.gov
- Sun-Earth Day 2007, Technology Through Time #50: Ancient Sunlight(NASA、Wayback Machine 保存)web.archive.org
- Fiorentini, G. & Ricci, B. (1999) How long does it take for heat to flow through the sun?, Comments on Modern Physics E1(arXiv)arxiv.org
- Borexino Collaboration (2014) Neutrinos from the primary proton-proton fusion process in the Sun, Nature 512doi.org
- Smirnov, O. Y. et al. (2015) Measurement of neutrino flux from the primary proton-proton fusion process in the Sun with Borexino detector(arXiv)arxiv.org
公式ページで見てみよう
- NASA「太陽について」science.nasa.gov
文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。
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No.024グレーGRAY金星は、1回自転するのにかかる時間が1年より長い
ただし日の出から次の日の出までは、1年より短い。
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月に置いた鏡にレーザーを当てて測っている。
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月の砂は、地球ではにおわなくなった。
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