プチプチは、もともと立体的な壁紙として作られた
失敗から生まれたNo.055

プチプチは、もともと立体的な壁紙として作られた

壁紙を作ろうとして、梱包材になった。

うなり度 読む時間7分 出典6件 確認した事実21件
もくじ
  1. 泡のシートは、壁紙としても温室の保温材としても失敗した
  2. 泡のシートは、IBMのコンピューターを運ぶ包装材として広まった
  3. 泡のシートの特許には、使い道として包装やクッションが書かれ、壁紙はなかった
  4. 泡のシートが広まっても、シールドエア社はしばらくもうからなかった
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

1957年、アメリカのニュージャージー州ホーソーン。二人の男が、ガレージでビニールのシートを使って実験をしていました。一人は技術者のアルフレッド・フィールディング(Alfred Fielding)。もう一人は、スイス出身の化学者マーク・シャヴァンヌ(Marc Chavannes)です。

二人が作ろうとしていたのは、手で触るとデコボコした、新しい壁紙でした。スミソニアン誌によると、当時の若者文化「ビート世代」に受けるような物をねらっていたそうです。

二人は、ビニールのシャワーカーテンを2枚重ねて、熱で貼り合わせる機械に通しました。出てきたのは、空気の泡がたくさん閉じこめられたシートでした。ねらっていた壁紙とは違う物ができて、最初、二人はがっかりしました。これが、今では世界中で荷物を守っている気泡緩衝材の始まりです。日本では「プチプチ」(プチプチ株式会社の登録商標)の名で知られています。

この記事では、まず泡のシートが壁紙や温室で失敗した話を紹介します。次に、IBMのコンピューターを運ぶ包装材として広まったいきさつを見ます。最後に、特許の中身と、会社がもうかるまでをたどります。

01泡のシートは、壁紙としても温室の保温材としても失敗した

二人は、この失敗作をすぐには捨てませんでした。使い道を、なんと400以上も考えたといいます。

その中で、実際に試されたのが温室です。空気の泡で、温室の中を暖かく保とうとしたのです。けれど、スミソニアン誌によると、温室で試した結果はうまくいきませんでした。壁紙と同じく、温室の保温も失敗に終わりました。

それでも二人は、1960年にシールドエア社という会社を作ります。この泡のシートを、商品として育てるためでした。

02泡のシートは、IBMのコンピューターを運ぶ包装材として広まった

流れが変わったのは、翌年の1961年です。二人は、この泡のシートを「包装材」として売ることに決めたのです。

ちょうどそのころ、IBMは新しいコンピューター「1401」を出したばかりでした。IBMの歴史のページによると、1401が発表されたのは1959年10月5日です。最初の5週間で、5,200台をこえる注文が来ました。1960年代半ばには1万台以上が使われ、世界のコンピューターの半分以上を占めたといいます。IBMは、この機械を「コンピューター界のT型フォード」と呼んでいます。T型フォードは、たくさん売れて世の中に広まった自動車です。

壊れやすい精密な機械を、どうやって無事に運ぶか。IBMはその方法を探していました。泡のシートは、この悩みにぴったりでした。シールドエア社の幹部は、泡のシートがIBMの悩みを解決した、と話しています。IBMがコンピューターを無事に運べたことで、ほかの多くの会社も使い始めた、というのが会社の説明です。

それまで、物を運ぶときは、丸めた新聞紙でくるむのが普通でした。でも、新聞のインクが品物や手についてしまいます。守る力もあまり強くありませんでした。泡のシートなら、よごれず、しかも空気がしっかり衝撃を受け止めます。

壊れやすいコンピューターを運ぶ包装として、泡のシートは使い道を見つけた。
壊れやすいコンピューターを運ぶ包装として、泡のシートは使い道を見つけた。

03泡のシートの特許には、使い道として包装やクッションが書かれ、壁紙はなかった

シャヴァンヌは1959年11月27日、泡のシートの作り方の特許を出しました。認められたのは1964年7月28日です。発明者の欄には、シャヴァンヌの名前だけがあります。

この特許に書かれた使い道は、品物の包装、家具や車・トラックのクッション、そして断熱などでした。もう壁紙の話はありません。

では、なぜ二人は最初に壁紙を作ろうとしたのでしょうか。手がかりは、もっと前の特許にあります。シャヴァンヌは1952年にも、ビニールのフィルムに模様を型押しする機械の特許を出していました。目的は、見た目のよい、くっきりした模様を、速く安く作ることです。シャヴァンヌは、もともと「飾るためのフィルム」を作る技術を持っていたのです。この技術と、最初に壁紙をねらったことは、つながっているように見えます。

04泡のシートが広まっても、シールドエア社はしばらくもうからなかった

泡のシートは広まりましたが、シールドエア社はしばらく利益が出ませんでした。1971年、ダーモット・ダンフィー(Dermot Dunphy)が社長になります。この年、シールドエア社の1年間の売上は500万ドルでした。ダンフィーはそれを、2000年には30億ドルにまで育てました。

ダンフィーは、二人の発明者をこう評しています。シャヴァンヌは先を見通す人、フィールディングは一流の技術者だった。でも、二人とも会社の経営はやりたがらなかった。発明したかっただけなのだ、と。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

泡のシートは、空気と泡の形の2つで衝撃を和らげる

1964年の特許は、泡のシートのしくみを二つの言葉で説明しています。一つは「空気のクッション」です。閉じこめた空気が、押されると縮んで、衝撃を和らげます。もう一つは「形のクッション」です。泡の一つ一つの形そのものが、ばねのように力を受け止めます。

作り方にも工夫があります。特許に書かれた作り方では、接着剤を使いません。熱で2枚のシートを溶かし、一枚のようにくっつけます。こうすると、空気がもれないように、すき間なく閉じられます。まず片方のシートに小さなでっぱりをたくさん作り、そこにもう一枚でふたをして、空気を閉じこめます。特許には、シートの間に燃えにくくする粉や、湿気を取る粉を入れられる、とも書かれています。

包装に使えると気づいたのが何年かは、資料によって違う

泡のシートを包装に使えると気づいた年は、資料によってずれます。スミソニアン誌は、会社を作った1960年の「翌年」に、包装材として使うと決めたと書きます。一方、ニュージャージー州知事公邸の財団の紹介ページは、1957年に「郵便で送る物を守るのに使える」と気づいた、としています。

どちらが正しいかは、今回開いた資料だけでは決められません。ただ、1959年に出した特許には、すでに「品物の包装」が使い道として書かれています。つまり、おそくとも1959年11月には、二人は包装に使うことを考えていたことになります。特許のような日付の入った書類を手がかりにすると、資料ごとにばらばらな年を、ある程度しぼりこめます。

二人の特許の多くは、泡のシートより、それを作る機械についてのものだった

スミソニアン誌によると、二人がとった泡のシートの特許は全部で6つです。その多くは、シートを型押しして貼り合わせる「作り方」と「機械」についてのものでした。泡の入ったシートという形そのものより、それを速く、安く、たくさん作る方法に価値があったのです。

作り方の工夫で新しい商品を作る考え方は、今の製品にもつながっています。シールドエア社は、空気を入れないまま巻いたフィルムも売っています。使う場所で機械が空気を入れるので、運ぶときにかさばりません。一方、シールドエア社は、泡のシートでプールのふたを作ったこともあります。太陽の熱をためて水を温める物で、こちらは泡がつぶれない作りでした。プールのふたの事業は、のちにほかの会社へ売られました。同じ「泡」でも、作り方と使い道しだいで、まったく別の商品になるのです。

泡のシートは、ねらっていなかった使い道で成功した

泡のシートは、作った人がねらった使い道(壁紙)では失敗し、ねらっていなかった使い道(包装)で成功しました。さらにその成功は、コンピューターという、まったく別の新しい産業の成長に支えられていました。新しい技術が広まるとき、別の新しい技術が広まったことに助けられることは、よくあります。

日本でも、1963年に川上研究所が気泡緩衝材の開発を始めました。「プチプチ」の名前は1994年に商標登録され、会社は2026年10月1日に社名そのものを「プチプチ株式会社」に変えました。荷物を守るための道具が、つぶす楽しさでも愛されるようになりました。そのことが、社名にまで表れています。

05まとめ

気泡緩衝材は1957年、手ざわりのある壁紙を作ろうとした二人の失敗から生まれました。温室の保温でも失敗し、1960年に会社を作ってからも、なかなか使い道が定まりませんでした。広まるきっかけは、包装材として売ると決めたことと、IBMのコンピューター1401を運ぶのに使われたことでした。

荷物の中のプチプチをつぶすとき、思い出してみてください。その泡は、もともとは家の壁を飾る壁紙になるはずだった物なのです。

人に話すなら、こう言おう

プチプチって、もともとはデコボコのおしゃれな壁紙を作ろうとして失敗した物なんだって。温室でも失敗して、包装材にしてIBMのコンピューターを運ぶのに使われたのが、広まるきっかけだったらしいよ。
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英語で読む

The Wallpaper That Became Bubble Wrap

CEFR A2215 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In 1957, two men were working in a garage in New Jersey.1957年、二人の男性がニュージャージー州のガレージで作業をしていました。 Their names were Alfred Fielding and Marc Chavannes.二人の名前は、アルフレッド・フィールディングとマーク・シャヴァンヌでした。 They wanted to make a new kind of wallpaper with a bumpy surface.彼らは、表面がデコボコした新しい種類の壁紙を作りたいと思っていました。

They put two plastic shower curtains through a hot machine.彼らは、2枚のビニールのシャワーカーテンを熱い機械に通しました。 The machine sealed them together, and air was trapped between them.機械はそれらを貼り合わせ、間に空気が閉じこめられました。 The result was a sheet full of small air bubbles.できあがったのは、小さな空気の泡がいっぱいのシートでした。 At first, the two men were disappointed.最初、二人はがっかりしました。

But they did not throw it away.でも、彼らはそれを捨てませんでした。 They thought of more than 400 ways to use it.彼らは、それを使う方法を400以上考えました。 They tried it in greenhouses to keep plants warm, but it did not work well.植物を暖かく保つために温室で試しましたが、うまくいきませんでした。 In 1960, they started a company called Sealed Air.1960年、彼らはシールドエアという会社を始めました。

The next year, they decided to sell the sheet for packing things.翌年、彼らはそのシートを、物を包むために売ることに決めました。 At that time, IBM had a new computer called the 1401.そのころ、IBMには1401という新しいコンピューターがありました。 It was delicate, which means it could break easily.それは繊細で、つまり、こわれやすいものでした。 IBM needed a safe way to ship it, and the bubble sheet was the answer.IBMはそれを安全に運ぶ方法を必要としていて、泡のシートがその答えになりました。 Before that, people usually used old newspapers, and the ink got on everything.それまでは、人々はふつう古新聞を使っていて、インクがあらゆる物についてしまいました。

Today, bubble wrap protects packages all over the world.今では、気泡シートは世界中で荷物を守っています。 And many people love to pop the bubbles with their fingers.そして、たくさんの人が指で泡をつぶすのが大好きです。 Fielding's son popped the bubbles when he was about five years old.フィールディングの息子は、5歳ごろに泡をつぶしました。 He says he was probably the first child to do it.彼は、たぶん自分がそれをした最初の子どもだと言っています。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2When did the two men start the company Sealed Air?

    二人がシールドエア社を始めたのはいつですか。

  3. Q3Why did IBM need the bubble sheet?

    IBMはなぜ泡のシートを必要としたのですか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "delicate" is closest in meaning to ...

    第4段落の delicate という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • wallpaper名詞
    壁紙

    We chose blue wallpaper for my room.

    私の部屋には青い壁紙を選んだ。

    💡 wall(壁)+ paper(紙)。パソコンの背景画像の意味もある。

  • surface名詞
    表面

    The surface of the table is smooth.

    テーブルの表面はなめらかだ。

    💡 sur-(上)+ face(顔)。発音は「サーフィス」。

  • trap動詞
    閉じこめる、わなにかける

    The snow trapped us in the house.

    雪のせいで、私たちは家に閉じこめられた。

    💡 名詞では「わな」。be trapped で「閉じこめられる」。

  • disappointed形容詞
    がっかりした

    I was disappointed with my test score.

    テストの点にがっかりした。

    💡 disappoint(がっかりさせる)の過去分詞。人が主語のときは -ed の形。

  • greenhouse名詞
    温室

    My grandfather grows tomatoes in a greenhouse.

    祖父は温室でトマトを育てている。

    💡 greenhouse gas で「温室効果ガス」。

  • delicate形容詞
    繊細な、こわれやすい

    Be careful with that delicate glass.

    その繊細なグラスに気をつけて。

    💡 物について「こわれやすい」、人について「繊細な」。

  • ship動詞
    発送する、運ぶ

    The store will ship the shoes tomorrow.

    その店は明日くつを発送する。

    💡 名詞では「船」。動詞では船に限らず「発送する」の意味で使う。

  • package名詞
    荷物、小包

    A package arrived for you this morning.

    今朝、あなたに荷物が届いた。

    💡 pack(包む)+ -age。packing は「包むこと、包装」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 21件)。

  1. Kindy, D. (2019) The Accidental Invention of Bubble Wrap, Smithsonian Magazinesmithsonianmag.com
  2. Chavannes, M. A. US Patent 3,142,599 "Method for making laminated cushioning material"(1964)patents.google.com
  3. Chavannes, M. A. US Patent 2,776,451 "Apparatus and method for producing embossed thermoplastic film"(1957)patents.google.com
  4. The IBM 1401(IBM Heritage)ibm.com
  5. Alfred Fielding and Marc Chavannes, Bubble Wrap(Drumthwacket Foundation, New Jersey)drumthwacket.org
  6. 沿革(プチプチ株式会社)putiputi.co.jp

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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