人は、朝のほうが夜より背が高い
体と食べ物No.133

人は、朝のほうが夜より背が高い

夜までに、平均で約2cm縮む。

ホントTRUE

この判定の対象「人は、朝のほうが夜より背が高い」

うなり度 読む時間9分 出典8件 確認した事実26件
もくじ
  1. ワッセは、くぎを打った高さで、自分の背が縮むことを確かめた
  2. 1984年に精密に測ると、朝と夜の身長の差は平均19.3mmだった
  3. 昼のあいだに縮むのは、背骨の骨のあいだにある椎間板
  4. 子どもの身長は午後に測るほうがよい、という研究がある
  5. がんの放射線治療でも、朝と午後の背骨の長さの差が問題になる
  6. 深掘り講義
  7. まとめ
  8. 英語で読む(A2・4択5問)
  9. 出典・ウラ取り

300年ほど前のイギリスで、1人の牧師が気になる場面を見ました。兵士たちが、軍から追い出されていたのです。理由は、決められた身長に「少しだけ」足りないことでした。

牧師の名前はワッセ(Wasse)。イングランドのノーサンプトンシャー州、エインホーの教会の牧師でした。ワッセは、人の背の高さが朝と夜で違うことを知っていました。そこで、そのことを軍の将校に話しました。おかげで、何人かの兵士は軍を追い出されずにすんだといいます。

この話は、ワッセが医師にあてた手紙に書かれています。手紙は1724年、イギリスの王立協会の雑誌にのりました。人は、朝のほうが夜より背が高い。300年前の牧師が、すでにそれを確かめていたのです。

この記事では、まずワッセが自分の体でどう確かめたかを紹介します。次に、今の研究で測った朝と夜の差と、背が縮む原因を見ます。最後に、子どもの身長測定や、がんの放射線治療でこの差が問題になる話をします。

01ワッセは、くぎを打った高さで、自分の背が縮むことを確かめた

ワッセは、まわりの人の背の高さをたくさん測りました。座って仕事をする人も、体を使って働く日雇いの労働者もいました。年齢や体つきも、いろいろでした。朝と夜の差は、1インチ(約2.5cm)近くあったといいます。

ワッセは、自分の体でも実験しました。まず、座った姿勢で、頭がぎりぎり触れる高さに、鉄のくぎを打ちます。それから30分、庭の地ならし用のローラーを押して、体を疲れさせました。すると、さっきまで届いていたくぎに、頭が届かなくなりました。

ワッセ自身は、机で5〜6時間勉強するだけでも、1インチ近く縮みました。一方、体を使って働く人は、朝の背の高さから縮むのがゆっくりで、全体の縮み方も少なめでした。一度縮むと、その日のうちは、休んでも、冷たい水をあびても戻りませんでした。

ワッセは、自分の馬の背の高さも、20マイル(約32km)乗る前と後で測りました。馬では、まったく差が分かりませんでした。

そして、ワッセは原因をこう考えました。背骨の骨と骨のあいだにある軟骨が、立っているあいだに、体の重みでへこむのだろう。雑誌の編集者は、王立協会の会員たちもわざわざ試して確かめた、という注をつけています。

021984年に精密に測ると、朝と夜の身長の差は平均19.3mmだった

1984年は、ワッセの手紙から約260年後です。この年、イギリスのリバプールの研究者リリー(Thomas Reilly)らが、朝と夜の身長の差を精密に測りました。

調べたのは、大人の男性8人です。24時間のあいだに9回、身長を測りました。測定には、まっすぐから5度だけ傾けた、専用の金属の枠を使いました。目もりは、0.01mmまで読み取りました。頭の向きをそろえるため、細いすき間のあいためがねと、鏡まで用意しました。

その結果、1日のうちで身長がいちばん高いときと、いちばん低いときの差は、平均19.3mmでした。これは、身長の1.1%にあたります。いちばん高かったのは、起きた直後の朝7時30分です。いちばん低かったのは、寝る前の夜12時でした。

縮み方には、はっきりした特徴がありました。1日に縮む分の半分以上は、起きてから1時間以内に縮んでいました。3時間以内には、80%が縮んでいました。そのあとは、縮み方がゆっくりになります。寝ているあいだは、反対に背がのびて元に戻ります。夜に戻る分のうち71%は、眠りの前半で戻っていました。

朝は、椎間板が水をふくんでふっくらしている。昼のあいだに水が出ていき、背骨が少し短くなる。
朝は、椎間板が水をふくんでふっくらしている。昼のあいだに水が出ていき、背骨が少し短くなる。

03昼のあいだに縮むのは、背骨の骨のあいだにある椎間板

背骨は、24個ほどの骨が積み重なってできています。骨と骨のあいだには、椎間板というクッションがはさまっています。ワッセが「軟骨」と考えたのは、この椎間板のことです。

1994年、カナダのトロントの研究者たちが、男性8人の腰の椎間板を、体の中を写す装置(MRI)で、立体的に測りました。6時間横になったあとと、4時間立って3時間座ったあとを比べたのです。すると、動いたあとの椎間板は、体積が2割ほど減っていました。研究者たちは、これをふだんの1日に置きかえて計算しました。すると、腰のいちばん下の3つの椎間板では、1日で平均およそ16%減ると見積もられました。椎間板は、横にふくらんで低くなったのではありません。中身そのものが減っていたのです。

減ったのは、水分です。昼のあいだは、重力や体の動きで椎間板に圧力がかかり、水分が押し出されます。夜に横になると圧力がなくなり、椎間板は水を吸いもどします。スポンジを押すと水が出て、手をはなすと水を吸うのと似ています。

荷物を持つと、背の縮み方は速くなります。1985年の研究では、肩に重りをのせると、縮む速さが増しました。同じ重さなら、のせ続けるより、何度も持ち上げるほうがよく縮みました。休むときは、上半身を少し起こし、ひざを曲げてもたれかかる姿勢のほうが、立ったまま休むより早く背が戻りました。

04子どもの身長は午後に測るほうがよい、という研究がある

身長が1日のうちに変わることは、病院で子どもの成長を見るときに問題になります。背がのびているか心配な子は、時間をあけて何度か測り、どれだけのびたかを確かめます。もし、1回目を朝、2回目を夕方に測ったらどうでしょう。本当はのびていても、のびていないように見えてしまいます。

1997年、イギリスのサウサンプトンの学校で、子ども53人の身長を、朝9時、11時、13時、15時に測った研究があります。9時から11時までに、平均0.31cm縮みました。11時から13時までには、0.20cm縮みました。ところが、13時から15時は、ほとんど変わりませんでした。起きて6時間ほどたつと、もう縮まなかったのです。研究者たちは、身長を測るなら午後の診察がよい、と提案しています。

2005年には、3〜15歳の478人を、朝9〜10時と午後3〜4時に測った研究も出ました。平均では、午後のほうが朝より0.47cm低くなっていました。ただし、人による差が大きく、2.7cm縮んだ子もいれば、1.8cm高くなった子もいました。研究者たちは、身長を記録するときは、測った時刻も書いておくよう勧めています。

05がんの放射線治療でも、朝と午後の背骨の長さの差が問題になる

最近、思わぬところで、朝と夜の身長の差が注目されています。がんの放射線治療です。放射線は、ねらった場所に、ミリ単位で正確にあてる必要があります。

2024年、オランダのアムステルダムの研究チームは、放射線治療を受けた子ども32人の画像を調べました。調べたのは、胸の下のほうから腰までの背骨の長さです。午後には、この長さが朝より、中央値(全員をならべたときの真ん中の値)で1.0mm縮んでいました。いちばん大きく縮んだ子では、3.9mm縮んでいました。チームは、この縮みが、放射線をあてる位置のずれにつながりうると書いています。

2025年には、フィンランドのタンペレの研究チームが、頭と背骨の両方に放射線をあてる患者13人を調べました。頭の底から腰の骨までの距離は、1時間に平均0.8mmずつ縮んでいました。治療の前には、放射線をあてる位置を決めるために、体を撮影します。チームは、毎回の治療を、その撮影をした時刻から2時間以内の時刻に行うのがよい、と提案しています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

椎間板は、押され続けると水が少しずつ出て、ゆっくり低くなる

1984年の論文は、身長が縮む現象をクリープと呼んでいます。クリープとは、ものに一定の力をかけ続けると、時間をかけて少しずつ形が変わっていく現象です。

椎間板は、ただのゴムではありません。中に水をたくさんふくんだ組織です。押されると、水が少しずつしみ出して、ゆっくり低くなります。力がなくなると、水を引き寄せる力(浸透圧)で、ゆっくり水を吸いもどします。

この性質で、背の縮み方のリズムを説明できます。朝は、椎間板が水をいっぱいふくんでいます。そのため、押されたときに出ていく水の量も多くなります。だから、起きてすぐの1時間で、一気に縮みます。水が減るにつれて水は出にくくなり、縮み方はゆっくりになる、と考えられます。夜も同じように、眠りの前半ほど速く戻ります。

1日に縮む量は、人によって大きく違う

「1日に約2cm縮む」という数字は、男性8人の平均です。実際の縮み方は、人によってかなり違います。2005年の子ども478人の研究では、午後に2.7cm低くなった子がいる一方、1.8cm高く測られた子もいました。2024年の放射線治療の研究でも、縮み方は患者ごとに大きく違いました。しかも、朝と午後の撮影のあいだは、4時間の子も9時間半の子もいました。けれど、あいだが長い子ほど大きく縮む、という関係は見られませんでした。

この結果は、1984年の「起きて数時間で、ほとんど縮みきる」という発見と合っています。午前中の早い時間に大きく縮み、そのあとはあまり変わらないなら、午後のどの時刻に測っても差は小さいはずだからです。

また、ワッセは「労働者は縮むのがゆっくり」と書きました。1985年の研究では、「荷物を何度も持ち上げると縮みやすい」という結果が出ています。このことから、その日の体の使い方も、縮み方に関わっていそうです。平均の数字は目安であって、あなたの体の数字ではないのです。

ミリ単位で身長を比べるには、測る時刻をそろえる必要がある

身長は、だれでも測れる簡単な数字に見えます。けれど、ミリ単位で比べようとすると、難しさが一気に増えます。姿勢や頭の向き、かかとのつけ方が少し違うだけで、数字が変わるからです。1984年の研究が専用の枠やめがねまで用意したのは、そうした小さなずれを消すためでした。

1997年の研究は、測るときに頭を軽く引き上げる「ストレッチ法」も試しました。こうすると、記録される身長は、平均0.28cm高くなります。けれど、1日のうちに縮む分は減りませんでした。測り方を工夫しても、測る時刻の違いで生まれる差は消せないのです。

これは、科学のどの分野にも通じる話です。測った値は、どんな条件で測ったかとセットで考える必要があります。時刻を記録しておかないと、本当の変化と、測り方の違いを見分けられません。

ワッセの観察は、今の研究の進め方とよく似ていた

ワッセの手紙は、今読んでもよくできています。たくさんの人を測って、比べました。自分の体で、条件を変えて試しました。馬という別の動物でも確かめました。そして、背骨の軟骨という、今の理解とほぼ同じ原因を考えました。王立協会の会員たちが、自分でも試して確かめたという点も、今の「追試」(ほかの人が同じ実験をして確かめること)にあたります。

ただし、限界もあります。くぎに頭が届くかどうかでは、細かい数字は分かりません。労働者のほうが縮みにくいという観察も、何人をどう比べたのかは書かれていません。300年かけて、測定器の精度が0.01mmまで上がり、MRIで椎間板の中を見られるようになりました。そうして、ようやくワッセの考えは、数字で確かめられたのです。

06まとめ

人の身長は、朝起きたときがいちばん高く、夜にかけて縮みます。精密に測ると、1日の差は平均19.3mmです。その半分以上は、起きてから1時間以内に縮みます。原因は、背骨の骨のあいだの椎間板から、水分が出ていくことです。

朝と夜の身長の差は、子どもの成長の記録や、放射線治療の位置合わせにも関わっています。1724年に兵士を救った牧師の発見は、今も病院の中で役立っています。明日の朝、起きてすぐに柱の前に立ってみてください。夜に測ったときより、少し高いはずです。

人に話すなら、こう言おう

人って朝のほうが背が高いんだって。1日で平均2cmくらい縮むらしい。300年前のイギリスの牧師さんはそれに気づいて、身長がちょっと足りなくてクビになりそうな兵士を救ったんだよ。
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英語で読む

Taller in the Morning

CEFR A2218 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

About 300 years ago, a priest in England saw some soldiers lose their jobs.およそ300年前、イギリスのある牧師は、何人かの兵士が仕事を失うのを見ました。 They were sent away because they were a little too short.彼らは、背が少しだけ低すぎるという理由で追い出されたのです。 The priest, Mr. Wasse, knew a secret.その牧師、ワッセさんは、ある秘密を知っていました。 People are taller in the morning than at night.人は夜よりも朝のほうが背が高いのです。 He told an army officer, and some soldiers were able to stay.彼が軍の将校に話したので、何人かの兵士は軍に残ることができました。

In 1724, his letter about this was printed in a science journal.1724年、このことについての彼の手紙が科学の雑誌に載りました。 He wrote that the difference was almost one inch, or about 2.5 centimeters.彼は、その差はほぼ1インチ、つまり約2.5センチだと書きました。 He measured many people, and he also tested his own body after hard work.彼はたくさんの人を測り、きつい作業のあとの自分の体でも試しました。

In 1984, scientists measured eight men very carefully for 24 hours.1984年、科学者たちが8人の男性を24時間、とても注意深く測りました。 On average, the men were 19.3 millimeters taller in the morning.平均すると、男性たちは朝のほうが19.3ミリ背が高くなっていました。 More than half of the loss happened in the first hour after they got up.縮んだ分の半分以上は、起きてから最初の1時間に起きていました。

Why does this happen?なぜこうなるのでしょうか。 Between the bones of your back, there are soft cushions called discs.背中の骨と骨のあいだには、椎間板と呼ばれるやわらかいクッションがあります。 During the day, your weight pushes water out of them, and they get thinner.昼のあいだ、体の重さで水が押し出され、クッションはうすくなります。 At night, when you lie down, the discs take in water again, like a sponge.夜、横になると、クッションはスポンジのようにまた水を吸いこみます。

This small change matters in hospitals today.この小さな変化は、今の病院で大切な意味をもっています。 Doctors who check a child's growth should measure at the same time of day.子どもの成長を調べる医師は、一日の同じ時刻に測るべきです。 One study suggested measuring children in the afternoon.ある研究は、子どもは午後に測ることを勧めました。 So if you want to be your tallest, measure yourself right after you wake up.だから、いちばん高い身長を知りたければ、起きてすぐに測ってみてください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How much taller were the men in the morning in the 1984 study?

    1984年の研究で、男性たちは朝のほうがどれくらい背が高かったですか。

  3. Q3What happens to the discs during the day?

    昼のあいだ、椎間板には何が起きますか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "cushions" is closest in meaning to ...

    第4段落の "cushions" に最も近い意味はどれですか。

  5. Q5Which is true about Mr. Wasse?

    ワッセさんについて正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • priest名詞
    牧師、聖職者

    The priest spoke to the people in the church.

    牧師は教会の人々に話をした。

    💡 キリスト教の聖職者の一般的な呼び方。

  • soldier名詞
    兵士

    The soldiers marched through the town.

    兵士たちは町を行進した。

    💡 di は[ジャ]に近い音で[ソウルジャー]。

  • officer名詞
    将校、役人

    A police officer helped me find the station.

    警察官が駅を探すのを手伝ってくれた。

    💡 police officer で「警察官」。

  • measure動詞
    測る

    Let's measure the size of the window.

    窓の大きさを測ろう。

    💡 名詞 measurement で「測定、寸法」。

  • average名詞
    平均

    The average age of the class is 14.

    そのクラスの平均年齢は14歳だ。

    💡 on average で「平均すると」。

  • cushion名詞
    クッション、衝撃をやわらげるもの

    She sat on a soft cushion.

    彼女はやわらかいクッションに座った。

    💡 日本語の「クッション」と同じ。

  • lie down動詞句
    横になる

    I felt tired, so I lay down on the sofa.

    疲れたのでソファに横になった。

    💡 過去形は lay。lie(うそをつく)の過去形 lied と区別。

  • growth名詞
    成長

    Milk is good for children's growth.

    牛乳は子どもの成長によい。

    💡 grow(育つ)の名詞形。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 26件)。

  1. Wasse (1724) Part of a letter…concerning the difference in the height of a human body, between morning and night, Philosophical Transactions of the Royal Society 33:87-88doi.org
  2. Reilly, T., Tyrrell, A., Troup, J. D. G. (1984) Circadian Variation in Human Stature, Chronobiology International 1:121-126doi.org
  3. Tyrrell, A. R., Reilly, T., Troup, J. D. G. (1985) Circadian Variation in Stature and the Effects of Spinal Loading, Spine 10:161-164doi.org
  4. Botsford, D. J. ほか (1994) In Vivo Diurnal Variation in Intervertebral Disc Volume and Morphology, Spine 19:935-940doi.org
  5. Voss, L. D., Bailey, B. J. (1997) Diurnal variation in stature: is stretching the answer?, Archives of Disease in Childhood 77:319-322doi.org
  6. Siklar, Z. ほか (2005) Diurnal variation of height in children, Pediatrics International 47:645-648doi.org
  7. Meijer, K. M. ほか (2024) Timing matters: diurnal spine length variation in pediatric patients during radiotherapy, Radiation Oncologydoi.org
  8. Heikkilä, A. ほか (2025) Diurnal variation of the distance between cranium and the third lumbar vertebra, Physics and Imaging in Radiation Oncology 34:100760doi.org

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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