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溶けたアイスが甘すぎるのは気のせいじゃない。甘味センサーは「温度」でボリュームが変わっていた

溶けたアイスが甘すぎるのは気のせいじゃない。甘味センサーは「温度」でボリュームが変わっていた

読む前に予想してみよう!

同じジュースでも、冷たいときよりぬるいときのほうが甘く感じやすい

研究カード(どんな研究?)
対象
マウス・培養細胞・成人の参加者
規模
基礎研究+小規模なヒト実験
研究の種類
実験研究
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

甘味の信号を伝える舌のチャネル「TRPM5」は、15〜35℃の範囲で温度が上がるほど強くはたらく。だから溶けてぬるくなったアイスやジュースは甘く感じやすい。

ひとことで言うとアイスはぬるくなると甘さアップ!舌のセンサーが温度で変わるから。

もくじ
  1. 甘味の信号を中継する「TRPM5」
  2. TRPM5は温度に超敏感だった
  3. 温めるだけで「甘い」と感じる人もいる
  4. アイスやジュースの「設計」にも関係
  5. まとめ

夏の日、食べるのが遅くて溶けてしまったアイス。ドロッとしたそれを口に入れると、「うわ、甘っ!」。

ぬるくなった炭酸ジュースも、冷えていたときよりやたら甘く感じますよね。

これは気のせいではありません。研究によって、舌が甘味を伝える仕組みそのものが、温度で"ボリューム"を変えていることがわかってきたのです。

01甘味の信号を中継する「TRPM5」

舌で甘いものを感じると、まず甘味の受容体が糖をキャッチします。そこから細胞の中で信号がリレーされ、最後にTRPM5というチャネル(細胞膜の通り道)が開いて、細胞が電気的に反応します。

TRPM5は、甘味・うま味・苦味の信号を伝える共通の「中継点」のような存在です。

02TRPM5は温度に超敏感だった

つまり、同じ量の砂糖でも、15〜35℃の範囲では、温度が高いほど「甘い!」という信号が大きくなるのです。冷たいアイスはTRPM5のボリュームが絞られている状態。溶けてぬるくなると、ボリュームが一気に上がるわけですね。

温度が上がると、甘味の信号の「ボリューム」が上がる
温度が上がると、甘味の信号の「ボリューム」が上がる

03温めるだけで「甘い」と感じる人もいる

もっと不思議な現象もあります。2000年、アメリカ・イェール大学のクルスさんとグリーンさんは、何も味のついていない状態で、舌の一部を温めたり冷やしたりする実験を行いました。

すると、冷やした舌の先を温めていくと、甘味を感じる人がいたのです。逆に冷やすと、酸っぱさや塩味を感じる人もいました。この現象は「温度の味(サーマル・テイスト)」と呼ばれています。

2004年の研究では、この「温度の味」を感じる人は、ふつうの味の刺激にも、感じない人より強く反応する傾向があることも報告されています。味の感じ方の個人差は、思ったよりいろいろなところに隠れているようです。

04アイスやジュースの「設計」にも関係

食品メーカーは、こうした温度と甘さの関係も考えながら、商品の味を決めていると考えられます。冷たい状態で食べるアイスは、冷えていても甘く感じるように、砂糖が多めに入っていることが多いのです。だから、溶けてぬるくなると「甘すぎる」になってしまうわけですね。

05まとめ

溶けたアイスが甘すぎるのは、甘味の信号を伝えるTRPM5が、温度が上がるほど強くはたらくことが一因と考えられます。舌は、温度によって甘さの「ボリューム」を変えていたのです。

次にアイスが溶けてしまったら、ちょっとだけ観察してみてください。「今、舌のボリュームが上がったな」と思えたら、あなたも立派な味覚研究者です。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people notice that melted ice cream or warm juice tastes much sweeter than when it is cold. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many people notice that melted ice cream or warm juice tastes much sweeter than when it is cold. Research suggests this is not just a feeling. When we eat something sweet, the signal passes through a channel in taste cells called TRPM5. In 2005, an international team reported that TRPM5 is very sensitive to temperature.

As the temperature rose from 15°C to 35°C, the electric current through the channel increased sharply. In mice, nerve responses to sweet substances were also stronger at higher temperatures, but not in mice without TRPM5. Since cold ice cream is made with plenty of sugar to taste sweet enough, it can taste too sweet once it melts.

112 words ・ CEFR B1

和訳を見る

溶けたアイスクリームやぬるいジュースは、冷たいときよりもずっと甘く感じることに、多くの人が気づいています。研究によると、これは単なる気のせいではないようです。甘いものを食べると、その信号は味細胞のTRPM5というチャネルを通ります。2005年、国際的なチームは、TRPM5が温度にとても敏感であることを報告しました。

温度が15℃から35℃に上がるにつれて、チャネルを流れる電流が急激に増えたのです。マウスでは、甘い物質に対する神経の反応も、温度が高いほうが強くなりましたが、TRPM5をもたないマウスではそうなりませんでした。冷たいアイスクリームは十分に甘く感じるよう砂糖をたっぷり使って作られているので、溶けると甘すぎる味になることがあるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2005 team report about TRPM5?

Q2. What happened in mice without TRPM5?

Q3. Why can melted ice cream taste too sweet?

重要単語

  • temperatureA2
    名詞温度Temperature changes how sweet food tastes. 発音は /ˈtemprətʃər/。take one's temperature「体温を測る」。
  • lukewarmC1
    形容詞ぬるいThe juice was lukewarm and too sweet. 比喩で「気乗りしない・熱意のない」(a lukewarm response)。
  • sensitiveB1
    形容詞敏感なThe channel is very sensitive to heat. be sensitive to ~「~に敏感だ」。sensible(分別のある)との混同に注意。
  • channelB2
    名詞(細胞膜の)通り道、チャネルIons pass through the channel. テレビの「チャンネル」、「経路」の意味もある多義語。
  • thermalC1
    形容詞熱の、温度のThermal taste happens without any tastant. thermo-(熱)は thermometer(温度計)と同じ語根。
  • cloyingC1
    形容詞(甘すぎて)くどいThe melted ice cream was cloying. 甘さが過剰で胸やけしそうな感じ。比喩で「感傷的すぎる」にも使う。

4コマでわかる

溶けたアイスが甘すぎるのは気のせいじゃない。甘味センサーは「温度」でボリュームが変わっていたの4コマ漫画
溶けたアイスやぬるくなったジュースが「甘すぎる」と感じるのは気のせいじゃなかった。甘味の信号を伝える舌のチャネルTRPM5は、温度が上がるほど強く働くらしい。舌を温めるだけで甘く感じる「温度の味」を体験する人までいる。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Talavera et al. (2005) Heat activation of TRPM5 underlies thermal sensitivity of sweet taste, Naturedoi.org
  2. Cruz & Green (2000) Thermal stimulation of taste, Naturedoi.org
  3. Green & George (2004) 'Thermal Taste' Predicts Higher Responsiveness to Chemical Taste and Flavor, Chemical Sensesdoi.org