体と健康・食ビミョー

水には「味」があった? マウスの舌で水を感じていたのは、まさかの“酸っぱさセンサー”

水には「味」があった? マウスの舌で水を感じていたのは、まさかの“酸っぱさセンサー”

読む前に予想してみよう!

水は「無味」なので、舌は水そのものを感じとっていない

研究カード(どんな研究?)
対象
マウス
規模
遺伝子改変マウス・光遺伝学の実験
研究の種類
基礎研究(動物実験)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

マウスの舌の「酸味を感じる細胞」が水にも反応していた。この細胞を光で刺激すると、のどが渇いたマウスは水がなくても“飲む動作”をした。

ひとことで言うと舌の「すっぱいセンサー」は、水を見つける係もしていたかも!

もくじ
  1. 水を舌にのせると、味の神経が反応した
  2. 光で細胞をオンにすると「エア飲み」
  3. 酸味センサーは「多才な見張り役」
  4. まとめ

「水の味は?」と聞かれたら、たいていの人は「味なんてない」と答えるでしょう。

でも、ちょっと考えてみてください。のどがカラカラのときの水は、ものすごくおいしいですよね。そもそも、口に入ったものが水なのか、油なのかを、私たちはどうやって見分けているのでしょうか。

2017年、アメリカ・カリフォルニア工科大学の研究チームが、この疑問に意外な答えを出しました。少なくともマウスでは、舌の「酸っぱさセンサー」が、水を感じ取っていたのです。

01水を舌にのせると、味の神経が反応した

実は昔から、動物の舌に水を流すと、味の神経が反応することは知られていました。「水の味」の信号は確かに存在していたのです。でも、どの細胞がその信号を出しているのかは、ずっとナゾでした。

なぜ酸味の細胞が水に反応するのか。口の中は、ふだん唾液でおおわれています。そこに水が入ると、唾液が洗い流されて口の中の状態が変わり、それを酸味の細胞が感じ取っている——研究チームは、そんな仕組みを考えています。

02光で細胞をオンにすると「エア飲み」

さらに研究チームは、光で神経や細胞をオン・オフできる技術(光遺伝学)を使いました。

酸味の細胞を光でオンにできるマウスに、水の代わりに光が出る飲み口を用意したところ、のどが渇いたマウスは、水がないのに光に向かって何度も"飲む動作"をくり返しました。

おもしろいのは、これがのどが渇いているときだけ起きたこと。お腹がすいているときや、塩分が足りないときには、この行動は見られませんでした。体の状態によって、「水の味」の価値が変わるのです。

酸味の細胞を光でオンにすると、のどの渇いたマウスは水がなくても飲む動作をくり返した
酸味の細胞を光でオンにすると、のどの渇いたマウスは水がなくても飲む動作をくり返した

動物にとって、水を見つけて正しく飲むことは命に直結します。口に入った液体が本当に水なのかをすばやく見分けるしくみが舌にあっても、不思議ではないのかもしれません。

03酸味センサーは「多才な見張り役」

さらに、酸味の細胞をはたらかなくしたマウスは、水と、水でない液体(シリコンオイル)を見分けるのが苦手になりました。酸味の細胞は、口に入ったものが水かどうかを判断する手がかりになっていたのです。

この酸味の細胞は、2006年の研究で「酸っぱさ専門」の細胞として見つかったものです。その後、炭酸の刺激にも関わることがわかり(2009年)、今回は水まで。ひとつの細胞が、思った以上に多くの仕事をこなしていました。

04まとめ

「無味」だと思われていた水も、少なくともマウスでは、舌の酸味センサーがしっかり感じ取っていました。しかもその感覚は、のどが渇いたときにだけ「飲む行動」を引き起こすように、体の状態と結びついていたのです。

次にのどがカラカラのときに水を飲んだら、「今、舌の酸っぱさセンサーが働いてるのかも」と想像してみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWe usually say water has no taste, yet scientists have long known that water on an animal's tongue makes… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

We usually say water has no taste, yet scientists have long known that water on an animal's tongue makes taste nerves respond. The question was which cells send this signal. In 2017, a team at Caltech switched off different types of taste cells in mice one by one.

Only when the sour-sensing cells were switched off did the nerve response to water disappear. The researchers think water washes away saliva and changes conditions in the mouth, which the sour cells detect. When these cells were turned on with light, thirsty mice repeatedly tried to drink from an empty spout. This happened only when they were thirsty, not when they were hungry.

111 words ・ CEFR B1

和訳を見る

私たちはふつう水には味がないと言いますが、科学者たちは昔から、動物の舌に水を流すと味の神経が反応することを知っていました。問題は、どの細胞がこの信号を送っているのかでした。2017年、カリフォルニア工科大学のチームは、マウスのさまざまな種類の味細胞を1つずつはたらかないようにしました。

酸味を感じる細胞を止めたときにだけ、水に対する神経の反応が消えました。研究者たちは、水が唾液を洗い流して口の中の状態を変え、それを酸味の細胞が感知していると考えています。これらの細胞を光でオンにすると、のどの渇いたマウスは空の飲み口から何度も飲もうとしました。これは、お腹がすいているときではなく、のどが渇いているときにだけ起こりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the Caltech team do in their experiment?

Q2. How do the researchers think sour cells detect water?

Q3. What can we infer from the last sentence?

重要単語

  • thirstyA2
    形容詞のどが渇いたI was thirsty after soccer practice. 名詞は thirst。比喩で a thirst for knowledge「知識欲」。
  • detectB2
    動詞感知する、見つけるThe cells detect water in the mouth. detector(検出器)、detective(探偵)と同じ仲間。
  • optogeneticsC1
    名詞光遺伝学Optogenetics uses light to control nerve cells. opto-(光)+genetics(遺伝学)。脳科学の最先端の手法としてよく出る。
  • salivaB2
    名詞唾液Saliva helps us taste food. 発音は /səˈlaɪvə/(サライヴァ)。動詞 salivate(よだれが出る)。
  • internal stateC1
    名詞(句)体の内部の状態Our internal state changes how food tastes. internal(内部の)⇔ external(外部の)。のどの渇きや空腹など体の状態を指す。
  • versatileC1
    形容詞多才な、用途の広いThese taste cells seem to be remarkably versatile. 人にも物にも使える。a versatile player「何でもこなす選手」。

4コマでわかる

水には「味」があった? マウスの舌で水を感じていたのは、まさかの“酸っぱさセンサー”の4コマ漫画
水って無味だと思ってた。でもマウスの研究で、舌の「酸味を感じる細胞」が水にも反応していたらしい。この細胞を光でオンにすると、のどが渇いたマウスは水がないのに光に向かって“ゴクゴク”しようとした。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Zocchi et al. (2017) The cellular mechanism for water detection in the mammalian taste system, Nature Neurosciencedoi.org
  2. Huang et al. (2006) The cells and logic for mammalian sour taste detection, Naturedoi.org
  3. Chandrashekar et al. (2009) The Taste of Carbonation, Sciencedoi.org