耳あかが「カサカサ」か「ベタベタ」かは、遺伝子のたった1文字の違いで決まっていた

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耳あかのタイプを決める遺伝子の型は、わきの下のにおいの強さにも関係している
同じABCC11の型が、においのもとになる物質の分泌にも関わることが示されている。
- 対象
- 世界各地の集団とヒト細胞
- 規模
- 多数の集団サンプル/約1万7000人のコホート
- 研究の種類
- 連鎖解析・機能アッセイ・集団遺伝学
- 確かさ
- ★★★★☆
耳あかの乾型・湿型はABCC11遺伝子のたった1塩基の違いで決まる。日本人に多い乾型は、わきの下のにおいの少なさとも結びついていた。
ひとことで言うと耳あかがカサカサかベタベタかは、遺伝子の1文字で決まる。
耳あかには、カサカサした乾いたタイプ(乾型)と、しっとりベタつくタイプ(湿型)があります。
日本人の多くは乾型。一方、ヨーロッパやアフリカにルーツを持つ人は、ほとんどが湿型です。
この違いは、長いあいだ「遺伝するらしい」とだけ知られていました。2006年、日本の研究チームが、犯人をDNAの1文字まで突き止めます。
01答えは「1塩基」の違い
ABCC11は、細胞の膜にあって物質を外にくみ出す「ポンプ」のような蛋白質を作ります。A型ではこのポンプがうまく働かないため、耳あかに含まれる脂質などの分泌が減り、乾いた耳あかになると考えられています。
この発見は、目に見える体質(形質)を決める1塩基の違いが特定された最初の例として紹介されました。
02同じ遺伝子が「におい」も決めていた
この遺伝子の影響は、耳だけではありません。
2013年には、英国の約1万7000人規模のコホート研究で、遺伝子の型によってデオドラントの使用頻度が違うことも報告されました。AA型の人は「まったく使わない、またはほとんど使わない」グループに約5倍多く含まれていました。
面白いのは、それでもAA型(においが弱いタイプ)の白人系の人の77.8%がデオドラントを使っていたという点です。習慣は生物学だけで決まらない、ということですね。

03乾型はなぜ東アジアで増えた?
乾型(A型)の頻度は、地域によって大きく違います。中国人や韓国人で最も高く、南や西へ行くほど下がっていきます。
ただし、なぜ寒い地域で有利になるのかは、まだはっきりしていません。汗の量や皮膚の性質の違いが関わるのかもしれませんし、「においの弱い相手が好まれた」という配偶者選択の説も提案されています。
04どんでん返し:耳あかそうじは「やりすぎ注意」
耳あかには、ほこりをからめ取り、皮膚を保護するはたらきがあると考えられています。
綿棒で奥まで押し込むと、かえって詰まりの原因になることがあります。耳あかがたまっているように感じることもありますが、自己流で取りすぎるのは逆効果です。
05まとめ
- 耳あかの乾型・湿型は、ABCC11遺伝子の1塩基の違いで決まる
- 同じ型が、わきの下のにおいのもとの分泌にも関わる
- 乾型は東アジアで非常に多く、自然選択を受けた可能性がある
- どちらのタイプも正常。耳あかは取りすぎないほうがよい
たった1文字のDNAの違いが、耳あかとにおいと、ついでにデオドラントの売れ方まで変えている。人類の歴史は、意外なところに刻まれています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEarwax comes in a dry and flaky type or a wet and sticky type.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Earwax comes in two types, dry and wet. Most Japanese people have dry earwax, but most people with European or African roots have wet earwax. In 2006, a Japanese team found the reason.
Just one small change in a gene called ABCC11 decides the type. The same gene also affects body smell. People with dry earwax usually have less underarm smell.
61 words ・ CEFR A2
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耳あかには、乾いたタイプと湿ったタイプの2種類があります。ほとんどの日本人は乾いた耳あかですが、ヨーロッパやアフリカにルーツを持つ人の多くは湿った耳あかです。2006年、日本のチームがその理由を見つけました。
ABCC11という遺伝子のたった1つの小さな違いが、タイプを決めているのです。同じ遺伝子は体のにおいにも影響します。乾いた耳あかの人は、ふつうわきの下のにおいが少ないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
耳あかのタイプと体のにおいを決める遺伝子がテーマなので C。
Q2. What kind of earwax do most Japanese people have?
Most Japanese people have dry earwax とあるので B。
Q3. In this passage, "roots" means ...
with European or African roots は「ヨーロッパやアフリカにルーツ(家系の出身地)を持つ」という意味なので D。
Earwax comes in a dry and flaky type or a wet and sticky type. Most people in Japan have the dry type, while most people of European or African ancestry have the wet type. In 2006, a team led by Koh-ichiro Yoshiura at Nagasaki University discovered that the difference depends on a single letter of DNA in a gene called ABCC11.
People who inherit two copies of the A version have dry earwax. This gene makes a protein that pumps substances out of cells, and the A version works poorly. In 2010, German researchers showed that the same gene also controls substances in underarm sweat that bacteria turn into odor, so people with dry earwax tend to smell less.
119 words ・ CEFR B1
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耳あかには、乾いてカサカサしたタイプと、湿ってベタベタしたタイプの2種類があります。日本ではほとんどの人が乾いたタイプですが、ヨーロッパやアフリカ系の祖先を持つ人の多くは湿ったタイプです。2006年、長崎大学の吉浦孝一郎が率いるチームは、この違いがABCC11という遺伝子のDNAのたった1文字によることを発見しました。A型を2つ受け継いだ人は乾いた耳あかになります。
この遺伝子は細胞から物質をくみ出すタンパク質を作りますが、A型はうまくはたらきません。2010年、ドイツの研究者たちは、同じ遺伝子が、わきの下の汗に含まれ細菌によってにおいに変えられる物質も制御していることを示しました。そのため、乾いた耳あかの人はにおいが少ない傾向があるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Who inherits dry earwax, according to the passage?
People who inherit two copies of the A version have dry earwax. とあるので C。
Q2. What does the protein made by ABCC11 do?
This gene makes a protein that pumps substances out of cells とあるので A。
Q3. Why do people with dry earwax tend to have less underarm odor?
同じ遺伝子が細菌によってにおいに変わる物質を制御しており、A型ではその分泌が少ないため。正解は D。
Earwax comes in two kinds, dry and flaky or wet and sticky. The dry type predominates in East Asia, while the wet type is nearly universal among people of European and African descent. In 2006, Yoshiura and colleagues at Nagasaki University traced the difference to a single-nucleotide polymorphism in ABCC11, a gene for a membrane pump that moves substances out of cells.
People with two copies of the A allele have dry earwax. It was described as the first DNA variant shown to determine a visible human trait. In 2010, a German team found that the gene also works in the apocrine sweat glands of the armpit, and that people with two A alleles barely secrete the precursors that skin bacteria turn into odor. A large British cohort later linked the genotype to deodorant use, though most low-odor people used deodorant anyway.
So genes did not dictate the habit. Ohashi and colleagues estimated that the dry allele arose about 2,000 generations ago and was favored by natural selection. Exactly what advantage it gave is unknown. One proposal is a cold-climate adaptation, since the allele becomes more common the farther a population lives from the equator.
195 words ・ CEFR B2
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耳あかには、乾いてカサカサしたものと、湿ってベタベタしたものの2種類があります。東アジアでは乾いたタイプが優勢な一方、ヨーロッパやアフリカ系の人々ではほぼ全員が湿ったタイプです。2006年、長崎大学の吉浦らは、この違いの原因が、細胞から物質を運び出す膜のポンプを作る遺伝子ABCC11の一塩基多型にあることを突き止めました。
A型の対立遺伝子を2つ持つ人は乾いた耳あかになります。これは、目に見える人の形質を決めることが示された最初のDNAの変異だと紹介されました。2010年、ドイツのチームは、この遺伝子がわきの下のアポクリン汗腺でもはたらいており、A型を2つ持つ人は、皮膚の細菌がにおいに変える前駆物質をほとんど分泌しないことを発見しました。のちに英国の大規模なコホート研究は、遺伝子型とデオドラントの使用を結びつけましたが、においの少ない人の多くもデオドラントを使っていました。
つまり、遺伝子が習慣を決めていたわけではないのです。大橋らは、乾型の対立遺伝子が約2000世代前に生じ、自然選択によって有利になったと推定しました。それが具体的にどんな利点をもたらしたのかはわかっていません。1つの説は寒冷な気候への適応だというもので、赤道から遠い地域に住む集団ほど、この対立遺伝子が多くなることがその根拠です。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
ABCC11の1つの変異が耳あか・わきのにおいに関わり、自然選択を受けた可能性もあるという内容なので D。
Q2. What did the German team find in 2010?
the gene also works in the apocrine sweat glands of the armpit, and that people with two A alleles barely secrete the precursors とあるので A。
Q3. What does the author suggest by mentioning that low-odor people still used deodorant?
most low-odor people used deodorant anyway の直後に So genes did not dictate the habit. とあるので B。
重要単語
- earwaxB2名詞耳あかEarwax comes in dry and wet types.
ear+wax(ろう)。医学用語では cerumen。 - geneB1名詞遺伝子A single gene decides the type.
genetic(遺伝の)、genome(ゲノム)と同語源。複数形 genes は jeans(ジーンズ)と同音。 - alleleC1名詞対立遺伝子(遺伝子の型)The dry allele is common in East Asia.
同じ遺伝子の別バージョン。父母から1つずつ受け継ぐ。 - sweat glandC1名詞(句)汗腺The gene works in a special sweat gland.
gland は「腺」。apocrine(アポクリン)と eccrine(エクリン)の2種類がある。 - odorB2名詞においThe variant lowers underarm odor.
英つづりは odour。不快なにおいに使うことが多い。body odor「体臭」。 - polymorphismC1名詞多型(個体差のある遺伝的違い)This polymorphism changes a visible trait.
poly-(多い)+morph(形)。SNP は single-nucleotide polymorphism の略。
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耳あかが「カサカサ」か「ベタベタ」かは、ABCC11という遺伝子のたった1塩基の違いで決まる。しかも同じ型が、わきの下のにおいの強さにも関わっていた。
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出典・参考文献(4件)タップで表示
- Yoshiura et al. (2006) A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type, Nature Geneticsdoi.org
- Martin et al. (2010) A Functional ABCC11 Allele Is Essential in the Biochemical Formation of Human Axillary Odor, Journal of Investigative Dermatologydoi.org
- Ohashi et al. (2011) The Impact of Natural Selection on an ABCC11 SNP Determining Earwax Type, Molecular Biology and Evolutiondoi.org
- Rodriguez et al. (2013) Dependence of Deodorant Usage on ABCC11 Genotype, Journal of Investigative Dermatologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











