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耳あかが「カサカサ」か「ベタベタ」かは、遺伝子のたった1文字の違いで決まっていた

耳あかが「カサカサ」か「ベタベタ」かは、遺伝子のたった1文字の違いで決まっていた

読む前に予想してみよう!

耳あかのタイプを決める遺伝子の型は、わきの下のにおいの強さにも関係している

研究カード(どんな研究?)
対象
世界各地の集団とヒト細胞
規模
多数の集団サンプル/約1万7000人のコホート
研究の種類
連鎖解析・機能アッセイ・集団遺伝学
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

耳あかの乾型・湿型はABCC11遺伝子のたった1塩基の違いで決まる。日本人に多い乾型は、わきの下のにおいの少なさとも結びついていた。

ひとことで言うと耳あかがカサカサかベタベタかは、遺伝子の1文字で決まる。

もくじ
  1. 答えは「1塩基」の違い
  2. 同じ遺伝子が「におい」も決めていた
  3. 乾型はなぜ東アジアで増えた?
  4. どんでん返し:耳あかそうじは「やりすぎ注意」
  5. まとめ

耳あかには、カサカサした乾いたタイプ(乾型)と、しっとりベタつくタイプ(湿型)があります。

日本人の多くは乾型。一方、ヨーロッパやアフリカにルーツを持つ人は、ほとんどが湿型です。

この違いは、長いあいだ「遺伝するらしい」とだけ知られていました。2006年、日本の研究チームが、犯人をDNAの1文字まで突き止めます。

01答えは「1塩基」の違い

ABCC11は、細胞の膜にあって物質を外にくみ出す「ポンプ」のような蛋白質を作ります。A型ではこのポンプがうまく働かないため、耳あかに含まれる脂質などの分泌が減り、乾いた耳あかになると考えられています。

この発見は、目に見える体質(形質)を決める1塩基の違いが特定された最初の例として紹介されました。

02同じ遺伝子が「におい」も決めていた

この遺伝子の影響は、耳だけではありません。

2013年には、英国の約1万7000人規模のコホート研究で、遺伝子の型によってデオドラントの使用頻度が違うことも報告されました。AA型の人は「まったく使わない、またはほとんど使わない」グループに約5倍多く含まれていました。

面白いのは、それでもAA型(においが弱いタイプ)の白人系の人の77.8%がデオドラントを使っていたという点です。習慣は生物学だけで決まらない、ということですね。

同じ遺伝子の型が、耳あかとにおい、そして生活習慣にまで関わっていた
同じ遺伝子の型が、耳あかとにおい、そして生活習慣にまで関わっていた

03乾型はなぜ東アジアで増えた?

乾型(A型)の頻度は、地域によって大きく違います。中国人や韓国人で最も高く、南や西へ行くほど下がっていきます。

ただし、なぜ寒い地域で有利になるのかは、まだはっきりしていません。汗の量や皮膚の性質の違いが関わるのかもしれませんし、「においの弱い相手が好まれた」という配偶者選択の説も提案されています。

04どんでん返し:耳あかそうじは「やりすぎ注意」

耳あかには、ほこりをからめ取り、皮膚を保護するはたらきがあると考えられています。

綿棒で奥まで押し込むと、かえって詰まりの原因になることがあります。耳あかがたまっているように感じることもありますが、自己流で取りすぎるのは逆効果です。

05まとめ

  • 耳あかの乾型・湿型は、ABCC11遺伝子の1塩基の違いで決まる
  • 同じ型が、わきの下のにおいのもとの分泌にも関わる
  • 乾型は東アジアで非常に多く、自然選択を受けた可能性がある
  • どちらのタイプも正常。耳あかは取りすぎないほうがよい

たった1文字のDNAの違いが、耳あかとにおいと、ついでにデオドラントの売れ方まで変えている。人類の歴史は、意外なところに刻まれています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerEarwax comes in a dry and flaky type or a wet and sticky type. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Earwax comes in a dry and flaky type or a wet and sticky type. Most people in Japan have the dry type, while most people of European or African ancestry have the wet type. In 2006, a team led by Koh-ichiro Yoshiura at Nagasaki University discovered that the difference depends on a single letter of DNA in a gene called ABCC11.

People who inherit two copies of the A version have dry earwax. This gene makes a protein that pumps substances out of cells, and the A version works poorly. In 2010, German researchers showed that the same gene also controls substances in underarm sweat that bacteria turn into odor, so people with dry earwax tend to smell less.

119 words ・ CEFR B1

和訳を見る

耳あかには、乾いてカサカサしたタイプと、湿ってベタベタしたタイプの2種類があります。日本ではほとんどの人が乾いたタイプですが、ヨーロッパやアフリカ系の祖先を持つ人の多くは湿ったタイプです。2006年、長崎大学の吉浦孝一郎が率いるチームは、この違いがABCC11という遺伝子のDNAのたった1文字によることを発見しました。A型を2つ受け継いだ人は乾いた耳あかになります。

この遺伝子は細胞から物質をくみ出すタンパク質を作りますが、A型はうまくはたらきません。2010年、ドイツの研究者たちは、同じ遺伝子が、わきの下の汗に含まれ細菌によってにおいに変えられる物質も制御していることを示しました。そのため、乾いた耳あかの人はにおいが少ない傾向があるのです。

4択リーディングクイズ

Q1. Who inherits dry earwax, according to the passage?

Q2. What does the protein made by ABCC11 do?

Q3. Why do people with dry earwax tend to have less underarm odor?

重要単語

  • earwaxB2
    名詞耳あかEarwax comes in dry and wet types. ear+wax(ろう)。医学用語では cerumen。
  • geneB1
    名詞遺伝子A single gene decides the type. genetic(遺伝の)、genome(ゲノム)と同語源。複数形 genes は jeans(ジーンズ)と同音。
  • alleleC1
    名詞対立遺伝子(遺伝子の型)The dry allele is common in East Asia. 同じ遺伝子の別バージョン。父母から1つずつ受け継ぐ。
  • sweat glandC1
    名詞(句)汗腺The gene works in a special sweat gland. gland は「腺」。apocrine(アポクリン)と eccrine(エクリン)の2種類がある。
  • odorB2
    名詞においThe variant lowers underarm odor. 英つづりは odour。不快なにおいに使うことが多い。body odor「体臭」。
  • polymorphismC1
    名詞多型(個体差のある遺伝的違い)This polymorphism changes a visible trait. poly-(多い)+morph(形)。SNP は single-nucleotide polymorphism の略。

4コマでわかる

耳あかが「カサカサ」か「ベタベタ」かは、遺伝子のたった1文字の違いで決まっていたの4コマ漫画
耳あかが「カサカサ」か「ベタベタ」かは、ABCC11という遺伝子のたった1塩基の違いで決まる。しかも同じ型が、わきの下のにおいの強さにも関わっていた。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Yoshiura et al. (2006) A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type, Nature Geneticsdoi.org
  2. Martin et al. (2010) A Functional ABCC11 Allele Is Essential in the Biochemical Formation of Human Axillary Odor, Journal of Investigative Dermatologydoi.org
  3. Ohashi et al. (2011) The Impact of Natural Selection on an ABCC11 SNP Determining Earwax Type, Molecular Biology and Evolutiondoi.org
  4. Rodriguez et al. (2013) Dependence of Deodorant Usage on ABCC11 Genotype, Journal of Investigative Dermatologydoi.org