
ハワイのマウナケアは、海の底のふもとから測るとエベレストより1300m以上高い
ハワイのマウナケアは、高さの6割近くが海の中にある。
この判定の対象「ハワイのマウナケアは、海の底のふもとから測るとエベレストより高い」
もくじ
世界でいちばん高い山はどこか。そう聞かれたら、多くの人はエベレストと答えるでしょう。エベレストの山頂は、海面から8849メートルの高さにあります。
ところが、山の「ふもと」から山頂までを測ると、答えが変わります。ハワイ島のマウナケアという火山は、海面から山頂までは4207メートルです。でも、この山のふもとは、太平洋の深い海の底にあります。
アメリカ海洋大気庁(NOAA)によると、マウナケアのふもとから山頂までは1万210メートル以上。エベレストの8849メートルより、1300メートル以上高いのです。
しかも、マウナケアの隣には、もっと高く数えられる火山があります。アメリカ地質調査所(USGS)は、マウナロアという火山を、山の重さでへこんだ海の底から数えると約1万7000メートルになる、と説明しています。
この記事では、まず山の高さがふつうどう測られるかを確かめます。次に、マウナケアとマウナロアの「海の中の部分」を数字で見ます。最後に、目に見えない海の底のへこみを、研究者がどうやって測ったのかを紹介します。
01エベレストが世界一高いのは、海面から測ったときの話
NOAAの解説によると、山の高さはふつう、海面の平均の高さから測ります。この測り方では、エベレストがいちばん高い山です。2024年の論文も、エベレストの標高を8849メートルとしています。
でも、山はふつう、海面から立ち上がっているわけではありません。エベレストのふもとは、陸地の上にあります。USGSの2002年のコラムは、エベレストのふもとは海の底ではなく、大陸の地殻の上にある、と書いています。地殻とは、地球の表面をおおう岩の層のことです。
一方、ハワイの島々は、太平洋の真ん中にあります。USGSのコラムによると、ハワイ島のまわりの海は、深さが5000メートルを超えます。ハワイの火山は、この深い海の底から積み上がってできた山です。私たちが島として見ているのは、巨大な火山の上の端だけなのです。
02マウナケアは、海の底のふもとから測ると1万210メートル以上ある
マウナケアは、ハワイ島でいちばん高い山です。USGSによると、山頂の標高は4207メートルです。
NOAAは、マウナケアを「ふもとから山頂までが、いちばん高い山」と紹介しています。その高さは1万210メートル以上。ふもとは、太平洋の深い海の下にあると書いています。
ここから、マウナケアのうち、海の中に隠れている部分の高さを計算してみます。ふもとから山頂までの1万210メートルから、海の上に出ている4207メートルを引きます。
- 1万210メートル − 4207メートル = 6003メートル
つまり、マウナケアの高さのうち約6000メートル、全体の6割近くは海の中にあります。海の上に見えている部分は、山の高さ全体の4割ほどにすぎません。NOAAの数字は「1万210メートル以上」なので、海の中の部分も約6000メートル以上ということになります。
エベレストとも比べてみましょう。1万210メートルから8849メートルを引くと、1361メートルです。ふもとから測ったマウナケアは、エベレストの標高より1300メートル以上高いのです。

03隣のマウナロアは、へこんだ海の底から数えると約1万7000メートル
マウナケアの隣には、マウナロアという火山があります。今の標高は4169メートルです。マウナケアの山頂より、40メートル足らず低いだけです。マウナロアは2022年の11月から12月にも噴火した、今も活動している火山です。
USGSは、マウナロアを地球でいちばん大きな活火山だと説明しています。ハワイ島の面積の半分あまりを、マウナロアの山がしめています。
1998年、USGSのハワイ火山観測所のコラムが、マウナロアの高さを3つに分けて数えました。
- 海面から山頂まで:4170メートル(1998年当時の数字。今の標高は4169メートル)
- 海面から、まわりの海の底まで:約5000メートル
- 山の重さで、海の底がさらにへこんでいる深さ:約8000メートル
3つを足すと、4170+5000+8000=1万7170メートルです。コラムは、マウナロアのふもとから山頂までを約1万7170メートルとして、ふもとから測ると世界一高い山だと書いています。エベレストの8849メートルの、2倍近い高さです。
04マウナロアの下の海の底は、山の重さで約8000メートルもへこんでいる
なぜ、海の底がへこむのでしょうか。USGSの1998年のコラムによると、理由は山の重さです。
マウナロアは、とても重い山です。USGSのマウナケアの解説によると、マウナロアの体積は約9万5000立方キロメートル。マウナケアの約4万2000立方キロメートルの、2倍以上です。
この重さで、山の下の地殻がしなって、下に押し下げられます。コラムは、へこんだ海の底の形を、ひっくり返した円すいのような形だと書いています。上にのった火山の形を、そのまま下に映したような形です。
USGSの2002年のコラムは、マウナケアについてこう書いています。マウナケアは、海面からの高さではマウナロアより少し高い。でも、ふもとの深さは、マウナロアにとても及ばない。
つまり、「ふもとから測って世界一高い山」として、NOAAはマウナケアを、USGSはマウナロアを挙げていて、答えが食い違っています。USGSの約1万7000メートルは、山の重さでへこんだ海の底まで数えた数字です。NOAAのページには、マウナケアの1万210メートル以上が、へこみまで数えた数字かどうかは書かれていません。どこを「ふもと」と決めるかで、世界一の山が入れかわるのです。
深掘り講義
ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。
海の底のへこみは、地震の波が伝わる速さで調べた
マウナロアの下で海の底が約8000メートルもへこんでいると、どうして分かるのでしょうか。海の底の、さらに下の岩の中は、直接は見られません。
使われたのは、地震の波です。地球の表面の地殻の下には、マントルという別の岩の層があります。1998年のコラムによると、地震の波は、地殻の岩の中では秒速7キロまでの速さで進みます。マントルの岩の中では、秒速8キロ以上で進みます。
地殻とマントルの境目は、モホ面と呼ばれます。1909年に、クロアチアの地震学者モホロビチッチ(Andrija Mohorovičić)が見つけた境目です。境目の上と下では、地震の波の速さがはっきり違います。この速さの違いを手がかりにすると、境目がどの深さにあるかを調べられます。
USGSの地震学者は、「屈折法」という調べ方を使いました。地震の波が、岩の層の境目で向きを曲げて進むことを利用して、境目の深さを調べる方法です。そして、マウナロアの下のモホ面が、最大8キロも下にたわんでいることを見つけました。山の下の地殻が、山の重さで下に押し曲げられていたのです。
海のプレートは、重い火山がのると「しなる板」のように曲がる
ハワイの島々は、太平洋の海のプレートの上にのっています。プレートとは、地球の表面をおおう、固い岩の板のことです。
板の上に重い物をのせると、板はしなります。1989年、研究者のワッツ(Anthony Watts)とテン・ブリンク(Uri ten Brink)は、ハワイの下のプレートを、しなる板とみなして、火山の重さでどれだけ曲がるかを計算しました。計算で出した地層の深さは、地震の波で調べた実際の地層の深さとよく合いました。
2018年には、研究船がハワイの島々の南の部分のまわりで、海の中から人工の音の波を出しました。はね返ってくる波を記録して、海の底の下の地層を調べたのです。その結果をまとめた2025年の論文によると、海の底の泥の下にある岩の層(海の地殻)の上の面が、火山の重さで最大約4.5キロ下にたわんでいました。
1998年のコラムの約8000メートルは、マウナロアの真下の数字です。2025年の論文の約4.5キロは、島々のまわりを調べた数字です。測った場所も、測った面も違うので、2つの数字をそのまま比べることはできません。それでも、「ハワイの重い火山が、海の底を下に押し曲げている」という点では、2つの調査は一致しています。
「いちばん高い山」は、どこから測るかで答えが3つある
ここまでの話をまとめると、「いちばん高い山」には少なくとも3つの答えがあります。
- 海面から山頂まで:エベレスト(8849メートル)
- 海の底のふもとから山頂まで:NOAAはマウナケア(1万210メートル以上)、へこみまで数えるUSGSはマウナロア(約1万7000メートル)
- 地球の中心から山頂まで:エクアドルのチンボラソ(標高6268メートル)
地球は、赤道のあたりが少しふくらんだ形をしています。3つ目のチンボラソは赤道のすぐ近くにあるので、地球の中心からの距離がいちばん大きくなる山です。NOAAによると、その山頂は、エベレストの山頂より2072メートル以上も地球の中心から遠いのです。
どの答えも、数え方がはっきりしていれば正しいと言えます。「世界一高い山」という言葉には、「海面から測って」という条件が、ふつうは書かれずに隠れているのです。
05まとめ
ハワイのマウナケアは、海面から山頂まで4207メートルです。でも、ふもとは太平洋の深い海の底にあり、ふもとから山頂までは1万210メートル以上あります。エベレストの8849メートルより、1300メートル以上高いのです。
隣のマウナロアは、山の重さで海の底が約8000メートルもへこんでいます。USGSは、そのへこみまで数えて、マウナロアの高さを約1万7000メートルとしています。
ハワイ島でマウナケアを見上げるとき、私たちが見ているのは、山の高さの4割ほどにすぎません。残りの6割近くは、青い海の下に隠れています。
人に話すなら、こう言おう
ハワイのマウナケアって、海の上に出てるのは4207mだけど、海の底から測ると1万210m以上あって、エベレストより高いんだって。隣のマウナロアは、へこんだ海の底まで数えると約1万7000mらしいよ。
英語で読む
A Giant Mountain Hidden by the Sea
英文をタップすると、その文の訳が出ます。
Most people say that Mount Everest is the highest mountain in the world.多くの人は、エベレストが世界でいちばん高い山だと言います。 Its top is 8,849 meters above the sea.その山頂は、海面から8849メートルの高さにあります。 But this number starts at the surface of the sea.でもこの数字は、海面から測ったものです。
Mauna Kea is a volcano on the island of Hawaii.マウナケアは、ハワイ島にある火山です。 Its top is 4,207 meters above the sea.その山頂は、海面から4207メートルの高さです。 But the base of the mountain is deep under the Pacific Ocean.でも、この山のふもとは、太平洋の深い海の下にあります。 From its base to its top, Mauna Kea is more than 10,210 meters tall.ふもとから山頂までだと、マウナケアは1万210メートル以上あります。 So it is more than 1,300 meters taller than Everest.つまり、エベレストより1300メートル以上高いのです。
About 6,000 meters of the mountain is under the water.山の高さのうち、約6000メートルは水の下にあります。 We can only see the top part, about 40 percent of its height.私たちに見えるのは上の部分だけで、高さの4割ほどです。
Another volcano, Mauna Loa, stands next to Mauna Kea.マウナケアのとなりには、マウナロアという別の火山があります。 It is a very heavy mountain.マウナロアは、とても重い山です。 Its weight pushes the sea floor down by about 8,000 meters.その重さで、海の底が約8000メートルも押し下げられています。 Scientists at the USGS, a science group of the U.S. government, added three numbers.アメリカ政府の科学機関であるUSGSの科学者たちは、3つの数字を足しました。 They were the part above the sea, the part under the water, and the dent under the mountain.海の上の部分、水の下の部分、そして山の下のへこみです。 The total was about 17,170 meters.合計は約1万7170メートルでした。 That is almost twice as tall as Everest.エベレストの2倍近い高さです。
How did they find the dent?そのへこみを、どうやって見つけたのでしょうか。 They used earthquake waves.地震の波を使ったのです。 These waves move at different speeds in different layers of rock.地震の波は、岩の層によって違う速さで進みます。 So the waves helped them find the line between two deep layers.そのため、地震の波を手がかりに、深い2つの層の境目を見つけられたのです。 When you look at Hawaii, you are seeing only the top of a giant mountain.ハワイを眺めるとき、あなたが見ているのは巨大な山のてっぺんだけなのです。
4択問題 Reading Quiz
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Q1What is this story mainly about?
この話は主に何についてのものですか。
正解:A How a mountain's height changes when we measure from its base
第1段落で「エベレストの高さは海面から測った数字」と述べ、第2〜4段落でふもとから測ったマウナケアとマウナロアの高さを説明しているので、正解はA。B・C・Dは本文に書かれていない。
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Q2How tall is Mauna Kea from its base to its top?
マウナケアは、ふもとから山頂までどのくらいの高さですか。
正解:C More than 10,210 meters
第2段落4文目に「ふもとから山頂までだと1万210メートル以上」とあるので正解はC。Aは海面からの高さ、Bはエベレストの高さ、Dはマウナロアの数字。
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Q3Why is the sea floor under Mauna Loa pushed down?
マウナロアの下の海の底は、なぜ押し下げられているのですか。
正解:B Because the mountain is very heavy
第4段落2〜3文目に「とても重い山で、その重さで海の底が押し下げられている」とあるので正解はB。A・C・Dのような理由は書かれていない。
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Q4In paragraph 4, the word "dent" is closest in meaning to
第4段落の dent という語に最も意味が近いのはどれですか。
正解:C a low, pushed-down place
第4段落で、山の重さで海の底が押し下げられていると説明した後に dent が出てくるので、「押し下げられてできたくぼみ」の意味。正解はC。Aは逆の意味。
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Q5Which is true about the story?
この話の内容と合っているのはどれですか。
正解:D Earthquake waves helped scientists find the dent.
第5段落1〜2文目で、へこみを見つけるのに地震の波を使ったとあるので正解はD。Bは第3段落(見えるのは高さの4割ほど)と逆。Aは太平洋の下にあるのはマウナケアのふもと。
重要語 Key Words(タップで裏返る)
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volcano名詞火山
The volcano is quiet now, but it may erupt again.
その火山は今は静かだが、また噴火するかもしれない。
💡 複数形は volcanoes。ローマ神話の火の神 Vulcan から。
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surface名詞表面、(水の)面
A leaf was floating on the surface of the pond.
池の水面に葉が一枚浮いていた。
💡 sur(上)+face(顔)。the surface of the sea で「海面」。
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base名詞ふもと、土台、いちばん下の部分
We started our walk at the base of the hill.
私たちは丘のふもとから歩き始めた。
💡 野球の「ベース」と同じ語。at the base of 〜 で「〜のふもとで」。
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weight名詞重さ
The weight of the snow broke the old roof.
雪の重さで古い屋根がこわれた。
💡 動詞は weigh(重さが〜ある)。gh は発音しない。
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dent名詞へこみ、くぼみ
There is a small dent in the side of my car.
私の車の横に小さなへこみがある。
💡 物が押されてできたへこみ。動詞で「へこませる」の意味もある。
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layer名詞層
This cake has three layers of cream.
このケーキにはクリームの層が3つある。
💡 lay(置く)から。「重ねて置いたもの」と覚える。
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government名詞政府
The government built a new bridge over the river.
政府はその川に新しい橋をかけた。
💡 govern(治める)+-ment。つづりの n を落としやすいので注意。
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total名詞合計
The total for the lunch was 2,000 yen.
昼ごはんの合計は2000円だった。
💡 in total で「合計で」。形容詞で「全部の」の意味もある。
SOURCES出典・ウラ取り
この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 23件)。
- What is the highest point on Earth as measured from Earth's center?(NOAA National Ocean Service)oceanservice.noaa.gov
- Geology and History of Mauna Kea(USGS Hawaiian Volcano Observatory)usgs.gov
- Volcano Watch — How high is Mauna Loa?(USGS, 1998)usgs.gov
- Volcano Watch — Hawaiian volcanoes and their Olympic moments(USGS, 2002)usgs.gov
- Glaciers Existed on Mauna Kea During Recent Ice Ages(USGS)usgs.gov
- Han, X. et al. (2024) Recent uplift of Chomolungma enhanced by river drainage piracy, Nature Geoscience 17doi.org
- Watts, A. B. & ten Brink, U. S. (1989) Crustal structure, flexure, and subsidence history of the Hawaiian Islands, Journal of Geophysical Research: Solid Earth 94doi.org
- Boston, B. et al. (2025) Crustal Structure Along and Surrounding the Hawaiian Islands, Journal of Geophysical Research: Solid Earth 130doi.org
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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。
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No.021ホントTRUEクレオパトラとピラミッドの年の差は、クレオパトラと私たちの年の差より大きい
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No.023ホントTRUEサメは、木よりも古くから地球にいる生き物だった
ただし今のサメの仲間は、木よりずっと新しい。
No.117グレーGRAYナマケモノが、わざわざ木から下りてうんちをする理由は分かっていない
「毛のガを育てるため」説には反論がある。
No.153グレーGRAY宇宙から帰った宇宙服には、宇宙のにおいが残っている
月の砂は、地球ではにおわなくなった。
No.068グレーGRAYしゃっくりが「92%止まる」ストローの数字は、アンケートの結果だった
比べる相手のいない調査だった。