中性子星の物質は、小さじ1杯で約15億トンになると計算できる
宇宙と地球No.261

中性子星の物質は、小さじ1杯で約15億トンになると計算できる

中性子星の小さじ1杯の重さは、NASAでも400倍違う。

ホントTRUE

この判定の対象「中性子星の物質は、小さじ1杯で何億トンにもなる」

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もくじ
  1. 中性子星は、太陽くらいの重さを、直径20kmほどの球につめこんだ星
  2. NASAのページによって、小さじ1杯の重さは1000万トンから40億トンまで違う
  3. 2013年の記事の大きさと重さで計算すると、小さじ1杯は約40億トンになる
  4. 実際に大きさを測った中性子星で計算すると、小さじ1杯は約15億トン
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

「中性子星の物質は、ティースプーン1杯で何億トンにもなる」。宇宙の本やテレビで、こんな説明を見たことがあるかもしれません。

では、正確には何トンなのでしょうか。NASAのページを調べてみると、答えはばらばらでした。ハッブル宇宙望遠鏡のページは1000万トン。2013年の記事は約10億トン。2020年の記事は40億トン。いちばん小さい数字といちばん大きい数字では、400倍も違います。

確かめた範囲では、どのページも、その数字をどうやって出したかを書いていません。そこでこの記事では、中性子星の重さと大きさから、自分で計算してみます。

まず、中性子星がどんな星かを紹介します。次に、NASAのページの数字をくらべます。そのあと、2013年の記事にある大きさと重さで計算します。最後に、実際に大きさを測った中性子星のデータで計算し直します。

01中性子星は、太陽くらいの重さを、直径20kmほどの球につめこんだ星

中性子星は、重い星がつぶれてできる星です。NASAによると、重い星は、燃料を使い果たすとつぶれます。星の中心部がつぶれるとき、陽子と電子が押しつぶされて、1つ1つが中性子になります。中性子は、原子の中心にある、電気を帯びていない小さな粒です。

NASAの説明では、中性子星の直径は約20kmです。そこに、太陽くらいの重さがつまっています。NASAはこれを、太陽の重さを都市の大きさまで押しつぶしたもの、とたとえています。

中性子星の中には、とても速く回りながら、電波や光などの束を出しているものがあります。その束が地球の方を向くたびに、点滅するように届きます。こうした中性子星は「パルサー」と呼ばれます。点滅の間かくは、ふつう1000分の1秒から数秒です。NASAによると、パルサーは1967年、イギリスのケンブリッジ大学で博士課程の学生だったジョスリン・ベル・バーネルが見つけました。

02NASAのページによって、小さじ1杯の重さは1000万トンから40億トンまで違う

NASAのページにある数字を、並べてみます。

  • ハッブル宇宙望遠鏡のパルサーのページ:小さじ1杯で1000万トン。
  • 2013年の、スウィフト衛星についての記事:小さじ1杯で、地球の上で約10億トン。
  • 2020年の、生まれて約240年と考えられる若い中性子星についての記事:小さじ1杯で、地球の上で40億トン。

もう1つ、NASAの宇宙の解説サイトは、小さじではなく角砂糖を使っています。角砂糖1個ぶんの中性子星の物質は約1兆kg、つまり約10億トンで、山1つくらいの重さだというのです。

1000万トンと40億トンでは、400倍の差があります。確かめた範囲では、どのページも、小さじを何ミリリットルとしたのかを書いていません。ページの数字を並べるだけでは、どれが正しいのかを判断できません。

032013年の記事の大きさと重さで計算すると、小さじ1杯は約40億トンになる

まず、2013年の記事にある数字で計算してみます。記事によると、中性子星は、地球の約50万倍の重さを、直径約12マイル(約19.3km)の球につめこんだものです。地球の50万倍の重さは、太陽の約1.5倍にあたります。

計算の前提は、次の3つです。

  • 小さじ1杯は、5ミリリットルとする。
  • 1トンは1000kgとする。
  • 中性子星は、どこも同じ密度の球と考える(だから出てくるのは「平均の密度」)。

密度は、重さを体積で割ったものです。球の体積は、「3分の4×円周率×半径×半径×半径」で計算します。半径は約9.66kmです。

計算すると、平均の密度は、1立方メートルあたり約7.9×10の17乗kgになりました。10の17乗は、1のあとに0が17個つく数です。小さじ1杯(5ミリリットル)にすると、約4.0×10の12乗kgです。トンに直すと、約40億トンになります。

2013年の記事は、小さじ1杯を「約10億トン」と書いています。でも、同じ記事の大きさと重さで計算すると、その約4倍になるのです。この40億トンは、2020年の記事の数字に近い値です。

中性子星は、太陽くらいの重さを、1つの都市ほどの大きさにつめこんだ星。
中性子星は、太陽くらいの重さを、1つの都市ほどの大きさにつめこんだ星。

04実際に大きさを測った中性子星で計算すると、小さじ1杯は約15億トン

ここまでの計算は、記事に書かれた「約」のついた数字を使ったものでした。次は、実際に重さと大きさを測った中性子星で計算します。

NASAは、国際宇宙ステーションに、NICER(ナイサー)というX線望遠鏡をつけています。2017年に打ち上げられ、中性子星などを調べています。

2019年、ライリー(T. E. Riley)らの研究チームが、NICERの観測データを使った論文を出しました。調べたのは、「PSR J0030+0451」という名前のパルサーです。その結果、重さは太陽の約1.34倍、赤道の半径は約12.71kmと見積もられました。

この数字で、同じように計算します。平均の密度は、1立方メートルあたり約3.1×10の17乗kgです。小さじ1杯にすると、約1.55×10の12乗kg。トンに直すと、約15億トンです。

論文の数字には、誤差の幅があります。論文が示した幅の端どうしを組み合わせて計算してみます。いちばん軽くなる組み合わせ(重さが小さめで、半径が大きめ)では約11億トン。いちばん重くなる組み合わせ(重さが大きめで、半径が小さめ)では約23億トンです。どちらにしても、「小さじ1杯で何億トン」という説明は、計算と合っています。

この平均の密度は、地球の平均の密度の約56兆倍です。もし地球を、この中性子星と同じ平均の密度までぎゅっと押しつぶしたら、直径約330mの球になります。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

中性子星の大きさは、表面の熱い場所から出るX線の変化で測られた

中性子星は、直径20kmほどしかなく、とても遠くにあります。物差しを当てて大きさを測ることはできません。では、ライリーらは、どうやって半径を見積もったのでしょうか。

中性子星の表面には、まわりより熱い場所があります。その場所から出るX線は、星が回るにつれて、見えたり隠れたりします。中性子星は重力がとても強いので、そのまわりでは光の進む道すじが曲がります。曲がり方は、星の重さと大きさで変わります。

研究チームは、光の道すじの曲がり方を計算に入れて、X線の明るさの変化を説明できる重さと大きさを探しました。その結果、熱い場所は、星の同じ側の半球に2つあると考えると、データをよく説明できました。

同じ年、ミラー(M. C. Miller)らの別のチームも、同じパルサーを別の考え方で分析しました。そして、ライリーらと食い違わない重さと半径を出しました。このパルサーは、1秒間に205.53回も回っています。

計算で出したのは「平均の密度」で、中心はもっと特別な物質でできている

この記事で計算したのは、中性子星全体をならした「平均の密度」です。ミラーらの論文によると、中性子星の中心部には、原子核の中よりも密度が高い物質があると考えられています。そのため、中性子星は、原子核を研究する物理学者にとっても大事な研究の相手です。

NASAによると、NICERのデータからは、中性子星の物質が、一部の物理学者が予想していたより押しつぶされにくいことも分かってきました。NASAは中性子星を、天文学者が直接観測できる中で最も密度の高い天体だと説明しています。中性子星の大きさを正確に測ることは、その中身を調べることにつながっているのです。

NASAのページ同士でも、数字が食い違うことがある

NASAのページの食い違いは、小さじの重さだけではありません。中性子星になる中心部の重さを、解説サイトは太陽の「約1〜3倍」、ハッブルのページは「1.2〜3倍」と書いています。

数字が食い違ったときに大事なのは、どちらが正しいかを決めつけることではありません。その数字が何から計算されたのかをたどることです。この記事では、重さと大きさという元の数字にもどって、自分で計算しました。元の数字が分かれば、誰でも同じ計算をして確かめられます。

中性子の発見から、中性子星の発見まで

中性子という粒が見つかったのは、1932年です。物理学者のチャドウィック(J. Chadwick)が、科学誌ネイチャーに「中性子が存在する可能性」という題の短い報告を出しました。

それから約35年後の1967年、ベル・バーネルが、規則正しく点滅する電波を見つけました。翌年の1968年2月、ネイチャーに、ヒューイッシュ(A. Hewish)やベルたちの論文がのりました。題は「すばやく脈打つ電波源の観測」です。この電波源は、のちに中性子星だと分かりました。

05まとめ

中性子星の小さじ1杯の重さは、NASAのページによって、1000万トンから40億トンまで、400倍も違っていました。2013年の記事にある大きさと重さで計算すると、約40億トンになりました。NICERで実際に重さと大きさを測った中性子星で計算すると、約15億トンです。

その中性子星と同じ平均の密度まで地球を押しつぶすと、地球は直径約330mの球になります。

人に話すなら、こう言おう

中性子星ってスプーン1杯で何億トンって言うけど、NASAのページでも1000万トンから40億トンまで数字がばらばらなんだって。測った大きさで計算すると、小さじ1杯で約15億トンになるらしいよ。
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英語で読む

A Very Heavy Teaspoon

CEFR A2219 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

People often say that a teaspoon of neutron star would weigh hundreds of millions of tons.中性子星の物質は小さじ1杯で何億トンにもなる、とよく言われます。 But how heavy is it really?でも、本当はどれくらい重いのでしょうか。

A neutron star forms when a big star uses up its fuel and falls in on itself.中性子星は、大きな星が燃料を使い果たし、内側へつぶれてできます。 It has about the mass of the Sun, but it is only about 20 kilometers across.太陽くらいの重さがあるのに、直径は約20kmしかありません。 Some neutron stars spin fast and flash like lighthouses.中性子星の中には、速く回って灯台のように点滅するものがあります。 In 1967, a student named Jocelyn Bell Burnell found the first one.1967年、ジョスリン・ベル・バーネルという学生が、最初の1つを見つけました。

NASA web pages give very different answers.NASAのウェブページには、とても違う答えがのっています。 One page says 10 million tons.あるページは1000万トンと書いています。 Another says 4 billion tons.別のページは40億トンと書いています。 That is a difference of 400 times.これは400倍の違いです。 The pages do not explain how they got these numbers.ページには、その数字をどうやって出したかが説明されていません。

So let's do the math ourselves.そこで、自分たちで計算してみましょう。 First, we need the star's mass and size.まず、星の重さと大きさが必要です。 In 2019, scientists used NICER, an X-ray telescope on the International Space Station.2019年、科学者たちは、国際宇宙ステーションにあるX線望遠鏡NICERを使いました。 They measured one neutron star.彼らは、1つの中性子星を測りました。 Its mass was about 1.34 times the Sun's, and its radius was about 12.7 kilometers.その重さは太陽の約1.34倍、半径は約12.7kmでした。 If a teaspoon holds 5 milliliters, a teaspoon of this star would weigh about 1.5 billion tons.小さじ1杯を5ミリリットルとすると、この星の小さじ1杯は約15億トンになります。

With the measurement errors, the answer is about 1.1 to 2.3 billion tons.測定の誤差を入れて計算すると、答えは約11億トンから23億トンになります。 NASA says that about one billion tons is as heavy as a mountain.NASAによると、約10億トンは山1つくらいの重さです。 If we squeezed Earth to the same density, it would be a ball only about 330 meters wide.もし地球を同じ密度まで押しつぶしたら、直径わずか約330mの球になるでしょう。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How wide is a neutron star?

    中性子星の直径はどれくらいですか。

  3. Q3Why did the writer do the math?

    筆者が計算をしたのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "squeezed" is closest in meaning to ...

    第5段落の squeezed に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the neutron star measured by NICER?

    NICERで測った中性子星について、正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • neutron名詞
    中性子

    A neutron has no electric charge.

    中性子は電気を帯びていない。

    💡 neutral(中性の)から。proton(陽子)、electron(電子)とセットで覚える。

  • teaspoon名詞
    小さじ、ティースプーン

    Add a teaspoon of sugar to the tea.

    紅茶に砂糖を小さじ1杯入れなさい。

    💡 tablespoon は「大さじ」。

  • weigh動詞
    重さが~ある、重さを量る

    This bag weighs 3 kilograms.

    このかばんは重さが3キログラムある。

    💡 名詞は weight(重さ)。gh は発音しない。

  • fuel名詞
    燃料

    The car ran out of fuel.

    車の燃料がなくなった。

    💡 run out of fuel で「燃料を使い果たす」。

  • measure動詞
    測る

    We measured the length of the room.

    私たちは部屋の長さを測った。

    💡 名詞は measurement(測定)。

  • radius名詞
    半径

    The radius of this circle is 5 centimeters.

    この円の半径は5センチだ。

    💡 直径は diameter。複数形は radii。

  • density名詞
    密度

    Water has a density of about 1 gram per cubic centimeter.

    水の密度は1立方センチメートルあたり約1グラムだ。

    💡 形容詞 dense(ぎっしりつまった)。

  • squeeze動詞
    しぼる、押しつぶす

    She squeezed an orange to make juice.

    彼女はジュースを作るためにオレンジをしぼった。

    💡 squeeze A into B で「AをBに押しこむ」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 19件)。

  1. Neutron Stars(NASA Imagine the Universe!)imagine.gsfc.nasa.gov
  2. NASA's Swift Reveals New Phenomenon in a Neutron Star(NASA, 2013)nasa.gov
  3. A Cosmic Baby Is Discovered, and It's Brilliant(NASA JPL, 2020)nasa.gov
  4. Pulsars(NASA Science, Hubble)science.nasa.gov
  5. Riley, T. E. et al. (2019) A NICER View of PSR J0030+0451: Millisecond Pulsar Parameter Estimation, The Astrophysical Journal Letters 887: L21doi.org
  6. Miller, M. C. et al. (2019) PSR J0030+0451 Mass and Radius from NICER Data and Implications for the Properties of Neutron Star Matter, The Astrophysical Journal Letters 887: L24doi.org
  7. NICER(NASA Science)science.nasa.gov
  8. Hewish, A., Bell, S. J. et al. (1968) Observation of a Rapidly Pulsating Radio Source, Nature 217: 709-713doi.org
  9. Chadwick, J. (1932) Possible Existence of a Neutron, Nature 129: 312doi.org

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