ガが明かりのまわりを回るのは、背中を光のほうへ向けてしまうからだと分かってきた
都市伝説ファクトチェックNo.270

ガが明かりのまわりを回るのは、背中を光のほうへ向けてしまうからだと分かってきた

明かりのまわりのガは、背中を明かりのほうへ向けていた

ウソFALSE

この判定の対象「ガは明かりが好きで、明かりをめざしてまっすぐ飛んでくる」

うなり度 読む時間8分 出典3件 確認した事実29件
もくじ
  1. 虫が明かりに集まる理由には、昔から4つの説があった
  2. 研究チームは、虫の背中に小さな目印をつけて飛び方を記録した
  3. 明かりの近くの虫は、光をめざさず、背中を光のほうへ向けて飛んでいた
  4. 虫は、一番明るい方を「上」だと思っている
  5. 明かりを上から当てると、虫は普通に飛べた
  6. 深掘り講義
  7. まとめ
  8. 英語で読む(A2・4択5問)
  9. 出典・ウラ取り

夏の夜、玄関の明かりのまわりを、ガがぐるぐる回っています。「ガは明かりが好きだから集まってくる」。多くの人がそう思っているはずです。

ところが2024年、イギリスやアメリカなどの研究チームが、この思いこみをくつがえす論文を発表しました。チームは、明かりのまわりを飛ぶ虫を高速カメラで撮影し、飛び方を立体的に記録しました。すると、虫は光をめざして飛んでいませんでした。光に対して横向きに飛び、背中をずっと光のほうへ向けていたのです。

明かりの真上を飛んだ虫は、背中を下の明かりに向けようとして、ひっくり返りました。そのまま地面に落ちることもありました。この記事では、まず昔から考えられてきた4つの説を紹介します。次に、2024年の研究が何をどうやって調べたのかを見ます。最後に、街灯から少し離れた所で放したガがどう飛んだのかを確かめます。

01虫が明かりに集まる理由には、昔から4つの説があった

虫が明かりに集まることは、とても古くから知られていました。明かりで虫をつかまえる方法も、昔からありました。2024年の論文によると、一番古い記録は、紀元1年ごろのローマ帝国のものです。

それでも、虫がなぜ明かりに集まるのかは、はっきりしていませんでした。論文は、よく知られた説を4つ挙げています。

  • 逃げ道の説:虫は、しげみのすき間をめざすように、明るい所へ向かって飛ぶ。
  • 月の説:虫は月を目印にして飛んでいて、明かりを月と間違える。
  • 熱の説:虫は、明かりから出る熱に引き寄せられる。
  • 目がくらむ説:暗さに慣れた虫の目が、明かりでくらんでしまう。

どの説も、虫の飛び方を細かく測ったデータで確かめられたことは、ほとんどありませんでした。小さな虫が暗い中を飛ぶ様子を、立体的に記録する道具がなかったからです。論文によると、昔の研究者の中には、ガを発泡スチロールの小舟にのせて調べた人もいました。

02研究チームは、虫の背中に小さな目印をつけて飛び方を記録した

研究したのは、サミュエル・フェビアン(Samuel Fabian)たちです。フェビアンは、イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者です。アメリカのフロリダ国際大学などの研究者も加わりました。

チームは、2つの方法で調べました。1つは、中米のコスタリカの森での撮影です。2台の高速カメラを並べて、明かりのまわりを飛ぶ野生の虫を撮りました。多くの動画は、1秒に500コマの速さで撮っています。撮影のための照明には、虫には見えないと考えられる赤外線を使いました。赤外線のライトに虫がぶつかったり寄ってきたりする様子は、見られませんでした。撮った動画は477本で、10のグループの虫が写っていました。グループは、チョウ目、ハエ目のような、生き物の分け方の「目」です。一番多かったのは、ガやチョウのなかまです。

もう1つは、イギリスの研究室での実験です。虫の背中に、L字の形にならべた小さな目印をつけました。目印の重さは、虫の体重の5%未満です。この目印をカメラで追うと、虫の体がどの向きに傾いているかが分かります。この方法は「モーションキャプチャー」と呼ばれ、映画で人の動きを記録するのにも使われます。トンボ2種類とガ2種類で、合わせて538本の飛び方を記録しました。

03明かりの近くの虫は、光をめざさず、背中を光のほうへ向けて飛んでいた

記録を調べると、虫は光のほうへまっすぐ飛んでいませんでした。飛ぶ向きは、光の方向に対してほぼ直角、つまり横向きにそろっていました。そして、背中を光のほうへ向けていました。

研究チームは、明かりの近くで見られた変わった飛び方を、3つに分けています。

  • 回る:体を明かりのほうへ傾けたまま、明かりのまわりをぐるぐる回る。
  • 失速する:明かりと反対のほうを向いて急に上へのぼり、速さを失って進めなくなる。
  • ひっくり返る:明かりの真上を飛ぶと、背中を下の明かりに向けようとして裏返り、急に落ちる。

明かりを消した暗い中でも、41本の動画を撮りました。そこでは、明かりのまわりを回る飛び方も、ひっくり返る飛び方も、1回も見られませんでした。

明かりの真上を飛ぶ虫は、背中を下の明かりに向けようとして、ひっくり返ってしまう。
明かりの真上を飛ぶ虫は、背中を下の明かりに向けようとして、ひっくり返ってしまう。

04虫は、一番明るい方を「上」だと思っている

なぜ背中を光のほうへ向けるのでしょうか。論文によると、虫が空を飛んできた長い歴史の中で、目に見える景色のうち一番明るいのは、いつも空でした。夜でもそうです。だから「一番明るい方が上」と考えれば、虫は上と下をすばやく正しく知ることができます。

多くの飛ぶ虫は、背中を一番明るい方へ向ける習性を持っています。これを「背光反応」といいます。普通なら、この習性のおかげで、虫は背中を空に向け、まっすぐ安定して飛べます。

ところが、すぐ近くに電球があると、一番明るいのは空ではなく電球になります。虫は電球のほうへ背中を傾けます。すると体が横に傾いたままになり、明かりのまわりを回り続けてしまいます。研究チームは、コンピューターで虫の飛び方をまねする計算もしました。「背中を一番明るい方へ向ける」という決まりだけで、明かりのまわりの不思議な飛び方が再現できました。

05明かりを上から当てると、虫は普通に飛べた

研究チームは、明かりの向きを変える実験もしました。コスタリカの森で、紫外線のランプを下向きにして、地面に広げた白い布を照らしました。すると、布の上を飛ぶ虫はひっくり返り、宙で回って地面に落ちました。研究チームは、光が下から来るので、虫が地面のほうを「上」だと思ってしまったためだと考えています。

次に、同じランプを上向きにして、頭の上に張った白い布を照らしました。布ではね返った光は、空のように上から降りそそぎます。この場合、虫はランプに集まらず、明るい布の下を普通に飛んでいきました。

体長2cm以下の小さな虫でも試しました。一辺20cmの透明な箱に入れ、紫外線を上から当てると、虫は天井に向かって安定して飛びました。下から当てると、ショウジョウバエ以外の虫は、飛び立ってすぐに傾き、ひっくり返って床に落ちました。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

4つの古い説は、どこが合わなかったのか

2024年の論文は、昔の4つの説を、記録した飛び方と1つずつ比べています。

  • 逃げ道の説:虫は明かりへ向かって飛んでいなかった。光に対して横向きに飛んでいたので、「明るい所へ逃げる」という前提が合わない。
  • 月の説:月を目印にする虫は、目印をいつも体の同じ側の同じ位置に保つはずだ。この説が正しければ、虫は明かりに向かって、うずまきの形にだんだん近づいていくはずだった。ところが虫は、明かりを体の右にも左にも置いて飛び、うずまきの道すじも見られなかった。明かりの上で失速したり、ひっくり返ったりすることも説明できない。
  • 熱の説:LEDの明かりは熱(赤外線)をほとんど出さないのに、たくさんの虫が集まる。
  • 目がくらむ説:虫の飛び方は、明かりを中心に決まった形をくり返していた。目がくらんだのなら、こうはならない。

論文は、背中を光のほうへ向ける習性で説明するのが、一番むだのない考え方だとしています。この習性は、昼に飛ぶ虫にも夜に飛ぶ虫にも広く見られます。そのため、いろいろな種類の虫が明かりに集まることも説明できます。

小さな虫ほど、光で「上」を決める必要がある

大きなトンボやチョウは、体の形のおかげで、何もしなくてもある程度は安定して飛べます。ところが小さな虫は、空気のねばりの影響を大きく受けるので、グライダーのように滑空することができません。体が傾いたら、すぐに自分で直す必要があります。

ゆっくり飛ぶときなら、ぶら下がった脚の重さで、どちらが下かを感じることもできます。でも論文によると、急に向きを変えるときには、この方法は頼りになりません。フロリダ国際大学の発表は、飛ぶ虫は人間のパイロットを超えるような急な動きをするので、重さで上下を感じるしくみが当てにならなくなる、と説明しています。だから、夜でも空の明るさを使って、どちらが上かを決めているのです。

明かりは、遠くの虫まで引き寄せているとは限らない

2024年の論文は、明かりの近くの飛び方を調べたもので、遠くから虫が近づいてくるしくみは調べていません。論文も、そこは分かっていないと書いています。

この点を調べたのが、ドイツのヴュルツブルク大学などのチームです。チームは、ガの体に小さなアンテナをつけ、「ハーモニックレーダー」という特別なレーダーで、ガが夜にどこを飛ぶかを追いました。ガを放したのは、6本の街灯に囲まれた場所の真ん中です。どの街灯も、放した場所から85m離れていました。

街灯をつけた日に放したガは50匹でした。そのうち、街灯まで飛んでいって、まわりを回ったり地面に落ちたりしたのは、2匹(4%)だけでした。しかも、実験に使ったガは、もともと明かりを使ってつかまえたガでした。街灯をつけた日のガのうち6匹(12%)は、明るい街灯の10m以内を通ったのに、止まらずに飛び続けました。ただし、実験の街灯は、昔からある高圧ナトリウム灯でした。チームは、光の色や強さが違うLEDの街灯で同じ結果になるかは、これから確かめる必要があると書いています。

一方で、この研究は、街灯がガに影響しないとは言っていません。街灯は、ガの飛ぶ道すじを曲がりくねらせました。月が出ていない夜には、街灯がかべのようになって、カレハガのなかまの移動をさまたげる様子も見られました。チームは、明かりの下に集まったガの数だけを数えると、街灯の影響を小さく見積もってしまうおそれがある、と書いています。

明かりの向きを変えれば、虫への害を減らせるかもしれない

フェビアンたちの論文は、上向きの明かりや、かさで覆われていない明かり、地面からはね返る光を減らすと、夜に飛ぶ虫への影響を減らせると提案しています。上から照らして空のように見せた光の下では、虫が普通に飛べたからです。

06まとめ

「ガは明かりが好きで集まる」という話は、2024年の研究の結果と合いませんでした。明かりの近くの虫は、光をめざさず、背中を光のほうへ向けて、横向きに飛んでいました。虫は、一番明るい方を「上」だと決めて飛んでいるので、すぐ近くの電球を空と間違えてしまうと考えられています。

ドイツの実験では、街灯から85m離れた所で放したガ50匹のうち、街灯まで来たのは2匹だけでした。夜、明かりのまわりを回るガを見たら、ガの背中がどちらを向いているか、よく見てみてください。

人に話すなら、こう言おう

ガって明かりが好きで集まるわけじゃないらしいよ。一番明るい方を「上」だと思うから、電球の近くだと背中を電球のほうに向けたまま回っちゃうんだって。真上ではひっくり返って落ちることもあるらしいよ。
READ IN ENGLISH

英語で読む

Why Moths Circle a Light

CEFR A2224 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

On summer nights, moths fly around and around porch lights.夏の夜、ガは玄関の明かりのまわりをぐるぐる飛びます。 Many people think moths love light.多くの人は、ガは光が大好きなのだと思っています。 But a study in 2024 showed a different answer.でも、2024年のある研究は、違う答えを示しました。

Scientists from the UK, the US, and other countries filmed flying insects near lights.イギリスやアメリカなどの科学者たちが、明かりの近くを飛ぶ虫を撮影しました。 They used fast cameras in a forest in Costa Rica.彼らは、コスタリカの森で高速カメラを使いました。 In a lab, they also put tiny markers on the backs of moths and dragonflies.研究室では、ガやトンボの背中に小さな目印もつけました。 The insects did not fly straight to the light.虫たちは、光に向かってまっすぐには飛びませんでした。 Instead, they flew sideways and kept their backs toward it.その代わりに、横向きに飛び、背中を光のほうへ向け続けていました。

Why do they do this?なぜそうするのでしょうか。 For millions of years, the brightest thing an insect could see was the sky.何百万年ものあいだ、虫に見える一番明るいものは空でした。 So insects follow a simple rule: the bright side is up.そこで虫たちは、明るいほうが上、という単純な決まりに従っています。 They keep their backs toward the brightest place, and this helps them fly the right way up.虫は背中を一番明るい所へ向けていて、それが上下を正しく保って飛ぶ助けになっています。

Near a lamp, this rule goes wrong.電灯の近くでは、この決まりがうまくいかなくなります。 The insect thinks the lamp is the sky and turns its back toward it.虫は電灯を空だと思い、背中をそちらに向けます。 Then it keeps circling the lamp.すると、電灯のまわりを回り続けてしまいます。 When an insect flies right over a lamp, it can turn upside down and fall to the ground.虫が電灯の真上を飛ぶと、ひっくり返って地面に落ちることがあります。

Another team in Germany followed moths with a special radar.ドイツの別のチームは、特別なレーダーでガを追いかけました。 They let moths go 85 meters away from streetlights.彼らは、街灯から85m離れた所でガを放しました。 With the lights on, only 2 of 50 moths ended their flight at a streetlight.街灯をつけているとき、50匹のうち街灯で飛ぶのをやめたのは2匹だけでした。 So moths do not simply love light.つまり、ガは単純に光が好きなわけではないのです。 Lights confuse them about which way is up.明かりは、どちらが上なのかについてガを混乱させるのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many moths ended their flight at a streetlight when the lights were on?

    街灯をつけているとき、街灯で飛ぶのをやめたガは何匹でしたか。

  3. Q3Why do insects keep their backs toward the brightest place?

    虫が背中を一番明るい所に向けるのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "confuse" is closest in meaning to

    第5段落の confuse という語に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true about the story?

    この話について正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • moth名詞
    ガ(蛾)

    A white moth landed on the window.

    白いガが窓にとまった。

    💡 チョウは butterfly。like a moth to a flame は「火に引き寄せられるガのように」という言い回し。

  • insect名詞
    昆虫、虫

    Ants and bees are insects.

    アリやハチは昆虫だ。

    💡 クモは insect ではない(足が8本)。bug はくだけた言い方。

  • sideways副詞
    横向きに、横に

    The crab walked sideways on the sand.

    カニは砂の上を横向きに歩いた。

    💡 side(横)+ ways。look sideways で「横目で見る」。

  • bright形容詞
    明るい

    The room was bright in the morning.

    朝、その部屋は明るかった。

    💡 最上級は brightest(一番明るい)。「頭がいい」の意味もある。

  • circle動詞
    ~のまわりを回る

    The plane circled the airport before landing.

    飛行機は着陸する前に空港のまわりを回った。

    💡 名詞では「円」。動詞として使うと「ぐるりと回る」。

  • upside down副詞
    さかさまに、ひっくり返って

    He held the map upside down.

    彼は地図をさかさまに持っていた。

    💡 上(up side)が下(down)にある状態。inside out は「裏返しに」。

  • radar名詞
    レーダー

    The ship found the island with its radar.

    その船はレーダーで島を見つけた。

    💡 電波を当てて、はね返りで物の位置を知る装置。前から読んでも後ろから読んでも radar。

  • confuse動詞
    混乱させる、まごつかせる

    The new rules confused the students.

    新しい規則は生徒たちを混乱させた。

    💡 形容詞 confused は「混乱した」。confuse A with B で「AとBを取り違える」。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 29件)。

  1. Fabian, S. T., Sondhi, Y., Allen, P. E., Theobald, J. C. & Lin, H.-T. (2024) Why flying insects gather at artificial light, Nature Communicationsdoi.org
  2. Degen, J. et al. (2024) Shedding light with harmonic radar: Unveiling the hidden impacts of streetlights on moth flight behavior, PNASdoi.org
  3. Millennia-old mystery about insects and light at night gets a new explanation(Florida International University News, 2024)news.fiu.edu

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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