宇宙・NASAホント

13億年前のブラックホール合体で、地球が「陽子より小さく」ゆれた。重力波の発見

13億年前のブラックホール合体で、地球が「陽子より小さく」ゆれた。重力波の発見

読む前に予想してみよう!

重力波は、アインシュタインが予言してから約100年後に初めて直接とらえられた

研究カード(どんな研究?)
対象
ブラックホール連星の合体
規模
1イベント(2台の検出器)
研究の種類
観測研究
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

2015年、LIGOが重力波を初めて直接とらえた。約13億光年先のブラックホール合体のゆれで、4kmの装置の長さが陽子より小さく変化した。

ひとことで言うと宇宙のゆれを、陽子より小さいズレで聞きとった!

もくじ
  1. 重力波は「空間そのもののさざ波」
  2. 4kmの腕で「陽子より小さいズレ」を測る
  3. 宇宙の「チャープ音」
  4. 「見る」天文学から「聞く」天文学へ
  5. 日本の重力波望遠鏡KAGRA
  6. まとめ

2015年9月14日、アメリカの2か所にある巨大な装置が、ほぼ同時にほんの一瞬の「ゆれ」をとらえました。

そのゆれの正体は、約13億光年かなたで2つのブラックホールがぶつかって合体したときに生まれた重力波。地球に恐竜どころか、まだ多細胞の生き物もほとんどいなかったころに出発した波が、ついに届いたのです。

01重力波は「空間そのもののさざ波」

1916年、アインシュタインは一般相対性理論から、重い物が激しく動くと、空間そのものがのび縮みする波が光の速さで広がると予言しました。これが重力波です。

ただし、そのゆれはとてつもなく小さいもの。アインシュタイン自身も、実際に測るのは難しいだろうと考えていたと言われます。

重い天体が激しく動くと、空間に波紋が広がる
重い天体が激しく動くと、空間に波紋が広がる

024kmの腕で「陽子より小さいズレ」を測る

LIGO(ライゴ)は、L字型に伸びた長さ4kmの2本の腕を持つ装置です。レーザー光を腕の中で往復させ、2本の腕の長さが少しでも変わると、光の重なり方が変わるしくみになっています。

アメリカのワシントン州とルイジアナ州、約3,000km離れた2台の装置が、約7ミリ秒(1000分の7秒)の差で同じ形の信号をとらえました。2台が別々に同じ信号を見たことが、「地震や車の振動ではない」証拠になりました。

03宇宙の「チャープ音」

信号を音に変えると、「ぴゅっ」と音程が上がる短い音になります。2つのブラックホールが近づくほど速く回り、最後に合体する様子が、そのまま音の高さになって表れているのです。

この発見で、LIGOの計画に大きく貢献した3人の研究者が、2017年のノーベル物理学賞を受賞しました。

04「見る」天文学から「聞く」天文学へ

それまでの天文学は、光や電波など電磁波で宇宙を見てきました。重力波は、光を出さないブラックホール同士の合体も直接とらえられます。

その後、検出器の感度が上がり、合体イベントの検出は数百件規模の候補にまで増えています。2017年には中性子星同士の合体も見つかり、金などの重い元素がどこで作られるかを知る手がかりにもなりました。日本の岐阜県の地下にあるKAGRA(かぐら)も、国際観測ネットワークに加わっています。

05日本の重力波望遠鏡KAGRA

岐阜県飛騨市の神岡の地下に作られたKAGRAは、地下にあることと、鏡をマイナス250℃近くまで冷やすことが大きな特徴です。どちらも、地面のゆれや熱による雑音をおさえて、かすかな重力波を聞きとるための工夫です。

06まとめ

アインシュタインの予言から約100年。人類は、空間そのもののさざ波を聞きとる耳を手に入れました。

それは、陽子より小さなズレを測る、気の遠くなるような精密さのたまもの。宇宙は、まだまだ「聞いたことのない音」で満ちています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1916, Albert Einstein predicted that when heavy objects move violently, they create waves that stretch… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In 1916, Albert Einstein predicted that when heavy objects move violently, they create waves that stretch and squeeze space itself. He believed these gravitational waves would be almost impossible to measure. Nearly one hundred years later, on September 14, 2015, two LIGO detectors in the United States, about 3,000 kilometers apart, recorded the same signal about seven milliseconds apart.

It came from two black holes, about 36 and 29 times heavier than the Sun, that merged about 1.3 billion light-years away. LIGO has two 4-kilometer arms, and the wave changed their length by far less than the size of a proton. Because both detectors saw the same signal, scientists knew it was not local shaking.

115 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1916年、アルベルト・アインシュタインは、重い物体が激しく動くと、空間そのものをのび縮みさせる波が生まれると予言しました。彼は、この重力波を測るのはほとんど不可能だろうと考えていました。それから約100年後の2015年9月14日、約3,000km離れたアメリカにある2台のLIGO検出器が、約7ミリ秒の差で同じ信号を記録しました。

それは、約13億光年先で合体した、太陽の約36倍と約29倍の重さの2つのブラックホールから来たものでした。LIGOには4kmの腕が2本あり、その波は腕の長さを陽子の大きさよりはるかに小さい量だけ変化させました。両方の検出器が同じ信号をとらえたので、科学者たちはそれが現地のゆれではないとわかりました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did Einstein think about measuring gravitational waves?

Q2. How much did the wave change the length of LIGO's arms?

Q3. Why was it important that two detectors saw the same signal?

重要単語

  • gravitational waveC1
    名詞(句)重力波Gravitational waves stretch and squeeze space itself. gravity(重力)の形容詞 gravitational。gravitational pull(引力)も頻出。
  • mergerC1
    名詞合体The merger of two black holes created the signal. 動詞 merge。企業の「合併」の意味でニュース英語に頻出。
  • detectorB2
    名詞検出器LIGO has two detectors far apart in the United States. detect(見つける)+-or。smoke detector(煙感知器)、lie detector(うそ発見器)。
  • interferometerC1
    名詞干渉計A laser interferometer can measure tiny changes in length. interfere(干渉する)+-meter(測るもの)。光の波の重なり(干渉)で長さを測る装置。
  • predictionB1
    名詞予言、予測Einstein's prediction was confirmed a century later. pre-(前に)+dict(言う)。dictionary, dictate も同じ dict。
  • perpendicularC1
    形容詞直角の、垂直なLIGO has two perpendicular arms. perpendicular to ~「~に垂直な」。parallel(平行な)とセットで数学・物理の英文に頻出。
  • simultaneousC1
    形容詞同時のThe near-simultaneous detection ruled out local noise. 副詞 simultaneously。simultaneous interpretation は「同時通訳」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

13億年前のブラックホール合体で、地球が「陽子より小さく」ゆれた。重力波の発見の4コマ漫画
2015年、13億光年先でブラックホール同士がぶつかった「ゆれ」が地球に届いた。4kmの装置の長さが、陽子の大きさよりはるかに小さくのび縮みしたのを測ったらしい。アインシュタインの予言から約100年。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Abbott et al. (LIGO Scientific Collaboration and Virgo Collaboration) (2016) Observation of Gravitational Waves from a Binary Black Hole Merger, Physical Review Lettersdoi.org
  2. LIGO Lab, Caltech: Gravitational Waves Detected 100 Years After Einstein's Prediction(GW150914 Press Release)ligo.caltech.edu
  3. NobelPrize.org: The Nobel Prize in Physics 2017nobelprize.org