宇宙に行くと背が最大3%伸びる。でも地球に帰ると“元通り”になるワケ

読む前に予想してみよう!
宇宙飛行士は宇宙に行くと身長が伸びる
背骨にかかる重さがなくなり、最大3%ほど伸びる。地球に戻ると元に戻る。
- 対象
- スペースシャトル・ISSの宇宙飛行士
- 規模
- 29人(座高測定)+6人(MRI)
- 研究の種類
- 観察研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
無重力では背骨を押しつぶす重さが消え、身長が最大3%ほど伸びる。ただし地球に戻ると重力でまた元に戻る。
ひとことで言うと宇宙では背骨がのびのびして、背が少し高くなるよ!
「身長があと3センチ欲しい!」と思ったこと、ありませんか?実はその夢、宇宙に行けば叶うかもしれません。
宇宙飛行士は、宇宙で暮らしているうちに背がすこし伸びることが知られています。長期滞在では約5cm伸びるとされ、NASAは宇宙船の設計で「身長は最大で約3%伸びる」ことを見込んでいます。身長170cmの人なら、ざっと5cm前後です。
ただし、この話には「オチ」があります。今日はそのオチまで一緒に見ていきましょう。
01犯人は「背骨のクッション」だった
私たちの背骨は、24個ほどの小さな骨(椎骨)が積み木のように重なってできています。骨と骨の間には椎間板(ついかんばん)という、水分をたっぷり含んだクッションがはさまっています。
地球では、1日じゅう重力が上から背骨を押しつぶしています。だから椎間板は少しずつ水分を押し出され、夕方には朝より1cmほど背が低くなることも珍しくありません。
ところが宇宙では、この「上からの重さ」が消えます。
- 椎間板が水分を吸ってふくらむ
- 背骨のゆるやかなS字カーブがまっすぐに近づく
この2つが合わさって、背がグンと伸びるのです。

02NASAが本気で測った「宇宙身長」
「伸びる」と言っても、どれくらい? これを真面目に測った研究があります。
なぜ座高まで測ったのか。それは宇宙船の座席設計のためです。新型宇宙船では座席が上下に並ぶ配置も検討されており、帰還時に「背が伸びて座席に収まらない!」となったら一大事。ちょっと笑える話ですが、命にかかわる真剣な問題なのです。
なお、身長は打ち上げ後の最初の数日で一気に伸び、その後は頭打ちになる傾向があることも、過去の測定から分かっています。
03伸びるのはうれしい…けど、腰が痛い
背が伸びるのはいいことばかりではありません。宇宙飛行士の多くが、宇宙に着いてしばらくの間腰痛を訴えます。椎間板がふくらみ、周りの筋肉や靭帯(骨どうしをつなぐ丈夫なひも)が引っぱられるためと考えられています。
さらに、2016年に学術誌『Spine』に載ったチャンらの研究では、ISSに約半年滞在した宇宙飛行士6人の腰をMRIで調べたところ、背骨を支える筋肉がやせていたことが分かりました。同論文の背景説明では、NASAの宇宙飛行士は一般の人や軍のパイロットと比べて椎間板ヘルニアになるリスクが約4倍高く、とくに帰還後1年以内に多いというデータも紹介されています。
04地球に帰ると「シンデレラの魔法」が解ける
地球に帰還すると、重力が再び背骨にかかり、伸びた分はだんだん縮んでいきます。いわば期間限定の身長アップです。
しかも帰還直後の背骨は、筋肉が弱っているうえにクッションもふくらんでいる可能性がある状態。そこに急に重さがかかるので、ケガをしやすい「要注意期間」でもあります。そのため宇宙飛行士は、帰還後にリハビリを受けながら少しずつ地球の重力に体を慣らしていきます。
05まとめ
- 宇宙では背骨のクッション(椎間板)がふくらみ、カーブも伸びて身長が最大約3%伸びる
- 宇宙船の座席設計にかかわるので、NASAは真剣に測っている
- ただし腰痛や筋肉の衰えとセットで、地球に戻ると元通り
ちなみに、あなたも朝起きた直後がいちばん背が高いはず。身長を測るなら朝がおすすめ……というのは、宇宙と同じ理屈なんです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerOur spine is made of about 24 small bones, and between them are soft discs that contain a lot of water.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Astronauts become a little taller in space. On Earth, gravity pushes down on our backs all day. In space, there is no weight on the back, so the soft cushions between the bones get bigger.
The back also becomes straighter. NASA expects people to grow up to about 3 percent taller. But many astronauts get back pain. After they come back to Earth, they slowly become shorter again.
68 words ・ CEFR A2
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宇宙飛行士は宇宙で少し背が高くなります。地球では、重力が1日じゅう私たちの背中を押し下げています。宇宙では背中に重さがかからないので、骨と骨の間にあるやわらかいクッションが大きくなります。
背骨もよりまっすぐになります。NASAは、人の身長が最大で約3%伸びると見込んでいます。しかし、多くの宇宙飛行士は腰痛になります。地球に戻ってくると、だんだんまた背が低くなります。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
宇宙で背が伸びるしくみと、その後どうなるかを説明しているので A。
Q2. How much taller can people become in space?
NASA expects people to grow up to about 3 percent taller. とあるので C。
Q3. In this passage, "back pain" means ...
pain は「痛み」。back pain で「背中・腰の痛み」なので B。
Our spine is made of about 24 small bones, and between them are soft discs that contain a lot of water. On Earth, gravity squeezes water out of these discs during the day, so many people are about one centimeter shorter in the evening than in the morning. In space, this weight disappears. The discs swell, and the S-shaped curve of the spine becomes straighter.
As a result, astronauts can grow about 5 centimeters on long missions, and NASA plans for a height increase of up to about 3 percent. In one study of 29 astronauts, every one of them had a taller sitting height in space. However, the extra height disappears after they return to Earth, and many astronauts suffer from back pain.
124 words ・ CEFR B1
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私たちの背骨は約24個の小さな骨でできていて、その間には水分をたくさん含んだやわらかい椎間板があります。地球では、日中に重力がこれらの椎間板から水分を押し出すので、多くの人は朝より夕方のほうが1cmほど背が低くなります。宇宙ではこの重さがなくなります。椎間板はふくらみ、背骨のS字カーブはまっすぐに近づきます。
その結果、宇宙飛行士は長期ミッションで約5cm伸びることがあり、NASAは身長が最大約3%伸びることを想定しています。宇宙飛行士29人を対象にしたある研究では、全員の座高が宇宙で高くなっていました。しかし、伸びた分は地球に戻ると消えてしまい、多くの宇宙飛行士が腰痛に悩まされます。
4択リーディングクイズ
Q1. Why are many people shorter in the evening than in the morning?
gravity squeezes water out of these discs during the day, so many people are about one centimeter shorter in the evening とあるので B。
Q2. What did the study of 29 astronauts find?
every one of them had a taller sitting height in space とあるので D。
Q3. What can we infer about the height increase in space?
the extra height disappears after they return to Earth とあるので、一時的なものだと推論できる。A。椎間板とカーブの変化が原因で骨自体は伸びないので C は誤り。
In a 2020 study, Young and Rajulu compared the seated height of 29 astronauts before and during spaceflight, and all of them grew. The authors recommended designing seats to allow for an increase in seated height of about 6 percent, and NASA already designs spacecraft on the assumption that height may rise by up to about 3 percent. The growth is temporary. On Earth, gravity squeezes the water-filled discs between the vertebrae all day.
In weightlessness that load disappears, so the discs are thought to swell while the spine's S-shaped curve flattens out. The extra height comes at a cost. Many astronauts report back pain early in a mission, and a 2016 MRI study of six crew members who spent about six months on the ISS found that the muscles supporting the lower spine had shrunk. That study, with its handful of subjects, found no consistent change in disc height.
The same paper also cited data showing that NASA astronauts face roughly four times the usual risk of disc herniation, though this is an observed association and has not been shown to be an effect of weightlessness. The risk is highest within a year of returning to Earth.
198 words ・ CEFR B2
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2020年の研究で、ヤングとラジュルは宇宙飛行士29人の座高を飛行前と飛行中で比べ、全員の座高が伸びていました。著者らは座高が約6%伸びることを見込んで座席を設計するよう勧めており、NASAはすでに、身長が最大約3%伸びうるという前提で宇宙船を設計しています。この伸びは一時的なものです。地球では、重力が1日じゅう、椎骨の間にある水分を含んだ椎間板を押しつぶしています。
無重力ではその負荷がなくなるため、椎間板がふくらみ、同時に背骨のS字カーブが平らになると考えられています。伸びた身長には代償があります。多くの宇宙飛行士がミッション初期に腰痛を訴えており、ISSで約6か月を過ごした乗組員6人の2016年のMRI研究では、腰の背骨を支える筋肉がやせていたことがわかりました。対象者がわずかなこの研究では、椎間板の高さに一貫した変化は見られませんでした。
同じ論文は、NASAの宇宙飛行士は椎間板ヘルニアになるリスクが通常のおよそ4倍であることを示すデータも引用していますが、これは観察された関連であり、無重力の影響だと示されたわけではありません。リスクがとくに高いのは、地球に帰ってから1年以内です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main point of the passage?
座高が伸びるがそれは一時的で、腰痛・筋肉の衰え・ヘルニアのリスクという代償があり、証拠にも限界があることまで扱っているので C。
Q2. Why did Young and Rajulu recommend designing seats for about a 6 percent increase?
29人全員の座高が伸びた(all of them grew)という結果を受けて、座高の伸びを見込んだ座席設計を勧めているので A。
Q3. Which limitation does the author mention?
this is an observed association and has not been shown to be an effect of weightlessness とあるので D。
重要単語
- spineB2名詞背骨Your spine has a gentle S-shaped curve.
本の「背」も spine。spineless は「背骨のない」から「意気地のない」という意味にもなる。 - intervertebral discC1名詞(句)椎間板Intervertebral discs act like cushions.
inter-(~の間)+vertebra(椎骨)。international(国と国の間の)と同じ inter-。 - statureC1名詞身長・(人の)格Astronauts' stature increases in orbit.
「身長」のほか「名声・偉さ」の意味もある。statue(像)、status(地位)と同じ sta(立つ)の仲間。 - back painB1名詞(句)腰痛・背中の痛みMany astronauts report back pain in space.
英語の back は腰まで含む「背中側」。lower back pain で「腰痛」とよりはっきり言える。 - herniationC1名詞ヘルニア(椎間板の飛び出し)The risk of disc herniation rises after spaceflight.
hernia(ヘルニア)の名詞形。医療系の英文で見かける専門語。 - temporaryB1形容詞一時的なThe increase in height is only temporary.
tempo(時間)から。反対は permanent(永久の)。temporarily(一時的に)とセットで覚える。 - swellB2動詞ふくらむ・はれるThe discs swell when there is no weight on them.
活用は swell - swelled - swollen。swollen eyes「はれた目」の形でもよく出る。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
公式・一次情報をチェック
- The Human Body in Space(NASA)nasa.gov
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宇宙飛行士は宇宙に行くと身長が数センチ伸びるらしい。NASAの見積もりでは最大約3%。ただし地球に帰ると重力で元に戻る。夢の身長アップは期間限定だった。
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出典・参考文献(3件)タップで表示
- Young & Rajulu (2020) Changes in seated height in microgravity, Applied Ergonomicsdoi.org
- Chang et al. (2016) Lumbar Spine Paraspinal Muscle and Intervertebral Disc Height Changes in Astronauts After Long-Duration Spaceflight on the International Space Station, Spinedoi.org
- Green & Scott (2018) Spinal Health during Unloading and Reloading Associated with Spaceflight, Frontiers in Physiologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










