火星では「高い音」が先に届く。音の速さが2つある星を、探査車のマイクが初めて実測

読む前に予想してみよう!
火星では、高い音も低い音も同じ速さで伝わる
薄い二酸化炭素の大気のせいで、約240Hzより高い音のほうが少し速く伝わる。
- 対象
- 火星の大気中の音
- 規模
- 着陸後216火星日分の録音
- 研究の種類
- 探査車搭載マイクによる現地観測
- 確かさ
- ★★★★☆
NASAの探査車のマイクで、火星には音の速さが2種類あるとわかった。約240Hzより高い音は秒速約250m、低い音は約240m。高い音ほど先に届く。
ひとことで言うと火星では、高い音のほうがちょっと速く届くよ。しかも音がとても小さく聞こえるんだ。
宇宙には空気がないので、音は伝わりません。でも、火星にはうすいながらも大気があります。だから火星では、音が聞こえるのです。
2021年に火星に着陸したNASAの探査車パーシビアランスには、マイクがついています。その録音を分析したら、とんでもないことがわかりました。
火星では、音の速さが2つある。高い音と低い音で、伝わる速さが違うのです。
01地球の音は「みんな同じ速さ」
地球の空気の中では、音はおよそ秒速343mで進みます。大事なのは、高い音も低い音も、ほぼ同じ速さで進むということ。
だから、遠くで鳴っているオーケストラの音も、ちゃんとそろって聞こえます。もし高い音だけが先に届いたら、音楽はばらばらに聞こえてしまうでしょう。
02火星の音速は「240」と「250」
この違いは、火星の大気がとてもうすく(地球の1%もない)、ほとんどが二酸化炭素でできているために起きると考えられています。こうした「音の速さが2つある」性質は理論では予想されていましたが、実際に測ったのはこれが初めてでした。

03火星は「とても静かな星」
録音を聞いた研究者たちは、まず静かさに驚きました。NASAによると、研究者の一人は最初、あまりに静かなのでマイクが壊れたのかと思ったそうです。
うすい空気は、音のエネルギーを運ぶ力が弱く、音がすぐに弱まってしまいます。NASAの説明では、地球なら65mほど先まで届く音も、火星では8mほどで高い音がほとんど聞こえなくなります。
インジェニュイティのプロペラは1分間に約2500回転し、84ヘルツの低い「ブーン」という音を出していました。低い音は火星でも比較的遠くまで届くので、探査車から離れて飛ぶヘリの音を、マイクでとらえることができたのです。
04「つむじ風」が探査車の上を通過した
マイクは、火星の天気も聞いています。
フランス・トゥールーズのISAE-SUPAEROに所属するマードックらは2022年、パーシビアランスの真上をダストデビル(砂を巻き上げるつむじ風)が通り過ぎた瞬間の音を報告しました。風のゴーッという音が強まり、いったん静かになり(うずの中心)、また強まる。さらに、砂つぶがマイクにパチパチと当たる音まで記録されていました。
カメラや気象センサーのデータと合わせると、このつむじ風は幅約25m、高さ118m以上。音を聞くことで、うずの中にどれくらい砂が舞っていたかまで見積もれたのです。
05もし火星で友だちと話したら?
この研究から想像すると、火星で友だちと話すのは、なかなか大変そうです。
- 声は全体的に小さく、こもって聞こえる
- 少し離れると、高い音が先に消えてしまう
- 遠くでは、高い声と低い声がわずかにずれて届くかもしれない
もちろん、実際には宇宙服を着るので、会話は無線を使います。それでも「火星の空気の中で鳴る音」は、私たちの知っている音の世界とはまったく違うのです。
06まとめ
- 火星では音の速さが2つある。低い音は秒速約240m、高い音は約250m
- 原因は、うすい二酸化炭素の大気
- 火星はとても静かで、高い音は数mでほとんど聞こえなくなる
人類が初めて「火星の音」を聞いたのは、ほんの数年前のこと。いつか火星に立つ人は、地球とは違う響きの世界で、どんな会話をするのでしょうか。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSpace has no air, so sound cannot travel there, but Mars has a thin atmosphere, so sound can.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Mars has thin air, so sound can travel there. NASA's rover Perseverance has microphones, and scientists studied its recordings. They found something strange. On Mars, high sounds travel a little faster than low sounds.
High sounds move at about 250 meters per second, and low sounds at about 240 meters per second. Mars is also very quiet because sounds fade quickly in the thin air.
65 words ・ CEFR A2
和訳を見る
火星にはうすい空気があるので、音が伝わります。NASAの探査車パーシビアランスにはマイクがついていて、科学者たちはその録音を調べました。すると、ふしぎなことが分かりました。火星では、高い音が低い音より少しだけ速く伝わるのです。
高い音は秒速約250メートル、低い音は秒速約240メートルで進みます。また、うすい空気の中では音がすぐに弱まるので、火星はとても静かです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
火星での音の伝わり方(2つの速さ・すぐ弱まること)がテーマなので D。
Q2. How fast do high sounds travel on Mars?
High sounds move at about 250 meters per second とあるので A。240は低い音。
Q3. In this passage, "fade" means ...
火星が静かな理由として sounds fade quickly とあるので、fade は「弱まる・消えていく」。C が正解。
Space has no air, so sound cannot travel there, but Mars has a thin atmosphere, so sound can. NASA's Perseverance rover, which landed in 2021, carries microphones. A French-led team studied its recordings from its first 216 Martian days. Using sounds such as the rover's laser hitting rocks and the propellers of the small helicopter Ingenuity, they discovered that Mars has two speeds of sound.
Sounds lower than about 240 hertz travel at about 240 meters per second, while higher sounds travel at about 250 meters per second. On Earth, all sounds travel at almost the same speed. Scientists think the difference comes from the Martian air, which is very thin and made mostly of carbon dioxide.
117 words ・ CEFR B1
和訳を見る
宇宙には空気がないので音は伝わりませんが、火星にはうすい大気があるので音が伝わります。2021年に着陸したNASAの探査車パーシビアランスはマイクを積んでいます。フランスを中心とするチームが、着陸後最初の216火星日の録音を調べました。探査車のレーザーが岩に当たる音や、小型ヘリコプターのインジェニュイティのプロペラの音などを使って、彼らは火星には2つの音速があることを発見しました。
約240ヘルツより低い音は秒速約240メートルで伝わり、それより高い音は秒速約250メートルで伝わるのです。地球では、すべての音がほぼ同じ速さで伝わります。科学者たちは、この違いはとてもうすく、ほとんどが二酸化炭素でできている火星の空気から生じると考えています。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the team discover?
they discovered that Mars has two speeds of sound とあるので B。火星の音速(約240〜250m/s)は地球(約343m/s)より遅い。
Q2. What sounds did the team use to measure the speed of sound?
Using sounds such as the rover's laser hitting rocks and the propellers of ... Ingenuity とあるので D。
Q3. What would probably happen if music were played far from a listener on Mars?
高い音と低い音で速さが違うので、離れた場所ではわずかにずれて届くと推測できる。A が正解。
Sound cannot cross the vacuum of space, but Mars has a thin atmosphere that carries it, and microphones on NASA's Perseverance rover have let scientists listen to Martian acoustics. A team led by researchers in Toulouse analyzed recordings from the rover's first 216 Martian days and reported in 2022 that Mars has two speeds of sound.
The sources were the snapping noise of the rover's laser hitting rocks and the hum of the Ingenuity helicopter. Sounds below roughly 240 hertz traveled at about 240 meters per second, while higher-pitched sounds moved at about 250. Theory had predicted this effect, but no one had measured it before. It is attributed to the Martian air, which is less than 1 percent as thick as Earth's and composed mostly of carbon dioxide.
All of the recordings, though, come from a single site, Jezero Crater, so nobody knows yet how much conditions vary elsewhere on the planet. The thin air also weakens sound rapidly. According to NASA, a sound that would carry 65 meters on Earth loses its high-pitched part within about 8 meters on Mars. The microphones have picked up weather as well, including a dust devil passing directly over the rover.
199 words ・ CEFR B2
和訳を見る
音は宇宙の真空を渡ることはできませんが、火星には音を運ぶうすい大気があり、NASAの探査車パーシビアランスのマイクによって、科学者は火星の音を直接聞けるようになりました。トゥールーズの研究者が率いるチームは、着陸後最初の216火星日の録音を分析し、2022年に火星には2つの音速があると報告しました。
音源として使ったのは、探査車のレーザーが岩に当たるパチッという音と、ヘリコプターのインジェニュイティのブーンという音です。約240ヘルツより低い音は秒速約240メートルで伝わり、より高い音は秒速約250メートルで伝わりました。この効果は理論で予測されていましたが、それまで誰も測定したことがありませんでした。原因は、地球の1パーセントにも満たないうすさで、ほとんどが二酸化炭素からなる火星の空気だとされています。
ただし、録音はすべてジェゼロ・クレーターという1つの地点のものなので、火星のほかの場所で条件がどれほど違うのかは、まだ誰にも分かりません。うすい空気は音をすばやく弱めもします。NASAによると、地球なら65メートル先まで届く音も、火星では約8メートルで高い音の部分が失われてしまいます。マイクは天気もとらえており、探査車の真上を通過するダストデビル(つむじ風)も記録しました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main topic of the passage?
マイクの録音から分かった2つの音速、音の弱まり方、天気の記録が中心なので C。
Q2. According to the passage, what causes the two speeds of sound?
It is attributed to the Martian air, which is less than 1 percent as thick as Earth's and composed mostly of carbon dioxide とあるので B。プロペラ(ヘリコプター)は測定に使った音源。
Q3. Why does the author mention that the measurements come from a single site?
so nobody knows yet how much conditions vary elsewhere on the planet と続き、1地点の結果を火星全体に当てはめられるとは限らないという限界を示しているので D。
重要単語
- speed of soundB1名詞(句)音速The speed of sound on Mars is slower than on Earth.
faster than the speed of sound で「音速より速い」。speed of light「光速」とセットで。 - pitchB2名詞音の高さHigh-pitched sounds travel faster on Mars.
high-pitched「(音が)高い」、low-pitched「低い」。野球の投球やサッカー場も pitch。 - frequencyB2名詞周波数、頻度The rotor produced a sound at a frequency of 84 hertz.
形容詞 frequent(頻繁な)。物理では「1秒あたりの振動数」、日常では「頻度」。 - atmosphereB1名詞大気、雰囲気Mars has a thin atmosphere.
atmo-(蒸気)+sphere(球)。a relaxed atmosphere「くつろいだ雰囲気」の意味でも頻出。 - carbon dioxideB1名詞(句)二酸化炭素The Martian air is mostly carbon dioxide.
di-(2つの)+oxide(酸化物)。化学式 CO2 のまま読むことも多い。 - attenuateC1動詞弱める、減衰させるThin air attenuates sound quickly.
ten(薄い)と同語源。科学文で「信号・音・効果を弱める」。名詞は attenuation。 - vacuumB2名詞真空Sound cannot travel through a vacuum.
u が2つ続くつづりに注意。vacuum cleaner(掃除機)は「真空で吸う機械」。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
火星には「音の速さ」が2つあるらしい。NASAの探査車のマイクで調べたら、高い音は秒速250m、低い音は秒速240m。遠くで話すと高い声が少し先に届くかもしれない、不思議な世界。しかも8m離れると高い音はほぼ聞こえなくなる。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










