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死んだ星を生きのびた「木星」がいた。ウェッブ望遠鏡が見た“50億年後の太陽系”の予告編

死んだ星を生きのびた「木星」がいた。ウェッブ望遠鏡が見た“50億年後の太陽系”の予告編

読む前に予想してみよう!

太陽のような星が一生を終えると、まわりの惑星はすべて必ず消えてしまう

研究カード(どんな研究?)
対象
白色矮星WD 1856+534を回る巨大惑星
規模
惑星1個
研究の種類
宇宙望遠鏡による分光観測(トランジット法)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

燃えつきた星「白色矮星」のすぐそばを回る木星サイズの惑星を、ウェッブ望遠鏡が詳しく観測。星の死を外側で生きのび、数十億年後に内側へ移ってきたらしい。

ひとことで言うと星が死んだあとも、そのまわりで生きのこった大きな惑星がいたよ!

もくじ
  1. 「いるはずのない場所」にいる惑星
  2. 余分な熱が「引っ越しの記録」だった
  3. どんでん返し:温度の見積もりはまだ揺れている
  4. まとめ

太陽はいつか死にます。およそ50億年後、燃料を使い果たした太陽は大きくふくらみ、最後は地球ほどの大きさの燃えかすになると考えられています。

そのとき、木星や土星はどうなるのでしょう? ふつうは確かめようがありません。50億年も待てないからです。

ところが約80光年先に、その「答え」に近いものがありました。すでに死んだ星のすぐそばを回る、木星サイズの惑星です。2026年7月、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡でこの惑星を詳しく調べた研究が、科学誌『Nature』に発表されました。

01「いるはずのない場所」にいる惑星

この惑星の名前は WD 1856 b。りゅう座の方向にある白色矮星「WD 1856+534」を回っています。2020年に、NASAの系外惑星探査衛星TESSなどによって見つかりました。

白色矮星とは、太陽くらいの星が一生を終えたあとに残る芯のような天体です。この白色矮星は地球より少し大きい程度。一方、惑星は木星ほどあるので、惑星のほうが星より7倍ほど大きいという、なんとも不思議な組み合わせです。

さらにおかしいのは距離。この惑星は、地球と太陽の距離の約50分の1というすぐそばを、わずか34時間ほどで1周しています。

星は死ぬ前に、赤色巨星として何百倍にもふくらみます。その時期にこんな近くにいたら、惑星は飲みこまれていたはず。だからこの領域は「禁断ゾーン」とも呼ばれています。WD 1856 bは、その禁断ゾーンで見つかった惑星なのです。

02余分な熱が「引っ越しの記録」だった

なぜこんなに温かいのか。いまの惑星を温め続けるような熱源は見当たりません。そこでチームは、これは過去に温められた熱の“残り”だと考えました。

巨大な惑星が時間とともに冷えていく計算モデルに、ウェッブで測った質量と温度を当てはめ、時間を巻き戻します。すると、惑星が強く温められたのは、星が白色矮星になってから30億〜55億年後という答えが出ました。

ここから浮かぶシナリオはこうです。惑星はもともと遠い軌道にいて、星がふくらむ危険な時期を無事にやりすごした。その後、何十億年もたってから内側へ引っ越してきた。近づく途中で、白色矮星の強い重力にもまれて熱くなり、それからゆっくり冷えてきた——というわけです。

この白色矮星は、遠くに2つの赤色矮星をしたがえた三つ子の星の一員です。その重力のいたずらが、惑星の軌道をゆさぶったのかもしれません。

星の死を「遠く」で生きのび、あとから内側へ移ってきたらしい
星の死を「遠く」で生きのび、あとから内側へ移ってきたらしい

03どんでん返し:温度の見積もりはまだ揺れている

実は2025年、ほぼ同じ研究者グループを含むチームが、ウェッブの中間赤外線カメラで同じ惑星の光をとらえ、温度を約マイナス87℃と見積もっていました。「光を直接とらえた系外惑星としては最も冷たい」と報告されたのです。

2026年の結果とは、200℃以上の差があります。測り方(どの波長の光を、どんな方法で測ったか)が違うため、どちらが正しいかはまだ決着していません。チームはすでに追加で4回のトランジットを観測しており、続報が待たれます。

04まとめ

WD 1856 bは、星の最期を遠くでやりすごし、何十億年もたってから戻ってきた「生存者」でした。

太陽も約50億年後には赤色巨星になり、水星や金星、もしかすると地球も飲みこまれると考えられています。でも、遠くを回る木星のような惑星には、その先の物語があるのかもしれません。80光年先の惑星は、私たちの太陽系の“遠い未来の予告編”なのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn about five billion years, our Sun will swell into a red giant and later shrink into a white dwarf. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In about five billion years, our Sun will swell into a red giant and later shrink into a white dwarf. What will happen to the planets? Astronomers found a clue about 80 light-years away. A Jupiter-sized planet called WD 1856 b orbits a white dwarf that is only about the size of Earth. It is so close that it goes around in about 34 hours.

When the star was a red giant, a planet this close would have been swallowed. Using the James Webb Space Telescope, a team found that the planet is about 126 degrees Celsius, much warmer than expected. Their models suggest it was heated when it moved inward billions of years after the star died.

118 words ・ CEFR B1

和訳を見る

約50億年後、太陽はふくらんで赤色巨星になり、のちに縮んで白色矮星になる。惑星はどうなるのだろうか。天文学者たちは約80光年先に手がかりを見つけた。WD 1856 bと呼ばれる木星サイズの惑星が、地球ほどの大きさしかない白色矮星を回っているのだ。それはとても近く、約34時間で1周する。

星が赤色巨星だったとき、これほど近い惑星は飲みこまれていたはずだ。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を使い、あるチームは、その惑星が約126℃で、予想よりずっと温かいことを発見した。彼らのモデルによれば、惑星は星が死んで何十億年もたってから内側へ移動したときに温められたらしい。

4択リーディングクイズ

Q1. How big is the white dwarf in the passage?

Q2. Why is the planet's position surprising?

Q3. What can we infer from the planet's high temperature?

重要単語

  • white dwarfC1
    名詞(句)白色矮星Our Sun will become a white dwarf in the far future. dwarf は「小人、小さいもの」。red dwarf(赤色矮星)、brown dwarf(褐色矮星)も合わせて。
  • red giantC1
    名詞(句)赤色巨星A red giant can swallow nearby planets. giant「巨人、巨大なもの」。星の一生(life cycle of stars)の長文で必ず出る。
  • engulfC1
    動詞飲みこむ、包みこむThe dying star could have engulfed the planet. en-(中に)+gulf(深い穴)。be engulfed in flames「炎に包まれる」も頻出。
  • migrateB2
    動詞移動する、移住するThe planet migrated inward billions of years later. 名詞は migration。鳥の渡りや人の移住にも、惑星の軌道移動にも使える。
  • remnantC1
    名詞残り、残骸A white dwarf is the remnant of a dead star. supernova remnant「超新星残骸」。remain(残る)と同じ語源。
  • transitB2
    名詞・動詞通過(惑星が星の前を横切ること)Astronomers watched the planet's transit across the star. 日常では public transit「公共交通機関」。天文学では「トランジット法」で系外惑星を探す。
  • reconcileC1
    動詞(食い違いを)調整する、一致させるScientists need to reconcile the two temperature measurements. reconcile A with B「AとBを両立させる」。「仲直りさせる」の意味もある難関大頻出語。

4コマでわかる

死んだ星を生きのびた「木星」がいた。ウェッブ望遠鏡が見た“50億年後の太陽系”の予告編の4コマ漫画
80光年先に、燃えつきた星のすぐそばを34時間で回る木星サイズの惑星がある。本来なら星の最期に飲みこまれる場所。ウェッブ望遠鏡で調べたら、星の死から数十億年後に内側へ引っ越してきたらしい。太陽系の未来の予告編かも。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. MacDonald et al. (2026) Aerosols and hydrocarbons in the atmosphere of a white dwarf planet, Naturedoi.org
  2. Limbach et al. (2025) Thermal Emission and Confirmation of the Frigid White Dwarf Exoplanet WD 1856+534 b, The Astrophysical Journal Lettersdoi.org
  3. Vanderburg et al. (2020) A giant planet candidate transiting a white dwarf, Naturedoi.org
  4. Schröder & Connon Smith (2008) Distant future of the Sun and Earth revisited, Monthly Notices of the Royal Astronomical Societydoi.org