眠くなると手足がポカポカするのはなぜ? 眠りのスイッチは「体の芯を冷ますこと」だった

読む前に予想してみよう!
眠りに入る時、体の内部の温度は少し下がる
手足の血管を広げて熱を逃がし、深部体温を下げることが眠りのスイッチの一つになっている。
- 対象
- 健康な若い男性など
- 規模
- 数人〜十数人規模の実験+メタ分析(17研究中13研究を統合)
- 研究の種類
- 実験室研究・小規模交差比較試験・系統的レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
眠りに入る前、体は手足から熱を逃がして体の内部の温度を下げる。手足が温かいのは「放熱中」のサイン。寝室が暑すぎるとこの放熱がうまくいかない。
ひとことで言うと手足がポカポカなのは、体の中を冷ましているサイン!
小さな子どもや赤ちゃんを抱っこしていると、眠くなってきたときに手や足がポカポカ温かくなることがあります。「眠いと手が温かくなる」と昔から言われてきましたが、実はこれ、眠りの仕組みそのものと深く関係しているんです。
ポイントは、眠るためには体の“芯”を冷ます必要があるということ。手足は、そのための放熱板だったのです。
01体の「芯の温度」が下がると眠くなる
体の温度には、皮膚の表面の温度と、内臓などの体の内部の温度(深部体温)があります。深部体温は1日の中でリズムを持っていて、夕方ごろに最も高く、夜にかけて下がり、明け方に最も低くなります。
そして、この深部体温が下がり始めるタイミングで、眠気が強くなることがわかっています。体温を下げることは、脳と体を「省エネモード」に切り替える合図なのかもしれません。
02手足は体の「ラジエーター」
では、どうやって体の芯を冷ますのか。ここで登場するのが手と足です。
手のひらや足の裏には、熱を逃がすための特別な血管の通り道があります。眠る前になると、この血管が広がって温かい血液がたっぷり手足に流れ込み、そこから熱を外に逃がします。車のエンジンを冷やすラジエーター(放熱器)のような働きです。
だから、手足がポカポカしている=体の芯の熱をどんどん捨てている最中。それは、まもなく眠りに入るサインなのです。
ただし、これは少人数の男性を対象にした実験室の研究で、「手足が温かいこと」と「早く眠ること」の関連(予測)を示したものです。「足を温めれば必ず早く眠れる」と直接確かめたわけではありません。
そこで、実際に足を温めてみた実験もあります。韓国のKoさんとLeeさんが2018年に報告した研究では、若い男性6人が室温23℃の部屋で、靴下をはいて寝る夜とはかない夜を比べました。靴下の夜は、寝つくまでの時間が平均7.5分短く、睡眠時間は32分長くなりました。一方で、深部体温(直腸温)には差がありませんでした。人数がとても少ないので、「ヒントになる結果」と受け取るのがよさそうです。

03寝室が暑すぎると、なぜ眠れない?
この仕組みを知ると、暑い夜に眠れない理由もわかります。部屋が暑いと、手足から熱を逃がそうとしても、まわりの空気が温かいのでうまく逃げてくれません。体の芯が冷めないので、眠りに入りにくく、途中で目も覚めやすくなります。
日本の研究者(岡本さん・水野さん)が2012年にまとめたレビューでも、暑さや湿気の多い環境では、目が覚めている時間が増え、深い眠りが減ることが報告されています。
逆に、寒すぎるのも問題。手足が冷えきると血管が縮んでしまい、熱を逃がす“ラジエーター”がうまく働きません。冷え性の人が寝つきにくい理由のひとつは、このためだと考えられています。ただ同じレビューでは、布団や寝間着をきちんと使っていれば、寒さは眠りの深さそのものにはあまり影響しない一方、心臓や自律神経には負担がかかりうる、とも整理されています。
ちなみに、オランダのRaymannさんらの2008年の実験では、特殊なスーツで皮膚の温度をわずか0.4℃上げただけで、夜中に目覚めている時間が減り、眠りが深くなりました(特に高齢者で効果が大きかった)。体の芯ではなく「皮膚」のちょっとした温度が、眠りを左右しているのです。
「厚着をして、靴下を重ねばきすれば眠れる」とは限りません。体全体を温めすぎると、かえって熱が逃げにくくなります。ゆったりした靴下なら足を温める助けになりますが、締めつけの強い靴下は血流を妨げることもあるので注意しましょう。
04まとめ
眠くなると手足がポカポカするのは、体が芯を冷ますために手足から熱を捨てているから。眠りのスイッチは、温めることではなく、上手に冷ますことにありました。
今夜は「暑すぎない寝室」と「冷えすぎない手足」。この2つで、体のラジエーターを気持ちよく働かせてあげましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerParents often notice that a sleepy child's hands and feet turn warm.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When small children get sleepy, their hands and feet often become warm. Why? To fall asleep, the body needs to cool down inside. Warm blood goes to the hands and feet, and heat leaves the body there. They work like a radiator in a car.
A 1999 study found that warm hands and feet were the best sign of falling asleep quickly. So, keep your bedroom not too hot and not too cold.
73 words ・ CEFR A2
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小さな子どもが眠くなると、手や足が温かくなることがよくあります。なぜでしょうか?眠りにつくためには、体は内側を冷やす必要があります。温かい血液が手や足に流れ、そこから熱が体の外へ出ていきます。手足は車のラジエーター(放熱器)のように働くのです。
1999年の研究では、手足が温かいことが、早く眠りにつく一番のサインでした。だから、寝室は暑すぎず、寒すぎないようにしましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
眠くなると手足が温かくなる理由(体の芯を冷ますため)を説明しているので C。
Q2. According to the passage, what does the body need to do to fall asleep?
To fall asleep, the body needs to cool down inside. とあるので A。
Q3. In this passage, "leaves" means ...
heat leaves the body の leave は「出ていく、去る」なので D。
Parents often notice that a sleepy child's hands and feet turn warm. This is part of how sleep works. The temperature deep inside the body is highest in the early evening and falls during the night.
As it drops, we get sleepy. To lower this core temperature, blood vessels in the hands and feet widen. Warm blood then carries heat out to the skin, where it escapes into the air.
In a 1999 study in Switzerland, researchers measured how much warmer people's hands and feet were than the center of their bodies. This difference predicted how quickly they fell asleep better than core temperature did. It also explains why a hot bedroom makes sleep hard. In warm air, the body has trouble losing heat.
124 words ・ CEFR B1
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親はよく、眠くなった子どもの手や足が温かくなることに気づきます。これは眠りの仕組みの一部です。体の奥の温度は夕方早くに最も高く、夜の間に下がっていきます。
それが下がると、私たちは眠くなります。この深部体温を下げるために、手足の血管が広がります。すると温かい血液が熱を皮膚まで運び、熱はそこから空気中へ逃げていきます。
1999年のスイスの研究で、研究者たちは、人の手足が体の中心部よりどれだけ温かいかを測りました。この差は、深部体温よりも、どれだけ早く眠りにつくかをよく予測しました。これは、暑い寝室で眠りにくい理由も説明しています。暖かい空気の中では、体はなかなか熱を逃がせないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. When is the temperature inside the body highest?
The temperature deep inside the body is highest in the early evening とあるので C。
Q2. What did the 1999 study find?
how much warmer people's hands and feet were than the center of their bodies の差が、how quickly they fell asleep を深部体温よりよく予測したとあるので B。
Q3. Why is it hard to sleep in a hot bedroom?
In warm air, the body has trouble losing heat とあるので A。
The warmth of a sleepy child's hands and feet is not a coincidence but a visible part of the process of falling asleep. Core body temperature peaks in the early evening and declines overnight, and sleepiness rises as this decline begins. To shed heat, specialized blood vessels in the palms and soles widen, sending warm blood to the skin surface, where heat dissipates much like it does from a car's radiator. In a 1999 study published in Nature, Swiss researchers found that the difference between the temperature of the hands and feet and that of the body's center predicted how quickly healthy young men fell asleep better than core temperature. It should be stressed, however, that the study was small and showed a predictive relationship rather than proving that warming the feet causes faster sleep.
Later experiments that manipulated temperature were also small: in a 2018 study, six young men fell asleep 7.5 minutes faster when wearing socks, and a 2008 experiment found that raising skin temperature by just 0.4 degrees deepened sleep. A hot, humid bedroom, by contrast, hinders heat loss and tends to increase wakefulness.
187 words ・ CEFR B2
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眠そうな子どもの手足の温かさは偶然ではなく、眠りに落ちる過程の目に見える一部です。深部体温は夕方早くにピークを迎え、夜の間に下がり、この低下が始まると眠気が高まります。熱を放出するため、手のひらや足の裏の特殊な血管が広がり、温かい血液を皮膚の表面へ送ります。そこで熱が、車のラジエーターから逃げるのとよく似た形で放散されるのです。『Nature』誌に発表された1999年の研究で、スイスの研究者たちは、手足の温度と体の中心部の温度の差が、深部体温よりも、健康な若い男性がどれだけ早く眠りにつくかをよく予測することを発見しました。しかし強調すべきなのは、この研究は小規模で、足を温めると早く眠れることを証明したのではなく、予測関係を示したにすぎないという点です。
温度を操作したその後の実験も小規模でした。2018年の研究では、6人の若い男性が靴下をはくと7.5分早く眠りにつき、2008年の実験では皮膚の温度をわずか0.4℃上げただけで眠りが深くなりました。対照的に、暑く湿気の多い寝室は熱の放出を妨げ、目覚めている時間を増やしがちです。
4択リーディングクイズ
Q1. Why does the author compare hands and feet to a car's radiator?
手足から熱が放散される様子をラジエーターにたとえ、体の芯を冷ます働きを説明しているので A。
Q2. What did the 2018 study with socks find?
six young men fell asleep 7.5 minutes faster when wearing socks とあるので B。
Q3. What does the author stress about the 1999 study?
the study was small and showed a predictive relationship rather than proving ... とあるので C。
重要単語
- core body temperatureC1名詞(句)深部体温Core body temperature drops slightly at night.
core は「中心部」。skin temperature(皮膚温)と対比して使う。 - dissipateC1動詞(熱などを)放散する、逃がすOur hands and feet help dissipate heat.
dis-(ばらばらに)+sipate(投げる)。比喩で「(不安が)消える」にも使う。 - blood vesselB2名詞(句)血管Blood vessels in the skin widen when we feel warm.
vessel は「器・船」の意味も。artery(動脈)、vein(静脈)も一緒に。 - sleep onsetC1名詞(句)入眠、眠りに入ることWarm feet may speed up sleep onset.
onset は「始まり、発症」。the onset of winter「冬の訪れ」。 - humidB2形容詞湿気の多いIt is hard to sleep on hot and humid nights.
名詞 humidity「湿度」。日本の夏を説明する英作文で頻出。 - coincidenceB2名詞偶然(の一致)Warm hands in a sleepy child are not a coincidence.
What a coincidence!「なんて偶然!」。形容詞 coincidental。 - hinderC1動詞妨げるA hot bedroom can hinder heat loss.
hinder A from doing「Aが~するのを妨げる」。prevent と同じ構文をとる。
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赤ちゃんが眠くなると手足がポカポカになるアレ、ちゃんと理由があった。人は手足から熱を逃がして体の芯を冷ますことで眠りに入るらしい。1999年のNature論文では「手足の温かさ」が寝つきの一番の予測材料だった。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Kräuchi et al. (1999) Warm feet promote the rapid onset of sleep, Naturedoi.org
- Ko & Lee (2018) Effects of feet warming using bed socks on sleep quality and thermoregulatory responses in a cool environment, Journal of Physiological Anthropologydoi.org
- Okamoto-Mizuno & Mizuno (2012) Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm, Journal of Physiological Anthropologydoi.org
- Raymann et al. (2008) Skin deep: enhanced sleep depth by cutaneous temperature manipulation, Braindoi.org
- Haghayegh et al. (2019) Before-bedtime passive body heating by warm shower or bath to improve sleep: a systematic review and meta-analysis, Sleep Medicine Reviewsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








