睡眠・休息ホント

徹夜明けに「ボーッ」とする瞬間、脳は勝手に“洗浄”を始めていた

徹夜明けに「ボーッ」とする瞬間、脳は勝手に“洗浄”を始めていた

読む前に予想してみよう!

徹夜後に注意がとぎれたとき、脳脊髄液の動きは止まっていた

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な成人ボランティア
規模
26人
研究の種類
被験者内実験(徹夜後と十分な睡眠後をEEG-fMRIで比較)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

徹夜させた26人の脳を測ると、注意がとぎれた瞬間、脳脊髄液が脳の外へ流れ出す「洗浄」のような動きが起きていた。

ひとことで言うと寝不足で意識が飛ぶとき、脳は起きたまま「おそうじ」をしようとしていた!

もくじ
  1. 徹夜させて、脳を丸ごと同時計測
  2. 注意がとぎれた瞬間、液体が脳から流れ出した
  3. 本来は眠っている間にやる「洗浄」
  4. 体全体をコントロールする「司令塔」
  5. まとめ

テスト前に徹夜した次の日、授業中に一瞬意識が飛んだことはありませんか? ハッと気づくと、先生の話が数秒分抜けている。

この「ボーッ」の瞬間、脳の中では何が起きているのでしょう?

2025年、アメリカの研究チームが、徹夜した人の脳を詳しく調べたところ、脳が起きたまま「おそうじ」を始めようとしているような現象が見つかりました。

01徹夜させて、脳を丸ごと同時計測

テストは、音が鳴ったり画面が変わったりしたらボタンを押す、というシンプルなもの。徹夜明けの参加者は、当然ながら反応できない「抜け」がたびたび起きました。

02注意がとぎれた瞬間、液体が脳から流れ出した

研究チームが「抜け」の瞬間を詳しく見ると、決まった順番で変化が起きていました。

  1. 注意がとぎれる
  2. 少し遅れて、脳脊髄液が脳の外へ流れ出す
  3. 注意が戻ると、脳脊髄液が再び脳へ流れこむ

さらにこれと前後して、瞳孔が小さくなる(脳脊髄液が流れ出す約12秒前から)、脳の血流が変化する、心拍や呼吸が少し下がる、といった体全体の変化がセットで起きていました。

注意が「消灯」している間に、脳は急いでおそうじをしているのかも
注意が「消灯」している間に、脳は急いでおそうじをしているのかも

03本来は眠っている間にやる「洗浄」

脳脊髄液の大きな波は、もともと深い眠りの間に見られる現象です。2019年、同じルイスさんのチームが、眠っている人の脳で脳脊髄液がリズミカルに出入りしていることを報告していました。この液体の動きは、脳の老廃物を洗い流すのに役立っていると考えられています。

今回の研究から研究チームは、寝不足になると、脳は眠るべき時間にできなかった「洗浄」を、起きている間に割りこませようとするのではないか、と考えています。その代わりに支払うのが、注意力という「コスト」というわけです。

04体全体をコントロールする「司令塔」

注意、瞳孔、血流、液体の流れが、ぴったり同じタイミングで変化していたことから、研究チームは、脳と体を同時に調整する1つの仕組みが関わっていると考えています。その候補として挙げられているのが、脳幹にあるノルアドレナリンの司令塔です。

05まとめ

徹夜明けの「ボーッ」は、気合いが足りないせいではなく、脳が休息を取り戻そうとする、止められない反応なのかもしれません。

だからこそ、運転や危険な作業の前の徹夜は本当に危険です。テスト前こそ、寝ることが一番の勉強法。脳のおそうじの時間を、ちゃんと確保してあげましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAfter a sleepless night, many people experience brief moments when their mind goes blank. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

After a sleepless night, many people experience brief moments when their mind goes blank. Researchers at MIT wanted to know what happens in the brain at these moments. They asked 26 volunteers to take an attention test twice: once after staying awake all night and once after a good night's sleep. During the test, the researchers recorded brain waves and used fast MRI scans.

When sleep-deprived participants failed to respond, cerebrospinal fluid flowed out of the brain, and it flowed back in when their attention returned. Their pupils also became smaller about 12 seconds before the fluid flowed out. Because such fluid waves usually appear during deep sleep, the researchers think the tired brain may be trying to clean itself while awake.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

眠れなかった夜の後、多くの人は頭が真っ白になる短い瞬間を経験します。MITの研究者たちは、そうした瞬間に脳の中で何が起きているのかを知りたいと考えました。彼らは26人のボランティアに、一晩中起きていた後と、ぐっすり眠った後の2回、注意力のテストを受けてもらいました。テストの間、研究者たちは脳波を記録し、高速のMRIで脳を撮影しました。

寝不足の参加者が反応できなかったとき、脳脊髄液が脳の外へ流れ出し、注意が戻ると再び流れこんでいました。また、液体が流れ出す約12秒前から、瞳孔が小さくなっていました。こうした液体の波はふつう深い眠りの間に見られるため、研究者たちは、疲れた脳が起きたまま自分をきれいにしようとしているのかもしれないと考えています。

4択リーディングクイズ

Q1. How many times did each volunteer take the attention test?

Q2. When did the participants' pupils become smaller?

Q3. Why do the researchers connect these findings to deep sleep?

重要単語

  • sleep deprivationB2
    名詞(句)睡眠不足、断眠Sleep deprivation makes it hard to focus. deprive A of B「A から B を奪う」の名詞形。形容詞 sleep-deprived「寝不足の」。
  • attentional lapseC1
    名詞(句)注意の途切れAn attentional lapse while driving can be dangerous. lapse は「(一時的な)失敗・途切れ」。a lapse of memory「ど忘れ」も同じ使い方。
  • pupilB2
    名詞瞳孔Your pupils get smaller in bright light. 「生徒」と同じつづり・発音の多義語。文脈で判断する問題が入試で出る。
  • pulseB2
    名詞・動詞脈動(する)、脈拍The fluid moved in slow pulses. take one's pulse「脈をはかる」。リズムのある動きを表すときにも使う。
  • well-restedB2
    形容詞十分に休息をとったWell-rested students performed better. well-(十分に)+rested。well-known, well-informed など well- の複合形容詞はハイフンでつなぐ。
  • impairC1
    動詞損なう、弱めるLack of sleep impairs concentration. 名詞 impairment(障害)。damage より「機能を弱める」ニュアンス。hearing-impaired「聴覚に障害のある」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

徹夜明けに「ボーッ」とする瞬間、脳は勝手に“洗浄”を始めていたの4コマ漫画
徹夜した人の脳をMRIと脳波で同時に測ったら、注意が一瞬とぎれる「ボーッ」の瞬間に、脳脊髄液が脳から流れ出していたらしい。本来は寝ている間にやる「脳の洗浄」を、起きたまま無理やりやろうとしているのかも。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Yang et al. (2025) Attentional failures after sleep deprivation are locked to joint neurovascular, pupil and cerebrospinal fluid flow dynamics, Nature Neurosciencedoi.org
  2. Hauglund et al. (2025) Norepinephrine-mediated slow vasomotion drives glymphatic clearance during sleep, Celldoi.org
  3. Fultz et al. (2019) Coupled electrophysiological, hemodynamic, and cerebrospinal fluid oscillations in human sleep, Sciencedoi.org