NASAが旅客機で本気の実験。最強の昼寝は「約26分」だった

読む前に予想してみよう!
昼寝は長ければ長いほど頭がスッキリする
深い眠りに入ってから起きると「睡眠慣性」でかえってボーッとする。20〜30分程度がちょうどいい。
- 対象
- 長距離便の現役パイロット
- 規模
- 21人(仮眠12人・比較9人)
- 研究の種類
- 実際のフライトでの現場実験(ランダム割付あり)
- 確かさ
- ★★★☆☆
NASAが長距離便のパイロットで実験したら、平均26分の仮眠で着陸前の注意力と反応がアップ。長く寝すぎるとかえってボーッとする。
ひとことで言うと20〜30分の昼寝は、脳の「再起動ボタン」!
もくじ
「昼寝なんてサボりでしょ」——そう思っていたなら、ちょっと待ってください。
世界でいちばん本気で「昼寝」を研究したのは、なんとNASA(アメリカ航空宇宙局)です。しかも実験室ではなく、本物の旅客機のコックピットで。
その結果わかった「最強の昼寝」の長さは、平均およそ26分。この記事では、この有名な実験で本当にわかったことと、ネットで広まっている話の「盛られている部分」まで、まとめて解説します。
01NASAが旅客機の中で「寝る実験」をした理由
1980年代、アメリカ議会はNASAに「パイロットの疲れ」を調べるよう求めました。太平洋を横断するような長距離便では、夜通し飛ぶうえに時差もあり、パイロットはどうしても眠くなります。
そこでNASAエイムズ研究センターのマーク・ローズカインド博士らのチームが考えたのが、「眠くなる前に、計画的に少しだけ寝てもらう」という作戦でした。
02結果:平均26分の仮眠で、着陸前まで「目がさえた」
仮眠タイムをもらったパイロットは、チャンスの93%で実際に眠り、平均5.6分で寝つき、平均約26分眠りました。40分の枠のうち、実際に寝ていたのが26分くらいだった、というわけです。
そして仮眠をとったグループは、とらなかったグループに比べて、反応の速さや脳波で見た「覚醒度」が良い状態を保ちました。しかもその効果は、飛行機でいちばん神経を使う降下と着陸の時間帯まで続いたのです。
たった30分弱の仮眠が、その後の「いちばん大事な場面」まで効いた。これがこの研究のすごいところです。

03ネットの「34%・54%アップ」はどこから来た?
この研究はよく「仕事のパフォーマンスが34%、注意力が54%アップ」という数字つきで紹介されます。この数字は、NASAの研究を紹介する資料やメディアで広く引用されてきたものです。
ただし注意したいのは、この数字は「この実験・この測り方」での結果だということ。人数は合計21人と少なく、測ったのも反応テストなど特定の能力です。「昼寝すれば誰でも何でも34%良くなる」という意味ではありません。
04長すぎる昼寝が逆効果になる「睡眠慣性」
昼寝を1時間以上とって、起きたあと頭がボーッとした経験はありませんか? これは睡眠慣性(すいみんかんせい)と呼ばれる現象です。
眠りが深くなる段階(深いノンレム睡眠)に入ってから起きると、脳がすぐには「起動」しません。パソコンでいえば、スリープではなくシャットダウンしてしまった状態です。
2025年にドイツの研究チームが自動運転を想定して行った実験でも、深い睡眠が多いほど、起きた直後の反応が遅くなることが確認されました。「深い眠りに入る前に起きる」ことが大事だと、別の角度から裏づけた形です。ただしこの研究では深い眠りに入るのが早く、時間を短く区切るだけでは睡眠慣性を防ぎきれない可能性も指摘されています。
05今日からできる「NASA式」昼寝のコツ
06「26分」を一般化するときの注意
この実験は、21人という少人数のパイロットを対象にした現場研究です。仮眠グループと比較グループは、乗員チーム単位でくじ引き(ランダム化)によって分けられました。ただし人数は12人と9人とごく少なく、仮眠をとったかどうかを本人に隠すこと(盲検化)もできません。
また「26分」は、40分の枠を与えた結果としての平均値です。その後の実験室研究でも、10〜20分程度の短い仮眠が眠気を減らすことは繰り返し確かめられていますが、ベストな長さは、前の晩にどれだけ寝たか・時間帯・年齢によって変わります。
07まとめ
- NASAは本物の旅客機で「計画的な仮眠」の効果を確かめた
- 平均約26分の仮眠で、着陸前の注意力や反応が良い状態を保てた
- ポイントは「長さ」よりも、深く眠りすぎる前に起きること
次の昼休み、スマホを30分眺めるかわりに、アラームを25分にセットして目を閉じてみる。パイロットが空の上で証明した方法を、あなたの午後に試してみませんか?
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLong-haul pilots often have to stay alert through the night, which is not easy.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Pilots on long night flights often feel very sleepy. NASA wanted to help them. In a study in the 1990s, some pilots took a short rest in the cockpit while the other pilot flew the plane. The pilots slept for about 26 minutes.
After the nap, they reacted faster and stayed more awake, even when the plane was landing. But a long nap is not always better. If you sleep too long, you may feel slow after you wake up.
80 words ・ CEFR A2
和訳を見る
長い夜間飛行のパイロットは、とても眠くなることがよくあります。NASAは彼らを助けたいと考えました。1990年代の研究で、一部のパイロットは、もう一人のパイロットが操縦している間にコックピットで短い休憩をとりました。パイロットは約26分眠りました。
仮眠の後、彼らは反応が速くなり、着陸のときでさえ目がさえた状態を保ちました。しかし、長い昼寝がいつも良いわけではありません。長く寝すぎると、起きた後にぼんやりするかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
パイロットの短い仮眠についてのNASAの研究が全体のテーマなので B が正解。
Q2. How long did the pilots sleep?
本文に The pilots slept for about 26 minutes. とあるので C。
Q3. In this passage, "reacted faster" means the pilots ...
react は「反応する」。faster が付いて「より速く反応した」=素早く動けた、という意味なので A。
Long-haul pilots often have to stay alert through the night, which is not easy. To find a practical solution, NASA researchers tested a planned rest period in real flights. During the quiet part of the flight, one pilot was allowed to rest for up to 40 minutes while the other pilot stayed in control.
Most of the pilots fell asleep within a few minutes and slept for about 26 minutes on average. Compared with pilots who did not rest, they showed better reaction times and stayed more alert, even during the descent and landing. The study also shows why timing matters: if a nap becomes too long and deep, people can feel groggy when they wake up. This is called sleep inertia.
122 words ・ CEFR B1
和訳を見る
長距離便のパイロットは夜通し注意力を保たなければならないことが多く、それは簡単ではありません。現実的な解決策を見つけるため、NASAの研究者たちは実際のフライトで「計画的な休憩時間」を試しました。飛行中の落ち着いた時間帯に、1人のパイロットが最大40分休むことを認められ、その間もう1人が操縦を担当しました。
ほとんどのパイロットは数分以内に眠りに落ち、平均で約26分眠りました。休まなかったパイロットと比べて、彼らは反応時間が良く、降下や着陸の間でさえ注意力を保っていました。この研究は、タイミングが重要な理由も示しています。昼寝が長く深くなりすぎると、起きたときにぼんやりすることがあるのです。これは睡眠慣性と呼ばれます。
4択リーディングクイズ
Q1. What did NASA test in this study?
NASA researchers tested a planned rest period in real flights とあるので B。実験室ではなく実際のフライトだった点がポイント。
Q2. Which statement is true according to the passage?
休憩枠は最大40分、実際に眠ったのが平均約26分。2人同時ではなく1人ずつ。正解は C。
Q3. What can we infer about long, deep naps?
長く深い昼寝の後は groggy(ぼんやり)になりうる=睡眠慣性、と書かれているので B。
Long-haul pilots have to stay alert across time zones and through the night, and tired pilots are a well-known safety risk. NASA's Ames Research Center tested a simple fix on real international flights. During the quiet cruise phase, one group of crew members was given a planned 40-minute rest opportunity, while a control group carried on with normal duties.
The rested pilots fell asleep on almost every occasion, in about six minutes on average, and slept for about 26 minutes. Brain activity recordings and reaction-time tests showed that they stayed more alert afterward, and the benefit lasted into descent and landing, the most demanding part of a flight. Only about twenty pilots took part, so the exact percentages often quoted online rest on a very small group.
Later research supports the basic idea. A short nap at the right moment can restore alertness. A longer one that reaches deep sleep brings a risk of sleep inertia, a temporary drop in performance after waking.
163 words ・ CEFR B2
和訳を見る
長距離便のパイロットは時差をまたぎ夜通し警戒を保たなければならず、疲れたパイロットは安全上のリスクとしてよく知られています。NASAエイムズ研究センターは、実際の国際線で簡単な対策を試しました。業務負荷の低い巡航中に、一方の乗員グループには40分の計画的な休息の機会が与えられ、対照群は通常業務を続けました。
休息したパイロットはほぼ毎回、平均約6分で眠りにつき、約26分眠りました。脳活動の記録と反応時間テストから、彼らがその後より高い覚醒度を保ったことがわかり、その効果は飛行で最も負荷の高い降下と着陸の段階まで続きました。参加したパイロットはおよそ20人だけなので、ネットでよく引用される正確な割合は、ごく少人数のグループにもとづいたものです。
後の研究も基本的な考え方を支持しています。適切なタイミングでとる短い仮眠は覚醒度を回復させます。深い睡眠に達する長い仮眠は、起きた後に一時的に能力が落ちる「睡眠慣性」のリスクをもたらします。
4択リーディングクイズ
Q1. Why was the study described as a "field study"?
field study は実験室ではなく現場で行う研究。tested a simple fix on real international flights とあるので B。
Q2. According to the passage, why are the exact percentages quoted online doubtful?
Only about twenty pilots took part, so the exact percentages often quoted online rest on a very small group と理由が示されているので C。サンプル数の少なさは研究の限界の典型例。
Q3. Which of the following best expresses the author's main point?
最後の2文で、適切なタイミングの短い仮眠は覚醒度を回復させ(can restore alertness)、深い睡眠に達する長い仮眠は睡眠慣性のリスクがある(brings a risk of sleep inertia)とまとめているので C。
重要単語
- alertnessB2名詞覚醒度・注意力A short nap can improve alertness in the afternoon.
alert(油断のない)+-ness。be alert to ~「~に注意を払っている」も頻出。 - fatigueB2名詞疲労Fatigue can make people slow to react.
発音は /fəˈtiːɡ/(ファティーグ)。tiredness より硬い語で論文・ニュース向き。 - napA2名詞・動詞昼寝(する)I take a short nap after lunch.
take a nap がセットで出る。power nap は「短い元気回復の昼寝」。 - vigilantC1形容詞警戒を怠らないPilots must stay vigilant during landing.
vigil(寝ずの番)と同語源。難関大の長文で見かける。 - sleep inertiaC1名詞(句)睡眠慣性(起きた直後のぼんやり)Sleep inertia can last for several minutes after waking.
inertia は物理の「慣性」。眠りの状態が続こうとするイメージ。 - interpretB2動詞解釈するWe should interpret the results with caution.
interpret ~ with caution「~を慎重に解釈する」は研究紹介の定番表現。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
- Sleep Deprivation and Deficiency(NIH 国立心肺血液研究所)nhlbi.nih.gov
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
NASAが本物の旅客機のパイロットで実験したら、平均26分の仮眠で着陸前の反応と注意力がアップしたらしい。いちばん大事なのは「寝すぎない」こと。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(5件)タップで表示
- Rosekind et al. (1994) Crew factors in flight operations IX: Effects of planned cockpit rest on crew performance and alertness in long-haul operations, NASA Technical Memorandumntrs.nasa.gov
- Rosekind et al. (1995) Alertness management: strategic naps in operational settings, Journal of Sleep Researchdoi.org
- Hartzler (2014) Fatigue on the flight deck: the consequences of sleep loss and the benefits of napping, Accident Analysis & Preventiondoi.org
- Tomzig et al. (2025) Is the NASA nap the solution for sleep inertia in automated driving?, Transportation Research Interdisciplinary Perspectivesdoi.org
- Sakai et al. (2023) Effects of short naps during simulated night shifts on alertness and cognitive performance in young adults, Journal of Sleep Researchdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。














