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旅先で寝つけない理由、脳の「興奮物質」が下がらないせいかもしれない

旅先で寝つけない理由、脳の「興奮物質」が下がらないせいかもしれない

読む前に予想してみよう!

この研究では、寝つくときに脳の「ブレーキ役」の物質GABAが増えていた

研究カード(どんな研究?)
対象
健康な若年成人
規模
20人
研究の種類
実験研究(睡眠ポリグラフ+磁気共鳴スペクトロスコピー)
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

慣れない場所での昼寝を脳の化学物質ごと測定。すんなり眠れた回は前頭部の「興奮系物質(Glx)」が下がり、寝つけない初回は下がらなかった。

ひとことで言うと眠るときは、脳の「アクセル」をゆるめることが大事みたい。

もくじ
  1. 「アクセル」と「ブレーキ」の物質を測る
  2. 寝つけた回だけ「アクセル」がゆるんでいた
  3. 「片方の脳が見張っている」研究とのつながり
  4. まとめ

修学旅行、合宿、初めて泊まるホテル。なぜか1日目の夜だけ寝つけない。これは「第一夜効果」と呼ばれ、1960年代から知られている現象です。

2026年9月、科学誌『Journal of Neuroscience』に、米国ブラウン大学(大阪大学の研究者も参加)のチームが、この現象を脳の化学物質のレベルで調べた論文を発表しました。すんなり眠れたときは、脳の前の方で「興奮系の物質」がスッと下がっていた。寝つけない初回は、それが下がっていなかったのです。

01「アクセル」と「ブレーキ」の物質を測る

脳の中には、神経の活動を高めるアクセル役と、しずめるブレーキ役の物質があります。

  • Glx(グルタミン酸+グルタミン):アクセル役(興奮性)
  • GABA(ギャバ):ブレーキ役(抑制性)

眠りにつくには「ブレーキを強く踏む」のか、「アクセルをゆるめる」のか。研究チームはこれを確かめるため、第一夜効果をわざと利用しました。

02寝つけた回だけ「アクセル」がゆるんでいた

予想どおり、1回目は寝つくまでの時間が長くなりました。そして脳内の物質を見ると、

  • 2回目(眠りやすい回):起きている状態から眠りへ移る間に、Glxが低下
  • 1回目(眠りにくい回):この低下が見られなかった

さらに、2回を通して、Glxの下がり方が大きい回ほど、早く寝ついていました。統計的な分析でも、1回目と2回目の寝つきの差は、Glxの変化で説明できることが示されました。

一方、ブレーキ役のGABAは、どちらの回でもはっきり変化せず、寝つきとも関係がありませんでした。

眠りにつくカギは、ブレーキを踏むより「アクセルをゆるめる」ことだったのかも
眠りにつくカギは、ブレーキを踏むより「アクセルをゆるめる」ことだったのかも

03「片方の脳が見張っている」研究とのつながり

同じブラウン大学のグループは2016年、慣れない場所で眠ると脳の左半球が「見張り番」のように警戒を続けることを報告していました(Tamaki et al., 2016)。

今回の研究は、その警戒モードの背景に、興奮系の物質が下がりきらない状態があるのかもしれない、という手がかりを与えてくれます(ただし、2つの研究のつながりを直接確かめたわけではありません)。くわしくは第一夜効果の記事もどうぞ。

04まとめ

旅先で寝つけないのは、気のせいではなく、脳がまだ「警戒モード」でアクセルをゆるめきれていないからかもしれません。次に枕が変わる夜は、「無理に寝よう」と力むより、脳の興奮を少しずつ下ろしていくイメージで過ごしてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerSleeping badly on the first night in an unfamiliar place is called the "first-night effect." Researchers at… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Sleeping badly on the first night in an unfamiliar place is called the "first-night effect." Researchers at Brown University in the US used this effect to study what happens in the brain as we fall asleep. Twenty healthy young adults each took two afternoon naps while special scans measured chemicals in the front part of the brain.

As expected, people took longer to fall asleep during the first nap. During the second, easier nap, the level of Glx, a group of chemicals that excite nerve cells, dropped as people moved from waking to sleep. In the first nap, it did not. Meanwhile, GABA, a chemical that calms nerve cells, did not clearly change in either nap.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

慣れない場所での最初の夜によく眠れないことは「第一夜効果」と呼ばれます。アメリカのブラウン大学の研究者たちは、この効果を利用して、眠りにつくときに脳の中で何が起こるのかを調べました。健康な若者20人がそれぞれ午後の昼寝を2回し、その間、特別なスキャンで脳の前の部分の化学物質が測定されました。

予想どおり、最初の昼寝では眠りにつくまでに時間がかかりました。2回目の眠りやすい昼寝では、神経細胞を興奮させる物質のグループであるGlxの量が、起きている状態から眠りへ移るにつれて下がりました。1回目の昼寝では下がりませんでした。一方、神経細胞をしずめる物質であるGABAは、どちらの昼寝でもはっきりとは変化しませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the "first-night effect"?

Q2. What happened to Glx during the second nap?

Q3. What does the result about GABA suggest?

重要単語

  • sleep onsetC1
    名詞(句)入眠、眠りにつくことCaffeine can delay sleep onset. onset は「始まり、発症」。the onset of winter(冬の始まり)、the onset of a disease(病気の発症)。
  • latencyC1
    名詞潜時、(始まるまでの)待ち時間Sleep latency is the time it takes to fall asleep. 形容詞 latent(潜在的な)。通信の「レイテンシー(遅延)」も同じ語。
  • excitatoryC1
    形容詞興奮性のGlutamate is an excitatory chemical in the brain. excite(興奮させる)の形容詞形。対になるのは inhibitory(抑制性の)。
  • unfamiliarB2
    形容詞慣れない、見知らぬIt is hard to sleep in an unfamiliar room. be unfamiliar with ~「~をよく知らない」、be unfamiliar to ~「~に知られていない」。前置詞で主語が逆になる。
  • transitionB2
    名詞移り変わり、移行The transition from wake to sleep takes a few minutes. the transition from A to B の形で使う。trans-(越えて)+it(行く)。
  • inhibitionC1
    名詞抑制GABA is linked to inhibition in the brain. 動詞 inhibit(抑える、妨げる)。inhibit A from doing「Aが~するのを妨げる」は prevent と同じ型。
旅先の1日目って寝つけないよね。ブラウン大学の実験で、すんなり眠れた回は脳の前の方の「興奮系物質」がスッと下がっていたのに、寝つけない初回は下がらなかったらしい。ブレーキより、アクセルをゆるめるのが大事なのかも。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Yamada et al. (2026) Prefrontal Glx reduction during the sleep transition is associated with sleep onset latency, Journal of Neurosciencedoi.org
  2. Tamaki et al. (2016) Night Watch in One Brain Hemisphere during Sleep Associated with the First-Night Effect in Humans, Current Biologydoi.org
  3. Agnew et al. (1966) The first night effect: an EEG study of sleep, Psychophysiologydoi.org