北極星は、ずっと同じ星ではない
宇宙と地球No.159

北極星は、ずっと同じ星ではない

1万2000年後は、おりひめ星のベガが北の目印に。

ホントTRUE

この判定の対象「北極星は、長い時間がたつと別の星に入れかわる」

うなり度 読む時間8分 出典8件 確認した事実23件
もくじ
  1. 北極星は、真北から少しだけずれている
  2. 地球の軸の向きは、約2万6000年かけてゆっくり円を描く
  3. 約1万2000年後には、七夕のおりひめ星ベガが北の目印になる
  4. 星が回る中心の近くに、目印になる明るい星がない時代もある。今の南の空がそうだ
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

北の空を一晩じゅう写真にとると、星たちは、北の一点を中心にぐるりと円を描きます。円のまん中のすぐそばに、ほとんど動かない星があります。それが北極星です。

北極星は、昔から方角を知る目印でした。国立天文台は、北極星は季節が変わっても、北の空のほぼ同じところに見えると書いています。ただし、何千年もたてば、今の北極星は同じようには使えなくなる、とも書いています。

北の目印になる星は、長い年月のうちに、ほかの星に入れかわっていきます。NASAによると、約1万2000年後に北の目印になるのは、こと座のベガです。ベガは、日本では七夕の「おりひめ星」として知られる星です。

しかも、今の北極星が真北に一番近づくのは、まだ先の2100年ごろです。この記事では、まず、北の目印の星が入れかわる仕組みを見ていきます。そのあとで、北極星が3つの星の集まりであることを紹介します。最後に、北の目印になる星がない時代に、ピラミッドをどうやって真北に向けたのかについて、学者たちの意見が分かれていることも紹介します。

01北極星は、真北から少しだけずれている

地球は、北極と南極を貫く軸を中心に回っています。この軸を、まっすぐ空まで伸ばした先を、天の北極といいます。地球が回るので、星はみんな、天の北極を中心に回って見えます。

北極星は、天の北極のすぐ近くにあります。でも、ぴったり重なってはいません。NASAによると、北極星も、天の北極の周りに、24時間でとても小さな円を描いています。円が小さいので、ほとんど動かないように見えるのです。

北極点に立てば、北極星はほぼ真上に見えます。それより南の日本などでは、北極星は北の方角を教えてくれます。北極星の見つけ方は、北斗七星を使うのが有名です。ひしゃくの形の先にある2つの星を結び、その線を伸ばしていくと、北極星にたどりつきます。北極星は、こぐま座のしっぽの先にある星です。

ブリタニカによると、北極星が天の北極に一番近づくのは、2100年ごろです。そのあとは、だんだん離れていきます。数百年後には、北極星は天の北極から数度もずれてしまいます。今の北極星は、ちょうど真北に一番近い時期にいるのです。

02地球の軸の向きは、約2万6000年かけてゆっくり円を描く

北の目印の星が入れかわるのは、地球の軸の向きが、少しずつ変わるからです。

国立天文台によると、地球の軸は、太陽の周りを回る面に対して、約23.4度傾いています。空へ伸ばした軸の先は、空の上で大きな円を描くように動きます。この円の半径は、角度でいうと23.4度です。一回りにかかる時間は、約2万6000年です。この動きを、歳差(さいさ)といいます。

回っているコマを、思い浮かべてください。コマの心棒は、傾いたまま、頭をゆっくり回していきます。地球の軸も、同じような動きをしているのです。

この動きの原因は、太陽や月や惑星の引力です。国立天文台によると、これらの引力が、傾いた地球の軸を、まっすぐ起こそうとします。ところが、回っている物は、引かれた方向にはたおれません。そのかわりに、軸の向きがゆっくり回り始めます。回るコマの心棒が、頭をゆっくり回すのと同じ仕組みです。

03約1万2000年後には、七夕のおりひめ星ベガが北の目印になる

天の北極が動いていく道すじには、いろいろな星が並んでいます。国立天文台は、この道すじの近くにある星の例として、こと座のベガを挙げています。

NASAの記事によると、約1万4000年前、天の北極はベガの方を指していました。そして、約1万2000年後に、ふたたびベガを指します。1万4000年前から1万2000年後までを足すと、2万6000年です。これは、地球の軸が一回りする時間と同じです。

ベガは、七夕の「おりひめ星」です。国立天文台によると、おりひめ星はこと座の1等星ベガ、ひこ星はわし座の1等星アルタイルです。

1等星のベガは、2等星くらいの今の北極星より、明るい星です。1万2000年後の人たちは、今よりずっと見つけやすい北の目印を、手に入れることになります。

星が回る中心(天の北極)は、2万6000年かけて大きな円を描く
星が回る中心(天の北極)は、2万6000年かけて大きな円を描く

04星が回る中心の近くに、目印になる明るい星がない時代もある。今の南の空がそうだ

天の北極が動く道すじに、いつも明るい星があるとはかぎりません。NASAは、天の北極や天の南極の近くに、明るい星がない時期もある、と書いています。

その例が、今の南半球の空です。地球の軸を南へ伸ばした先を、天の南極といいます。今の天の南極の近くには、目印になる明るい星がありません。南半球の人たちは、南十字星などを使って、南の向きを見つけています。

つまり、北の目印になる北極星がある今の北半球は、少し運がよいのです。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

北極星は、銀河までの距離を測るときの手がかりになる星でもある

北極星の本体は、明るさが決まった周期で変わるケフェイド変光星です。ブリタニカによると、北極星の明るさが変わる周期は、約4日です。ただ、変化がとても小さいので、目で見ても分かりません。

ハッブルの発表によると、ケフェイド変光星の明るさの変化は、銀河までの距離や、宇宙がふくらむ速さを測るのに使われています。北極星は、地球に一番近いケフェイド変光星です。だから、北極星の性質を正しく知ることは、ほかの銀河までの距離を、より正しく測ることにつながります。

ところが、その北極星までの距離は、資料によって少しずつ違います。2006年のハッブルの発表では約430光年、ブリタニカでは約447.6光年です。近くの星でも、距離をきっちり決めるのは難しいのです。

北極星の重さは、周りを回る相手の星の動きから、太陽の約5.1倍と分かった

星の重さを、直接はかることはできません。手がかりになるのは、2つの星が回り合う動きです。回る速さと、回る道すじの大きさから、重さが計算できます。

2006年、ハッブルの観測チームは、相手の星の動きを何年も追うと宣言しました。目標は、北極星の正確な重さを知ることでした。2024年、チームのナンシー・エバンス(Nancy Evans)らは、2016〜2021年の観測をまとめました。観測には、いくつもの望遠鏡を組み合わせて、1つの大きな望遠鏡のように使う装置(CHARA干渉計)などを使いました。そして、北極星の重さを太陽の約5.1倍と発表しました。相手の星は、約30年かけて、つぶれただ円の道すじを回っていました。

論文は、北極星の表面に、しみのような模様があるかもしれないとも書いています。また、明るさが変わる周期が急に変わったり、明るさの変化の大きさが変わったりする、変わった性質があることも書かれています。北極星は毎晩ながめる身近な星ですが、まだなぞが多いのです。

北の目印の星がない時代に、ピラミッドをどうやって真北に向けたかは、学者の意見が分かれている

エジプトのギザの大ピラミッドは、ほとんど正確に真北を向いています。イタリアの研究者マグリ(Giulio Magli)がまとめた測量値では、クフ王のピラミッドの、真北からのずれは、角度でたった3.4分です。1分は、1度の60分の1です。

2000年、エジプト学の研究者ケイト・スペンス(Kate Spence)は、科学誌ネイチャーに一つの説を出しました。エジプト人は、天の北極の両側にある2つの星を使った、という説です。マグリの論文によると、その2つの星は、こぐま座のコカブと、おおぐま座のミザールです。片方の星が、北の空で一番高い位置に来た時、2つの星を結ぶ線は、地面に垂直になります。その線の方向を「北」とした、という考えです。

2つの星を結ぶ線の向きは、歳差のせいで、年がたつと少しずつずれていきます。だから、ピラミッドの向きのずれ方を見れば、いつ向きを決めたかが計算できます。スペンスは、クフ王のピラミッドの向きを決めたのは紀元前2467年ごろで、誤差は±5年だとしました。王の名前の一覧にたよる、それまでの年代の決め方は、±100年ほどの精度しかありません。

ただし、スペンスの説には反論もあります。マグリによると、研究者のベルモンテ(Juan Antonio Belmonte)は、別の2つの星を使う方法を出しました。ベルモンテの方法だと、それまでの年代とよく合うといいます。マグリ自身も、カフラー王のピラミッドだけが、スペンスの計算に合わない点を指摘しています。スペンスはこれを、このピラミッドだけ、反対の季節に向きを決めたからだと説明しました。でもマグリは、この説明は苦しいと批判しました。

歳差という地球の軸の動きは、確かです。でも、それを考古学の年代にあてはめるとき、研究者のあいだで意見が分かれます。星の動きを使って歴史の年代を決める研究には、こうした難しさがあるのです。

05まとめ

地球の軸の向きは、コマの心棒のように、約2万6000年かけてゆっくり円を描いています。そのため、北の目印になる星は、長い時間の中で別の星に入れかわります。今の北極星が真北に一番近づくのは、2100年ごろです。そして約1万2000年後には、七夕のおりひめ星ベガが、北の目印になります。

今夜、北の空で北極星を見つけたら、今が北極星にとって、真北に一番近い時期だと思い出してください。

人に話すなら、こう言おう

北極星って、ずっと同じ星じゃないんだって。地球の軸がコマみたいにゆっくり首をふるから、1万2000年後くらいには七夕のおりひめ星のベガが北の目印になるらしいよ。
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英語で読む

The North Star Will Change

CEFR A2222 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

On a clear night, all the stars seem to turn around one point in the north.晴れた夜には、すべての星が北の一点のまわりを回っているように見えます。 Near that point is a star that almost never moves.その点の近くに、ほとんど動かない星があります。 We call it the North Star, or Polaris.私たちはそれを北極星、またはポラリスと呼びます。 For a long time, people have used it to find north.長いあいだ、人々は北を見つけるためにこの星を使ってきました。

But Polaris will not be the North Star forever.でも、ポラリスがいつまでも北極星でいるわけではありません。 The Earth spins like a top, and its axis slowly turns in a big circle.地球はコマのように回っていて、その軸はゆっくりと大きな円をえがいて回ります。 One full circle takes about 26,000 years.一回りするのに、約2万6000年かかります。 Scientists call this movement precession.科学者はこの動きを歳差と呼びます。

Right now, Polaris is getting closer to the true north point in the sky.今、ポラリスは空の本当の北の点に近づいているところです。 It will be closest in about the year 2100.いちばん近づくのは、2100年ごろです。 After that, it will slowly move away.そのあとは、ゆっくりはなれていきます。 Also, Polaris is not the brightest star in the sky.また、ポラリスは空でいちばん明るい星ではありません。 It is famous because it stays in one place, not because it is bright.有名なのは、明るいからではなく、一つの場所にとどまっているからです。

In about 12,000 years, the north point will be near a star called Vega.約1万2000年後には、北の点はベガという星の近くになります。 In Japan, Vega is the weaver star in the story of Tanabata.日本では、ベガは七夕の物語に出てくる、おりひめ星です。 It is brighter than Polaris, so it will be an easy guide.ベガはポラリスより明るいので、見つけやすいめじるしになるでしょう。

Some places do not have a pole star at all.極の星がまったくない場所もあります。 Today, there is no bright star near the south point of the sky.今、空の南の点の近くには明るい星がありません。 People in the south use the Southern Cross to find their way.南半球の人々は、南十字星を使って方角を見つけます。 So when you see Polaris tonight, remember that you live at a lucky time.だから今夜ポラリスを見たら、自分が運のよい時代に生きていることを思い出してください。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long does one full circle of the Earth's axis take?

    地球の軸が一回りするのに、どれくらいかかりますか。

  3. Q3What will happen to Polaris after about the year 2100?

    2100年ごろのあと、ポラリスはどうなりますか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "guide" is closest in meaning to ...

    第4段落の "guide" に最も意味が近いのはどれですか。

  5. Q5Which is true according to the story?

    本文によると、正しいのはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • axis名詞
    軸(じく)

    The Earth turns on its axis once a day.

    地球は1日に1回、軸を中心に回る。

    💡 複数形は axes。the Earth's axis で「地軸」。

  • spin動詞
    回る、回転する

    The little girl made the top spin on the table.

    その女の子はテーブルの上でコマを回した。

    💡 過去形は spun。spin around で「くるりと回る」。

  • precession名詞
    歳差(運動)

    Precession slowly changes the pole star.

    歳差は、極の星をゆっくり変えていく。

    💡 pre-(前へ)+ cess(進む)。春分点が少しずつ前へずれることから。

  • top名詞
    コマ(おもちゃ)

    My grandfather taught me how to spin a top.

    祖父がコマの回し方を教えてくれた。

    💡 「頂上」の top と同じつづり。spin a top で「コマを回す」。

  • bright形容詞
    明るい、輝いている

    The moon is very bright tonight.

    今夜は月がとても明るい。

    💡 比較級 brighter、最上級 brightest。名詞は brightness(明るさ)。

  • forever副詞
    永遠に、いつまでも

    Nothing stays the same forever.

    いつまでも同じままのものはない。

    💡 not ... forever で「いつまでも〜というわけではない」。

  • guide名詞
    案内(するもの)、めじるし

    The tall tower was a good guide for us.

    その高い塔は、私たちのよいめじるしになった。

    💡 動詞では「案内する」。guidebook(案内書)。

  • lucky形容詞
    運のよい

    We were lucky to see a shooting star.

    流れ星を見られて、私たちは運がよかった。

    💡 名詞 luck(運)。反対は unlucky。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 23件)。

  1. 質問10-7)歳差ってなに?(国立天文台)nao.ac.jp
  2. 質問3-9)七夕について教えて(国立天文台)nao.ac.jp
  3. Dyches, P. (2021) What is the North Star and How Do You Find It?(NASA Science)science.nasa.gov
  4. Polaris(Encyclopaedia Britannica)britannica.com
  5. There's More to the North Star Than Meets the Eye(NASA Hubble, 2006)hubblesite.org
  6. Evans, N. R. et al. (2024) The Orbit and Dynamical Mass of Polaris: Observations with the CHARA Array, The Astrophysical Journal 971doi.org
  7. Spence, K. (2000) Ancient Egyptian chronology and the astronomical orientation of pyramids, Nature 408doi.org
  8. Magli, G. (2003) On the astronomical orientation of the IV dynasty Egyptian pyramids and the dating of the second Giza pyramid(arXiv)arxiv.org

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