2024年に「2つ目の月」と話題になった小惑星は、地球を1周もしなかった
宇宙と地球No.298

2024年に「2つ目の月」と話題になった小惑星は、地球を1周もしなかった

「2つ目の月」は、地球を1周もしていなかった

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この判定の対象「2024年秋、地球に一時的に2つ目の月ができた」

うなり度 読む時間9分 出典8件 確認した事実27件
もくじ
  1. 2024 PT5は、約57日間「地球につかまった」と計算されたが、1周もしなかった
  2. 「つかまった」かどうかは、地球からどこまで近ければよいかで答えが変わる
  3. 本物の月との違いは、大きさと、回り続けるかどうか
  4. 地球のまわりを本当に回った小さな天体も、見つかっている
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

2024年9月、「地球に2つ目の月ができる」というニュースが世界中に流れました。主役は、小惑星「2024 PT5」です。この年の8月7日に、南アフリカの望遠鏡で見つかったばかりでした。地球にぶつかる小惑星を見張るための望遠鏡です。

2人の天文学者の計算では、2024 PT5は9月29日から11月25日まで、地球につかまった状態になります。期間は約57日間です。大きさは10mほどでした。こうした一時的な「月」は、ミニムーンと呼ばれます。

ところが、同じ計算をよく読むと、この小惑星は地球のまわりを1周もしていません。NASA(アメリカ航空宇宙局)は、2024 PT5を「ミニムーンとは言いきれない」と書きました。さらに2025年1月には、別の研究チームが新しい発表をしました。2024 PT5は、月から飛び出した岩のかけららしいというのです。

012024 PT5は、約57日間「地球につかまった」と計算されたが、1周もしなかった

2024 PT5の動きを計算したのは、デ・ラ・フエンテ・マルコスという名字の2人の天文学者です(Carlos and Raúl de la Fuente Marcos)。2人は2024年9月、アメリカ天文学会の雑誌に、短い論文で計算の結果を出しました。

2人が加わった2025年の論文によると、2人の決め方で小惑星が「つかまった」と言える条件は2つです。1つ目は、地球から見た小惑星の勢いが、地球の引力をふり切るには足りないこと。2つ目は、地球から約450万km以内にいることです。450万kmは、月までの距離の約12倍です。2024 PT5は、9月29日から11月25日まで、この2つを満たしていました。

ただし、論文は、この小惑星を「つかまったまま通りすぎるもの」に分けています。このタイプは、地球のまわりを1周もしません。2024 PT5は、地球の引力に引きとめられながら、地球の近くをゆっくり通りすぎただけなのです。

NASAの説明は、もっとはっきりしています。2024年10月2日のNASAの記事は、2024 PT5を「ミニムーンとは言いきれない」と書きました。記事によると、2024 PT5は数か月、地球の近くにとどまります。でもその場所は、月までの約9倍も遠い所です。記事は、この小惑星が地球の引力につかまることはない、とも書いています。

02「つかまった」かどうかは、地球からどこまで近ければよいかで答えが変わる

同じ小惑星について、2人の天文学者は「つかまった」と書き、NASAは「つかまらない」と書きました。実は研究者の間でも、地球からどこまで近ければ「つかまった」と言うかの決め方が、1つではありません。

2025年1月に月のかけら説を発表した研究チームは、2人より厳しい決め方を使いました。地球から約150万km以内にいることを条件にしたのです。この範囲の中では、地球の引力が、太陽の引力に負けずに物の動きを決められます。チームの計算では、2024 PT5は、勢いの条件とこの近さの条件を同時には満たしませんでした。つまり、つかまっていません。

NASAの記事が書いた「月までの約9倍」は、計算すると約350万kmです。450万kmよりは近く、150万kmよりは遠い所です。2024 PT5は、どちらの決め方を使うかで答えが変わる位置にいたのです。ただ、どちらの決め方でも、2024 PT5が地球を1周しなかったことは同じです。

03本物の月との違いは、大きさと、回り続けるかどうか

本物の月と比べると、2024 PT5の小ささがよく分かります。NASAによると、月の半径は約1740kmです。直径にすると約3480km。2024 PT5の約35万倍です。

回り方も違います。月は、地球から平均で38万4400km離れた所を、27日で1周します。これを何十億年も続けています。2024 PT5が「つかまった」状態だったのは、2か月に満たない間でした。その間に、1周もしていません。

月のかけら説を出したチームの計算では、2024 PT5は2055年11月に、また地球に近づきます。ただし、小惑星の動きは、地球や月に近づくたびに少しずつ変わります。そのため、2084年ごろより先の動きは、今のデータでは正確に予想できないそうです。

2024 PT5は、地球の近くを通りすぎただけで、地球のまわりを1周しなかった
2024 PT5は、地球の近くを通りすぎただけで、地球のまわりを1周しなかった

04地球のまわりを本当に回った小さな天体も、見つかっている

一方で、地球のまわりを本当に回ったミニムーンもあります。1つは、2006 RH120という小さな天体です。2006年の夏から約1年、地球のまわりを回りました。2012年の時点で、地球を回ったと確かめられた自然の天体は、これだけでした。

2020年2月には、2020 CD3という小さな天体が見つかりました。2月25日、国際天文学連合の小惑星センターが発表しています。何人もの研究者の計算で、この天体は「一時的に地球につかまっている」。人が打ち上げたロケットなどとの関係も見つからない、という発表でした。2024 PT5を計算した2人は、2020年の論文で、2020 CD3の動きも計算しています。それによると、2020 CD3は2016年ごろに地球につかまり、2020年5月の初めに離れていきました。

実は、こうした小さな月は、いつも地球のまわりにいるかもしれません。2012年、グランビック(Mikael Granvik)たちの研究チームは、コンピューターで計算しました。地球の近くを通る小惑星のうち、どれくらいが一時的に地球につかまるかを調べたのです。

その結果、どの時点でも、直径1mほどの天体が少なくとも1つ、地球のまわりを回っているはずだという計算になりました。地球を回るタイプのミニムーンは、平均で約286日つかまっています。その間に、地球のまわりを約2.9周するそうです。地球に落ちてくる流れ星の約0.1%は、もともとミニムーンだった、という見積もりもあります。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

「地球につかまった」と言える条件は、勢い・近さ・回った回数の3つで決まる

物を真上に投げると、勢いが足りなければ落ちてきます。勢いが十分なら、地球の引力をふり切って宇宙へ飛んでいけます。小惑星も同じで、地球の近くを通るときの勢いが、地球の引力をふり切るには足りなければ、しばらく地球のそばにとどまります。これが1つ目の条件「勢い」です。

ただ、勢いだけでは決まりません。地球から遠すぎる所では、小惑星の動きは、地球よりも太陽の引力で決まってしまうからです。そこで2つ目の条件として、地球からの近さを決めます。本文で見たとおり、この線を約450万kmに引く研究者と、約150万kmに引く研究者がいます。2025年の論文で、デ・ラ・フエンテ・マルコスたちは、約150万kmの決め方では、2024 PT5はつかまったことにならないと、自分たちで書いています。

3つ目の条件は、回った回数です。2012年のグランビックたちは、つかまった天体のうち、地球のまわりを少なくとも1周するものを「一時的につかまった周回天体」と呼びました。英語の頭文字をとって、TCOと呼ばれます。1周しないものは、「つかまったまま通りすぎるもの」です。2024 PT5は、こちらに入ります。

2025年の論文は、2024 PT5を「準ミニムーン」(ミニムーンに似たもの)と呼んでいます。ニュースの「2つ目の月」という言葉は、こうした違いを省いて広まりました。科学の言葉は、どう決めたかで意味が変わります。ニュースを読むときは、その言葉の決め方を確かめると、話の大きさを正しくつかめます。

2024 PT5は、月にぶつかった天体が飛ばした岩のかけららしい

2024 PT5が見つかって1週間ほどあと、カレタ(Theodore Kareta)たちのチームが、アメリカのローウェル・ディスカバリー望遠鏡と、NASAの赤外線望遠鏡で調べました。調べたのは、2024 PT5が反射する光の色の、細かい割合です。この割合を「スペクトル」といいます。岩の種類によって、スペクトルの形が違うので、何でできているかの手がかりになります。

2024 PT5のスペクトルは、知られているどの種類の小惑星とも合いませんでした。そのかわり、アメリカのアポロ宇宙船や旧ソ連のルナ探査機が月から持ち帰った石や砂と、よく合いました。同じくらいの色合いの小惑星には、かんらん石という鉱物が多いものです。ところが2024 PT5には、輝石という別の鉱物が多いことも分かりました。

チームは、2024 PT5は、昔ほかの天体が月にぶつかったときに飛び散った岩だと結論づけました。月から来たと考えられる地球近くの小惑星は、「カモオアレワ」という小惑星に続いて2つ目です。スペインのカナリア諸島の大きな望遠鏡で調べた、デ・ラ・フエンテ・マルコスたちの2025年の論文も、2024 PT5の光の色は月の岩に似ていると書いています。

人工の物ではないことも確かめられています。ロケットの部品のように大きさのわりに軽い物は、太陽の光に押されて、少しずつ動きがずれます。2024 PT5には、そのずれがほとんどありませんでした。

月のかけらは、ほかにも地球の近くを回っているかもしれない

カレタたちの論文によると、今までに見つかっている地球近くの天体のうち、控えめに見積もっても16個ほどは、月から来た可能性があります。計算によっては、本当の数はその5〜10倍で、100個をこえるかもしれないそうです。

ただし、論文は注意点も書いています。光の色の割合は、岩の表面のつぶの大きさや、表面をおおう砂によっても変わります。大きさの見積もりも、表面がどれくらい光を反射するかの仮定で変わります。2024 PT5の大きさは、この論文では8〜12mと見積もられています。また、月から来たと見分けるには、目に見える光と赤外線の両方で調べる必要があります。論文は、確かなことを言うには、もっと多くの天体を調べる必要があるとしています。

05まとめ

2024年秋に「2つ目の月」と呼ばれた小惑星2024 PT5は、計算上、約57日間、地球につかまった状態でした。けれど地球のまわりを1周もせず、NASAも「ミニムーンとは言いきれない」と書いています。

そして、この小惑星のスペクトルは、アポロ宇宙船などが月から持ち帰った石や砂とよく合いました。2024年に地球のそばを通りすぎた「2つ目の月」は、もともと本物の月の一部だったのかもしれません。

人に話すなら、こう言おう

2024年に「地球に2つ目の月ができる」ってニュースがあったでしょ。あの小惑星、実は地球のまわりを1周もしてないんだって。しかも、月に何かがぶつかって飛び出した、月のかけららしいよ。
READ IN ENGLISH

英語で読む

The Second Moon That Did Not Go Around

CEFR A2218 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In September 2024, the news said, "Earth will get a second moon."2024年9月、ニュースが「地球に2つ目の月ができる」と伝えました。 The "moon" was a small asteroid called 2024 PT5.その「月」は、2024 PT5という小さな小惑星でした。 It was found on August 7, 2024, by a telescope in South Africa.それは2024年8月7日に、南アフリカの望遠鏡で見つかりました。

It was only about 10 meters wide.大きさは、10mほどしかありませんでした。 Two scientists studied its path.2人の科学者が、その通り道を調べました。 They said Earth's gravity would hold it from September 29 to November 25.2人は、9月29日から11月25日まで、地球の引力がそれを引きとめると言いました。 That is about 57 days.それは約57日間です。 But during that time, it did not go around Earth even once.でも、そのあいだに、それは地球のまわりを1周もしませんでした。

NASA also wrote about it.NASAも、この小惑星について書きました。 NASA said it was not quite a "mini-moon."NASAは、それは「ミニムーン」とは言いきれないと言いました。 It only stayed near Earth for a few months and then moved away.それは数か月、地球の近くにいただけで、そのあと離れていきました。 It was about nine times farther from Earth than the Moon.その場所は、地球から月までの約9倍も遠い所でした。

Our real Moon is very different.本物の月は、まったく違います。 It goes around Earth every 27 days.月は27日ごとに地球のまわりを1周します。 Its radius is about 1740 kilometers.月の半径は約1740kmです。 Some small objects really did go around Earth, like 2006 RH120.2006 RH120のように、本当に地球のまわりを回った小さな天体もあります。 It stayed for about a year.それは約1年、地球のそばにいました。

Then another team looked at the light from 2024 PT5.その後、別のチームが2024 PT5から来る光を調べました。 They used telescopes in the United States.チームはアメリカの望遠鏡を使いました。 Its colors did not match any known type of asteroid.その色は、知られているどの種類の小惑星とも合いませんでした。 But they matched rocks brought back from the Moon.でも、月から持ち帰られた岩とは合いました。 The scientists think it is a piece of the Moon.科学者たちは、それは月のかけらだと考えています。 Something hit the Moon and threw this rock into space.何かが月にぶつかり、この岩を宇宙へ飛ばしたのです。 So the "second moon" may be a small part of the first one.つまり「2つ目の月」は、1つ目の月の小さな一部なのかもしれません。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2According to the two scientists, how long did Earth's gravity hold 2024 PT5?

    2人の科学者によると、地球の引力は2024 PT5をどれくらいの期間引きとめましたか。

  3. Q3Why do scientists think 2024 PT5 is a piece of the Moon?

    科学者たちは、なぜ2024 PT5が月のかけらだと考えているのですか。

  4. Q4In paragraph 5, the word "matched" is closest in meaning to

    第5段落の matched という語にいちばん近い意味はどれですか。

  5. Q5Which is true?

    正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • asteroid名詞
    小惑星

    Most asteroids move between Mars and Jupiter.

    ほとんどの小惑星は、火星と木星のあいだを動いている。

    💡 aster(星)+ -oid(〜のような)。asterisk(*の記号)も同じ仲間。

  • gravity名詞
    引力、重力

    Gravity pulls the apple to the ground.

    重力がリンゴを地面へ引っぱる。

    💡 形容詞 grave(重大な)と同じ語源で「重さ」の意味から。

  • path名詞
    通り道、道すじ

    We walked along a path in the forest.

    私たちは森の小道にそって歩いた。

    💡 天体の通り道にも使う。orbit(軌道)より身近な語。

  • radius名詞
    半径

    The radius of this circle is 5 centimeters.

    この円の半径は5cmだ。

    💡 直径は diameter。半径の2倍が直径。

  • telescope名詞
    望遠鏡

    She looked at the stars through a telescope.

    彼女は望遠鏡で星を見た。

    💡 tele(遠く)+ scope(見る)。microscope は顕微鏡。

  • match動詞
    合う、一致する

    Your shoes match your bag.

    あなたのくつは、かばんと合っている。

    💡 名詞の match(試合、マッチ棒)とつづりは同じ。

  • piece名詞
    かけら、1つ

    Can I have a piece of cake?

    ケーキを1切れもらってもいい?

    💡 a piece of 〜 で数えにくい物を数える。peace(平和)と発音が同じ。

  • wide形容詞
    幅が〜の、広い

    The river is 50 meters wide.

    その川は幅が50mある。

    💡 数字+ meters wide で「幅〜m」。名詞は width(幅)。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 27件)。

  1. de la Fuente Marcos, C. & de la Fuente Marcos, R. (2024) A Two-month Mini-moon: 2024 PT5 Captured by Earth from September to November, Research Notes of the AAS 8: 224doi.org
  2. NASA to Track Asteroid 2024 PT5 on Next Close Pass, January 2025(NASA Science, 2024年10月2日)science.nasa.gov
  3. Kareta, T. et al. (2025) On the Lunar Origin of Near-Earth Asteroid 2024 PT5, The Astrophysical Journal Letters 979: L8doi.org
  4. de la Fuente Marcos, R. et al. (2025) Basaltic quasi-mini-moon: Characterizing 2024 PT5 with the 10.4 m Gran Telescopio Canarias and the Two-meter Twin Telescope, Astronomy & Astrophysics 694: L5doi.org
  5. Granvik, M., Vaubaillon, J. & Jedicke, R. (2012) The population of natural Earth satellites, Icarus 218: 262-277doi.org
  6. MPEC 2020-D104: 2020 CD3: Temporarily Captured Object(国際天文学連合 小惑星センター)minorplanetcenter.net
  7. Earth's Moon: Facts(NASA Science)science.nasa.gov
  8. de la Fuente Marcos, C. & de la Fuente Marcos, R. (2020) On the orbital evolution of meteoroid 2020 CD3, a temporarily captured orbiter of the Earth–Moon system, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 494: 1089-1094doi.org

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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