店のバナナは、緑のまま日本に来てから黄色くなる
ウラ取りライフハックNo.044

店のバナナは、緑のまま日本に来てから黄色くなる

熟すスイッチは、エチレンというガス。

ホントTRUE

この判定の対象「バナナやアボカドは、紙袋に入れると早く熟す」

うなり度 読む時間8分 出典7件 確認した事実20件
もくじ
  1. エチレンという気体が、果物に「熟していいよ」と合図する
  2. 熟した果物が出すエチレンで、周りの果物も熟す
  3. 冷蔵庫のバナナの皮が黒くなるのは、熟したからではなく冷えすぎたから
  4. 深掘り講義
  5. まとめ
  6. 英語で読む(A2・4択5問)
  7. 出典・ウラ取り

スーパーに並ぶ黄色いバナナ。あれは、南の国の畑で黄色く熟したものではありません。バナナは、まだ青くてかたいうちに収穫されます。そして、熟さないように13〜14℃に冷やされた船で、日本まで運ばれてきます。

黄色くなるのは、日本に着いてからです。バナナは「室(むろ)」と呼ばれる倉庫に入れられ、エチレンという気体を、少しだけ与えられます。そこで3〜4日かけて熟してから、店に並ぶのです。

ネットでよく見る裏ワザに、「バナナやアボカドは紙袋に入れると早く熟す」というものがあります。この裏ワザは、日本の倉庫でバナナを熟させる作業を、台所で小さくまねしたものです。結論から言うとホントです。早く熟す理由は、果物が自分で出している、目に見えないエチレンです。

この記事では、まずエチレンがどんな気体かを説明します。次に、紙袋に入れると早く熟す理由を説明します。最後に、バナナを長持ちさせる置き方と、冷蔵庫で皮が黒くなる理由を紹介します。

01エチレンという気体が、果物に「熟していいよ」と合図する

エチレンは、炭素と水素だけでできた小さな分子です。普通の温度では気体です。植物は、この気体をホルモン(体の中で合図を伝える物質)として使っています。

植物学者のブリーカー(Anthony Bleecker)とケンデ(Hans Kende)は、2000年に総説を書きました。総説とは、それまでの研究をまとめた論文です。その中で二人は、エチレンを「植物の中の気体の信号分子(合図を伝える物質)」と呼びました。エチレンは、種が芽を出すときから、葉や花が枯れるときまで、植物のさまざまな変化を調節します。なかでも、農業や商売にとって大切なのが、果実を熟させる働きです。

果物が熟すとは、かたい実がやわらかくなり、色が変わり、甘くなり、香りが出ることです。収穫したあとも熟し続ける種類の果物では、エチレンが、これらの変化を始めさせるスイッチになります。

02熟した果物が出すエチレンで、周りの果物も熟す

エチレンは、熟し始めた果物が自分で作り出します。英国ノッティンガム大学のアレクサンダー(Alexander)とグリアソン(Grierson)は、トマトがどうやって熟すかの研究をまとめました。トマトは、収穫したあとも熟し続ける果物の代表です。二人の論文によると、果物が熟し始めると、エチレンの作られ方が自己触媒的な段階に入ります。自己触媒的(じこしょくばいてき)とは、作られたエチレンが、果物にさらにエチレンを作らせる、という意味です。

つまり、一つの果物が熟し始めると、エチレンが増えます。そのエチレンで果物はさらに熟し、さらにエチレンが増えます。こうして、熟すのがどんどん速くなっていくのです。しかもエチレンは気体なので、となりの果物にも届きます。「箱の中に一つ熟れすぎたのがあると、周りも早く傷む」とよく言われます。この言い伝えも、エチレンがとなりの果物に届くしくみと合っています。

カリフォルニア・アボカド委員会によると、リンゴ、キウイ、アボカドは、どれも天然のエチレンを出します。委員会は、かたいアボカドを早く熟させたいなら、キウイかリンゴと一緒に紙袋に入れて調理台に置くよう勧めています。紙袋がエチレンを閉じこめて、熟すのを早めるからです。

熟した果物が出すエチレンは気体。紙袋はそれを果物の周りに閉じこめ、熟すのを早める
熟した果物が出すエチレンは気体。紙袋はそれを果物の周りに閉じこめ、熟すのを早める

03冷蔵庫のバナナの皮が黒くなるのは、熟したからではなく冷えすぎたから

逆に、バナナを長持ちさせたいときはどうすればよいのでしょう。日本バナナ輸入組合は、15〜20℃くらいの、風通しのよい場所に置くよう勧めています。房を上向きに置くと、重みで下側がつぶれます。そこで、山の形に伏せるか、バナナスタンドなどにつるすのがよいそうです。

注意したいのは寒さです。バナナは13℃以下になると、熟すのが止まります。冷蔵庫に長く入れたバナナの皮が黒くなるのは、熟したからではありません。冷えすぎで傷む低温障害によって、色が変わったのです。夏の暑い時期だけは、新聞紙などに包んで冷蔵庫の野菜室に入れる方法が紹介されています。食べきれないときは、皮をむいて1本ずつラップで包めば冷凍もできます。

アボカドは、バナナと違って、熟したら冷蔵庫に入れてよい果物です。熟したアボカドは、すぐに冷蔵庫に入れて熟すのを遅らせます。かたいアボカドは、冷蔵庫に入れると熟すのが遅くなるので、室温に置きます。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

エチレンは、空気を通ってとなりの植物にまで届くホルモン

動物のホルモンの多くは、血液に乗って体の中を運ばれます。エチレンは違います。気体として細胞から細胞へ届き、さらに空気を通ってとなりの別の植物や果物にまで届きます。ブリーカーとケンデの総説も、題名に「気体の信号分子」と書いて、この性質を目立たせています。

植物の体の中では、エチレンは次の順番で作られます。もとになるのは、S-アデノシルメチオニンという物質です。これは、アミノ酸のメチオニンからできる物質です。とちゅうで、ACC(アミノシクロプロパンカルボン酸)という物質に変わります。酵素とは、体の中の化学反応を助けるタンパク質です。この流れでは、ACC合成酵素とACC酸化酵素という二つの酵素が働きます。エチレンをどれだけ作るかは、主に、ACC合成酵素を作る遺伝子がどれだけ働くかで決まります。

エチレンは、細胞が「感じ取る」ことで初めて効く

エチレンが効くには、作られるだけでは足りません。細胞がエチレンを感じ取る必要があります。植物の細胞には、エチレンを受け取るタンパク質(受容体)があります。シロイヌナズナという小さな植物には、エチレンに反応しない変異体(遺伝子が変わった株)があります。この変異体を調べることで、エチレンを受け取るタンパク質がどんなものかが分かってきました。

細胞がエチレンを感じ取れなくすれば、エチレンがあっても熟すのを遅らせられます。この考えから使われるようになったのが、1-MCP(1-メチルシクロプロペン)という物質です。米国コーネル大学のワトキンス(Chris Watkins)は、2006年に総説を書いています。それによると、1-MCPは、細胞がエチレンを感じ取るのをじゃまします。1-MCPが商品として売られるようになると、世界の多くのリンゴの産地が、リンゴの品質を保つために、すぐに取り入れました。

果物には、収穫したあとも熟すものと、熟さないものがある

果物には、収穫したあとも熟し続けるものと、そうでないものがあります。収穫したあとも熟し続ける果物では、熟すときにエチレンがたくさん作られます。それと同時かすぐあとに、果物の呼吸(酸素を取りこみ、二酸化炭素を出すこと)も急にさかんになります。この種類の果物を、クライマクテリック型(呼吸の山がある型)と呼びます。インドの研究者ポール(Paul)らは、2012年の総説で、バナナをこの型の果物に挙げています。トマトは、この型の果物を研究するときの代表です。この型の果物は、エチレンを与えると熟すのが早まります。エチレンを出す果物と一緒にしても、同じように早まります。

ただしポールらの総説には、品種によって、「収穫後も熟す型」と「熟さない型」の両方のふるまいを見せる果物もある、とも書かれています。そして、果物を二つの型に分けるやり方は「はっきりしたものでも完全なものでもない」としています。

バナナを運んで売る仕事では、バナナがエチレンで熟す性質をそのまま利用しています。青いうちに収穫し、低温で運び、日本の室でエチレンを与えて黄色くするのです。台所の紙袋は、この最後の作業を小さくまねしたものです。

バナナは13℃以下に冷やすと、熟すのが止まる

日本バナナ輸入組合の資料には、二つの数字が出てきます。一つは、運ぶ船の中の温度で、13〜14℃です(同じページの注では12〜14℃)。もう一つは家庭での目安で、13℃以下では熟成が止まります。冷やしすぎると、皮が黒くなる低温障害が起きます。資料には、船の温度をなぜこの温度にするのかまでは書かれていません。でも二つの数字を並べると、船の温度は、熟成が止まる13℃のすぐそばの低さに保たれていることが分かります。バナナは、冷やせば冷やすほどよい、というわけではないのです。

アボカドを電子レンジで温めても熟さない理由も、ここで説明できます。熟すとは、やわらかさだけでなく、色・甘さ・香りがそろって変わることです。熱で実をやわらかくしても、エチレンが始めさせるこれらの変化は起きません。

紙袋は、エチレンを果物の周りに集めるために使う

紙袋に入れる目的は、エチレンを果物の周りに集めることです。カリフォルニア・アボカド委員会も、紙袋がエチレンを閉じこめると説明しています。一方、どの袋がどれだけ効くかを家庭の条件で比べた数値は、今回の調査では確認できませんでした。確かめたい人は、同じくらいに熟した果物を袋あり・なしで並べ、毎日の色を比べてみるとよいでしょう。

04まとめ

バナナやアボカドを紙袋に入れると早く熟す、という裏ワザはホントでした。果物は熟すとエチレンという気体を出し、紙袋はその気体を閉じこめます。紙袋にリンゴやキウイも一緒に入れると、エチレンを出す果物が増えるので、カリフォルニア・アボカド委員会はこの方法を勧めています。

店に並ぶバナナも、青いまま日本に運ばれ、室でエチレンを浴びて黄色くなっています。逆に長持ちさせたいなら、15〜20℃の風通しのよい場所につるしておくこと。冷蔵庫で皮が黒くなったバナナは、熟したのではなく、寒さで傷んだしるしです。

人に話すなら、こう言おう

店に並んでるバナナって、青いまま日本に運ばれて、倉庫でエチレンっていうガスを浴びて黄色くなるんだって。紙袋に入れると早く熟すのも、同じガスを閉じこめてるからなんだよ。
READ IN ENGLISH

英語で読む

The Secret Gas in a Paper Bag

CEFR A2219 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

The yellow bananas in a Japanese supermarket were not yellow on the farm.日本のスーパーにある黄色いバナナは、畑では黄色くありませんでした。 Farmers pick them when they are still green and hard.農家の人たちは、まだ青くてかたいうちにバナナを収穫します。 Ships carry them to Japan at 13 to 14 degrees Celsius, so they do not ripen on the way.船は、とちゅうで熟さないように、13〜14℃でバナナを日本へ運びます。

In Japan, the bananas go into a special room called a muro.日本でバナナは、「室(むろ)」と呼ばれる特別な部屋に入れられます。 There, workers give them a little ethylene, a gas made by plants.そこで作業員は、植物が作る気体であるエチレンを少しだけ与えます。 After three or four days, the bananas turn yellow and go to the stores.3〜4日たつと、バナナは黄色くなり、店へ運ばれます。

Ethylene is a plant hormone.エチレンは植物ホルモンです。 It works like a message that says, "It is time to ripen."それは「熟す時間だよ」と伝える合図のようにはたらきます。 Ripe fruit makes ethylene, and the gas can reach other fruit nearby.熟した果物はエチレンを作り、その気体は近くのほかの果物にも届きます。 Apples, kiwifruit, and avocados all give off this gas.リンゴ、キウイ、アボカドは、どれもこの気体を出します。

That is why a paper bag helps at home.だからこそ、家では紙袋が役に立つのです。 Put a hard avocado in a paper bag with an apple.かたいアボカドを、リンゴといっしょに紙袋に入れてみましょう。 The bag keeps the ethylene around the fruit, so it ripens faster.袋がエチレンを果物のまわりにとどめるので、早く熟すのです。 The bag is like a tiny muro in your kitchen.その袋は、台所にある小さな室のようなものです。

But what if you want bananas to last longer?では、バナナを長持ちさせたいときはどうでしょう。 Keep them at 15 to 20 degrees in a place with fresh air.15〜20℃の、風通しのよい場所に置きましょう。 Do not keep them too cold.冷やしすぎてはいけません。 Below 13 degrees, bananas stop ripening.13℃より低いと、バナナは熟すのをやめてしまいます。 In a fridge, the skin may turn black.冷蔵庫に入れると、皮が黒くなることがあります。 That black skin does not mean the banana is ripe.その黒い皮は、バナナが熟したという意味ではありません。 It means the banana got too cold.バナナが冷えすぎたという意味なのです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How long do bananas stay in the muro before they go to stores?

    バナナは店に運ばれる前に、どれくらい室にいますか。

  3. Q3Why does a paper bag make an avocado ripen faster?

    紙袋に入れるとアボカドが早く熟すのはなぜですか。

  4. Q4In paragraph 3, the word "ripen" is closest in meaning to ...

    第3段落の ripen に最も意味が近いものはどれですか。

  5. Q5Which is true about bananas in a fridge?

    冷蔵庫に入れたバナナについて、正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • ripen動詞
    熟す、熟させる

    The tomatoes ripened in the sun.

    トマトは日光を浴びて熟した。

    💡 形容詞 ripe(熟した)+ -en(〜にする)。

  • ripe形容詞
    熟した

    This mango is ripe and sweet.

    このマンゴーは熟していて甘い。

    💡 反対は unripe(未熟な)。

  • hormone名詞
    ホルモン

    Plants use hormones to control how they grow.

    植物はホルモンを使って成長を調節する。

    💡 英語の発音は「ホーモウン」に近い。

  • gas名詞
    気体、ガス

    Air is a mix of different gases.

    空気はいろいろな気体がまざったものだ。

    💡 solid(固体)、liquid(液体)とセットで覚える。

  • give off熟語
    (におい・熱・気体などを)出す

    The flowers give off a sweet smell.

    その花は甘い香りを出している。

    💡 give off heat(熱を出す)、give off light(光を出す)。

  • pick動詞
    (果物・花などを)つむ、収穫する

    We picked strawberries on the farm.

    私たちは農園でイチゴをつんだ。

    💡 「選ぶ」の意味もある。pick up(拾う)。

  • last動詞
    長持ちする、続く

    This battery lasts for two days.

    このバッテリーは2日もつ。

    💡 形容詞「最後の」と同じつづり。動詞では「続く」。

  • fridge名詞
    冷蔵庫

    Put the milk back in the fridge.

    牛乳を冷蔵庫にもどして。

    💡 refrigerator を短くした言い方。freezer は冷凍庫。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 20件)。

  1. Bleecker, A. B. & Kende, H. (2000) Ethylene: A Gaseous Signal Molecule in Plants, Annual Review of Cell and Developmental Biology 16:1-18doi.org
  2. Alexander, L. & Grierson, D. (2002) Ethylene biosynthesis and action in tomato: a model for climacteric fruit ripening, Journal of Experimental Botany 53:2039-2055doi.org
  3. Watkins, C. B. (2006) The use of 1-methylcyclopropene (1-MCP) on fruits and vegetables, Biotechnology Advances 24:389-409doi.org
  4. Paul, V., Pandey, R. & Srivastava, G. C. (2012) The fading distinctions between classical patterns of ripening in climacteric and non-climacteric fruit and the ubiquity of ethylene, Journal of Food Science and Technology 49:1-21doi.org
  5. 輸入過程全体(日本バナナ輸入組合「バナナ大学」)banana.co.jp
  6. バナナの保存方法(日本バナナ輸入組合「バナナ大学」)banana.co.jp
  7. How to Ripen an Avocado(California Avocado Commission)californiaavocado.com

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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