電球を発明したのは、エジソンだけではない
歴史のウソ・ホントNo.144

電球を発明したのは、エジソンだけではない

エジソンより先に、電球を光らせた人がいた。

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この判定の対象「電球を発明したのは、エジソンだ」

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もくじ
  1. エジソンより前から、電気で明かりを作る研究は続いていた
  2. 英国のスワンは、エジソンより先に人前で電球を光らせた
  3. エジソンは、長持ちする電球ができる前に「解決した」と発表した
  4. エジソンは竹のフィラメントを選び、発電所まで作った
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

1895年11月11日、アメリカの最高裁判所が、電球をめぐる裁判の判決を出しました。その文章の中に、ある実験の記録が書きこまれています。

調べられた植物は、6,000種をこえていた。エジソンと助手たちは、何か月も実験を続けた。電球の光る線(フィラメント)に使えたのは、竹が3種ほど、アマゾンのトウ(細長い茎を持つ植物)が1種、リュウゼツランの仲間が1〜2種だけだった。

光る線の材料として決め手になったのは、うちわの縁に使われていた竹でした。30〜40種の木を試して諦めたあと、この竹ひごで驚くほどよい結果が出たのです。エジソンはそれを顕微鏡で調べました。そして、竹をたくさん手に入れる手はずを整えるため、日本へ人を送ったと判決は書いています。

「電球を発明したのはエジソン」。誰もが一度は聞く話です。でも、裁判や研究所の記録をたどると、話は少し違います。エジソンより先に、人前で電球を光らせた人がいたのです。

この記事では、まずエジソンより前の電灯の研究を見ます。次に、英国のスワンとエジソンが電球を光らせた順番を、記録で確かめます。最後に、それでもエジソンの名前が残った理由を考えます。

01エジソンより前から、電気で明かりを作る研究は続いていた

電気で光を作る試みは、エジソンよりずっと前から始まっていました。

1895年の判決によると、英国のハンフリー・デービー(Humphry Davy)は1810年にはもう「アーク灯」を作っていました。2本の炭素の棒のすき間に電気を飛ばして光らせる仕組みです。ただ、光が強すぎてちらつき、炭素の棒もすぐ減るので、家の明かりには向きませんでした。

もう1つの道が「白熱電球」です。細い線に電気を流して、白く光るまで熱くします。判決によると、1845年には、光る線を空気のないガラス球に入れなければならないことも分かっていました。空気中の酸素に触れると、線が燃えてしまうからです。

それでも、誰も長持ちする電球を作れませんでした。燃えにくい材料が見つからない。ガラス球の空気を十分に抜けない。電球づくりには、この2つの問題があったのです。

02英国のスワンは、エジソンより先に人前で電球を光らせた

この2つの問題に、英国でとりくんだ人がいます。化学者のジョセフ・スワン(Joseph Swan)です。

スワンは1828年、イングランド北東部のサンダーランドに生まれました。ニューカッスル大学の資料によると、1860年ごろには電球の実験をしていました。けれど、当時のポンプでは空気を十分に抜けず、うまくいきませんでした。1870年代半ばに性能のよいポンプが出てきて、スワンは研究を再開します。

そして1879年2月3日。スワンはニューカッスルの文学哲学協会で、炭にした糸を使った電球を公開しました。集まった人は700人以上だったそうです。エジソンが初めて電球を一般公開するのは、この年の12月31日です。

スワンの家は、世界で初めて電灯がともった住宅になりました。1881年までには、ロンドンのサヴォイ劇場、イギリス議会の下院、大英博物館も、スワンの電球で照らされていたといいます。

03エジソンは、長持ちする電球ができる前に「解決した」と発表した

では、エジソンはどうだったのでしょう。ラトガース大学の「エジソン文書」の年表を見ると、発表と完成の順番が、普通とは逆だったことが分かります。

エジソンは1876年にも、白熱電灯を少し試していました。本格的に実験を始めたのは、1878年8月27日です。ところが、そのわずか半月後の9月13〜16日、エジソンは「白熱電灯の問題は解決した」と発表しています。まだ、長持ちする電球はできていませんでした。

10月には、投資家たちがお金を出して「エジソン電灯会社」ができます。けれど、ソーヤーとマンという2人の発明家が「自分たちのほうが先だ」と主張し、投資家たちは心配しました。エジソンは、投資家たちが心配したことに腹を立てた、と年表にあります。11月には、フランシス・アプトン(Francis Upton)を雇って、ほかの人の過去の電灯研究を調べさせ、投資家の不安をしずめようとしました。

エジソンの研究所では、何千もの材料が試された
エジソンの研究所では、何千もの材料が試された

電球の実験が本当に成功したのは、「解決した」という発表の約1年後でした。1879年10月22日、エジソンは電気が流れにくい(「抵抗が高い」)炭素の線で、最初の成功を収めます。11月に出した特許には、木綿の糸を炭にして、空気を100万分の1気圧まで抜いた球に入れた、と書かれています。木綿や麻の糸、木の切れはし、紙なども、炭にして試していました。

04エジソンは竹のフィラメントを選び、発電所まで作った

竹が使われるのは、木綿の糸の電球より後です。年表によると、竹のフィラメントを初めて試したのは1880年7月19日。竹はその後、エジソンの電球の標準になりました。

1895年の判決は、竹がよかった理由も書いています。竹は、繊維がまっすぐそろっているからです。エジソンは、竹の壁の厚さ約1cmのうち、表面のすぐ下の0.5mmほどだけを使いました。

エジソンの本当の強みは、電球だけではありませんでした。ラトガース大学のエジソン文書は、エジソンは電球だけでなく「電気照明の仕組み全体」を作った、と書いています。1882年1月にはロンドンのホルボーン高架橋で、9月4日にはニューヨークのパールストリートで、発電所が動き始めました。

イギリスでは、スワンとエジソンの会社が特許をめぐってぶつかりました。けれど、裁判はせずに手を組みます。1883年、2人の名前を合わせた「エディスワン」の会社ができました。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

電球に電気が流れにくい線を使うと、発電所から家までの電線を細くできた

1895年の判決は、エジソン式の電球の要点を「小さな光る面と、高い抵抗」と表現しています。抵抗とは、電気の流れにくさのことです。

なぜ抵抗が高いとよいのでしょうか。電球を光らせるには、線に電気の力(エネルギー)を送りこむ必要があります。抵抗の低い太い線だと、大きな電流を流さなければなりません。大きな電流を遠くまで送るには、太くて重い銅の電線が必要です。

細くて抵抗の高い線なら、流す電流は少なくてすみます。すると、発電所から家までの電線を細くでき、銅の量もお金も減らせます。電球1個だけでなく、発電所と電線をふくむ仕組み全体で見ると、抵抗の高い電球のほうが有利になります。これは、電気の仕組み(物理)から言えることです。

1895年の判決は、誰が最初に電球を発明したかを決めたものではない

この記事の多くは、1895年の最高裁の判決にもとづいています。判決文は、法廷に出された証拠をもとに書かれた公式の記録です。6,000種の植物、うちわの竹、日本へ人を送ったこと。どれも、エジソン側が裁判で示した事実として、判決文に残っています。

ただし、判決は「誰が最初の発明者か」を決めたものではありません。判決自身が、先に発明したのはどちらかという問題には立ち入らない、と書いています。裁判で争われたのは、別のことです。ソーヤーとマンの特許が、「繊維でできた材料すべて」に権利がおよぶほど広くてよいか、でした。最高裁は、広すぎると判断しました。

もう1つ、1879年の特許と1895年の判決を比べると、分かることがあります。1879年11月の特許に書かれた材料は、木綿や麻の糸、木、紙でした。竹は出てきません。有名な「竹の電球」は、特許の8か月後に生まれた改良版なのです。エジソンの電球は、1回のひらめきでできたのではありません。何段階もの改良を重ねて、できあがったのです。

竹のフィラメントは、12年ほどでセルロースに切りかえられた

ニューカッスル大学の資料によると、1881年にはセルロース(植物の繊維の成分)から作るフィラメントが生まれ、業界の標準になっていきました。1892年にゼネラル・エレクトリック社ができると、エジソンの竹はスワンのセルロースに切りかえられたといいます。1880年に初めて試された竹は、12年ほどで、電球の標準の材料ではなくなったことになります。

別々の人が、同じころに同じ物を発明することがある

スワンとエジソンのように、別々の人がほぼ同じころに同じものを発明することは、科学史ではよくあります。これを同時発明といいます。

理由の1つは、必要な部品がそろう時期が同じだからです。電球の場合は、ガラス球の空気をよく抜けるポンプが、なくてはならない道具でした。スワンが1870年代半ばに研究を再開できたのも、性能のよいポンプが手に入ったからです。材料と道具がそろうと、何人もの人が、同じころに同じ発明にたどり着くのです。

「電球=エジソン」と言われるのは、電球を広めた人だからかもしれない

ではなぜ、「電球=エジソン」という印象がこれほど強いのでしょうか。ここからは筆者の推測ですが、名前は最初に作った人より、広めた人に残りやすいのかもしれません。

エジソンは発電所を建て、会社を世界中に作りました。ラトガース大学によると、エジソンの名前のついた照明会社は約200社に上ります。エジソンの名前は、電灯と一緒に世界中へ広まっていったのです。

05まとめ

白熱電球は、エジソン一人の発明ではありません。英国のスワンは、1879年2月3日に700人以上の前で電球を光らせていました。エジソンの一般公開は、その年の12月31日です。

それでもエジソンの名前が残ったのは、6,000種をこえる植物から竹を選び出し、発電所と電線まで作って、電球を町に広めたからです。その竹を手に入れるために、エジソンは日本まで人を送っていました。

人に話すなら、こう言おう

電球ってエジソンの発明って言われるけど、イギリスのスワンって人が先に人前で光らせてたんだって。エジソンはうちわの竹がいいって気づいて、日本まで人を送ったらしいよ。
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英語で読む

Who Really Invented the Light Bulb?

CEFR A2219 words4択 5問全訳つき
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英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In 1895, the highest court in the United States wrote about a very long search.1895年、アメリカの最高裁判所は、とても長い探し物について書きました。 Thomas Edison and his team had tested more than 6,000 kinds of plants.トーマス・エジソンとそのチームは、6,000種類をこえる植物を試していたのです。 They wanted the best material for the thin line that glows inside a light bulb.彼らは、電球の中で光る細い線にいちばんよい材料を探していました。

But Edison was not the first person to make a bulb glow.でも、電球を光らせた最初の人はエジソンではありませんでした。 In England, a chemist named Joseph Swan worked on the same problem.イギリスでは、ジョセフ・スワンという化学者が同じ問題に取り組んでいました。 On February 3, 1879, he showed his bulb to more than 700 people in Newcastle.1879年2月3日、彼はニューカッスルで700人以上の人に電球を見せました。 Edison showed his light to the public on December 31 of the same year.エジソンが自分の明かりを一般に見せたのは、同じ年の12月31日でした。

Edison had a strange start.エジソンの始め方は変わっていました。 In September 1878, only a few weeks after he began his main experiments, he said he had solved the problem.1878年9月、本格的な実験を始めてからわずか数週間で、彼は問題を解決したと言いました。 His real success came about a year later, in October 1879.本当の成功は、約1年後の1879年10月でした。

Then he found something better in a fan made of palm leaves.それから、彼はヤシの葉でできたうちわの中に、もっとよいものを見つけました。 The bamboo on its edge made a strong, long-lasting line.そのふちの竹は、丈夫で長持ちする線になりました。 He even sent a man to Japan to get large amounts of bamboo.彼は竹を大量に手に入れるために、日本まで人を送りさえしました。

Edison's biggest idea was not only the bulb.エジソンの一番のアイデアは、電球だけではありませんでした。 He built a whole system with power stations and wires.彼は、発電所と電線をそなえた仕組み全体を作りました。 In 1882, his power station in New York started to work.1882年、ニューヨークで彼の発電所が動き始めました。 In England, Edison and Swan did not fight in court.イギリスでは、エジソンとスワンは裁判で争いませんでした。 In 1883, their companies joined together, and people called the new company "Ediswan."1883年、2人の会社は一つになり、人々は新しい会社を「エディスワン」と呼びました。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2When did Swan show his bulb to more than 700 people?

    スワンが700人以上に電球を見せたのはいつですか。

  3. Q3Why did Edison send a man to Japan?

    エジソンはなぜ日本に人を送ったのですか。

  4. Q4In paragraph 4, the word "long-lasting" is closest in meaning to ...

    第4段落の long-lasting という語に最も意味が近いのは…

  5. Q5Which is true about Edison and Swan?

    エジソンとスワンについて正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • invent動詞
    発明する

    Who invented the telephone?

    だれが電話を発明しましたか。

    💡 名詞は invention(発明)、人は inventor(発明家)。

  • court名詞
    裁判所、法廷

    The case went to court last year.

    その事件は去年裁判になった。

    💡 the Supreme Court で「最高裁判所」。テニスのコートと同じ語。

  • material名詞
    材料、素材

    Wood is a good material for houses.

    木は家にとってよい材料だ。

    💡 raw material で「原料」。

  • glow動詞
    (熱や光で)光る、輝く

    The lamp glowed softly in the dark room.

    暗い部屋でランプがやわらかく光った。

    💡 炎を上げずにぼうっと光る感じ。

  • chemist名詞
    化学者

    The chemist mixed two liquids in a glass.

    化学者はグラスの中で2つの液体を混ぜた。

    💡 chemistry(化学)。イギリスでは「薬局」の意味もある。

  • public名詞・形容詞
    一般の人々/公の

    The park is open to the public.

    その公園は一般に開放されている。

    💡 in public で「人前で」。反対は private。

  • bamboo名詞
    竹

    Pandas eat a lot of bamboo.

    パンダは竹をたくさん食べる。

    💡 アクセントは後ろ(bam-BOO)。

  • power station名詞
    発電所

    The power station makes electricity for the city.

    その発電所は町のために電気を作っている。

    💡 power plant ともいう。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 24件)。

  1. Consolidated Electric Light Co. v. McKeesport Light Co., 159 U.S. 465 (1895)(米国最高裁判決, コーネル大学 LII)law.cornell.edu
  2. Edison, T. A. US Patent 223,898 "Electric-Lamp"(1880)patents.google.com
  3. Chronology 1871-1880 / 1881-1890(Thomas A. Edison Papers, ラトガース大学)edison.rutgers.edu
  4. Sir Joseph Swan – A Light that Never Goes Out(ニューカッスル大学 特別コレクション)blogs.ncl.ac.uk
  5. Joseph Swan(ニューカッスル大学 Northern Innovation)research.ncl.ac.uk
  6. The Edison and Swan Electric Light Company Limited(英国 科学博物館グループ)collection.sciencemuseumgroup.org.uk
  7. Swan electric lamp(英国 科学博物館グループ)collection.sciencemuseumgroup.org.uk
  8. Biography(Thomas A. Edison Papers, ラトガース大学)edison.rutgers.edu

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文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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