かき氷頭痛は、上あごを温めると早く治るのか
ウラ取りライフハックNo.069

かき氷頭痛は、上あごを温めると早く治るのか

カナダの中学生が、かき氷頭痛の論文を書いた。

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この判定の対象「かき氷頭痛は、上あごを温めると早く治る」

うなり度 読む時間8分 出典8件 確認した事実21件
もくじ
  1. かき氷頭痛は、医学の頭痛の一覧にものっている正式な頭痛
  2. 中学生の実験では、急いで食べた組は、ゆっくり食べた組の約2倍、頭痛が出た
  3. 「上あごを温める」裏ワザを、試して確かめた研究は見つからない
  4. 上あごより、のどの奥が冷えるほうが頭痛が起きやすいという実験がある
  5. 深掘り講義
  6. まとめ
  7. 英語で読む(A2・4択5問)
  8. 出典・ウラ取り

2001年12月、カナダのハミルトンという町の中学校で、ちょっと変わった実験が行われました。生徒たちに100mLのアイスクリームが配られます。ある生徒は「5秒以内で食べて」と言われ、別の生徒は「30秒以上かけて食べて」と言われました。

この実験の論文を中心になって書いたのは、この学校の8年生(13歳前後の学年)、マヤ・カチョロウスキー(Maya Kaczorowski)さんです。結果は翌年、イギリスの有名な医学誌『BMJ』にのりました。一緒に論文を書いたのは、大学で家庭医学を教えるお父さんです。

冷たいものを急いで食べると、頭がキーンと痛くなる。日本では「かき氷頭痛」とも呼ばれます。ネットでは「舌で上あごを温めると早く治る」という裏ワザがよく紹介されます。この記事では、まずこの頭痛の正式な名前を紹介します。次に、カナダの中学生の実験で分かったことを説明します。最後に、「上あごを温める」裏ワザが効くかを、研究をもとに確かめます。

01かき氷頭痛は、医学の頭痛の一覧にものっている正式な頭痛

まず、この頭痛は医学の世界でもきちんと名前がついています。国際頭痛学会が作る「国際頭痛分類」という一覧があります。その第3版での名前は、「冷たいものを食べたり吸いこんだりしたことによる頭痛」です。以前の呼び名として「アイスクリーム頭痛」「ブレイン・フリーズ(脳が凍る)頭痛」も書かれています。

この分類によると、医師がこの頭痛だと判断する条件は次のとおりです。冷たいものが口蓋(こうがい:口の中の天井、つまり上あご)や、のどの奥の壁を通ったすぐ後に起きる。痛むのは、おでこかこめかみ。そして、冷たいものを口から離して10分以内におさまる。

分類には、こんな説明もあります。細かく砕いた氷を急いで食べると特に起きやすい。でも、アイスクリームをゆっくり食べても起きることがある。

02中学生の実験では、急いで食べた組は、ゆっくり食べた組の約2倍、頭痛が出た

マヤさんたちは、実験の前に、医学論文を探せるデータベースを調べました。1966年から2002年8月までの英語の論文の中に、アイスクリームの食べ方と頭痛を、くじ引きで組を分けて比べた研究は一つもありませんでした。

そこで、6つのクラスの145人全員に協力してもらいました。組の分け方にも工夫があります。赤か緑のシールをはったアンケート用紙を、裏返して配ったのです。緑なら「ゆっくり組」、赤なら「急ぐ組」です。誰がどちらになるかは、配る側にも分かりません。

もう一つの工夫は、実験の時期です。「かき氷頭痛は暑いときにしか起きない」という説がありました。そこで、わざと冬の12月から1月に、6回に分けて行いました。

結果ははっきりしていました。急いだ組では27%、ゆっくり組では13%の生徒が、頭痛があったと答えました。急いで食べた組の割合は、ゆっくり組の約2倍です。そして、冬でも頭痛は起きました。ゆっくり食べた組でも、頭痛は起きています。

論文の最後の「研究費」の欄には、ユーモアのある一文があります。研究を支えたのは「ママとパパからの、使いみち自由の助成金(研究のために出すお金)」だというのです。この研究は、地元の科学フェアでも発表されました。

赤か緑のシールで、急ぐ組とゆっくり組を分けた。冬に行ったのは「暑いときだけ起きる」説を確かめるためだった
赤か緑のシールで、急ぐ組とゆっくり組を分けた。冬に行ったのは「暑いときだけ起きる」説を確かめるためだった

03「上あごを温める」裏ワザを、試して確かめた研究は見つからない

では、本題の裏ワザです。冷たいものが上あごに当たって頭痛が起きるなら、上あごを温めれば早くおさまるはずだ。そういう理屈です。舌を上あごにぴったり押し当てる、温かい飲み物を口に含む、といった方法が紹介されています。

この理屈のうち、「上あごが冷えることが頭痛のきっかけになる」という部分には根拠があります。国際頭痛分類も、上あごが冷えることを原因の一つに入れています。

ただし、調べた範囲では、この方法を実際に試して頭痛の長さを比べた研究は見つかりませんでした。2023年にイタリアのパドヴァ大学病院の研究者たちがまとめた論文も、「短い時間で終わる頭痛なので、決まった治療法はない」と書いています。そのうえで、一部の研究者がすすめる予防を紹介しています。冷たいものをゆっくり食べて、上あごやのどの奥に急に当てないことです。

そもそも、この頭痛はとても短く終わります。中学生の実験では、6割近くが10秒もたたずに終わりました。1992年のロンドンの研究では、冷たいものを口に入れてから平均12.5秒で痛みが始まり、21秒ほど続きました。舌を当てているうちに治ったとしても、舌のおかげなのか、放っておいても治ったのかは見分けにくいのです。

04上あごより、のどの奥が冷えるほうが頭痛が起きやすいという実験がある

「上あごを温める」裏ワザには、もう一つ弱点があります。頭痛のきっかけは、上あごが冷えることだけではないかもしれないのです。

2017年、ドイツのハレ大学のチームが、77人のボランティアで二つの方法を比べました。一つは、氷のかたまりを上あごに押し当てる方法。もう一つは、氷水を一気に飲む方法です。

結果は、氷水を飲んだときのほうが、頭痛がずっと起きやすいというものでした。氷を上あごに当てて頭痛が出たのは9人。氷水を飲んで出たのは39人でした。氷水を飲んだときは、痛みが始まるまでの時間も短く、中央値(真ん中の人の数字)で15秒でした。

使った氷はマイナス16℃、氷水は0℃です。冷たさなら氷のほうが上なのに、頭痛は氷水のほうが多かったのです。氷水は上あごだけでなく、のどの奥まで一気に冷やします。研究者たちは、冷えた場所によって、働く神経が違うのかもしれないと考えています。

LECTURE

深掘り講義

ここから先は、もう一段深く。しくみ・史料・論争まで踏み込みます。

「脳の血管が広がるから痛い」説を調べた2012年の研究は、13人だけの短い発表

かき氷頭痛のしくみとして、よく紹介される説があります。冷たいものを口に入れると、脳の血管が急に広がって血が流れこみ、それが痛みになる、というものです。この説を確かめようとした研究の一つに、2012年のアメリカの研究があります。

ところが、この研究は学会で発表された短い抄録(しょうろく:研究の要点だけをまとめた文章)です。調べたのは健康な大人13人。ストローで氷水を上あごに当てるように飲み、脳の血流の速さを超音波で測りました。その結果、前大脳動脈という脳の血管で、血流が増える「傾向」が見られたと書かれています。

この「傾向」の数字は P=0.078 でした。医学では、普通 P が0.05より小さいときに「偶然とは考えにくい差」とみなします。0.078は0.05より大きいので、この基準に届いていません。もう一つの脳の血管、中大脳動脈では P=0.24 で、差は見られませんでした。13人という人数も、とても少ないものです。著者たちは「血管が関わるしくみを支持する」と結論しています。けれども、この抄録だけで「脳の血管が広がる」とまでは言えません。

2019年の実験では、氷水を飲むと脳の血流が速くなった

もう少し大きな測定もあります。2017年の実験と同じハレ大学のチームが、2019年に77人で調べました。まず、ぬるま湯200mLを一気に飲みます。5分後に、0℃の氷水200mLを一気に飲みます。その間ずっと、左右の中大脳動脈(脳の血管の一つ)の血流の速さを、超音波で測りました。

ぬるま湯では、誰も頭痛になりませんでした。氷水では、参加した人全体で見ると血流の速さが上がりました。そして、頭痛が出た人のほうが、上がり方が大きかったのです。涙が出た人は34%いて、その人たちはさらに大きく上がっていました。

研究チームは、顔の感覚を伝える三叉神経(さんさしんけい)と、涙や血管をあやつる神経の反射(考えなくても、体が勝手に起こす動き)が関わっている可能性を挙げています。涙が出たのは、この反射が働いた印だというのです。ただし、これも「血流の速さが上がった」という測定です。それが痛みの原因なのか、痛みと一緒に起きているだけなのかは、まだはっきり分かっていません。

片頭痛のある人に多いかどうかは、研究によって結果が違う

かき氷頭痛は、片頭痛のある人に多いのでしょうか。国際頭痛分類は「片頭痛のある人に特に多い」と書いています。2003年の台湾の調査の結果も、この説明に合っています。13〜15歳の8,359人に聞いたところ、経験者は全体で40.6%。片頭痛のある生徒では55.2%、ない生徒では39.6%でした。約3分の1の生徒が、アイスを減らすか、食べるのをやめていました。

一方、1992年のロンドンの研究は逆の結果でした。片頭痛の患者70人と医学生など50人で比べると、経験者は患者が27%、学生が40%。実際にアイスを当てる実験でも、頭痛が出たのは患者17%、学生46%でした。調べる人の年齢や、参加者の集め方が違うと、結果も変わります。片頭痛との関係は、まだはっきりした答えが出ていません。

かき氷頭痛には、すぐ終わるものと、遅れて始まるものの2種類があるのかもしれない

1992年の研究では、多くの頭痛はすぐ始まってすぐ終わりました。ところが一部の人には、冷たいものを口に入れて平均102秒たってから始まり、236秒ほど続く頭痛も出ました。この遅れて始まる頭痛は、とくにアイスを飲みこんだ後に多かったといいます。2017年のドイツの実験でも、氷水で頭痛が出た39人のうち10人で、2回目の頭痛が続いて起きました。

上あごは三叉神経が、のどや食道は別の神経(舌咽神経や迷走神経)が受け持っています。どこが冷えたかで、別々のしくみの頭痛が起きているのかもしれません。もしそうなら、「上あごを温める」が効くのは、上あご型の頭痛だけということになります。この考えも、まだ確かめられていない仮説です。

05まとめ

かき氷頭痛は、国際頭痛分類にものっている、れっきとした頭痛です。急いで食べると起きやすいことを、くじ引きの実験で確かめたのは、カナダの中学生とお父さんでした。頭痛が出た割合は、急いだ組が27%、ゆっくり組が13%で、約2倍の差です。

「上あごを温めると治る」には理屈があります。でも、試した研究は見つかりません。のどの奥が冷えるほうが強いきっかけになる、という結果の実験もあります。いちばん確かな予防は、ゆっくり食べることです。マヤさんの実験では、30秒以上かけて食べた組で頭痛が出た生徒は、72人中9人でした。

人に話すなら、こう言おう

かき氷頭痛を、くじ引きでグループ分けして確かめた論文を、カナダの中学生がお父さんと書いたんだって。急いで食べた組は、ゆっくり食べた組の約2倍も頭が痛くなったらしいよ。
READ IN ENGLISH

英語で読む

The Student Who Tested Brain Freeze

CEFR A2226 words4択 5問全訳つき
0:00

英文をタップすると、その文の訳が出ます。

In December 2001, students at a middle school in Canada got a strange order.2001年12月、カナダのある中学校の生徒たちは、変わった指示を受けました。 Each student received 100 milliliters of ice cream.生徒は一人ずつ、100ミリリットルのアイスクリームを受け取りました。 Some had to eat it in less than 5 seconds, and others had to take more than 30 seconds.5秒以内に食べなければならない生徒もいれば、30秒以上かけなければならない生徒もいました。

The main author was Maya Kaczorowski, a grade 8 student at the school.論文の筆頭著者は、その学校の8年生、マヤ・カチョロウスキーさんでした。 She and her father, a university teacher, wanted to study "brain freeze," the sharp headache from cold food.彼女と、大学の先生であるお父さんは、冷たい食べ物で起きる鋭い頭痛「ブレイン・フリーズ」を調べたいと思ったのです。 They used red and green dots on papers to put 145 students into two groups by chance.二人は紙に赤と緑のシールをつけて、145人の生徒を偶然で2つのグループに分けました。

The results were clear.結果ははっきりしていました。 In the fast group, 27 percent of the students got a headache.急いで食べたグループでは、27%の生徒が頭痛になりました。 In the slow group, only 13 percent did.ゆっくり食べたグループでは、たった13%でした。 Most of the headaches ended in less than 10 seconds.頭痛の多くは、10秒もたたずに終わりました。 The study appeared in a famous medical journal in 2002.この研究は2002年、有名な医学雑誌にのりました。

Some people say you can stop brain freeze by pressing your tongue to the roof of your mouth.舌を口の天井(上あご)に押し当てればブレイン・フリーズを止められる、と言う人もいます。 The idea is to warm the area that got cold.冷えた場所を温めよう、という考えです。 But we could not find any study that tested this trick.でも、この技を確かめた研究は見つかりませんでした。 Also, a German study found that ice water caused more headaches than ice pressed on the roof of the mouth.また、ドイツの研究では、上あごに氷を押し当てるより、氷水を飲むほうが頭痛が多く起きました。 The back of the throat may matter too.のどの奥も関係しているのかもしれません。

So the best advice is still the simplest one.だから、いちばんのアドバイスは今も、いちばん簡単なものです。 Eat slowly, and do not send cold food to the back of your throat all at once.ゆっくり食べて、冷たいものを一気にのどの奥へ送らないことです。

4択問題 Reading Quiz

  1. Q1What is this story mainly about?

    この話は主に何についてのものですか。

  2. Q2How many students took part in the test?

    実験に参加した生徒は何人でしたか。

  3. Q3What happened in the fast group?

    急いで食べたグループでは何が起きましたか。

  4. Q4In paragraph 4, the phrase "the roof of your mouth" means ...

    第4段落の the roof of your mouth の意味はどれですか。

  5. Q5Which is true about the German study?

    ドイツの研究について正しいものはどれですか。

重要語 Key Words(タップで裏返る)

  • headache名詞
    頭痛

    I have a headache, so I will go to bed early.

    頭が痛いので、早く寝ます。

    💡 head(頭)+ ache(痛み)。stomachache(腹痛)も同じ形。

  • receive動詞
    受け取る

    I received a letter from my aunt.

    おばから手紙を受け取った。

    💡 get よりかたい言い方。名詞は receipt(レシート、受け取り)。

  • by chance熟語
    偶然に

    I met my old friend by chance at the station.

    駅で偶然、昔の友達に会った。

    💡 chance は「機会」のほかに「偶然、運」の意味もあります。

  • result名詞
    結果

    The result of the game surprised everyone.

    試合の結果はみんなを驚かせた。

    💡 as a result で「その結果として」。

  • journal名詞
    (専門の)雑誌、日記

    My teacher writes in her journal every night.

    先生は毎晩、日記を書いている。

    💡 研究の話では「学術雑誌」。journalist(記者)の仲間の言葉。

  • press動詞
    押す、押し当てる

    Press this button to start the machine.

    このボタンを押すと機械が動き出す。

    💡 press A to B で「AをBに押し当てる」。

  • throat名詞
    のど

    My throat hurts because I sang too much.

    歌いすぎてのどが痛い。

    💡 th の発音に注意。sore throat で「のどの痛み」。

  • all at once熟語
    一度に、一気に

    Do not eat all the candy at once.

    お菓子を一度に全部食べてはいけません。

    💡 at once だけだと「すぐに」の意味もあります。

SOURCES出典・ウラ取り

この記事の事実は、次の資料を実際に開いて確認しています(確認した事実 21件)。

  1. Kaczorowski, M. & Kaczorowski, J. (2002) Ice cream evoked headaches (ICE-H) study, BMJ 325:1445doi.org
  2. 4.5.2 Headache attributed to ingestion or inhalation of a cold stimulus(ICHD-3 国際頭痛分類 第3版、国際頭痛学会)ichd-3.org
  3. Mages, S. ほか (2017) Experimental provocation of 'ice-cream headache' by ice cubes and ice water, Cephalalgia 37:464doi.org
  4. Hensel, O. ほか (2019) Increased Blood Flow Velocity in Middle Cerebral Artery and Headache Upon Ingestion of Ice Water, Frontiers in Neurology 10:677doi.org
  5. Blatt, M. M. ほか (2012) Cerebral Vascular Blood Flow Changes During 'Brain Freeze', The FASEB Journal 26 (学会抄録 685.4)doi.org
  6. Bonemazzi, I. ほか (2023) Cold-Stimulus Headache in Children and Adolescents, Life 13:973doi.org
  7. Fuh, J. L. ほか (2003) Ice-cream headache: a large survey of 8359 adolescents, Cephalalgia 23:977doi.org
  8. Bird, N. ほか (1992) Ice cream headache: site, duration, and relationship to migraine, Headache 32:35doi.org

文章はすべて資料をもとに独自の言葉で書いています。画像はオリジナルのイメージです。誤りにお気づきの方は訂正窓口へ。

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