寝不足だとワクチンの効きが落ちる? 「睡眠6時間未満」と抗体の研究をまとめると

読む前に予想してみよう!
接種前の夜にあまり眠れなかったら、ワクチンは受けないほうがいい
睡眠と抗体の関連は「効き方の差」の話。予定どおり接種し、前後の睡眠をしっかりとることが大切。
- 対象
- 健康な成人
- 規模
- 複数研究(客観測定は約300人)
- 研究の種類
- メタ分析(ほか実験研究)
- 確かさ
- ★★★☆☆
機器で測った睡眠が1晩6時間未満の人は、ワクチン後の抗体の上がり方が小さい傾向が研究をまとめた分析で示された。ただし男性ではっきり、女性では明確でなかった。
ひとことで言うとワクチンの前後は、いつもよりちょっと多めに寝ておこう!
インフルエンザの予防接種の前日、ついつい夜ふかし……。実はそれ、ワクチンの「効き方」に関係しているかもしれません。
睡眠と免疫の関係は、20年以上前から研究されてきました。そして2023年、それらの研究をまとめた分析が発表されました。
結論は「短すぎる睡眠は、抗体のつき方を弱めるかもしれない」。ただし、話にはいくつか大事な条件がつきます。
014時間睡眠×6日で、抗体が半分以下に
先駆けとなったのは、2002年に米シカゴ大学のスピーゲル(Spiegel)さんらが『JAMA』に発表した実験です。
若い男性を、6晩続けて1晩4時間しか眠れないグループと、ふつうに眠るグループに分け、インフルエンザワクチンを接種しました。すると10日後の抗体の量は、寝不足グループで半分以下にとどまりました。
2003年のドイツの実験では、A型肝炎ワクチンを打ったその夜にしっかり眠った人は、徹夜した人に比べて、4週間後の抗体が多かったと報告されています。
027つの研究をまとめると「6時間」がライン
さらに男女別に見ると、男性では強い関連が見られましたが、女性では明確な差が出ませんでした。理由はまだはっきりしておらず、女性のデータ自体が少ないことも課題です。
03抗体だけじゃない。「かぜのひきやすさ」も
ワクチンだけでなく、実際のかぜのひきやすさを調べた研究もあります。
2015年、米国の研究チームは健康な大人164人の睡眠を1週間機器で測った後、かぜのウイルスを鼻にたらし、ホテルのような施設で5日間観察しました。すると、1晩5時間未満の人はかぜの発症リスク(オッズ)が約4.5倍、5〜6時間の人でも約4.2倍と、7時間を超えて眠る人より高くなっていました。

04なぜ睡眠が免疫に関係するの?
ワクチンは、体にウイルスの「手配写真」を見せて、免疫に覚えさせる仕組みです。
睡眠中、とくに深い眠りの時間帯には、免疫細胞どうしの情報伝達にかかわる物質の分泌パターンが変わり、免疫の「記憶づくり」が進みやすいと考えられています。睡眠が記憶を定着させるのと、少し似ています。
ワクチンを打った後に熱が出たり、腕が痛んだりして眠りにくくなることもあります。そんなときは無理をせず、早めに布団に入る、昼に休むなど、体を休める時間を確保することを意識しましょう。
もう一つ知っておきたいのは、ここで扱っている「抗体の量の差」は、ワクチンがまったく効かなくなるという意味ではないことです。睡眠は、ワクチンの効果を「上乗せ」したり「目減り」させたりする要因の一つ。だからこそ、自分でコントロールできる部分として意識しておく価値があります。
05まとめ
ワクチンの効果は、注射を打った瞬間に決まるわけではありません。その後の数日間、体の中では抗体づくりが続いています。
その「工場」を元気に動かすために、接種の前後はしっかり眠る。いちばん手軽な、ワクチンの応援方法かもしれません。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerScientists have studied the link between sleep and the immune system for more than 20 years.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Does sleep change how well a vaccine works? In a 2002 study, young men slept only four hours a night for six nights. After a flu vaccine, they made less than half the usual amount of antibodies.
A 2023 study looked at many studies together. People who slept less than six hours a night made fewer antibodies. This was clear in men but not in women. So, sleep well before and after a vaccine.
74 words ・ CEFR A2
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睡眠はワクチンの効き方を変えるのでしょうか?2002年の研究で、若い男性たちが6晩続けて一晩4時間だけ眠りました。インフルエンザのワクチンの後、彼らがつくった抗体はふだんの量の半分未満でした。
2023年の研究は、多くの研究をまとめて調べました。一晩6時間未満しか眠らない人は、つくる抗体が少なくなっていました。これは男性でははっきりしていましたが、女性ではそうではありませんでした。だから、ワクチンの前後はよく眠りましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
睡眠がワクチンの効き方(抗体のつき方)に影響するかという話なので A。
Q2. How long did the young men sleep in the 2002 study?
young men slept only four hours a night for six nights とあるので B。
Q3. In this passage, "fewer" means ...
fewer は few の比較級で「より少ない(数の)」なので C。
Scientists have studied the link between sleep and the immune system for more than 20 years. In a 2002 experiment in Chicago, young men who were allowed only four hours of sleep for six nights received a flu vaccine. Ten days later, their antibody levels were less than half those of men who slept normally.
In 2023, researchers combined the results of several studies. When sleep was measured objectively with devices, people who slept less than six hours a night showed clearly weaker antibody responses. However, when people reported their own sleep, the difference was not clear. The link was strong in men but not clear in women. One reason may be that there is less data on women.
119 words ・ CEFR B1
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科学者たちは20年以上にわたって睡眠と免疫システムの関係を研究してきました。2002年のシカゴでの実験では、6晩のあいだ4時間しか眠ることを許されなかった若い男性たちがインフルエンザのワクチンを受けました。10日後、彼らの抗体の量は、ふつうに眠った男性たちの半分未満でした。
2023年、研究者たちはいくつかの研究の結果をまとめました。機器で客観的に睡眠を測った場合、一晩6時間未満しか眠らない人は、抗体の反応がはっきり弱くなっていました。しかし、人々が自分の睡眠を報告した場合は、差ははっきりしませんでした。この関連は男性では強いものでしたが、女性でははっきりしませんでした。その理由の一つは、女性のデータが少ないことかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What happened to antibody levels in the 2002 experiment?
their antibody levels were less than half those of men who slept normally とあるので D。
Q2. When was the difference in antibody response NOT clear?
when people reported their own sleep, the difference was not clear とあるので B。
Q3. Why might the link be unclear in women?
One reason may be that there is less data on women. とあるので C。
In a 2002 experiment at the University of Chicago, young men were allowed only four hours of sleep a night for six nights and were then given a flu vaccine. Ten days later, their antibody levels were less than half those of men who had slept normally. A German study in 2003 pointed the same way.
People who slept on the night after a hepatitis A shot had more antibodies four weeks later than people who stayed awake. In 2023, one of the 2002 authors led a meta-analysis that pooled studies of this kind. When sleep was measured objectively with devices, people who got less than six hours a night showed a clearly weaker antibody response. When people simply reported their own sleep, no statistically clear difference appeared.
The link was strong in men but not significant in women, possibly because fewer data were available for women. The pooled studies also involved relatively few participants, mostly healthy young and middle-aged adults, so older people and patients with illnesses may respond differently. As for why sleep matters, one explanation is that deep sleep appears to help the immune system form its memory.
191 words ・ CEFR B2
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2002年のシカゴ大学の実験では、若い男性たちが6晩のあいだ一晩4時間しか眠ることを許されず、その後インフルエンザワクチンを受けました。10日後、彼らの抗体の量は、ふつうに眠った男性たちの半分未満でした。2003年のドイツの研究も同じ方向を示しました。
A型肝炎ワクチンを接種した夜に眠った人は、起きていた人よりも4週間後の抗体が多かったのです。2023年には、2002年の実験の著者の一人が、この種の研究をまとめたメタ分析を率いました。睡眠を機器で客観的に測った場合、一晩6時間未満しか眠らない人の抗体反応ははっきりと弱くなっていました。本人が自分の睡眠を申告しただけの場合は、統計的にはっきりした差は出ませんでした。
この関連は男性では強かったものの女性では有意ではなく、女性について得られたデータが少なかったためかもしれません。まとめられた研究は参加者も比較的少なく、ほとんどが健康な若年〜中年の成人だったため、高齢者や病気を持つ人では反応が違うかもしれません。なぜ睡眠が大切なのかについては、深い眠りが免疫システムの記憶づくりを助けているようだ、という説明があります。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 2003 German study find?
People who slept on the night after a hepatitis A shot had more antibodies four weeks later とあるので A。
Q2. What did the meta-analysis find about men and women?
The link was strong in men but not significant in women とあるので B。
Q3. Which limitation of the meta-analysis is mentioned?
involved relatively few participants, mostly healthy young and middle-aged adults とあるので D。
重要単語
- vaccineB2名詞ワクチンThe vaccine trains your immune system.
vaccinate「ワクチンを接種する」、vaccination「予防接種」。発音は /vækˈsiːn/。 - antibodyC1名詞抗体Antibodies help the body fight viruses.
anti-(対抗する)+body。antigen(抗原)とペアで出る。 - immune systemB2名詞(句)免疫システムSleep supports a healthy immune system.
immune to ~「~に免疫がある、~に影響されない」。名詞 immunity。 - meta-analysisC1名詞メタ分析(複数研究の統合)The meta-analysis combined seven studies.
個々の研究より証拠の強さが高いとされる。ただし元の研究の質に左右される。 - susceptibleC1形容詞かかりやすい、影響を受けやすいShort sleepers may be more susceptible to colds.
be susceptible to ~「~にかかりやすい」。vulnerable to と近い意味。 - objectivelyC1副詞客観的にSleep was measured objectively with a device.
反意語 subjectively「主観的に」。self-reported(自己申告の)との対比で頻出。
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- Sleep Deprivation and Deficiency(NHLBI/米国立衛生研究所)nhlbi.nih.gov
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寝不足だとワクチンの効きが落ちる? 研究をまとめた分析では、機器で測った睡眠が1晩6時間未満の人は、ワクチン後の抗体の上がり方が小さかったらしい。男性ではっきり、女性ではまだはっきりしないとか。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Spiegel K et al. (2023) A meta-analysis of the associations between insufficient sleep duration and antibody response to vaccination, Current Biologydoi.org
- Spiegel K, Sheridan JF, Van Cauter E (2002) Effect of Sleep Deprivation on Response to Immunization, JAMApubmed.ncbi.nlm.nih.gov
- Lange T et al. (2003) Sleep Enhances the Human Antibody Response to Hepatitis A Vaccination, Psychosomatic Medicinedoi.org
- Prather AA et al. (2012) Sleep and Antibody Response to Hepatitis B Vaccination, Sleepdoi.org
- Prather AA et al. (2015) Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold, Sleepdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。











