睡眠・休息ホント

眠れない夜は「ベッドから出る」が正解。不眠治療の第一選択CBT-Iの意外なルール

眠れない夜は「ベッドから出る」が正解。不眠治療の第一選択CBT-Iの意外なルール

読む前に予想してみよう!

眠れない時は、眠くなるまでベッドで頑張って横になるのが正解

研究カード(どんな研究?)
対象
慢性不眠症の成人
規模
20研究・1,162人(CBT-Iのメタ分析)
研究の種類
ランダム化比較試験のメタ分析+診療ガイドライン
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

不眠の治療で最初に勧められるのは、薬ではなく「認知行動療法(CBT-I)」。眠れない時はベッドを出て、ベッド=眠る場所と脳に覚え直させる。

ひとことで言うと眠れない時は、無理にベッドにいないほうが眠れるようになる!

もくじ
  1. 不眠治療の「第一選択」は、薬ではなかった
  2. 脳は「ベッド=眠れない場所」と覚えてしまう
  3. 刺激制御法の主なルール
  4. まとめ

眠れない夜。時計を見ると、もう深夜2時。「早く寝なきゃ」と焦るほど目がさえて、布団の中で何度も寝返りを打つ――。

そんなとき、多くの人は「とにかく横になっていれば、そのうち眠れるはず」と布団の中で粘ります。でも実は、不眠の専門的な治療では、「眠れないなら、いったんベッドから出なさい」と教えられます。

え、逆じゃないの? と思いますよね。そこには、脳の「覚え方」に関する、ちゃんとした理由があるんです。

01不眠治療の「第一選択」は、薬ではなかった

CBT-I(シービーティー・アイ)は、Cognitive Behavioral Therapy for Insomniaの略。「睡眠についての考え方(認知)」と「睡眠にまつわる習慣(行動)」を少しずつ変えていく治療法です。その中心的なテクニックのひとつが、今回紹介する「刺激制御法」です。

02脳は「ベッド=眠れない場所」と覚えてしまう

パブロフの犬の話を知っていますか? ベルを鳴らしてからエサをあげることをくり返すと、犬はベルの音だけでよだれを出すようになった、という有名な実験です。脳は、いっしょに起きる出来事をセットで覚えてしまう性質があります。

これがベッドでも起きます。

  • ベッドでスマホを見る
  • ベッドで勉強や仕事をする
  • ベッドで「眠れない…」と悩みながら何時間も過ごす

これをくり返すと、脳は「ベッド=起きて考えごとをする場所」と覚えてしまう。すると、ベッドに入った瞬間に目がさえる、という悪循環が生まれます。

刺激制御法は、1970年代にアメリカの心理学者ブーツィン(Bootzin)が提案したもので、この結びつきを「ベッド=すぐ眠れる場所」に覚え直させることを目指します。

実際に効くのでしょうか。ブーツィンさんも加わったアメリカのEpsteinさんらは2012年、『Sleep』誌で、慢性の不眠に悩む高齢者179人をくじ引きで「刺激制御法」「睡眠制限法」「その2つの組み合わせ」「順番待ち(治療なし)」に分けて6週間の治療を行いました。すると、刺激制御法だけでも、治療なしのグループに比べて睡眠日記の結果がはっきり改善し、その効果は1年後まで続いていました。

アメリカ睡眠医学会の2021年のガイドラインでも、刺激制御法は単独で使う治療としても「条件付きで推奨」されています(いちばん強く推奨されているのは、いくつもの方法を組み合わせたCBT-I)。

「ベッド→考えごと」の道を薄め、「ベッド→眠り」の道を太くする
「ベッド→考えごと」の道を薄め、「ベッド→眠り」の道を太くする

03刺激制御法の主なルール

最初のうちは「ベッドを出たら余計に眠れなくなるのでは」と不安になるかもしれません。実際、始めて数日はむしろ寝不足になることもあります。でも続けるうちに眠気がたまり、ベッドに入るとすぐ眠れる日が増えていく――というのが、この方法のねらいです。

「目を閉じて横になっているだけでも、体は休まるから大丈夫」とよく言われます。体が休まることは確かにありますが、不眠で悩んでいる人の場合、眠れないままベッドにいる時間が長いほど不眠が固定化しやすい、というのがCBT-Iの考え方です。

04まとめ

眠れない夜にベッドで粘るのは、脳に「ここは眠れない場所」と教え込む練習になってしまうことがあります。

ベッドは、眠るためだけの特別な場所。今夜から、スマホと考えごとは寝室の外に置いて、ベッドを「眠りの聖地」にしてみませんか?

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIf you cannot sleep, staying in bed and trying harder may actually make things worse. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

If you cannot sleep, staying in bed and trying harder may actually make things worse. In 2016, the American College of Physicians recommended cognitive behavioral therapy for insomnia, called CBT-I, as the first treatment for adults with long-term sleep problems. It comes before sleeping pills.

One of its main techniques is stimulus control. The idea is simple. The brain links places with what usually happens there. If you often check your phone, study, or lie awake worrying in bed, your brain learns that the bed is a place for being awake.

Stimulus control tries to change this link with three rules. Go to bed only when you feel sleepy. Leave the bed if you are still awake. And get up at the same time every morning.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

眠れないとき、ベッドにとどまってもっと頑張ろうとすると、実はかえって悪化することがあります。2016年、アメリカ内科学会は、長期的な睡眠の問題を抱える大人への最初の治療として、CBT-Iと呼ばれる不眠の認知行動療法を推奨しました。睡眠薬よりも先に行うものです。

その主なテクニックの一つが刺激制御法です。考え方はシンプルです。脳は、場所とそこでふだん起こることを結びつけます。ベッドでよくスマホを見たり、勉強したり、悩みながら眠れずに横になっていたりすると、脳はベッドを起きているための場所だと覚えてしまいます。

刺激制御法は、3つのルールでこの結びつきを変えようとします。眠いと感じたときだけベッドに入ること。まだ眠れなければベッドを離れること。そして、毎朝同じ時刻に起きることです。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the American College of Physicians recommend as the first treatment?

Q2. Which is NOT a rule of stimulus control mentioned in the passage?

Q3. What can we infer about lying awake in bed for a long time?

重要単語

  • insomniaC1
    名詞不眠症Chronic insomnia can last for months. in-(否定)+somnus(眠り)。somnambulism(夢遊病)と同じ語根。
  • stimulusC1
    名詞刺激(複数形 stimuli)For some people, the bed becomes a stimulus for worry. 複数形 stimuli /ˈstɪmjəlaɪ/ が入試で問われやすい。動詞は stimulate。
  • associationB2
    名詞結びつき、連想We want a strong association between bed and sleep. associate A with B「AをBと結びつけて考える」は入試の超頻出構文。
  • first-lineC1
    形容詞第一選択の、最初に行うCBT-I is a first-line treatment for insomnia. 医療ニュースの定番。first-line treatment「第一選択の治療」の形で覚える。
  • guidelineB2
    名詞指針、ガイドラインThe guideline was written by a group of experts. 複数形 guidelines で使うことが多い。follow the guidelines「指針に従う」。
  • chronicB2
    形容詞慢性のShe has suffered from chronic back pain for years. chrono-(時間)が語源。反意語は acute(急性の)。
  • cognitiveC1
    形容詞認知のCognitive behavioral therapy changes how we think and act. cognition(認知)の形容詞形。recognize(認識する)と同じ語根 -cogn-。

動画でもっと知る

眠れない夜、布団の中でゴロゴロ粘るのは逆効果らしい。不眠治療の第一選択とされる「CBT-I」では、眠れなければ一度ベッドを出るのがルール。脳に「ベッド=眠る場所」と覚え直させるためなんだとか。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Qaseem et al. (2016) Management of Chronic Insomnia Disorder in Adults: A Clinical Practice Guideline From the American College of Physicians, Annals of Internal Medicinedoi.org
  2. Edinger et al. (2021) Behavioral and psychological treatments for chronic insomnia disorder in adults: an American Academy of Sleep Medicine clinical practice guideline, Journal of Clinical Sleep Medicinedoi.org
  3. Trauer et al. (2015) Cognitive Behavioral Therapy for Chronic Insomnia: A Systematic Review and Meta-analysis, Annals of Internal Medicinedoi.org
  4. Epstein et al. (2012) Dismantling multicomponent behavioral treatment for insomnia in older adults: a randomized controlled trial, Sleepdoi.org