毎日4〜6時間睡眠で元気な人は実在した。でも訓練ではなれない「ショートスリーパー遺伝子」

読む前に予想してみよう!
訓練すれば誰でもショートスリーパーになれる
短時間睡眠でも平気な人は遺伝的な要因を持つまれなケースで、訓練でなれるという科学的証拠はない。
- 対象
- 短時間睡眠の家系・双子・遺伝子改変マウス
- 規模
- 1〜数家系+マウス
- 研究の種類
- 遺伝学研究・動物実験
- 確かさ
- ★★★☆☆
短い睡眠でも元気な「ショートスリーパー」は実在し、DEC2などの遺伝子変異が見つかっている。ただし非常にまれで、訓練でなれるという証拠はない。
ひとことで言うと短い睡眠で平気な人は、生まれつきの特別な遺伝子を持っている!
「睡眠は4時間で十分。むしろ頭が冴える」。そんな人の話を聞くと、ちょっとうらやましくなりますよね。1日に使える時間が3〜4時間も多いなんて、人生で何年分得するのでしょう。
実は、短い睡眠でも本当に元気な人は実在します。しかもその秘密の一部は、遺伝子にありました。
でも残念ながら、「自分も頑張ればなれるかも」と思った人には、ちょっと厳しい話になります。
01母と娘から見つかった「DEC2」の変化
遺伝子は、体をつくるための「設計図」のようなもの。DEC2は、睡眠や体内時計にかかわる他の遺伝子の働きを調節する役目を持っています。設計図のほんの1文字が違うだけで、必要な睡眠時間が変わってしまうことがある、というわけです。
その後、同じ研究チームは、2019年にADRB1(『Neuron』誌)やNPSR1(『Science Translational Medicine』誌)など、別の遺伝子の変化でも短時間睡眠の家系を見つけています。いずれも、変化をマウスに組み込むと睡眠が短くなることが確かめられました。こうした人たちは「家族性自然短時間睡眠(FNSS)」と呼ばれ、多くが4〜6時間台の睡眠で元気に過ごしているそうです。

02双子で比べてみたら…
アメリカ・ペンシルベニア大学などのPellegrinoさんらは2014年、睡眠を削る実験に参加した約400人の遺伝子を調べ、その中の二卵性の双子のペアに注目しました。片方だけがDEC2(BHLHE41とも呼ばれる)の、2009年とは別の場所の変化を持っていたところ、その人のほうがふだんの睡眠が短く、徹夜をしたときの集中力の落ち方も小さかったと報告されています。
同じ家庭で育った双子でも、遺伝子の違いで眠りが変わる。生活習慣だけでは説明できない、ということがよくわかる例です。
03「訓練でショートスリーパーに」はほぼ無理
ここが大事なポイントです。
本物のショートスリーパーは、非常にまれだと考えられています。どのくらいの割合でいるのかは、まだ信頼できる数字がありません。見つかっている遺伝子の変化も、それぞれ1〜数家系だけのものです。そして、ふつうの人が睡眠を削り続けても、ショートスリーパーには変身しません。
6時間睡眠を2週間続けた実験(ペンシルベニア大学、2003年)では、参加者は眠さには慣れたように感じていたのに、注意力の成績は徹夜明けと同じレベルまで落ちていました。つまり「短い睡眠に慣れた」と感じるのは、多くの場合感覚がマヒしているだけなのです。
04まとめ
ショートスリーパーは実在する。でもそれは、まれな遺伝子の“当たりくじ”を引いた人たちの話でした。
研究者たちは、こうした遺伝子の仕組みを調べることで、「なぜ私たちは眠る必要があるのか」という大きな謎に迫ろうとしています。私たち“ふつうの人”にできるのは、くじを引き直すことではなく、自分に必要な睡眠をちゃんととることです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPeople who feel energetic after only four to six hours of sleep really do exist, and part of the reason…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some people feel fine with only four to six hours of sleep. Are they special? In 2009, scientists in the US studied a mother and her daughter who slept about six hours every night. Both had a small change in a gene called DEC2. When mice got the same change, they also slept less.
But these people are very rare. No study shows you can train your body to need less sleep. Most people still need enough sleep.
78 words ・ CEFR A2
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4〜6時間の睡眠だけで元気な人がいます。彼らは特別なのでしょうか?2009年、アメリカの科学者たちは、毎晩約6時間眠っている母と娘を調べました。2人とも、DEC2と呼ばれる遺伝子に小さな変化を持っていました。マウスに同じ変化を与えると、マウスも睡眠が短くなりました。
しかし、こうした人はとてもまれです。必要な睡眠を減らすように体を訓練できるという研究はありません。ほとんどの人には、やはり十分な睡眠が必要です。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
遺伝子の変化で短い睡眠でも元気な、まれな人々の話なので B。
Q2. What happened when mice got the same gene change?
When mice got the same change, they also slept less. とあるので D。
Q3. In this passage, "rare" means ...
rare は「まれな、めったにない」。not common と同じ意味なので A。
People who feel energetic after only four to six hours of sleep really do exist, and part of the reason lies in their genes. In 2009, a research team in California studied a mother and daughter who naturally slept about six hours a night. They found that both had a small change in a gene called DEC2, which helps control other genes related to sleep and the body clock. When the researchers put the same change into mice, the mice also slept less than usual.
Later, the team found changes in other genes in different families. However, these natural short sleepers are extremely rare. In a 2003 experiment, people who slept six hours a night for two weeks felt used to it, but their attention still got much worse.
129 words ・ CEFR B1
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わずか4〜6時間の睡眠で元気に感じる人は本当に存在し、その理由の一部は遺伝子にあります。2009年、カリフォルニアの研究チームは、自然に一晩約6時間眠る母と娘を調べました。2人とも、睡眠や体内時計にかかわる他の遺伝子の調節を助けるDEC2と呼ばれる遺伝子に小さな変化を持っていることがわかりました。研究者たちが同じ変化をマウスに組み込むと、マウスもふだんより短く眠るようになりました。
その後、このチームは別の家族で他の遺伝子の変化も見つけました。しかし、こうした生まれつきのショートスリーパーは非常にまれです。2003年の実験では、2週間毎晩6時間眠った人々は、それに慣れたと感じていましたが、注意力はやはり大きく低下していました。
4択リーディングクイズ
Q1. What does the DEC2 gene do?
DEC2, which helps control other genes related to sleep and the body clock とあるので B。
Q2. What happened in the 2003 experiment?
felt used to it, but their attention still got much worse とあるので C。
Q3. What can we infer from the passage?
慣れたと感じても注意力は落ちていたので、感覚と体の状態は一致しないと推論できる。A。
People who thrive on four to six hours of sleep are not merely legends; in a small number of families, the trait appears to be genetic. In 2009, researchers at the University of California, San Francisco, studied a mother and daughter who habitually slept about six hours and identified a mutation in DEC2, a gene that regulates other genes involved in sleep and circadian timing. When the same mutation was introduced into mice, the animals also slept less, strong evidence that the gene influences sleep length.
In 2019 the team reported mutations in other genes, including ADRB1 and NPSR1, in further families, and in each case mice carrying the change slept less. A 2014 study described a pair of non-identical twins in which only the twin with a different DEC2 variant slept less and coped better with a night of sleep deprivation. Each mutation, though, has been found in only one or a few families, and natural short sleepers appear extremely rare. A 2003 experiment showed that people restricted to six hours for two weeks felt adapted while their attention deteriorated, so feeling fine is not reliable evidence of needing little sleep.
192 words ・ CEFR B2
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4〜6時間の睡眠で元気に過ごせる人は、単なる伝説ではありません。少数の家系では、その特性は遺伝的なものであるようです。2009年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研究者たちは、習慣的に約6時間眠る母と娘を調べ、睡眠と概日リズムのタイミングにかかわる他の遺伝子を調節する遺伝子DEC2に変異を見つけました。同じ変異をマウスに組み込むと、マウスも睡眠が短くなりました。
これは、その遺伝子が睡眠の長さに影響する強い証拠です。2019年、このチームはさらに別の家系で、ADRB1やNPSR1を含む他の遺伝子の変異を報告し、どの場合も変化を持つマウスは睡眠が短くなりました。2014年の研究は、二卵性の双子のペアについて述べており、異なるDEC2の変異を持つ方の双子だけが睡眠が短く、一晩の断眠にもよりうまく対処できました。ただし、それぞれの変異は1つか少数の家系でしか見つかっておらず、生まれつきのショートスリーパーは非常にまれだと考えられることです。2003年の実験では、2週間6時間に制限された人々は適応したと感じている一方で注意力は低下しており、元気だと感じることは、睡眠が少なくてよいことの信頼できる証拠にはならないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. Why is the mouse experiment described as strong evidence?
同じ変異を入れたマウスも睡眠が短くなったことが、遺伝子が睡眠の長さに影響する強い証拠とされているので B。
Q2. What was special about the twin pair in the 2014 study?
only the twin with a different DEC2 variant slept less and coped better with a night of sleep deprivation とあるので D。
Q3. What does the author conclude in the last sentence?
feeling fine is not reliable evidence of needing little sleep とあるので A。
重要単語
- mutationC1名詞(遺伝子の)変異A tiny mutation can change how long we sleep.
mutate「変異する」。mut- は「変わる」で、mutual(相互の)も同語源。 - geneB2名詞遺伝子Scientists found a gene linked to short sleep.
形容詞 genetic「遺伝の」、genetics「遺伝学」。genome は「全遺伝情報」。 - inheritB2動詞受け継ぐThe daughter inherited the mutation from her mother.
inherit A from B「BからAを受け継ぐ」。名詞 inheritance「遺産、遺伝」。 - rareB1形容詞まれなNatural short sleepers are extremely rare.
副詞 rarely「めったに~ない」は否定語扱い。ステーキの焼き加減「レア」も同じつづり。 - sleep deprivationC1名詞(句)睡眠不足、断眠Chronic sleep deprivation harms attention.
deprive A of B「AからBを奪う」の名詞形。be deprived of sleep「睡眠を奪われる」。 - deteriorateC1動詞悪化する、低下するTheir attention deteriorated after two weeks of short sleep.
get worse のかたい言い方。名詞 deterioration。 - thriveC1動詞元気に育つ、繁栄するSome people thrive on very little sleep.
thrive on ~「~で(を糧に)元気に過ごす」。flourish と近い意味。
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- Sleep Deprivation and Deficiency(NIH 国立心肺血液研究所)nhlbi.nih.gov
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毎日4〜6時間しか寝なくても元気な「ショートスリーパー」は都市伝説じゃなかった。実際に遺伝子の変化が見つかっている。ただし、とってもまれ。「訓練すればなれる」は今のところ根拠なし。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- He et al. (2009) The transcriptional repressor DEC2 regulates sleep length in mammals, Sciencedoi.org
- Pellegrino et al. (2014) A novel BHLHE41 variant is associated with short sleep and resistance to sleep deprivation in humans, Sleepdoi.org
- Shi et al. (2019) A rare mutation of β1-adrenergic receptor affects sleep/wake behaviors, Neurondoi.org
- Xing et al. (2019) Mutant neuropeptide S receptor reduces sleep duration with preserved memory consolidation, Science Translational Medicinedoi.org
- Van Dongen et al. (2003) The cumulative cost of additional wakefulness, Sleepdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












