【悲報】徹夜の一夜漬け、脳科学的には「覚える力」を自分で下げる勉強法だった

読む前に予想してみよう!
徹夜すると、新しいことを覚える力が落ちる
一晩眠らなかった人は、記憶の入り口である海馬の働きが弱まり、覚えられる量が減ったという実験がある。
- 対象
- 若年成人・高校生
- 規模
- 数十人の実験+約500人の日誌研究
- 研究の種類
- fMRI実験・日誌による観察研究・総説
- 確かさ
- ★★★★☆
徹夜すると新しいことを覚える脳の力が落ち、寝ている間の「記憶の保存作業」も飛ばしてしまう。一夜漬けは二重に損だった。
ひとことで言うと寝ないで勉強すると、脳の「メモ帳」がいっぱいのままになる!
テスト前夜。範囲は広いのに、時間はない。「よし、今夜は寝ないでやるぞ」と気合いを入れた経験、ありますよね。
でも残念なお知らせです。脳科学的に見ると、徹夜の一夜漬けは「覚える力」を自分の手で下げながら勉強しているようなものなんです。
しかも損は1回では終わらない。今日は、一夜漬けが二重に損な理由を見ていきます。
01損その1:寝不足の脳は「新しいことが入らない」
脳の中で、新しい記憶の“入り口”になるのが海馬(かいば)という部分です。タツノオトシゴのような形をした小さな部位で、その日に見聞きしたことを一時的にためておく「メモ帳」のような役割をしています。
この実験が直接示したのは「覚える(記銘)」力の低下ですが、寝不足では注意力や集中力も落ちることがよく知られています。つまり徹夜で詰め込んでいる最中も、翌日テストを受けている最中も、脳はベストからほど遠い状態。夜中の3時に読んだ教科書が頭に残らないのは、根性不足ではなく脳の仕様なんです。

02損その2:寝ている間の「保存作業」をスキップしてしまう
じゃあ、ちゃんと眠ると何が起きているのか。
眠っている間、脳はその日のメモ帳(海馬)の内容を、長期保存用の“本棚”(大脳皮質)へ整理して移す作業をしていると考えられています。これを「記憶の固定」と呼びます。特に深いノンレム睡眠のあいだに、海馬と大脳皮質が何度も“やりとり”している様子が、脳波の研究から見えてきました(スイスのRaschさんとドイツのBornさんが2013年にまとめた大型レビューに詳しい)。
この「寝ると記憶が残りやすい」という現象は、実は100年前から知られていました。1924年、アメリカのJenkinsとDallenbachは、覚えた後に眠った場合のほうが、起きていた場合より忘れにくいことを報告しています。もっとも、この古典的な実験の参加者はたった2人。その後、何十年にもわたる多くの実験で確かめられてきたからこそ、今では「睡眠が記憶を助ける」は睡眠科学の中でも特に支持の厚い知見になっています。
徹夜をすると、この夜の保存作業がまるごと飛ばされます。せっかく覚えた内容が、メモ帳に走り書きされたまま、本棚にしまわれずに散らばってしまうのです。
03「勉強時間を増やすために睡眠を削る」の落とし穴
アメリカ・カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のGillen-O'Neelさん・Fuligniさんらが2013年に『Child Development』誌で報告した研究では、ロサンゼルスの高校生約500人に14日間の日誌をつけてもらいました。すると、ふだんより睡眠を削って勉強した翌日のほうが、授業がわからない・テストがうまくいかないといった学業上のトラブルが増えていました。
これは実験ではなく日々の記録を分析した観察研究なので、「睡眠を削ったこと」だけが原因と断定はできません。それでも、同じ生徒の中で比べて一貫した傾向が出た点に説得力があります。
勉強時間を増やしたつもりが、実は成績アップには逆効果だった、というわけです。
04まとめ
一夜漬けの徹夜は、「覚える力」を下げたうえに「保存ボタン」も押さないという、二重に損な作戦でした。
勉強した内容を本当に自分のものにしたいなら、最後の仕上げは「寝ること」。睡眠は、サボりではなく勉強の一部なんです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerStaying up all night to study before a test seems like a good way to gain time, but brain science suggests…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Do you stay up all night before a test? This may be a bad idea. A part of the brain called the hippocampus works like a notebook for new memories. In a 2007 study, people who did not sleep for one night remembered fewer pictures the next day.
Also, during sleep, the brain moves new memories to long-term storage. If you do not sleep, you skip this step. So, sleep is part of studying.
74 words ・ CEFR A2
和訳を見る
テストの前に徹夜しますか?それはよくない考えかもしれません。海馬と呼ばれる脳の一部は、新しい記憶のためのノートのように働きます。2007年の研究では、一晩眠らなかった人は、次の日に覚えられた写真が少なくなりました。
また、睡眠中に脳は新しい記憶を長期の保管場所へ移します。眠らないと、この段階を飛ばしてしまいます。だから、睡眠は勉強の一部なのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
テスト前の徹夜がよくない理由を説明しているので A。
Q2. What happened to people who did not sleep for one night?
people who did not sleep for one night remembered fewer pictures the next day とあるので C。
Q3. In this passage, "skip" means ...
skip は「飛ばす、抜かす」。本来行われる段階をしないという意味なので D。
Staying up all night to study before a test seems like a good way to gain time, but brain science suggests it is a double loss. First, a tired brain is bad at taking in new information. In a 2007 study, people who stayed awake for one night remembered clearly fewer pictures the next day, and brain scans showed weaker activity in the hippocampus, the entrance to memory.
Second, during sleep, the brain moves the day's memories from the hippocampus to long-term storage. If you stay up all night, you miss this saving process. In a 2013 study, about 500 high school students kept diaries for 14 days. On days after they cut sleep to study more, they had more academic problems.
122 words ・ CEFR B1
和訳を見る
テスト前に徹夜で勉強するのは時間を稼ぐよい方法に思えますが、脳科学はそれが二重の損であることを示しています。第一に、疲れた脳は新しい情報を取り込むのが苦手です。2007年の研究では、一晩起きていた人は次の日に覚えられた写真がはっきり少なく、脳スキャンでは記憶の入り口である海馬の働きが弱くなっていました。
第二に、睡眠中、脳はその日の記憶を海馬から長期の保管場所へ移します。徹夜をすると、この保存の過程を逃してしまいます。2013年の研究では、約500人の高校生が14日間日誌をつけました。勉強時間を増やすために睡眠を削った翌日には、学業上の問題が多くなっていました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did brain scans show in the 2007 study?
brain scans showed weaker activity in the hippocampus とあるので B。
Q2. How long did the high school students keep diaries?
kept diaries for 14 days とあるので A。500は生徒の人数。
Q3. Why does the writer call staying up all night "a double loss"?
First(新しい情報を取り込みにくい)と Second(保存作業を逃す)の2つの損を挙げているので C。
Pulling an all-nighter before an exam may feel productive, but neuroscience suggests it undermines learning in two distinct ways. The first concerns encoding. In a 2007 study published in Nature Neuroscience, participants deprived of one night's sleep remembered markedly fewer images the following day, and brain imaging revealed reduced activity in the hippocampus, the region that acts as a gateway for new memories.
The second concerns consolidation. During sleep, especially deep non-REM sleep, the hippocampus is thought to transfer recently acquired information to the cortex for long-term storage. The observation that sleep protects memories dates back to a 1924 experiment, although that study involved only two participants; decades of later research have made it one of the best-supported findings in sleep science.
Evidence from everyday life points the same way. In a 2013 diary study, about 500 high school students reported more academic problems on days following nights when they had sacrificed sleep to study. However, that study was observational, so stress or heavy workloads on particular days may partly explain the pattern, and the 2007 experiment used relatively small groups.
181 words ・ CEFR B2
和訳を見る
試験前の徹夜は生産的に感じられるかもしれませんが、神経科学は、それが2つの異なる点で学習を損なうことを示しています。1つ目は記銘(情報の取り込み)に関するものです。『Nature Neuroscience』誌に発表された2007年の研究では、一晩の睡眠を奪われた参加者は、翌日に覚えられた画像が著しく少なく、脳画像からは、新しい記憶の入り口として働く領域である海馬の活動低下が明らかになりました。
2つ目は記憶の固定に関するものです。睡眠中、特に深いノンレム睡眠の間に、海馬は最近得た情報を長期保存のために大脳皮質へ移すと考えられています。睡眠が記憶を守るという観察は1924年の実験にさかのぼりますが、その研究の参加者はわずか2人でした。その後の数十年の研究によって、それは睡眠科学で最もよく支持された知見の一つになりました。
日常生活からの証拠も同じ方向を示しています。2013年の日誌研究では、約500人の高校生が、勉強のために睡眠を犠牲にした夜の翌日に、より多くの学業上の問題を報告しました。しかし、その研究は観察研究なので、特定の日のストレスや課題の多さがこの傾向を部分的に説明しているかもしれず、また2007年の実験は比較的小さなグループで行われました。
4択リーディングクイズ
Q1. What are the two ways an all-nighter undermines learning, according to the passage?
The first concerns encoding. ... The second concerns consolidation. とあるので B。
Q2. Why does the author mention that the 1924 study had only two participants?
参加者は2人だけだったが、その後の数十年の研究で最も支持された知見になったと述べているので A。
Q3. What limitation of the 2013 diary study is mentioned?
stress or heavy workloads on particular days may partly explain the pattern とあるので D。
重要単語
- cramB2動詞詰め込み勉強をするHe crammed for the exam all night.
もとは「(場所に)ぎゅうぎゅうに詰め込む」。cram school「塾」。 - hippocampusC1名詞海馬The hippocampus helps us form new memories.
ギリシャ語で「タツノオトシゴ」。形が似ていることから。 - consolidationC1名詞(記憶の)固定、定着Memory consolidation happens during sleep.
consolidate「強化する、統合する」の名詞形。solid(固い)が含まれる。 - retainB2動詞保持する、覚えておくStudents who slept retained more words.
名詞 retention。re-(後ろに)+tain(保つ)。maintain, contain と同語源。 - encodeC1動詞(情報を記憶として)取り込むA tired brain struggles to encode new facts.
記憶の3段階 encode(記銘)→ store(保持)→ retrieve(想起)をセットで覚える。 - undermineC1動詞(徐々に)損なう、むしばむLack of sleep can undermine your learning.
under(下を)+mine(掘る)で「土台を掘り崩す」。入試の語彙問題で頻出。 - sacrificeB2動詞・名詞犠牲にする/犠牲She sacrificed sleep to study for the test.
at the expense of ~「~を犠牲にして」と言いかえ可能。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
- How Sleep Works(NIH 国立心肺血液研究所)nhlbi.nih.gov
4コマでわかる

このネタ、誰かに教えたくなった?
テスト前夜の徹夜、実は脳にとっては二重に損らしい。寝不足だと新しいことを覚える力が落ちるうえ、寝ている間にやるはずの「記憶の保存作業」までスキップしてしまう。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(4件)タップで表示
- Yoo et al. (2007) A deficit in the ability to form new human memories without sleep, Nature Neurosciencedoi.org
- Rasch & Born (2013) About sleep's role in memory, Physiological Reviewsdoi.org
- Jenkins & Dallenbach (1924) Obliviscence during sleep and waking, American Journal of Psychologydoi.org
- Gillen-O'Neel et al. (2013) To study or to sleep? The academic costs of extra studying at the expense of sleep, Child Developmentdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












