朝日を浴びると夜に眠くなる理由。体内時計の「リセットボタン」は目の奥にあった

読む前に予想してみよう!
朝の光を浴びると、その夜に眠くなる時刻が早まりやすい
朝の光は体内時計を前に進め、夜の眠気ホルモンが出る時刻も早まる方向に働く。
- 対象
- 健康な成人(網膜の細胞の研究はラット)
- 規模
- 数人〜数十人規模の精密実験(複数)
- 研究の種類
- 時間隔離実験・光照射実験・野外実験
- 確かさ
- ★★★★☆
人の体内時計は24時間より少し長め。朝の光が目の奥の特別なセンサーに届くと時計が前に進み、夜に自然と眠くなるリズムがつくられる。
ひとことで言うと朝の光は、体の時計の「リセットボタン」!
「朝日を浴びると目が覚める」。これは誰でも実感していることですよね。
でも実は、朝の光にはもうひとつ、すごい仕事があります。それは、その日の夜に眠くなる時間を決めること。朝の光は、体内時計の「リセットボタン」なのです。
01体内時計は「ぴったり24時間」じゃなかった
私たちの体には、眠気・体温・ホルモンなどを約1日周期で動かす体内時計があります。その司令塔は、脳の奥の視交叉上核(しこうさじょうかく)という、米粒より小さい場所です。
ところがこの時計、ぴったり24時間ではありません。
わずか10分ほど。でも、何もしないで放っておくと、毎日少しずつ後ろ(夜型)にずれていくことになります。これを毎日ぴったり24時間に合わせ直しているのが、朝の光なのです。

02目の奥には「時計合わせ専用センサー」がある
光は目から入ります。でも、物を見るための細胞とは別に、目の奥(網膜)には「今が昼か夜か」を判定する専用の細胞があります。2002年、アメリカ・ブラウン大学のBersonさんらが『Science』誌で、ラットの実験で、体内時計の司令塔(視交叉上核)につながる網膜の神経細胞が、自分で光を感じることを示しました。
このセンサーが朝の明るい光を受け取ると、
- 体内時計が「朝が来た!」と時刻合わせをする
- 夜の眠気ホルモンメラトニンが止まる
- 合わせ直された時計にしたがって、目覚めてからおおよそ14〜16時間後(個人差あり)に、再びメラトニンが出て眠くなる準備が始まる
という流れになります。つまり、朝7時に光を浴びると、夜の眠りの予約が入るようなイメージです。
逆に、夜遅くに強い光を浴びると、体内時計は後ろにずれます。光は、朝なら「前へ」、夜なら「後ろへ」時計を動かす、ということです。
この「浴びる時刻によって時計の動く向きが変わる」関係は位相反応曲線と呼ばれ、2003年にハーバード大学のKhalsaさんらが、明るい光を1回だけ浴びせる実験で人間の曲線を詳しく描き出しています。体温がいちばん下がる明け方ごろを境に、それより後の光は時計を早め、それより前(夜)の光は遅らせる、というのが基本ルールです。
03キャンプで「朝型人間」に変身
アメリカ・コロラド大学ボルダー校のWrightさんらは2013年、『Current Biology』誌で、ふだん人工の光の中で暮らしている8人に、電灯なしで1週間キャンプをしてもらいました。
すると、太陽の光だけで過ごしたあと、参加者の体内時計は2時間ほど早まり、日の出・日の入りにほぼ合うようになりました。特に夜型だった人ほど、大きく変化していたといいます。昼に浴びる光がずっと強く、夜は暗い。そうした暮らしのなかで、体内時計は自然な昼夜のリズムに近づいたのです。ただし参加者は8人だけで、季節も夏の1回きり。「キャンプに行けば誰でも朝型に」とまでは言えませんが、光の量の大切さをよく示した実験です。
04まとめ
朝の光は、目覚まし時計であると同時に、夜の眠りを予約するボタンでもありました。
「夜に眠れない」と悩んだら、夜の過ごし方だけでなく、朝の過ごし方を見直してみてください。明日の朝、カーテンを開けるその一瞬が、今夜のぐっすりにつながっています。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMorning light does more than wake us up.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Our bodies have a clock inside. But this body clock is not exactly 24 hours. It is a little longer, so it moves later a little every day. Morning light fixes this.
There are special cells at the back of the eye. When they get morning light, the body clock is reset. Then, about 14 to 16 hours later, you start to feel sleepy. So, open your curtains when you wake up.
72 words ・ CEFR A2
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私たちの体の中には時計があります。しかし、この体内時計はちょうど24時間ではありません。少し長いので、毎日少しずつ遅い方へずれていきます。朝の光がこれを直してくれます。
目の奥には特別な細胞があります。その細胞が朝の光を受けると、体内時計がリセットされます。そして約14〜16時間後に、眠くなり始めます。だから、起きたらカーテンを開けましょう。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
朝の光が体内時計をリセットし、夜の眠気につながることが主題なので D。
Q2. When do you start to feel sleepy after getting morning light?
about 14 to 16 hours later, you start to feel sleepy とあるので A。
Q3. In this passage, "fixes" means ...
fix は「修理する、直す」。ずれた体内時計を正しく戻すという意味なので B。
Morning light does more than wake us up. It also helps decide when we will feel sleepy at night. Our body clock is not exactly 24 hours long. In a 1999 study, scientists measured it carefully in a special environment where people could not tell the time, and found that it averaged about 24.18 hours.
If nothing resets it, the clock slowly drifts later each day. Morning light does this job. In 2002, researchers showed that special cells at the back of the eye detect light and send signals to the body clock.
When they sense bright morning light, the clock is reset, and the sleep hormone melatonin starts to rise again many hours later. Bright light late at night, however, pushes the clock later.
125 words ・ CEFR B1
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朝の光は私たちを目覚めさせる以上の働きをします。夜にいつ眠くなるかを決める助けにもなるのです。私たちの体内時計はちょうど24時間ではありません。1999年の研究で、科学者たちは時刻がわからない特別な環境で体内時計を慎重に測定し、平均で約24.18時間であることを発見しました。
何もリセットしなければ、時計は毎日少しずつ遅い方へずれていきます。朝の光がこの役目を果たします。2002年、研究者たちは、目の奥にある特別な細胞が光を感じ取り、体内時計に信号を送ることを示しました。
その細胞が明るい朝の光を感じると時計がリセットされ、眠りのホルモンであるメラトニンが何時間も後に再び増え始めます。しかし、夜遅くの明るい光は時計を遅い方へ押しやります。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the 1999 study, how long is the human body clock on average?
it averaged about 24.18 hours とあるので C。
Q2. What happens if nothing resets the body clock?
If nothing resets it, the clock slowly drifts later each day. とあるので A。
Q3. What can we infer from the last sentence?
夜遅くの明るい光は時計を遅らせるので、早く眠くなりにくくなると推論できる。正解は B。
In 2013, eight people spent a week camping without electric light. By the end, their internal clocks had shifted about two hours earlier and lined up with sunrise and sunset. The group was small, the trip took place in summer, and the design could not separate the effect of brighter days from that of darker nights.
Even so, the result fits laboratory findings. The master clock in the brain does not run on an exact 24-hour cycle. A 1999 study in an environment without time cues measured its average period at about 24.18 hours, with little difference between young and older adults. Left alone, that small excess would push our rhythms later every day.
The correction comes mostly from light, picked up by special cells in the retina that, as a 2002 study showed, send signals directly to the body clock. Timing decides which way the clock moves. Light after the body's temperature low point in the early morning moves the clock earlier, and light in the evening moves it later, a relationship mapped in detail in 2003. So morning light does more than wake us up. It helps set the time we will feel sleepy that night.
198 words ・ CEFR B2
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2013年、8人が電灯を一切使わずに1週間キャンプをしました。終わるころには、彼らの体内時計は約2時間早まり、日の出と日の入りにそろっていました。人数は少なく、キャンプは夏に行われ、昼が明るくなった効果と夜が暗くなった効果を切り分けることもできませんでした。それでも、この結果は実験室での知見と合っています。
脳の中の親時計は、ちょうど24時間の周期で動いているわけではありません。時刻の手がかりがない環境で行われた1999年の研究では、その平均周期は約24.18時間と測定され、若い人と高齢者の差はほとんどありませんでした。放っておけば、このわずかな余分が毎日私たちのリズムを遅い方へ押しやります。その修正は主に光によるもので、光は網膜の特殊な細胞がとらえます。
2002年の研究は、この細胞が体内時計に直接信号を送ることを示しました。時計がどちらに動くかはタイミングで決まります。明け方の体温が最も低くなる時点より後の光は時計を早め、夕方以降の光は時計を遅らせます。この関係は2003年に詳しく描き出されました。つまり、朝の光は私たちを目覚めさせるだけではありません。その夜に眠くなる時刻を決める助けにもなるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 1999 study find about the body clock?
measured its average period at about 24.18 hours, with little difference between young and older adults とあるので C。
Q2. According to the passage, what kind of light delays the clock?
light in the evening moves it later とあるので A。
Q3. Which limitation of the camping study is mentioned?
the design could not separate the effect of brighter days from that of darker nights とあるので D。
重要単語
- circadian rhythmC1名詞(句)概日リズム(約1日の体内リズム)Light is the strongest signal for our circadian rhythm.
circa(約)+dies(日)。生物系長文で body clock と言いかえられる。 - melatoninC1名詞メラトニン(夜に増えるホルモン)Melatonin levels rise in the evening.
光で分泌が抑えられる。suppress melatonin「メラトニンを抑える」とセットで出る。 - retinaC1名詞網膜Special cells in the retina detect daylight.
形容詞 retinal。目の部位の語は lens(水晶体)、pupil(瞳孔)も一緒に覚える。 - shiftB1動詞・名詞ずらす、移動させる/変化、交代勤務Evening light can shift your body clock later.
night shift「夜勤」の意味でも頻出。a shift in attitude「態度の変化」。 - exposureB2名詞(光などに)さらされることMorning light exposure helps you wake up.
expose A to B「AをBにさらす」の名詞形。exposure to radiation「放射線への被ばく」。 - driftB2動詞少しずつずれる、漂うWithout light, the body clock drifts later.
drift apart「(人間関係が)疎遠になる」など、ゆっくり離れていくイメージ。
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- Circadian Rhythms(NIH 国立一般医科学研究所)nigms.nih.gov
- 快眠と生活習慣(厚生労働省 e-ヘルスネット)kennet.mhlw.go.jp
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人間の体内時計は、ぴったり24時間じゃなくて少し長めらしい。放っておくと毎日ちょっとずつ夜型にずれていく。それを毎朝リセットしてくれるのが「朝の光」。目の奥にそのための専用センサーまであるとか。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Czeisler et al. (1999) Stability, precision, and near-24-hour period of the human circadian pacemaker, Sciencedoi.org
- Berson et al. (2002) Phototransduction by retinal ganglion cells that set the circadian clock, Sciencedoi.org
- Khalsa et al. (2003) A phase response curve to single bright light pulses in human subjects, Journal of Physiologydoi.org
- Wright et al. (2013) Entrainment of the human circadian clock to the natural light-dark cycle, Current Biologydoi.org
- Blume et al. (2019) Effects of light on human circadian rhythms, sleep and mood, Somnologiedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。









