心理学ホント

ネット上のボール回しで"パスが来ない"だけで心が傷ついた。仲間はずれ研究120本の結論

ネット上のボール回しで"パスが来ない"だけで心が傷ついた。仲間はずれ研究120本の結論

読む前に予想してみよう!

相手が知らない人で、ただのゲームの中なら、無視されてもほとんど気にならない

研究カード(どんな研究?)
対象
主に欧米の参加者
規模
120研究・約1万2千人
研究の種類
実験のメタ分析
確かさ
★★★★★
3秒でわかる

画面上の見知らぬ相手とのボール回しで、パスが回ってこないだけ。それでも人は強く傷ついた。120の研究・約1万2千人分をまとめると、その影響は「特大」だった。

ひとことで言うとただの画面のボール遊びでも、無視されると心はちゃんと痛む!

もくじ
  1. 画面上の"ボール回し"実験
  2. 脳も「痛み」に似た反応
  3. 120の研究をまとめたら「特大」の効果
  4. 無視されたとき、心で起きる3つの段階
  5. まとめ

グループLINEで、自分のメッセージだけスルーされる。休み時間、気づいたら自分以外で話が盛り上がっている。

怒られたわけでも、悪口を言われたわけでもない。ただ、無視されただけ。なのに、なぜこんなに心がざわつくのでしょうか?

この「無視される痛み」を、驚くほどシンプルな実験で確かめたのが「サイバーボール」という研究です。

01画面上の"ボール回し"実験

サイバーボールは、アメリカの心理学者キプリング・ウィリアムズが考えたゲームです。

相手は顔も名前も知らない人。しかもただの単純なゲーム。それでも、パスが来ないだけで人は傷つきました。

02脳も「痛み」に似た反応

2003年には、このゲームを fMRI(脳の活動を調べる装置)の中でやってもらう実験が行われ、科学誌 Science に載りました。

仲間はずれにされたとき、脳の前帯状皮質という、体の痛みの「つらさ」にも関わる場所が活発になり、その強さは本人が感じた苦痛の大きさと結びついていました。無視されるつらさが、脳にとって"警報"のようなものだと示唆する結果です。

パスが来ないだけで、心の警報は鳴りはじめる
パスが来ないだけで、心の警報は鳴りはじめる

03120の研究をまとめたら「特大」の効果

1回の実験だけなら偶然かもしれません。そこで2015年、オランダの研究者たちが、サイバーボールを使った120の研究(参加者のべ約1万2千人)をまとめて分析しました。

その結果、仲間はずれの影響は、心理学の研究ではめったに見られないほど大きいことが分かりました。しかも、プレーヤーの人数、仲間はずれの時間、参加者の性別・年齢・国(大半は欧米)などが違っても、ほぼ同じように効果が出ていたのです。

04無視されたとき、心で起きる3つの段階

ウィリアムズは、仲間はずれへの反応を3つの段階で説明しています。

  1. 反射的な痛み:無視された瞬間に、ほぼ自動的に傷つく
  2. 考えて対処する:「なぜだろう」と考え、仲間に戻ろうと努力したり、逆に怒ったりする
  3. あきらめ:長く続くと、孤独感や無力感が強まっていく

最初の痛みは、ほぼ誰にでも起こる自然な反応です。大事なのは、2つ目の段階でどう対処するかです。

05まとめ

ボールが回ってこない、ただそれだけで人の心は傷つく。120の研究がそれを示しています。無視されてつらいのは、あなたが弱いからではありません。

そして、それを知った私たちにできることもあります。話の輪に入れていない人に、ちょっとパスを回すこと。それだけで、誰かの「居場所」を守れるかもしれないのです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerPsychologist Kipling Williams created a simple online game called Cyberball to study what happens when… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Psychologist Kipling Williams created a simple online game called Cyberball to study what happens when people are ignored. In a study with 1,486 participants from 62 countries, each person tossed a ball with two other players, who were actually controlled by a computer. In the exclusion condition, the ball stopped coming after a while. These participants felt worse and reported a lower sense of belonging and control.

In 2003, a brain-scanning study found that an area also linked to the distress of physical pain became more active when people were left out. In 2015, researchers combined 120 Cyberball studies. The effect of exclusion was unusually large and appeared regardless of participants' gender, age, or country, though most samples were Western.

120 words ・ CEFR B1

和訳を見る

心理学者キプリング・ウィリアムズは、人が無視されたときに何が起こるかを研究するため、「サイバーボール」という簡単なオンラインゲームを作りました。62か国の1,486人が参加した研究で、それぞれの人がほかの2人のプレーヤーとボールを投げ合いましたが、そのプレーヤーは実際にはコンピューターが操作していました。仲間はずれ条件では、しばらくするとボールが来なくなりました。この参加者たちは気分が悪くなり、居場所がある感覚やコントロールできる感覚が下がったと報告しました。2003年には、脳スキャンの研究で、体の痛みのつらさにも関わる領域が、仲間はずれにされたときに活発になることが分かりました。

2015年、研究者たちは120のサイバーボール研究をまとめました。仲間はずれの影響はふつうでないほど大きく、参加者の性別、年齢、国に関係なく現れていました。ただし対象の大半は欧米でした。

4択リーディングクイズ

Q1. Who were the other two players in Cyberball?

Q2. What happened to participants in the exclusion condition?

Q3. What does the 2015 analysis suggest?

重要単語

  • ostracismC1
    名詞仲間はずれ、無視Ostracism can hurt as much as harsh words. 古代ギリシャの「陶片追放(ostrakon=陶片に名前を書いて追放)」が語源。
  • excludeB2
    動詞除外する、仲間に入れないDon't exclude anyone from the game. ex(外へ)+clude(閉じる)。反対語 include。名詞 exclusion。
  • belongingB2
    名詞所属感、居場所がある感覚Clubs give students a sense of belonging. a sense of belonging がセット表現。複数形 belongings は「持ち物」なので注意。
  • ignoreB1
    動詞無視するHe ignored my message all day. 名詞 ignorance は「無知」、形容詞 ignorant は「無知な」で意味がずれるので注意。
  • meta-analysisC1
    名詞多くの研究をまとめた分析The meta-analysis included 120 studies. meta-(より高次の)+analysis。複数の研究を統計的に統合する手法で、個々の研究より証拠として強いとされる。
  • conformC1
    動詞(周りに)同調する、従うSome people conform to the group to fit in. conform to ~「~に従う」。名詞 conformity「同調」は社会心理学の重要語。

動画でもっと知る

4コマでわかる

ネット上のボール回しで"パスが来ない"だけで心が傷ついた。仲間はずれ研究120本の結論の4コマ漫画
画面上でボールを投げ合うだけのゲーム。途中からパスが回ってこなくなる——それだけで人は強く傷つく。120の研究・約1万2千人分をまとめたら、効果は心理学ではめったに見ない"特大"レベルだったらしい。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Williams, Cheung & Choi (2000) Cyberostracism: Effects of being ignored over the Internet, Journal of Personality and Social Psychologydoi.org
  2. Eisenberger, Lieberman & Williams (2003) Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion, Sciencedoi.org
  3. Hartgerink et al. (2015) The ordinal effects of ostracism: A meta-analysis of 120 Cyberball studies, PLOS ONEdoi.org
  4. Williams (2007) Ostracism, Annual Review of Psychologypubmed.ncbi.nlm.nih.gov