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締め切り直前に集中できるのはなぜ? そして有名な「締め切り実験」は2026年9月に撤回された

締め切り直前に集中できるのはなぜ? そして有名な「締め切り実験」は2026年9月に撤回された

読む前に予想してみよう!

「締め切りを等間隔に設定すると先延ばしが防げる」とした有名な2002年の論文は、今も科学的な根拠として使える

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・社会人のチームほか
規模
8チーム〜数百人規模
研究の種類
観察研究・実験研究・追試
確かさ
★★☆☆☆
3秒でわかる

締め切りが迫ると人は「急ぎ」に引きつけられ動き出す。ただ「締め切りを区切ると成績が上がる」とした有名論文は、再現失敗とデータ疑義で撤回された。

ひとことで言うとしめ切りが近いと脳が「急げ!」モードに。でも有名な実験はやり直しに…

もくじ
  1. 人は「急ぎ」に弱い
  2. チームは「締め切りの真ん中」で目覚める
  3. どんでん返し:あの有名な「締め切り実験」が撤回
  4. まとめ

夏休みの宿題、レポート、企画書。ずっと手をつけられなかったのに、締め切り前夜になると、信じられない集中力で片づけてしまう。

答えを先に言うと、人は「急ぎ」であること自体に強く引きつけられる性質があり、締め切りが迫ると時間を強く意識して一気に動き出すから、と考えられています。ただし、「だから締め切りを細かく区切れば成績が上がる」とした超有名な研究は、2026年9月に撤回されました。今日は、その最新ニュースも含めてお話しします。

01人は「急ぎ」に弱い

期限が迫っている、というだけで、仕事が魅力的に見えてしまう。締め切り直前の「謎の集中力」は、この性質の裏返しとも言えます。

02チームは「締め切りの真ん中」で目覚める

もう一つ有名なのが、1988年のガーシック(Gersick)さんの研究です。

彼女は、締め切りのある8つのチームの活動を最初から最後まで観察しました。すると多くのチームは、段階を踏んで少しずつ進むのではなく、しばらく同じやり方でダラダラ進み、締め切りまでの期間のちょうど半分あたりで急にやり方を見直し、そこから一気に進めていたのです。チームを動かしていたのは、作業の量ではなく、「時間がもう半分しかない」という気づきでした。

締め切りまでの「折り返し地点」で、チームは急に本気を出す
締め切りまでの「折り返し地点」で、チームは急に本気を出す

03どんでん返し:あの有名な「締め切り実験」が撤回

ここからが、つい先月のニュースです。

先延ばし研究で最も有名な論文の一つに、行動経済学者のアリエリー(Ariely)さんとヴェルテンブロッホ(Wertenbroch)さんの2002年の研究があります。学生などに課題を出し、等間隔の締め切りを決められたグループ、自分で締め切りを決めたグループ、最後に1回だけ締め切りがあるグループを比べると、等間隔の締め切りがいちばん成績が良かった――という内容で、引用は1000回近く、この分野の定番としてよく知られていました。

報道によると、アリエリーさんも「データは信頼できない」との見解を示しています。

つまり、「締め切りを等間隔に区切れば先延ばしが防げる」は、少なくともこの研究を根拠には言えなくなったのです。

04まとめ

締め切り直前に集中できるのは、人が「急ぎ」そのものに引きつけられ、残り時間を意識した瞬間に動き出す性質を持つためと考えられています。でも、「締め切りを区切れば成績アップ」の看板だった研究は、2026年9月に撤回されました。

科学は、有名な結論でも追試でひっくり返ることがある。そのこと自体が、科学がちゃんと働いている証拠でもあります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy can we suddenly focus right before a deadline? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why can we suddenly focus right before a deadline? One reason is that people are attracted to urgency itself. In a 2018 study, many participants chose a task that only looked urgent instead of an important task with a bigger reward. Teams show a similar pattern. A 1988 study of eight teams found that many worked slowly at first and then changed their approach around the halfway point before the deadline.

Meanwhile, a famous 2002 study claimed that evenly spaced deadlines improve performance. In 2026, economists repeated one of its experiments with university students and found that the type of deadline made little difference. Data problems in the original study were also reported, and the journal retracted the paper in September 2026.

122 words ・ CEFR B1

和訳を見る

締め切り直前になると、なぜ急に集中できるのでしょうか。理由の一つは、人が「急ぎ」であること自体に引きつけられることです。2018年の研究では、多くの参加者が、報酬の大きい重要な課題ではなく、急ぎに見えるだけの課題を選びました。チームにも似たパターンが見られます。1988年に8つのチームを調べた研究では、多くのチームが最初はゆっくり進み、締め切りまでの期間のちょうど半分あたりでやり方を変えていました。

一方、2002年の有名な研究は、等間隔の締め切りが成績を上げると主張していました。2026年、経済学者たちが大学生を対象にその実験の一つをやり直したところ、締め切りの種類によって成績はほとんど変わりませんでした。元の研究のデータの問題も報告され、学術誌は2026年9月にその論文を撤回しました。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What did the 1988 study of eight teams find?

Q3. What can we infer about the claim that evenly spaced deadlines improve performance?

重要単語

  • deadlineB1
    名詞締め切りThe deadline for the report is Friday. meet a deadline「締め切りに間に合わせる」/miss a deadline「締め切りに遅れる」がセット。
  • procrastinationC1
    名詞先延ばしProcrastination is a common problem for students. pro-(前へ)+crastinus(明日の)=「明日へ回す」。動詞 procrastinate。
  • urgencyC1
    名詞緊急性、急ぎPeople are attracted to urgency. 形容詞 urgent。a sense of urgency「切迫感」はビジネス英語でも頻出。
  • replicationC1
    名詞追試、再現Replication is essential in science. 動詞 replicate。replication crisis「再現性の危機」は心理学の重要トピック。
  • retractC1
    動詞(論文・発言などを)撤回するThe journal retracted the paper. re-(後ろへ)+tract(引く)。名詞 retraction。tractor, attract と同じ tract。
  • midpointB2
    名詞中間点Many teams changed their plans at the midpoint. mid-(真ん中)+point。midnight, midway と同じ mid-。

4コマでわかる

締め切り直前に集中できるのはなぜ? そして有名な「締め切り実験」は2026年9月に撤回されたの4コマ漫画
締め切り直前に集中できるのは、人が「急ぎ」そのものに引きつけられるためと考えられている。一方「締め切りを等間隔に区切ると成績が上がる」とした超有名論文は、追試で再現されずデータの疑義も出て、2026年9月に撤回されたらしい。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Gersick (1988) Time and Transition in Work Teams: Toward a New Model of Group Development, Academy of Management Journaldoi.org
  2. Zhu, Yang & Hsee (2018) The Mere Urgency Effect, Journal of Consumer Researchdoi.org
  3. Hyndman & Bisin (2026) Replication of "Procrastination, Deadlines, and Performance: Self-Control by Precommitment", Psychological Sciencedoi.org
  4. Retraction: Procrastination, Deadlines, and Performance: Self-Control by Precommitment (2026), Psychological Sciencedoi.org
  5. Ariely & Wertenbroch (2002) Procrastination, Deadlines, and Performance: Self-Control by Precommitment, Psychological Science【2026年撤回】doi.org