「成功率90%」と「死亡率10%」、同じ意味なのに選ぶ答えが変わるのはなぜ?

読む前に予想してみよう!
「赤身75%のひき肉」と「脂身25%のひき肉」は、同じくらいおいしそうに感じられる
同じ肉でも「赤身75%」と伝えたほうが、味や品質の評価が高くなったという実験がある。
- 対象
- 大学生・患者・医師
- 規模
- 各数百人+多国籍の大規模追試
- 研究の種類
- 質問紙実験・メタ分析・大規模追試
- 確かさ
- ★★★★★
中身が同じでも、「助かる」と「亡くなる」のどちらで伝えるかで人の選択は大きく変わる。1981年の有名な実験では、多数派の選択がほぼ逆転した。
ひとことで言うと同じ話でも「言い方」を変えるだけで、人の選ぶ答えが変わる!
あなたが手術を受けるかどうか迷っているとします。医師がこう言いました。
「この手術の成功率は90%です」
なんだか安心しますよね。では、こう言われたら?
「この手術の死亡率は10%です」
…ちょっと怖くなりませんか? でも、この2つはまったく同じ意味です。
このように、中身は同じなのに伝え方(フレーム)で判断が変わってしまう現象を、心理学では「フレーミング効果」と呼びます。
01600人を救う「2つの案」
フレーミング効果を世界に知らしめたのが、1981年に科学誌『Science』に載った、トヴェルスキーさんとカーネマンさんの実験です。
よく見ると、案Aと案C、案Bと案Dは中身がまったく同じです。なのに、「助かる」と言われると確実な案を選び、「亡くなる」と言われると賭けに出る。多数派の選択がほぼ逆転したのです(参加者は各150人ほどの大学生)。
0230年以上たっても再現された「本物」の効果
心理学では近年、有名な実験が追試で再現できない「再現性の危機」が問題になっています。でもこの実験は、2014年に世界36の研究室・6000人以上が同じ手順で確かめた大規模追試「Many Labs」でも、しっかり再現されました。
ただし、効果の大きさはオリジナルほど劇的ではなく、多くの研究をまとめたメタ分析(Kühberger, 1998)でも、小〜中くらいの効果とされています。「言い方で多数派がひっくり返る」ほどの強さは、問題の作り方しだいで変わるのです。
03なぜ言い方で選択が変わるの?
カーネマンさんたちは、人の心は「得をする話」では慎重になり、「損をする話」では一発逆転を狙ってリスクをとりやすくなると説明しました。
たとえるなら、同じコップの水を「半分も入っている」と言うか「半分しか入っていない」と言うかで、気持ちが変わるのと同じ。脳は数字そのものより、その数字がどんな「枠」に入っているかに反応してしまうのです。
天気予報で「降水確率30%」と聞くと傘を持とうか迷うのに、「70%の確率で降らない」と言われると、置いていきたくなりませんか? 毎日の小さな判断も、知らないうちにフレームに動かされているのかもしれません。

04お医者さんも、お肉選びも
フレーミング効果は、架空の問題だけで起きるわけではありません。
1982年、アメリカの研究チームが、肺がんの治療法(手術と放射線療法)の選択について、データを「生存率」で示すか「死亡率」で示すかを変えて質問しました。すると、患者だけでなく医師や学生でも、表現によって選ばれる治療法の割合が大きく変わりました。専門家でもフレームから自由ではない、ということです。
もっと身近な例も。1988年の研究では、同じひき肉を「赤身75%」と表示した場合と、「脂身25%」と表示した場合で比べると、「赤身75%」のほうがおいしそう・質が良さそうと評価されました。面白いのは、実際に食べた後だと、その差が小さくなったこと。自分の舌で確かめる体験は、フレームの影響を弱めてくれるようです。
スーパーの「90%カット」や「10人に9人が満足」といった表示も、同じ情報をどの面から見せるかを工夫したものかもしれません。
05まとめ
「成功率90%」と「死亡率10%」。中身は同じでも、言い方ひとつで人の判断は簡単に動きます。
フレーミングに振り回されないコツは、聞いた情報を一度ひっくり返して見てみること。コインの裏側を確かめるクセが、あなたを賢い決断に近づけてくれます。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn 1981, the psychologists Amos Tversky and Daniel Kahneman showed that the way a choice is described can…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
A doctor says, "This operation has a 90% success rate." You feel safe. Another doctor says, "This operation has a 10% death rate." You feel afraid.
But the two sentences mean the same thing! This is called the framing effect. The words we hear change our choices.
In one study, people liked meat more when it was "75% lean" than when it was "25% fat." It was the same meat.
70 words ・ CEFR A2
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ある医師が「この手術の成功率は90%です」と言います。あなたは安心します。別の医師は「この手術の死亡率は10%です」と言います。あなたは怖くなります。
でも、この2つの文は同じ意味なのです!これはフレーミング効果と呼ばれます。耳にする言葉が、私たちの選択を変えるのです。
ある研究では、人々は肉が「脂身25%」のときより「赤身75%」のときのほうを好みました。それは同じ肉でした。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
The words we hear change our choices. とあり、同じ内容でも言い方で選択が変わる「フレーミング効果」がテーマなので C。
Q2. Which meat did people like more?
people liked meat more when it was "75% lean" とあるので B。
Q3. In this passage, "mean the same thing" shows that the two sentences ...
成功率90%と死亡率10%は中身が同じ情報。mean the same thing は「同じ意味である」なので A。
In 1981, the psychologists Amos Tversky and Daniel Kahneman showed that the way a choice is described can change people's decisions. Students imagined a disease that was expected to kill 600 people. When one plan was described as "200 people will be saved," about 72% chose it over a risky plan.
But when the same plan was described as "400 people will die," about 78% chose the risky plan instead. The facts were identical, yet the majority's choice was almost reversed. This is called the framing effect. The researchers explained that people tend to be careful when they think about gains but take risks when they think about losses. Later studies found the same pattern even among doctors.
118 words ・ CEFR B1
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1981年、心理学者のエイモス・トヴェルスキーとダニエル・カーネマンは、選択肢の説明の仕方が人の決定を変えうることを示しました。学生たちは、600人が亡くなると予想される病気を想像しました。ある案が「200人が助かる」と説明されると、約72%が危険な案よりもそちらを選びました。
しかし、同じ案が「400人が亡くなる」と説明されると、約78%が代わりに危険な案を選んだのです。事実はまったく同じなのに、多数派の選択はほぼ逆転しました。これはフレーミング効果と呼ばれます。研究者たちは、人は得について考えるときは慎重になり、損について考えるときはリスクをとる傾向があると説明しました。その後の研究では、医師の間でさえ同じパターンが見つかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. What did Tversky and Kahneman show?
第1文 the way a choice is described can change people's decisions が主旨なので D。
Q2. When the plan was described as "400 people will die," what did most people do?
"400 people will die" と言われると about 78% chose the risky plan とあるので A。
Q3. What can we infer from the last sentence?
the same pattern even among doctors とあり、専門家でもフレームの影響を受けると推論できるので C。
Ground beef labeled "75% lean" and ground beef labeled "25% fat" are the same meat. Consumers in a 1988 study still rated the first one more favorably, although the gap shrank once they had tasted it. This is the framing effect, in which two descriptions that mean the same thing lead to different choices.
In Tversky and Kahneman's best-known 1981 study, about 150 students per condition considered a disease expected to kill 600 people. When the outcomes were described as lives saved, about 72% chose a sure option over a gamble. When the same outcomes were framed as lives lost, about 78% chose the gamble. The authors argued that people avoid risk when thinking about gains but seek it when facing losses. It reaches into hospitals too.
In a 1982 study, patients, doctors and students chose differently between lung cancer treatments depending on whether the data came as survival or death rates. A 1998 meta-analysis judged its typical size to be small to moderate, so the dramatic flip in the disease problem is not typical. But it held up in a 2014 project involving 36 labs and over 6,000 participants, when many classic psychology findings were failing to repeat.
199 words ・ CEFR B2
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「赤身75%」と表示されたひき肉と「脂身25%」と表示されたひき肉は、同じ肉です。それでも1988年の研究では、消費者は前者をより好意的に評価しました。ただし、実際に食べた後にはその差は縮まりました。これがフレーミング効果です。
同じ意味の2つの説明が、異なる選択につながる現象です。トヴェルスキーとカーネマンの最も有名な1981年の研究では、各条件およそ150人の学生が、600人が亡くなると予想される病気について考えました。結果が「救われる命」として示されると、約72%が賭けより確実な選択肢を選びました。同じ結果が「失われる命」として示されると、約78%が賭けを選びました。著者らは、人は得について考えるときにはリスクを避け、損に直面するとリスクを求めると論じました。この効果は病院にも及びます。
1982年の研究では、データが生存率で示されるか死亡率で示されるかによって、患者・医師・学生が肺がんの治療法を違うように選びました。1998年のメタ分析は効果の典型的な大きさを小〜中程度と判断しており、病気の問題で見られた劇的な逆転は典型的なものではありません。それでも効果そのものは、36の研究室と6000人以上が参加した2014年のプロジェクトで再現されました。心理学の古典的な発見の多くが再現に失敗していた時期のことです。
4択リーディングクイズ
Q1. Which statement best summarizes the passage?
患者・医師・消費者にも広がり、2014年の大規模プロジェクトで再現された一方、1998年のメタ分析は効果を small to moderate と判断しているので D。
Q2. What happened to the gap between the beef labels after consumers tasted the meat?
although the gap shrank once they had tasted it とあるので C。shrink は「縮む」。完全に消えたとは書かれていない。
Q3. According to the authors' explanation, a person who is told that a plan will lose money is likely to ...
people avoid risk when thinking about gains but seek it when facing losses とあり、損のフレームではリスクをとりやすいと推論できるので B。
重要単語
- frameB2名詞・動詞枠組み/(ある見方で)表現するThe question was framed in a positive way.
写真の「フレーム(枠)」から。be framed as ~「~として表現される」は論説文の頻出形。 - survival rateB1名詞(句)生存率The survival rate for this surgery is high.
survive(生き延びる)の名詞形 survival。rate は「割合・率」で birth rate(出生率)なども。 - mortalityC1名詞死亡率、死すべき運命Mortality from the disease has fallen sharply.
mort-(死)が語根。mortal(死ぬ運命の)、immortal(不死の)とセットで。infant mortality=乳児死亡率。 - risk-averseC1形容詞リスクを避けたがるMany investors become risk-averse after a loss.
averse は「嫌って」。be averse to ~ の形も。対義は risk-seeking(リスクを求める)。 - gambleB1名詞・動詞賭け/賭けるChoosing that plan was a gamble.
take a gamble で「一か八かやってみる」。比喩的にも使える。 - equivalentB2形容詞・名詞同等の/同等のものTen percent mortality is equivalent to ninety percent survival.
equi-(等しい)+valent(価値)。be equivalent to ~ の前置詞 to がポイント。 - identicalB2形容詞まったく同じThe two descriptions contained identical facts.
identical twins=一卵性双生児。identity(同一性)と同語源。same より「完全一致」を強調。
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「600人中200人が助かる」と「600人中400人が亡くなる」。同じ意味なのに、前者だと7割超がその案を選び、後者だと8割近くがもう一方の賭けを選んだ。言い方ひとつで判断がひっくり返る「フレーミング効果」。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Tversky & Kahneman (1981) The framing of decisions and the psychology of choice, Sciencedoi.org
- McNeil et al. (1982) On the elicitation of preferences for alternative therapies, New England Journal of Medicinedoi.org
- Levin & Gaeth (1988) How consumers are affected by the framing of attribute information before and after consuming the product, Journal of Consumer Researchdoi.org
- Kühberger (1998) The influence of framing on risky decisions: A meta-analysis, Organizational Behavior and Human Decision Processesdoi.org
- Klein et al. (2014) Investigating variation in replicability: A "Many Labs" replication project, Social Psychologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










