【慶應の入試に出た】「忙しい自慢」はなぜ生まれた?忙しさがステータスになった理由

読む前に予想してみよう!
「忙しい人ほど地位が高そう」に見える傾向は、どの国でも同じだった
アメリカでは忙しさが地位のサインになったが、イタリアではゆとりのある生活のほうが地位が高く見られた。
- 対象
- 米国・イタリアなどの成人
- 規模
- 複数の実験・調査
- 研究の種類
- 実験研究・調査研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
アメリカでは「忙しくて休めない人」ほど地位が高そうに見られていた。理由は「求められている有能な人」に見えるから。ただしヨーロッパでは逆の傾向も。
ひとことで言うと「忙しい人=すごい人」と思われやすいのは、引っぱりだこに見えるからだって!
「最近ほんと忙しくてさ〜、寝てないんだよね」。
言っている本人は愚痴のつもりでも、どこか自慢っぽく聞こえる。そんな経験、ありませんか? 実はこの「忙しさ自慢」、心理学・マーケティングの研究でちゃんと説明されていました。
「なぜ私たちはいつも忙しいと感じるのか」「忙しさを感じることの悪影響」は、2026年度の慶應義塾大学(医学部)の英語で長文のテーマになりました(代々木ゼミナール・河合塾の解答速報で確認)。
01昔の「お金持ち」はヒマを見せびらかした
100年以上前、経済学者のヴェブレンは、上流階級の人々が働かなくてもいい余裕(余暇)を見せびらかすことで、自分の地位を示していると指摘しました。高い服、豪華なパーティー、ゆったりした暮らし。「ヒマであること」こそが、お金持ちの証だったのです。
ところが現代では、どうも逆になっているようです。
02「忙しい人=地位が高い」と判断される
なぜでしょう。研究チームによると、忙しい人は「有能で、やる気があり、仕事の世界で引っぱりだこ」に見えるから。高級品が「モノの希少さ」で価値を示すように、忙しさは「その人自身の希少さ」を示すサインになっている、というわけです。
03イタリアでは逆だった
おもしろいのは、この傾向が国によって違ったこと。
同じような実験をイタリアで行うと、むしろゆとりのある生活をしている人のほうが地位が高いと見られる傾向がありました。研究チームは、「努力すれば社会の階段を上がれる」という考え方(社会的流動性への信念)が強いほど、忙しさが評価されやすいと分析しています。
イギリスの社会学者ガーシュニーも2005年に、忙しさが新しい「名誉のバッジ」になっていると論じています。

04時間をお金で「買う」と幸せになる
ところが、世界的に豊かさが増すほど、「時間が足りない」という感覚はかえって強まっている、と研究者は指摘しています。
カナダやアメリカなどの研究チームは、4か国の6,000人以上を調べ、掃除や料理の代行など、時間を節約するサービスにお金を使う人ほど、人生の満足度が高いことを報告しました(PNAS, 2017)。さらに働く大人を対象にした実験でも、モノを買うより「時間を買う」ほうが、その日の幸福感が高まりました。
05まとめ
「忙しい」は、いつのまにか現代の高級ブランドのようになっていました。
でも、忙しさを見せびらかすより、時間を取り戻すほうが幸せに近いのかもしれません。今週、ひとつだけ「やらなくていいこと」を手放してみませんか。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMore than 100 years ago, the economist Veblen pointed out that wealthy people showed their status by…
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Have you ever heard someone say 'I'm so busy!' in a proud way? Long ago, rich people showed off their free time.
Today, in the United States, it is often the opposite. In experiments, Americans thought that busy people with little free time had higher status. Busy people look skilled and wanted by others. But in Italy, people with a relaxed life were seen as higher in status.
68 words ・ CEFR A2
和訳を見る
誰かが「すごく忙しいんだ!」と自慢げに言うのを聞いたことはありますか?
昔、お金持ちは自由な時間を見せびらかしていました。今日のアメリカでは、それが逆になっていることがよくあります。実験で、アメリカ人は、自由な時間がほとんどない忙しい人のほうが地位が高いと考えました。忙しい人は有能で、他の人から求められているように見えるのです。しかしイタリアでは、ゆとりのある生活をしている人のほうが地位が高いと見られました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
忙しい人が地位が高く見える理由(有能で求められているように見える)が中心なので B。
Q2. In Italy, who was seen as higher in status?
最終文 in Italy, people with a relaxed life were seen as higher in status とあるので D。
Q3. In this passage, "showed off" means ...
show off は「見せびらかす」。in a proud way(自慢げに)と同じ流れの表現なので A。
More than 100 years ago, the economist Veblen pointed out that wealthy people showed their status by displaying their leisure. Today, the opposite seems to be true, at least in the United States. Bellezza and colleagues at Columbia University asked American participants to read about two people.
One worked long hours and had little free time. The other lived a relaxed life. Participants judged the busy person to have higher status. According to the researchers, busy people seem skilled, ambitious and in demand.
Just as rare products show their value, busyness signals that a person is rare and valuable. In Italy, the result went the other way. There, the person with a relaxed life was more likely to be seen as having higher status.
124 words ・ CEFR B1
和訳を見る
100年以上前、経済学者のヴェブレンは、裕福な人々は余暇を見せることで自分の地位を示していると指摘しました。今日では、少なくともアメリカでは、その逆が当てはまるようです。コロンビア大学のベレッツァらは、アメリカ人の参加者に2人の人物について読んでもらいました。
1人は長時間働いて自由な時間がほとんどない人です。もう1人は、ゆとりのある生活をしている人です。参加者は、忙しい人のほうが地位が高いと判断しました。研究者たちによると、忙しい人は有能で意欲的で、引っぱりだこに見えるのです。
希少な製品がその価値を示すのと同じように、忙しさはその人が希少で価値があることを示すサインになります。イタリアでは、結果は逆になりました。イタリアでは、ゆとりのある生活をしている人のほうが地位が高いと見られやすかったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. According to Veblen, how did wealthy people show their status in the past?
wealthy people showed their status by displaying their leisure とあるので C。
Q2. Why do busy people seem to have high status in the United States?
busy people seem skilled, ambitious and in demand とあるので A。B の収入については書かれていない。
Q3. What does the comparison with Italy suggest?
In Italy, the result went the other way. とあり、アメリカとイタリアで逆の結果が出たことから、忙しさと地位の関係は文化によって変わると推論できるので D。B は「どこでも」が誤り。
Over a century ago, the economist Veblen argued that the upper classes displayed their status through conspicuous leisure. In today's America, the pattern has flipped. In a series of studies published in 2017, Bellezza and colleagues found that American participants rated a person who worked long hours and had little leisure as higher in status than one who lived a leisurely life.
The explanation lay in how busy people were perceived. They seemed to have valued skills and ambition and to be in demand in the job market. Busyness, the researchers argued, signals that a person is scarce, much as luxury goods signal that objects are scarce. Italians saw it differently. In Italy, a leisurely lifestyle went with higher status, and the researchers linked the American pattern to a stronger belief in social mobility, though the cross-national comparisons rested on limited samples.
The British sociologist Gershuny had earlier called busyness a new "badge of honor." A culture that celebrates being busy may leave people feeling short of time. A 2017 survey, correlational like most of this work, covered over 6,000 people in four countries. Those who spent money on time-saving services reported greater life satisfaction.
195 words ・ CEFR B2
和訳を見る
1世紀以上前、経済学者のヴェブレンは、上流階級は「見せびらかしの余暇」によって地位を誇示していると論じました。今日のアメリカでは、そのパターンが逆転しています。2017年に発表された一連の研究で、ベレッツァらは、アメリカ人の参加者が、長時間働き余暇のほとんどない人を、ゆとりある生活を送る人よりも地位が高いと評価することを見いだしました。
その理由は、忙しい人がどう受け止められているかにありました。忙しい人は価値あるスキルと野心を持ち、労働市場で引っぱりだこであるように見えたのです。研究者たちによれば、高級品がモノの希少性を示すのと同じように、忙しさはその人自身が希少であることを示します。イタリア人の見方は違いました。イタリアでは、ゆとりある暮らしぶりが高い地位と結びついており、研究者たちはアメリカのパターンを社会的流動性へのより強い信念と関連づけましたが、国どうしの比較は限られた標本に基づいていました。
イギリスの社会学者ガーシュニーは、それ以前に、忙しさを新しい「名誉のバッジ」と呼んでいました。忙しさをたたえる文化は、人々に時間が足りないと感じさせるかもしれません。2017年の調査は、この分野の多くの研究と同じく相関を見るもので、4か国の6,000人以上を対象にしました。時間を節約するサービスにお金を使う人ほど、人生の満足度が高いと報告していました。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the main contrast in the passage?
ヴェブレンの時代は余暇が地位の象徴、現代アメリカでは忙しさが地位の象徴、という時代の対比が軸なので B。In today's America, the pattern has flipped. に注目。
Q2. What does the author mean by saying busyness "signals that a person is scarce"?
直後の much as luxury goods signal that objects are scarce と比べているので、忙しさ=その人が希少で価値があるサイン、の C。
Q3. Which caution does the author mention?
the cross-national comparisons rested on limited samples と、2017年の調査が correlational like most of this work であることが述べられているので A。
重要単語
- status symbolB2名詞(句)地位の象徴Expensive watches have long been status symbols.
status の発音は /ˈsteɪtəs/(ステイタス)。社会・経済系の長文で頻出。 - conspicuousC1形容詞目立つ、これ見よがしのConspicuous consumption means buying things to show off.
conspicuous consumption(見せびらかしの消費)はヴェブレンの用語で入試頻出。反対語は inconspicuous。 - leisureB2名詞余暇、自由な時間People in the past showed off their leisure.
発音は /ˈliːʒɚ/(米)、/ˈleʒə/(英)。at one's leisure「暇なときに」。leisure class は「有閑階級」。 - in demandB2熟語需要がある、引っぱりだこのSkilled engineers are in demand.
be in great demand「大いに需要がある」。supply and demand(需要と供給)とセットで覚える。 - scarcityC1名詞希少性、不足Scarcity makes things seem more valuable.
形容詞は scarce(乏しい)、副詞 scarcely は「ほとんど~ない」で準否定語として文法問題に出る。 - time-savingB2形容詞時間を節約するBuying a time-saving service can make people happier.
labor-saving(労力を省く)と同じ作り。名詞+現在分詞の複合形容詞。 - social mobilityC1名詞(句)社会的流動性(階層を移動できること)A belief in social mobility makes hard work seem valuable.
mobile(動ける)の名詞形。upward mobility(上昇移動)も社会系の長文で出る。
動画でもっと知る
動画は各チャンネルの公式埋め込みで表示しています(YouTube)。
この話題を TED で聞く
同じテーマの TED・TED-Ed を、
TED HACK で。英語の見どころ・使える表現・学習ミッションつきの日本語ガイドです。(運営:原田英語)
公式・一次情報をチェック
- 2026年度 慶應義塾大学(2/9 実施 医)英語 概評(「"忙しさ"を感じることの悪影響」がテーマ)(代々木ゼミナール 解答速報)sokuho.yozemi.ac.jp
- 2026年 慶應義塾大学 医学部 英語 講評(「なぜ、いつも忙しいと感じるのか」)(河合塾 解答速報)kaisoku.kawai-juku.ac.jp
このネタ、誰かに教えたくなった?
「最近ほんと忙しくて」が自慢っぽく聞こえる理由、研究で説明されていたらしい。アメリカでは忙しい人ほど「有能で引っぱりだこ」に見られて地位が高そうに評価された。でもイタリアでは逆に、ゆとりのある人が上に見られる傾向。
押すと「マジかリスト」に保存されます
出典・参考文献(3件)タップで表示
- Bellezza, Paharia & Keinan (2017) Conspicuous consumption of time: when busyness and lack of leisure time become a status symbol, Journal of Consumer Researchdoi.org
- Gershuny (2005) Busyness as the badge of honor for the new superordinate working class, Social Researchdoi.org
- Whillans et al. (2017) Buying time promotes happiness, PNASdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













