【悲報】高いチケットが惜しくて、楽しくない方を選ぶ人が半数超え。サンクコストの罠

読む前に予想してみよう!
「コンコルド効果」という名前の通り、動物もサンクコストにこだわる行動をよく見せることが昔から確かめられていた
1999年のレビューでは動物でのはっきりした証拠は乏しいとされた。ただし2018年に、ネズミでも「待った時間」へのこだわりが見つかり、議論が続いている。
- 対象
- 大学生・劇場の客ほか
- 規模
- 数十〜数百人+98効果量のメタ分析
- 研究の種類
- 仮想シナリオ実験・フィールド実験・メタ分析
- 確かさ
- ★★★★☆
もう戻らないお金や時間(サンクコスト)がもったいなくて、損な選択を続けてしまう。高い方の旅行を選ぶ人が半数を超えた実験も。
ひとことで言うと「もったいない」が、もっと大きな損を呼んじゃうこと!
つまらない映画。開始30分で「これはハズレだ」とわかった。でもチケット代を払ったから、最後まで観る。
ほとんど使っていないジム。でも入会金がもったいないから、解約できない。
こんな経験、ありませんか? すでに払ってしまって二度と戻ってこないお金や時間のことを、経済学ではサンクコスト(埋没費用)と呼びます。「沈んでしまったコスト」という意味です。
01楽しくない方の旅行を選ぶ人たち
1985年、心理学者のハル・アークスとキャサリン・ブルーマーは、学生にこんな質問をしました。
冷静に考えると、どちらを選んでも150ドルはもう戻ってきません。それなら楽しい方に行くのが得なはず。でも「100ドル分を無駄にしたくない」という気持ちが、判断をねじ曲げてしまうのです。
ただし、これは60人ほどの学生への「もしも」の質問です。半数超えとはいえ、残りの半数近くは楽しい方を選んでいた点も忘れずに。
同じ論文では、劇場のシーズン券を定価で買った人とたまたま割引で買った人を比べると、定価組の方がシーズン前半によく劇場に足を運んだことも報告されています。払った額が、行動を引っ張ったのです。
02「コンコルド」の名前の由来
サンクコストへのこだわりは、コンコルド効果とも呼ばれます。
コンコルドはイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機。開発の途中で「採算がとれない」と見込まれながらも、それまでの巨額の投資や国の威信もあって計画は続き、1976年に就航しました。2003年に引退するまで、商業的には成功とは言いがたい結果に終わりました。

03どんでん返し:動物は「コンコルド」しない?
「コンコルドの誤り」という言葉を生物学に持ち込んだのは、進化生物学者のリチャード・ドーキンスらです(1976年)。ただし彼らは、「親が子育てを続けるのは、すでに投資したから」という考え方を論理の誤りとして批判するためにこの言葉を使いました。
そして1999年、アークスらは動物の研究を見直し、動物がサンクコストにこだわるという確かな証拠は乏しいと指摘しました。動物の行動は「これから得られる利益」でかなり説明できるというのです。
つまり、過去の投資にしがみつくのは、言葉と「無駄はいけない」という教えを身につけた人間ならではのクセかもしれない──というのが、長く有力だった考え方です。
ところが2018年、アメリカの研究チームが『Science』に、マウス・ラット・人間に同じしくみのエサ(人間は動画)待ちゲームをさせた結果を発表しました。すると3種とも、すでに長く待った後ほど、途中でやめにくくなるという、よく似た「時間のサンクコスト」へのこだわりを見せたのです。お金の「もったいない」は人間らしい面が大きいとしても、「ここまで待ったんだから」という感覚は、動物とも共通する根っこを持っているのかもしれません。
04「もったいない」が大事故になるとき
この心理は、個人の買い物だけでなく、会社や国の大きなプロジェクトでも起こります。失敗しかけた計画に、責任者がさらにお金をつぎ込んでしまう現象はエスカレーション・オブ・コミットメントと呼ばれ、1976年のストウの研究以来、たくさん調べられてきました。ストウの実験では、自分で決めた投資先が失敗したときほど、さらに追加でお金をつぎ込みやすいことが示されました。「自分の判断ミスを認めたくない」気持ちも、深みにはまる原因なのです。
98の効果量をまとめた2015年のメタ分析でも、サンクコスト効果は確かに存在すると確認されました。ただしその大きさは、「すでに買ったものを使うかどうか」なのか「プロジェクトを続けるかどうか」なのか、といった決定の種類によって変わり、時間がたつと弱まることもわかっています。
05まとめ
「もったいない」は日本人の美徳とも言われます。でも、その気持ちがこれから先の時間やお金まで奪っているなら、本末転倒です。
つまらない映画は、途中で出てもいい。過去のチケット代ではなく、これからの2時間の使い道で決めましょう。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 1985 study, Hal Arkes and Catherine Blumer asked students to imagine a problem.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
In a 1985 study, students read about a person who bought two ski trips by mistake. One cost 100 dollars, and the other cost 50 dollars. They were on the same weekend, and the cheaper trip would be more fun.
Which one would you choose? More than half of the students chose the expensive trip. They did not want to waste their money. But the money was already gone. This is called the sunk cost trap.
76 words ・ CEFR A2
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1985年の研究で、学生たちはうっかりスキー旅行を2つ買ってしまった人の話を読みました。1つは100ドル、もう1つは50ドルでした。2つは同じ週末で、安い方の旅行の方が楽しいはずでした。
あなたならどちらを選びますか?半数を超える学生が高い方の旅行を選びました。彼らはお金を無駄にしたくなかったのです。でも、そのお金はもう戻ってきません。これはサンクコストの罠と呼ばれています。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
もう戻らないお金がもったいなくて悪い方を選んでしまう「サンクコストの罠」が主題なので D。
Q2. Which trip did more than half of the students choose?
more than half of the students chose the expensive trip とあり、高い方は100ドルなので A。
Q3. In this passage, "waste" means ...
waste は「無駄にする」。お金を役に立たない形で失う、という意味なので B。
In a 1985 study, Hal Arkes and Catherine Blumer asked students to imagine a problem. They had bought two non-refundable ski trips for the same weekend. One trip cost 100 dollars.
The other cost 50 dollars, and they thought it would be more fun. Which trip would they choose? More than half chose the more expensive one. Money or time that cannot be recovered is called a sunk cost.
In the same paper, people who had paid full price for theater season tickets went to the theater more often in the first half of the season than people who had received a discount. This tendency is also called the Concorde effect. The name comes from a supersonic plane whose development continued despite its poor prospects.
125 words ・ CEFR B1
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1985年の研究で、ハル・アークスとキャサリン・ブルーマーは、学生たちにある問題を想像してもらいました。同じ週末の払い戻し不可のスキー旅行を2つ買ってしまった、という状況です。1つは100ドルでした。
もう1つは50ドルで、こちらのほうが楽しめると思っていました。どちらの旅行を選ぶでしょうか。半数を超える人が高いほうを選びました。取り戻せないお金や時間はサンクコスト(埋没費用)と呼ばれます。
同じ論文では、劇場のシーズン券を定価で払った人は、割引を受けた人よりもシーズン前半によく劇場に足を運びました。この傾向はコンコルド効果とも呼ばれます。この名前は、見通しが悪いにもかかわらず開発が続けられた超音速旅客機に由来します。
4択リーディングクイズ
Q1. What is a "sunk cost"?
Money or time that cannot be recovered is called a sunk cost. と定義されているので C。
Q2. What happened in the theater ticket study?
people who had paid full price ... went to the theater more often in the first half of the season とあるので A。
Q3. Why is the tendency called the "Concorde effect"?
development continued despite its poor prospects(見通しが悪いのに開発が続いた)とあるので B。
Economists argue that rational decisions should depend only on future costs and benefits, yet people frequently allow sunk costs, resources that can never be recovered, to steer their choices. In a classic 1985 scenario study with about 60 students, Arkes and Blumer found that more than half preferred a 100-dollar ski trip to a 50-dollar one they expected to enjoy more, simply because it had cost more. This bias was long considered uniquely human, and a 1999 review concluded that clear evidence of sunk-cost behavior in animals was lacking.
However, a 2018 study in Science reported that mice, rats and humans all became less likely to quit a waiting task the longer they had already waited. In organizations, the related phenomenon of escalation of commitment means that managers pour more money into failing projects, especially when they made the original decision themselves. A 2015 meta-analysis of 98 effect sizes confirmed that the sunk cost effect is real, but its strength varies with the type of decision and may weaken over time. A practical safeguard is to ask whether you would choose the same option if you were starting from zero today.
191 words ・ CEFR B2
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経済学者は、合理的な決定は将来の費用と利益だけに基づくべきだと主張しますが、人はしばしば、決して取り戻せない資源であるサンクコストに選択を左右させてしまいます。約60人の学生を対象にした1985年の古典的なシナリオ研究で、アークスとブルーマーは、半数を超える学生が、より楽しめると思う50ドルのスキー旅行より、単に費用が高かったという理由で100ドルの旅行を好むことを見いだしました。この偏りは長い間、人間に特有のものと考えられていました。1999年のレビューは、動物にサンクコスト的な行動があるという明確な証拠はないと結論づけたのです。
しかし、2018年に『Science』に掲載された研究は、マウス、ラット、人間のいずれも、すでに長く待っているほど待つ課題をやめにくくなると報告しました。組織では、関連する現象である「コミットメントのエスカレーション」により、管理者は失敗しかけているプロジェクトにさらにお金をつぎ込みます。特に、最初の決定を自分で下した場合にそうなります。98の効果量を対象にした2015年のメタ分析は、サンクコスト効果が実在することを確認しましたが、その強さは決定の種類によって異なり、時間とともに弱まることもあります。実用的な予防策は、もし今日ゼロから始めるとしても同じ選択肢を選ぶかと自問することです。
4択リーディングクイズ
Q1. According to economists, what should rational decisions be based on?
rational decisions should depend only on future costs and benefits とあるので C。
Q2. What did the 2018 study suggest about animals?
mice, rats and humans all became less likely to quit ... the longer they had already waited とあるので C。1999年のレビューとは異なる結果。
Q3. Which manager is most likely to show escalation of commitment, according to the passage?
especially when they made the original decision themselves とあるので、自分で承認した計画が失敗しかけている D が最も当てはまる。
重要単語
- sunk costC1名詞(句)埋没費用(取り戻せない費用)Don't let sunk costs decide your future.
sunk は sink(沈む)の過去分詞。「沈んでもう戻らないお金」とイメージする。 - refundB1名詞・動詞払い戻し/払い戻すThe ticket was non-refundable, so I couldn't get a refund.
re-(元へ)+ラテン語 fundere(注ぐ)で「注ぎ戻す」。get a refund / non-refundable は旅行・買い物の会話文に頻出。 - wasteA2動詞・名詞無駄にする/無駄I hate to waste food.
a waste of time / money「時間・お金の無駄」。waist(腰)と同音なので注意。 - investB1動詞投資する、(時間や労力を)注ぐShe invested a lot of time in the project.
invest A in B「AをBに注ぐ」。名詞 investment。お金以外にも時間・労力に使える。 - escalationC1名詞段階的な拡大、深みにはまることThe escalation of the conflict worried everyone.
escalator(エスカレーター)と同語源で「一段ずつ上がる」イメージ。動詞 escalate。 - rationalB2形容詞合理的な、理性的なIt is not rational to keep paying for something you never use.
反対は irrational。行動経済学の長文では「人間は必ずしも rational ではない」が定番テーマ。 - commitmentB2名詞関与、献身、約束His commitment to the project never changed.
動詞 commit。commitment to ~ と前置詞 to を取る。
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100ドルのスキー旅行と50ドルのスキー旅行が同じ週末にかぶった。50ドルの方が楽しそうだと思っている。それでも半分以上の人が100ドルの方を選んだらしい。「払ったお金がもったいない」の罠。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Arkes & Blumer (1985) The psychology of sunk cost, Organizational Behavior and Human Decision Processesdoi.org
- Arkes & Ayton (1999) The sunk cost and Concorde effects: Are humans less rational than lower animals?, Psychological Bulletindoi.org
- Staw (1976) Knee-deep in the big muddy: A study of escalating commitment to a chosen course of action, Organizational Behavior and Human Performancedoi.org
- Roth, Robbert & Straus (2015) On the sunk-cost effect in economic decision-making: A meta-analytic review, Business Researchdoi.org
- Sweis et al. (2018) Sensitivity to "sunk costs" in mice, rats, and humans, Sciencedoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










