心理学ホント

【悲報】高いチケットが惜しくて、楽しくない方を選ぶ人が半数超え。サンクコストの罠

【悲報】高いチケットが惜しくて、楽しくない方を選ぶ人が半数超え。サンクコストの罠

読む前に予想してみよう!

「コンコルド効果」という名前の通り、動物もサンクコストにこだわる行動をよく見せることが昔から確かめられていた

研究カード(どんな研究?)
対象
大学生・劇場の客ほか
規模
数十〜数百人+98効果量のメタ分析
研究の種類
仮想シナリオ実験・フィールド実験・メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

もう戻らないお金や時間(サンクコスト)がもったいなくて、損な選択を続けてしまう。高い方の旅行を選ぶ人が半数を超えた実験も。

ひとことで言うと「もったいない」が、もっと大きな損を呼んじゃうこと!

もくじ
  1. 楽しくない方の旅行を選ぶ人たち
  2. 「コンコルド」の名前の由来
  3. どんでん返し:動物は「コンコルド」しない?
  4. 「もったいない」が大事故になるとき
  5. まとめ

つまらない映画。開始30分で「これはハズレだ」とわかった。でもチケット代を払ったから、最後まで観る。

ほとんど使っていないジム。でも入会金がもったいないから、解約できない。

こんな経験、ありませんか? すでに払ってしまって二度と戻ってこないお金や時間のことを、経済学ではサンクコスト(埋没費用)と呼びます。「沈んでしまったコスト」という意味です。

01楽しくない方の旅行を選ぶ人たち

1985年、心理学者のハル・アークスとキャサリン・ブルーマーは、学生にこんな質問をしました。

冷静に考えると、どちらを選んでも150ドルはもう戻ってきません。それなら楽しい方に行くのが得なはず。でも「100ドル分を無駄にしたくない」という気持ちが、判断をねじ曲げてしまうのです。

ただし、これは60人ほどの学生への「もしも」の質問です。半数超えとはいえ、残りの半数近くは楽しい方を選んでいた点も忘れずに。

同じ論文では、劇場のシーズン券を定価で買った人とたまたま割引で買った人を比べると、定価組の方がシーズン前半によく劇場に足を運んだことも報告されています。払った額が、行動を引っ張ったのです。

02「コンコルド」の名前の由来

サンクコストへのこだわりは、コンコルド効果とも呼ばれます。

コンコルドはイギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機。開発の途中で「採算がとれない」と見込まれながらも、それまでの巨額の投資や国の威信もあって計画は続き、1976年に就航しました。2003年に引退するまで、商業的には成功とは言いがたい結果に終わりました。

落ちてしまったコインは、もう上には戻らない
落ちてしまったコインは、もう上には戻らない

03どんでん返し:動物は「コンコルド」しない?

「コンコルドの誤り」という言葉を生物学に持ち込んだのは、進化生物学者のリチャード・ドーキンスらです(1976年)。ただし彼らは、「親が子育てを続けるのは、すでに投資したから」という考え方を論理の誤りとして批判するためにこの言葉を使いました。

そして1999年、アークスらは動物の研究を見直し、動物がサンクコストにこだわるという確かな証拠は乏しいと指摘しました。動物の行動は「これから得られる利益」でかなり説明できるというのです。

つまり、過去の投資にしがみつくのは、言葉と「無駄はいけない」という教えを身につけた人間ならではのクセかもしれない──というのが、長く有力だった考え方です。

ところが2018年、アメリカの研究チームが『Science』に、マウス・ラット・人間に同じしくみのエサ(人間は動画)待ちゲームをさせた結果を発表しました。すると3種とも、すでに長く待った後ほど、途中でやめにくくなるという、よく似た「時間のサンクコスト」へのこだわりを見せたのです。お金の「もったいない」は人間らしい面が大きいとしても、「ここまで待ったんだから」という感覚は、動物とも共通する根っこを持っているのかもしれません。

04「もったいない」が大事故になるとき

この心理は、個人の買い物だけでなく、会社や国の大きなプロジェクトでも起こります。失敗しかけた計画に、責任者がさらにお金をつぎ込んでしまう現象はエスカレーション・オブ・コミットメントと呼ばれ、1976年のストウの研究以来、たくさん調べられてきました。ストウの実験では、自分で決めた投資先が失敗したときほど、さらに追加でお金をつぎ込みやすいことが示されました。「自分の判断ミスを認めたくない」気持ちも、深みにはまる原因なのです。

98の効果量をまとめた2015年のメタ分析でも、サンクコスト効果は確かに存在すると確認されました。ただしその大きさは、「すでに買ったものを使うかどうか」なのか「プロジェクトを続けるかどうか」なのか、といった決定の種類によって変わり、時間がたつと弱まることもわかっています。

05まとめ

「もったいない」は日本人の美徳とも言われます。でも、その気持ちがこれから先の時間やお金まで奪っているなら、本末転倒です。

つまらない映画は、途中で出てもいい。過去のチケット代ではなく、これからの2時間の使い道で決めましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn a 1985 study, Hal Arkes and Catherine Blumer asked students to imagine a problem. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

In a 1985 study, Hal Arkes and Catherine Blumer asked students to imagine a problem. They had bought two non-refundable ski trips for the same weekend. One trip cost 100 dollars.

The other cost 50 dollars, and they thought it would be more fun. Which trip would they choose? More than half chose the more expensive one. Money or time that cannot be recovered is called a sunk cost.

In the same paper, people who had paid full price for theater season tickets went to the theater more often in the first half of the season than people who had received a discount. This tendency is also called the Concorde effect. The name comes from a supersonic plane whose development continued despite its poor prospects.

125 words ・ CEFR B1

和訳を見る

1985年の研究で、ハル・アークスとキャサリン・ブルーマーは、学生たちにある問題を想像してもらいました。同じ週末の払い戻し不可のスキー旅行を2つ買ってしまった、という状況です。1つは100ドルでした。

もう1つは50ドルで、こちらのほうが楽しめると思っていました。どちらの旅行を選ぶでしょうか。半数を超える人が高いほうを選びました。取り戻せないお金や時間はサンクコスト(埋没費用)と呼ばれます。

同じ論文では、劇場のシーズン券を定価で払った人は、割引を受けた人よりもシーズン前半によく劇場に足を運びました。この傾向はコンコルド効果とも呼ばれます。この名前は、見通しが悪いにもかかわらず開発が続けられた超音速旅客機に由来します。

4択リーディングクイズ

Q1. What is a "sunk cost"?

Q2. What happened in the theater ticket study?

Q3. Why is the tendency called the "Concorde effect"?

重要単語

  • sunk costC1
    名詞(句)埋没費用(取り戻せない費用)Don't let sunk costs decide your future. sunk は sink(沈む)の過去分詞。「沈んでもう戻らないお金」とイメージする。
  • refundB1
    名詞・動詞払い戻し/払い戻すThe ticket was non-refundable, so I couldn't get a refund. re-(元へ)+ラテン語 fundere(注ぐ)で「注ぎ戻す」。get a refund / non-refundable は旅行・買い物の会話文に頻出。
  • wasteA2
    動詞・名詞無駄にする/無駄I hate to waste food. a waste of time / money「時間・お金の無駄」。waist(腰)と同音なので注意。
  • investB1
    動詞投資する、(時間や労力を)注ぐShe invested a lot of time in the project. invest A in B「AをBに注ぐ」。名詞 investment。お金以外にも時間・労力に使える。
  • escalationC1
    名詞段階的な拡大、深みにはまることThe escalation of the conflict worried everyone. escalator(エスカレーター)と同語源で「一段ずつ上がる」イメージ。動詞 escalate。
  • rationalB2
    形容詞合理的な、理性的なIt is not rational to keep paying for something you never use. 反対は irrational。行動経済学の長文では「人間は必ずしも rational ではない」が定番テーマ。
  • commitmentB2
    名詞関与、献身、約束His commitment to the project never changed. 動詞 commit。commitment to ~ と前置詞 to を取る。
100ドルのスキー旅行と50ドルのスキー旅行が同じ週末にかぶった。50ドルの方が楽しそうだと思っている。それでも半分以上の人が100ドルの方を選んだらしい。「払ったお金がもったいない」の罠。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Arkes & Blumer (1985) The psychology of sunk cost, Organizational Behavior and Human Decision Processesdoi.org
  2. Arkes & Ayton (1999) The sunk cost and Concorde effects: Are humans less rational than lower animals?, Psychological Bulletindoi.org
  3. Staw (1976) Knee-deep in the big muddy: A study of escalating commitment to a chosen course of action, Organizational Behavior and Human Performancedoi.org
  4. Roth, Robbert & Straus (2015) On the sunk-cost effect in economic decision-making: A meta-analytic review, Business Researchdoi.org
  5. Sweis et al. (2018) Sensitivity to "sunk costs" in mice, rats, and humans, Sciencedoi.org