動物・植物

デンキウナギはウナギじゃなかった。最強860ボルト、獲物を“リモコン操作”する発電魚

デンキウナギはウナギじゃなかった。最強860ボルト、獲物を“リモコン操作”する発電魚

読む前に予想してみよう!

デンキウナギは、ウナギの仲間の魚である

研究カード(どんな研究?)
対象
アマゾン流域のデンキウナギ
規模
標本の遺伝・形態解析、飼育下の実験、野外観察
研究の種類
分類学・電気生理・行動観察
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

デンキウナギはウナギではなくナイフフィッシュの仲間。2019年に3種に分けられ、1種は860ボルトを記録。電気で獲物の筋肉を勝手に動かして捕まえる。

ひとことで言うとデンキウナギはウナギじゃない!電気でえものの体をあやつる魚!

もくじ
  1. じつはウナギの仲間ではない
  2. 1種だと思われていたら、3種だった
  3. 電気で獲物を「リモコン操作」
  4. 水から飛び上がって電気攻撃
  5. 群れで狩りをするデンキウナギも
  6. まとめ

名前に「ウナギ」とつくのに、ウナギではない。体のほとんどが発電装置。そして、電気で相手の体を勝手に動かす――。

デンキウナギは、知れば知るほど「マジか!?」が止まらない魚です。

01じつはウナギの仲間ではない

デンキウナギは、南米アマゾン川などにすむ細長い魚。見た目はウナギそっくりですが、分類ではナイフフィッシュ(デンキウナギ目)というグループに入り、日本の食卓のウナギとは遠い関係です。

体の後ろ側の大部分は、発電器官。筋肉が変化した「発電細胞」が何千個も電池のように直列に並んでいて、一斉に電気を起こすことで高い電圧を生み出します。

021種だと思われていたら、3種だった

家庭のコンセントは100ボルト。その8倍以上の電圧を、魚が自分の体で作り出しているのです。

03電気で獲物を「リモコン操作」

アメリカ・ヴァンダービルト大学のカタニア(Catania)さんは、デンキウナギの狩りを詳しく調べました(2014年、『Science』)。

デンキウナギの高電圧パルスは、獲物の運動神経を直接刺激します。すると、獲物の筋肉は自分の意思と関係なくギュッと固まり、動けなくなります。さらに、物かげに隠れた獲物に向けて2〜3発の短いパルスを出すと、獲物の体がビクッとけいれんして水が揺れ、居場所がバレてしまうのです。

デンキウナギは、いわば電気で獲物の体を遠隔操作しているわけです。

短いパルスで隠れた獲物をけいれんさせ、居場所をあぶり出す
短いパルスで隠れた獲物をけいれんさせ、居場所をあぶり出す

04水から飛び上がって電気攻撃

カタニアさんは、さらに驚くような行動も記録しました(2016年、『PNAS』)。

危険を感じたデンキウナギは、水面から体を持ち上げ、あごを相手に押し当てながら放電するのです。高く上がるほど、電気はより多く相手の体を流れます。

じつは1800年、探検家フンボルトが「漁師が馬を池に追いこむと、デンキウナギが馬に体を押しつけて電気を浴びせた」という光景を目にし、のちに書き残していました。200年以上「話を盛ったのでは?」と疑われてきましたが、カタニアさんの観察は、フンボルトの記録を裏づけるものになりました。

05群れで狩りをするデンキウナギも

ふだん単独で狩りをすると思われてきたデンキウナギですが、2021年の報告で、ボルタイ種が群れで小魚を追いこみ、いっせいに放電する様子が野外で観察されました(Bastosら)。電気の“集団攻撃”です。

06まとめ

デンキウナギは、ウナギではなく、1種でもなく、ただ電気で“しびれさせる”だけでもない魚でした。860ボルトの発電所を体に持ち、電気で獲物を操り、ときには飛び上がり、仲間と狩りをする。

アマゾンの濁った水の中では、私たちの想像をこえる“電気の戦い”が、今日もくり広げられています。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerAlthough their name includes the word "eel," electric eels are actually knifefish from South America. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Although their name includes the word "eel," electric eels are actually knifefish from South America. Most of their body is an electric organ made of thousands of cells lined up like batteries. For more than 250 years, scientists thought there was only one species, but a 2019 study showed that there are three.

One of them produced 860 volts, a record for any living animal. Electric eels use high-voltage pulses to make their prey's muscles tighten so it cannot move. They can even send short pulses toward hidden fish, which makes the fish twitch and reveals where they are. A 2021 report also described one species hunting in groups.

109 words ・ CEFR B1

和訳を見る

名前に「ウナギ」という言葉が入っていますが、デンキウナギは実は南アメリカのナイフフィッシュの仲間です。体のほとんどは、何千もの細胞が電池のように並んだ発電器官です。250年以上ものあいだ、科学者たちは1種しかいないと考えていましたが、2019年の研究で3種いることがわかりました。

そのうちの1種は、生きている動物として記録的な860ボルトを出しました。デンキウナギは高電圧のパルスを使って獲物の筋肉を固まらせ、動けなくします。隠れている魚に向けて短いパルスを送ることさえでき、すると魚の体がビクッと動いて居場所がわかってしまいます。2021年の報告では、ある種が群れで狩りをする様子も確認されています。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the passage mainly about?

Q2. What happens to hidden fish when an electric eel sends short pulses?

Q3. Why does the passage compare the cells to batteries?

重要単語

  • electric organC1
    名詞(句)発電器官Most of the eel's body is an electric organ. organ は「器官」。楽器の「オルガン」と同じつづり。internal organs「内臓」。
  • voltageB2
    名詞電圧The new species produced a voltage of 860 volts. 単位 volt は電池を発明したボルタの名から。新種名 voltai も彼にちなむ。current(電流)と区別。
  • dischargeC1
    名詞・動詞放電(する)、排出(する)The eel uses discharges to stun prey. dis-(反対)+charge(充電・積む)。「退院させる」「解雇する」の意味もある多義語。
  • preyB2
    名詞獲物The prey could not move after the shock. pray(祈る)と同音。predator(捕食者)とセットで。fall prey to ~「~の餌食になる」。
  • speciesB2
    名詞種Scientists found that there are three species of electric eel. 単複同形(a species / three species)。specific(特定の)と同語源。
  • involuntaryC1
    形容詞無意識の、意思によらないThe pulses cause involuntary muscle contractions. in-(否定)+voluntary(自発的な)。volunteer と同語源。
  • revealB2
    動詞明らかにする、あらわにするThe twitch revealed where the fish was hiding. re-(逆に)+veil(ベール)=「ベールをはがす」。名詞は revelation。

動画でもっと知る

4コマでわかる

デンキウナギはウナギじゃなかった。最強860ボルト、獲物を“リモコン操作”する発電魚の4コマ漫画
デンキウナギはウナギの仲間ではない。2019年に3種に分けられ、1種は860ボルトの放電を記録。高電圧パルスで獲物の筋肉を勝手にけいれんさせ、隠れた獲物まであぶり出していた。

押すと「マジかリスト」に保存されます

出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. de Santana et al. (2019) Unexpected species diversity in electric eels with a description of the strongest living bioelectricity generator, Nature Communicationsdoi.org
  2. Catania (2014) The shocking predatory strike of the electric eel, Sciencedoi.org
  3. Catania (2016) Leaping eels electrify threats, supporting Humboldt's account of a battle with horses, PNASdoi.org
  4. Bastos et al. (2021) Social predation in electric eels, Ecology and Evolutiondoi.org