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鏡を見て「自分のノドの汚れ」を落とす魚がいた。ホンソメワケベラと鏡像認知の大発見

鏡を見て「自分のノドの汚れ」を落とす魚がいた。ホンソメワケベラと鏡像認知の大発見

読む前に予想してみよう!

ホンソメワケベラは、鏡がなくても自分のノドの茶色い印に気づいてこすり落とす

研究カード(どんな研究?)
対象
ホンソメワケベラ(野生由来の個体)
規模
小規模(研究ごとに10〜35匹ほど)
研究の種類
行動実験(マークテスト・写真提示)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

大阪の研究チームが、魚のホンソメワケベラが鏡に映る自分を認識し、ノドにつけた印をこすり落とそうとすることを示した。顔で自分を見分けている可能性も。

ひとことで言うとこの魚は、鏡を見て「あ、ぼくのノドに何かついてる!」と気づく!

もくじ
  1. ノドに茶色い印をつけてみた
  2. 「たまたまでは?」への答え
  3. 自分の“顔”を覚えていた
  4. まとめ

鏡を見て「あ、寝ぐせがついてる」と気づく。私たちにとっては当たり前のこの行動、動物の世界ではかなりの“難問”です。

鏡に映った姿を自分だと理解できる(鏡像自己認知)と確かめられてきたのは、チンパンジーなどの大型類人猿、イルカ、ゾウ、カササギなど、ごく一部の動物だけでした。

ところが日本の研究チームが、体長わずか5〜8cmほどの魚でこれを示したのです。

01ノドに茶色い印をつけてみた

主役は、サンゴ礁にすむホンソメワケベラ。大きな魚の体についた寄生虫を食べる「掃除屋」として知られる魚です。

これは、動物の自己認知を調べるマークテスト(鏡テスト)の手順にならった実験です(ただし、印は皮下に入れる改変版)。茶色の印は、ホンソメワケベラにとって寄生虫に見える色でした。

02「たまたまでは?」への答え

この発表には、「魚が自分を認識するなんて」と強い反論も出ました。雑誌側も、審査で賛否両論があったことを明記したほどです。

そこで研究チームは、2022年にやり方を変えて再挑戦しました。

  • 新しく調べた14匹すべてが、鏡があるときだけノドの茶色い印をこすった
  • 青や緑の印ではこすらなかった(寄生虫らしくない色には関心がない)
  • 自分と同じ印をつけた別の魚を見せても、こすらなかった

「鏡に映っているのは自分で、自分のノドに寄生虫がいる」と理解している、と研究チームは解釈しています。

鏡でノドの印に気づくと、砂にこすりつけて落とそうとした
鏡でノドの印に気づくと、砂にこすりつけて落とそうとした

03自分の“顔”を覚えていた

2023年、チームはさらに踏みこみます(『PNAS』)。鏡テストに合格した魚に、写真を見せたのです。

  • 知らない魚の写真 → 攻撃する
  • 自分の写真 → 攻撃しない
  • 自分の顔+知らない魚の体の合成写真 → 攻撃しない
  • 知らない魚の顔+自分の体の合成写真 → 攻撃する

決め手は顔でした。さらに、ノドに印をつけた自分の写真を見せると、印のない魚がノドをこすったのです。人間と同じように、頭の中に「自分の顔」のイメージを持っている可能性が見えてきました。

04まとめ

小さな魚が鏡を見て自分の汚れに気づき、写真で自分の顔まで見分ける――。「自分を知る力は、大きな脳を持つ動物だけのもの」という常識が、大阪の研究室から揺らぎ始めています。

魚の世界にも、思っていたよりずっと豊かな「心のようなもの」があるのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerRecognizing yourself in a mirror was once thought to be possible only for a few clever animals, such as… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Recognizing yourself in a mirror was once thought to be possible only for a few clever animals, such as chimpanzees, dolphins and elephants. However, a research team in Osaka showed in 2019 that the cleaner wrasse, a fish about 6 centimeters long, may also have this ability. At first, the fish attacked their reflection as if it were a rival.

Then the researchers put a brown mark on each fish's throat, a place the fish cannot see directly. After seeing the mark in the mirror, the fish scraped their throats on the sand. They did not do this when the mark was transparent or when there was no mirror. Brown marks look like parasites, so the fish probably tried to remove a "parasite" from their own body.

127 words ・ CEFR B1

和訳を見る

鏡に映った自分がわかるのは、かつてチンパンジー、イルカ、ゾウのような一部の賢い動物だけだと考えられていました。しかし大阪の研究チームは2019年、体長6センチほどの魚ホンソメワケベラにもこの能力があるかもしれないことを示しました。最初、魚は鏡の姿をライバルであるかのように攻撃しました。

次に研究者たちは、魚が直接見ることのできない場所であるノドに茶色い印をつけました。鏡で印を見たあと、魚はノドを砂にこすりつけました。印が透明なときや鏡がないときには、こうした行動はしませんでした。茶色い印は寄生虫のように見えるので、魚はおそらく自分の体についた「寄生虫」を取ろうとしたのでしょう。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2019 study suggest?

Q2. When did the fish scrape their throats?

Q3. Why did the researchers most likely choose a brown mark?

重要単語

  • mirrorA2
    名詞鏡The fish looked at itself in the mirror. look at oneself in the mirror「鏡で自分を見る」。動詞で「反映する」の意味もあり、入試では reflect と並んで頻出。
  • self-recognitionC1
    名詞自己認識Mirror self-recognition was thought to be rare in animals. self-(自己)+recognition(認識)。recognize の名詞形。self-awareness(自己意識)とセットで覚える。
  • scrapeB2
    動詞こすり落とすThe fish scraped its throat on the sand. scrape A off B「BからAをこすり落とす」。skyscraper(摩天楼)は「空をこするもの」。
  • parasiteB2
    名詞寄生虫Cleaner fish eat parasites from other fish. ギリシャ語 para(そばで)+sitos(食べ物)=「人の食卓で食べる者」。映画『パラサイト』で有名。
  • reflectionB1
    名詞(鏡などに映った)姿、反射At first, the fish attacked its reflection. reflect(映す・反省する)の名詞形。「熟考」の意味もあり、on reflection「よく考えると」も入試に出る。
  • controversialB2
    形容詞論争を呼ぶThe claim that fish recognize themselves was controversial. controversy(論争)の形容詞形。アクセントは con-tro-VER-sial。
  • replicationC1
    名詞(研究の)再現、追試Independent replication is needed to confirm the results. replicate(再現する)の名詞形。科学記事で「再現性」が話題になるときの必須語。

動画でもっと知る

4コマでわかる

鏡を見て「自分のノドの汚れ」を落とす魚がいた。ホンソメワケベラと鏡像認知の大発見の4コマ漫画
大阪の研究チームが、小さな魚ホンソメワケベラの「鏡テスト」に成功。ノドに茶色の印をつけると、鏡を見た魚が砂にこすりつけて落とそうとした。写真でも自分の“顔”を見分けていたらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Kohda et al. (2019) If a fish can pass the mark test, what are the implications for consciousness and self-awareness testing in animals?, PLOS Biologydoi.org
  2. Kohda et al. (2022) Further evidence for the capacity of mirror self-recognition in cleaner fish and the significance of ecologically relevant marks, PLOS Biologydoi.org
  3. Kohda et al. (2023) Cleaner fish recognize self in a mirror via self-face recognition like humans, PNASdoi.org