【東大の入試に出た】地衣類は「2者の共生」じゃなかった。140年以上数えられなかった第3の住人

読む前に予想してみよう!
地衣類は、菌類と藻類(または光合成をする細菌)の2者だけでできていると、今では完全に確定している
2016年、多くの地衣類に第3の菌類である酵母がいることが報告され、より複雑な「生態系」と見る考えも出ている。
- 対象
- 世界各地の地衣類
- 規模
- 多数の種・標本
- 研究の種類
- 遺伝子解析・顕微鏡観察
- 確かさ
- ★★★☆☆
地衣類は「菌類と藻類の2者の共生」と140年以上教えられてきた。ところが2016年、多くの地衣類の表皮に、別の菌類「酵母」がすんでいることがわかった。
ひとことで言うと木や岩にはりつく「地衣類」は、2人組じゃなく3人組だったかもしれない!
公園の木の幹や、古い石垣の上に、白っぽい・黄緑色の「シミ」のようなものがはりついているのを見たことはありませんか? それが地衣類(ちいるい)です。コケと間違えられがちですが、まったく別の生き物です。
地衣類は、生物の教科書で「共生」の代表例として登場します。菌類が家(体)をつくり、藻類が光合成で栄養をつくる。2者が助け合って生きる、見事なパートナーシップ――。
ところが2016年、この「2人組」の常識が揺らぐ発見がありました。そしてこの地衣類の共生は、2026年度の東京大学(前期)の英語リスニングで題材になりました(代々木ゼミナールの解答速報・概評で確認)。
01140年以上続いた「2者の共生」説
地衣類が菌類と藻類の組み合わせだという考えは、19世紀後半、スイスの植物学者シュヴェンデナーが唱えたものです。当時は「別々の生き物が合体してひとつの体をつくる」という考えが受け入れられず、大論争になったといいます。
しかしその後、この「1種類の菌類+1種類の光合成をする相手」という見方は定説になり、教科書にも載る常識になりました。
02黄色い地衣類と茶色い地衣類の謎
さらに調べると、この酵母は地衣類の表皮(皮層)に埋め込まれるようにすんでいました。そして、黄色い地衣類のほうが酵母の量が多いなど、酵母の量が見た目や性質の違いと対応していたのです。
この酵母は、6つの大陸の、さまざまな地衣類から見つかりました。140年以上、定説では数えられてこなかった「第3の住人」は、実は世界中にいたのです。

03地衣類は「小さな生態系」
この発見をきっかけに、地衣類の見方そのものが変わりつつあります。
2020年、地衣類研究の専門家たちは、地衣類を「菌類と藻類の2者」ではなく、菌類・藻類・酵母・細菌などが一緒に暮らす「自己完結した小さな生態系」として定義し直すことを提案しました(New Phytologist, 2020)。
ひとつの生き物だと思っていたものが、実はたくさんの生き物の共同住宅だった。私たち人間の体にも腸内細菌などの無数の微生物がすんでいることを思うと、地衣類の話は、生き物とは何かを考えるヒントにもなります。
04まとめ
教科書に載っている「常識」でも、新しい道具で見直すと、まだ書き換わる余地がある。地衣類の第3の住人は、そのことを教えてくれました。
今度、木の幹に地衣類を見つけたら、思い出してください。そこには、少なくとも3種類の生き物が、静かに力を合わせて暮らしているのです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerLichens are often used in biology textbooks as a classic example of symbiosis.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Lichens grow on tree trunks and old stone walls. For more than 140 years, people believed that a lichen was two living things working together, a fungus and an alga. The fungus makes the body, and the alga makes food from sunlight.
But in 2016, scientists found a third partner, a kind of yeast, in the outer layer of many lichens. They found it on six continents! Even textbook ideas can change.
72 words ・ CEFR A2
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地衣類は、木の幹や古い石垣の上に生えています。140年以上の間、人々は、地衣類は菌類と藻類という2つの生き物が協力しているものだと信じていました。菌類が体を作り、藻類が日光から栄養を作ります。
しかし2016年、科学者たちは多くの地衣類の外側の層に、第3のパートナーである一種の酵母を見つけました。それは6つの大陸で見つかりました!教科書の考えでさえ変わることがあるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
地衣類は2者の共生と考えられてきたが、2016年に第3のパートナーが見つかった、という話なので B。
Q2. What did scientists find in 2016?
scientists found a third partner, a kind of yeast とあるので C。
Q3. In this passage, a "partner" is ...
直前で two living things working together と説明されており、協力し合う相手のことなので A。
Lichens are often used in biology textbooks as a classic example of symbiosis. For more than 140 years, scientists believed that each lichen was made of one fungus and one partner that performs photosynthesis, such as an alga.
However, in 2016, Spribille and his team at the University of Montana studied two North American lichens that looked different, although their main fungus and alga were almost the same. By examining the genes active inside the lichens, they found genes from a completely different fungus, a yeast. This yeast lived in the outer layer of the lichens, and the yellow lichen had more of it. The yeast was also found in lichens on six continents.
114 words ・ CEFR B1
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地衣類は、生物の教科書で共生の典型例としてよく使われます。140年以上の間、科学者たちは、それぞれの地衣類は1種類の菌類と、藻類のような光合成をする1種類のパートナーからできていると信じていました。
しかし2016年、モンタナ大学のスプリビルらのチームは、見た目は違うのに、中心となる菌類と藻類がほぼ同じである北米の2種類の地衣類を調べました。地衣類の中で働いている遺伝子を調べることで、彼らはまったく別の菌類、つまり酵母の遺伝子を発見しました。この酵母は地衣類の外側の層にすんでおり、黄色い地衣類のほうがその量が多くありました。この酵母は6つの大陸の地衣類でも見つかりました。
4択リーディングクイズ
Q1. Why were the two lichens a mystery?
looked different, although their main fungus and alga were almost the same とあるので D。although の前後の食い違いが「謎」の中身。
Q2. Where did the yeast live?
This yeast lived in the outer layer of the lichens とあるので A。
Q3. What does the passage suggest about textbook knowledge?
140年以上の定説が、遺伝子の解析という新しい方法で見直されたので C。B の「いつも間違い」は言い過ぎ。
Two lichens in North American forests had nearly identical fungal and algal partners but different colors. In 2016, Spribille and colleagues looked at which genes were active in each one. Besides the expected partners, they detected the genes of an unrelated fungus, a yeast from a distant branch of the fungal family tree, embedded in the lichens' outer layer. The amount of yeast matched the differences between them. What the yeast does is harder to pin down.
So far the evidence is only a correlation between the amount of yeast and the lichen's traits, and no one has yet shown that the yeast causes them. The discovery did challenge a very old model. In the late 19th century, the Swiss botanist Schwendener proposed that a lichen is a fungus living together with a photosynthetic partner.
The idea provoked fierce debate at first, because many scientists could not accept that separate organisms might combine to form a single body. Eventually it became textbook orthodoxy and one of the best-known examples of symbiosis. The yeast has also turned up in lichens on six continents, and in 2020 lichen specialists proposed redefining lichens as self-contained ecosystems of fungi, algae, yeasts and bacteria.
199 words ・ CEFR B2
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北米の森にある2種類の地衣類は、菌類と藻類のパートナーがほぼ同じなのに、色が違っていました。2016年、スプリビルらは、それぞれの地衣類でどの遺伝子が働いているかを調べました。予想どおりのパートナーのほかに、彼らは地衣類の外側の層に埋め込まれた、無関係な菌類、つまり菌類の系統樹の遠い枝に属する酵母の遺伝子を検出しました。酵母の量は、2種類の地衣類の違いと対応していました。酵母が実際に何をしているのかを突き止めるのは、もっと難しいことです。
今のところ証拠は、酵母の量と地衣類の特徴との相関だけであり、酵母がその特徴を生み出していることを証明した人はまだいません。それでも、この発見はとても古いモデルに異議を唱えるものでした。19世紀後半、スイスの植物学者シュヴェンデナーは、地衣類は菌類が光合成をするパートナーと共に生きているものだと提唱しました。当初、この考えは激しい論争を引き起こしました。
別々の生物が合わさってひとつの体を形づくるかもしれないということを、多くの科学者が受け入れられなかったからです。最終的にそれは教科書の定説となり、共生の最もよく知られた例のひとつになりました。この酵母は6つの大陸の地衣類でも見つかっており、2020年には地衣類の専門家たちが、地衣類を菌類・藻類・酵母・細菌から成る自己完結した生態系として定義し直すことを提案しました。
4択リーディングクイズ
Q1. Why did Schwendener's idea initially provoke debate?
because many scientists could not accept that separate organisms might combine to form a single body とあるので D。
Q2. In the passage, "textbook orthodoxy" most likely means ...
激しい論争の後に Eventually it became textbook orthodoxy とあり、教科書に載るほど広く受け入れられた「定説」を指すので B。
Q3. Which statement about the yeast is supported by the passage?
the evidence is only a correlation ... and no one has yet shown that the yeast causes them とあるので C。6つの大陸で見つかったので D は誤り。
重要単語
- symbiosisC1名詞共生Lichens are a famous example of symbiosis.
sym(共に)+bio(生きる)。形容詞は symbiotic。parasitism(寄生)との対比が頻出。 - fungusB2名詞菌類(複数形 fungi)A fungus cannot make its own food from sunlight.
複数形 fungi は「ファンガイ/ファンジャイ」。リスニングで単数・複数の聞き分けが狙われる。 - photosynthesisB2名詞光合成Algae make food through photosynthesis.
photo(光)+synthesis(合成)。形容詞は photosynthetic。 - yeastB2名詞酵母Yeast is also used to make bread.
発音は /jiːst/(イースト)。パンやビールづくりの話題でも出る。 - paradigmC1名詞理論の枠組み、ものの見方The discovery challenged an old paradigm.
発音は /ˈpærədaɪm/(パラダイム、g は読まない)。paradigm shift は科学系長文の定番。 - mutualismC1名詞相利共生Mutualism benefits both partners.
mutual(相互の)+-ism。mutual understanding「相互理解」も覚えておきたい。 - challengeB2動詞(定説などに)異議を唱えるThe new data challenged the old theory.
日本語の「チャレンジする(挑戦する)」と違い、他動詞で「~に異議を唱える、疑問を投げかける」の意味が長文で頻出。
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- 2026年度 東京大学(前期)英語 概評(リスニング3(C)「地衣類に見る生物の共生」)(代々木ゼミナール 解答速報)sokuho.yozemi.ac.jp
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木の幹や岩にはりつく地衣類は「菌類と藻類の2者の共生」と140年以上教えられてきた。ところが2016年、多くの地衣類の表皮に第3の住人「酵母」がいたことがわかったらしい。東大入試のリスニングにも出たテーマ。
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※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。










