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ミツバチは「ゼロ」がわかる? 脳の小さな虫が「何もない」を数の一番下に置いた

ミツバチは「ゼロ」がわかる? 脳の小さな虫が「何もない」を数の一番下に置いた

読む前に予想してみよう!

ミツバチは「何もない」状態を、1より小さい数のように扱えることが実験で示された

研究カード(どんな研究?)
対象
自由飛行するミツバチの個体
規模
小規模(個体ごとに多数の試行)
研究の種類
訓練と選択テストの行動実験
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

「少ないほうを選ぶ」と学んだミツバチは、何も描かれていない図を「1より少ない」と判断した。ゼロを数の並びの一番下に置けたことを示す実験だ。

ひとことで言うとミツバチは「なにもない」が「1より少ない」とわかるらしい!

もくじ
  1. 「少ないほうを選んで」を覚えさせる
  2. 空っぽのカードを「1より少ない」と判断した
  3. 足し算・引き算までできた
  4. まとめ

「ゼロ」は、人類の発明の中でもかなり新しいほうです。何もないことを“数”として扱うのは、じつはとても抽象的な考え方。子どもがゼロを数として理解するのも、ほかの数より遅いと言われます。

ところが2018年、ミツバチがその「ゼロ」の感覚をもっているらしい、という研究が『Science』に載りました。脳の神経細胞は100万個にも満たない小さな虫が、です。

01「少ないほうを選んで」を覚えさせる

ハチが「少ないほう」をしっかり覚えたところで、ある日、初めて見るカードを混ぜます。それは何も描かれていない、真っ白なカードです。

02空っぽのカードを「1より少ない」と判断した

もしハチが「1、2、3……」のように、目に見える“もの”しか数えられないなら、空っぽのカードは「数ではない」ので、どう扱っていいかわからないはず。

ところがハチは、図形1個のカードと空っぽのカードを比べると、空っぽのほうを「少ない」として選んだのです。つまり、「何もない」を数の並びのいちばん下、1よりさらに下に置いていたことになります。

研究チームは、これを「ゼロを数の並びの中に位置づける力」とし、アフリカの灰色オウムやサル、そして就学前の子どもに近い理解だと述べています。

ミツバチは「何もない」を1より左側(少ない側)に置いた
ミツバチは「何もない」を1より左側(少ない側)に置いた

03足し算・引き算までできた

同じチームは2019年、さらに一歩進んだ実験をしました(『Science Advances』)。青色は「1を足す」、黄色は「1を引く」という“記号”の意味をハチに学ばせたのです。

すると、ハチは初めて見る問題でも、青なら1つ多いほう、黄色なら1つ少ないほうを選べるようになりました。記号を使った足し算・引き算の初歩です。

ミツバチは、花の数や場所を覚えて効率よく蜜を集める必要があります。「何もない(=蜜がない)」を判断できるのは、生きていくうえでも役に立つのかもしれません。

04まとめ

ミツバチは、「何もない」ことを、ただの“無”ではなく1より小さい量として扱えるらしい――。ゼロの理解は人間の特権ではなかったのかもしれません。

小さな脳でも、工夫しだいで驚くほど抽象的なことができる。次に花にとまるミツバチを見かけたら、「この子、ゼロがわかるんだよな」と、ちょっと尊敬のまなざしを向けてみてください。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHumans took a long time to develop the idea of zero. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Humans took a long time to develop the idea of zero. Treating "nothing" as a number is very abstract. So a 2018 study caught many people by surprise. It suggests that honeybees, whose brains contain fewer than a million nerve cells, may understand it.

Researchers in Australia trained free-flying bees to choose cards showing fewer black shapes. The shapes changed in size, form and position, so the bees had to focus on number.

Then the bees saw an empty card for the first time. When it was paired with a card showing one shape, they chose the empty card as the smaller amount. That means the bees put zero below one. The next year, the same team taught bees to add and subtract one using colors.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

人類はゼロという考えを発展させるのに長い時間がかかりました。「何もない」を数として扱うのは、とても抽象的なことです。そのため、2018年のある研究は多くの人を驚かせました。神経細胞が100万個にも満たない脳をもつミツバチが、ゼロを理解しているかもしれないというのです。

オーストラリアの研究者たちは、自由に飛び回るハチに、黒い図形が少ないほうのカードを選ぶよう訓練しました。図形の大きさ・形・配置は変えられたので、ハチは数に注目しなければなりませんでした。

次に、ハチは初めて空っぽのカードを見ました。それが図形1個のカードと並べられると、ハチは空っぽのカードを少ないほうとして選びました。つまり、ハチはゼロを1の下に置いたのです。翌年、同じチームは色を使って、ハチに1を足したり引いたりすることを教えました。

4択リーディングクイズ

Q1. Why did the researchers change the size, form and position of the shapes?

Q2. What did the bees do when the empty card was paired with a one-shape card?

Q3. What does "the bees put zero below one" mean?

重要単語

  • zeroA2
    名詞ゼロThe concept of zero took humans a long time to develop. アラビア語 sifr(空)が語源で、cipher(暗号)も同じ語源。
  • numerosityC1
    名詞数量(いくつあるか)Bees can compare the numerosity of shapes. numerous(多数の)と同語源。認知科学の専門語。
  • empty setC1
    名詞(句)空集合An empty card represents an empty set. 数学用語。set は「集合」。empty は「空の」。
  • rewardB1
    名詞・動詞ごほうび/報酬を与えるBees received a sugar reward for correct choices. reward A with B「AにBで報いる」。award(賞)と混同しない。
  • extrapolateC1
    動詞(学んだことを)未知の範囲に当てはめるThe bees extrapolated the rule to zero. extra-(外へ)。範囲の外へ推し広げるイメージ。interpolate(内挿する)と対。
  • abstractB2
    形容詞抽象的なZero is a very abstract idea. 反対は concrete(具体的な)。名詞では「論文の要旨」の意味もある。

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4コマでわかる

ミツバチは「ゼロ」がわかる? 脳の小さな虫が「何もない」を数の一番下に置いたの4コマ漫画
図形が1〜6個描かれたカードで「少ないほうを選べばごほうび」と覚えたミツバチ。初めて見る「何も描かれていないカード」を出すと、1個のカードより“少ない”ほうとして選んだ。ゼロを数の一番下に置ける虫がいたなんて。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Howard et al. (2018) Numerical ordering of zero in honey bees, Sciencedoi.org
  2. Howard et al. (2019) Numerical cognition in honeybees enables addition and subtraction, Science Advancesdoi.org
  3. Pepperberg & Gordon (2005) Number comprehension by a grey parrot (Psittacus erithacus), including a zero-like concept, Journal of Comparative Psychologydoi.org