ウソ?ホント?検証ビミョー

「雨が降る前は関節が痛む」は気のせい? 1100万回の受診データとスマホ調査で答えが割れた

「雨が降る前は関節が痛む」は気のせい? 1100万回の受診データとスマホ調査で答えが割れた

読む前に予想してみよう!

雨の日と関節痛の関係は、大規模な研究で強く証明されている

研究カード(どんな研究?)
対象
関節や腰の痛みのある人など
規模
約155万人(受診1167万件)+2,658人ほか
研究の種類
大規模観察研究・系統的レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

高齢者の受診1100万件では雨と関節痛に関係なし。一方スマホで毎日痛みを記録した2,658人では、湿度・気圧・風と痛みに小さな関係が見えた。

ひとことで言うと雨の日に痛む人はいるかも。でも思いこみの力も大きい!

もくじ
  1. 1100万回の受診データでは「関係なし」
  2. スマホで毎日記録したら「小さな関係あり」
  3. 「なぜ信じてしまうのか」を確かめた実験
  4. 結局どうなの?
  5. まとめ

「ひざが痛むから、明日は雨だね」

おじいちゃんやおばあちゃんが、天気予報よりも正確に雨を当てる――そんな話は世界中にあります。古傷が痛むと天気が崩れる、という言い伝えも有名です。

これは本当なのでしょうか。それとも思いこみなのでしょうか。調べてみると、研究者の間でも答えが割れている、なかなか手ごわいテーマでした。

011100万回の受診データでは「関係なし」

ただし、研究チーム自身も限界を認めています。調べたのは「病院に行ったかどうか」で、痛みの強さそのものではありません。病気の重さの詳しいデータはなく、市販薬で済ませた痛みも記録に残らないからです。

02スマホで毎日記録したら「小さな関係あり」

そこで、痛みそのものを毎日記録した研究もあります。

2019年、英国マンチェスター大学のディクソンらは、「曇りときどき痛み(Cloudy with a Chance of Pain)」というユーモラスな名前の市民参加型研究の結果を発表しました。慢性の痛みがある2,658人がスマホアプリで毎日痛みを記録し、スマホの位置情報から、その日の天気と組み合わせて分析したのです。

結果は、湿度、気圧、風の強さと痛みの間に、統計的に意味のある、でも控えめな関係がある、というものでした。気分や体を動かした量を考えに入れても、この関係は残りました。

スマホで毎日記録する「市民科学」で、昔からの言い伝えにデータで迫った
スマホで毎日記録する「市民科学」で、昔からの言い伝えにデータで迫った

03「なぜ信じてしまうのか」を確かめた実験

一方、なぜ多くの人が「天気で痛む」と強く信じるのかを調べた研究もあります。

1996年、カナダの医師レーデルマイヤーと、心理学者トヴェルスキー(行動経済学の生みの親の一人)は、関節炎の患者18人を1年以上追跡し、本人が「関係ある」と思っている天気と痛みを比べました。結果は、どの人でも統計的に意味のある関係は見られず。

さらに大学生97人に、まったく無関係なランダムな数字の並びを見せたところ、多くの学生がそこに「関係がある」と感じてしまいました。人は、関係のないところにもパターンを見つけてしまうのです。

雨の日に痛かった記憶は「やっぱり!」と強く残り、雨でも痛くなかった日や、晴れていても痛かった日は忘れられやすい。こうして思いこみが強まっていきます。

04結局どうなの?

関節リウマチの研究をまとめた2011年の系統的レビューでは、集団全体で見ると天気と痛みの関係はほぼゼロ。ただし、一部の人(4分の1未満)では天気の影響を受けているらしい、という結論でした。

つまり、「誰でも雨の前に痛む」とは言えないけれど、「天気に敏感な人がいる」可能性は否定できない、というのが今のところの答えです。

05まとめ

  • 1100万回の受診データでは、雨と関節痛の受診に関係なし
  • 毎日の痛みの記録では、湿度・気圧・風と痛みに小さな関係あり
  • 人は無関係なものにも「関係」を見つけてしまうクセがある

判定は「ビミョー」。「雨の前は誰でも痛む」は言い過ぎ。でも、天気に敏感な人がいる可能性は、まだ科学の宿題として残っています。

この研究を英語で読もう原田英語の English Corner"My knees always hurt before it rains." You may have heard someone say this. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

"My knees always hurt before it rains." You may have heard someone say this. In 2017, Harvard researchers compared rainfall data with about 11.67 million doctor visits by older Americans. They found no meaningful difference in visits for joint or back pain between rainy days and dry days.

But the study only counted visits. It did not measure how much pain people felt. In 2019, a British study asked 2,658 people with long-term pain to record their pain every day on a smartphone app.

This time, the researchers found links between pain and humidity, air pressure and wind. The links were small, but they were real. So the two studies gave different answers, partly because they measured pain in different ways.

121 words ・ CEFR B1

和訳を見る

「雨が降る前は、いつもひざが痛むんだ」。だれかがこう言うのを聞いたことがあるかもしれません。2017年、ハーバード大学の研究者たちは、雨のデータと、米国の高齢者による約1167万回の受診を比較しました。その結果、関節や腰の痛みによる受診について、雨の日と雨でない日の間に意味のある差は見られませんでした。

しかし、この研究は受診の回数を数えただけでした。人々が感じた痛みの強さは測っていなかったのです。2019年、英国の研究では、長く続く痛みのある2,658人に、スマホのアプリで毎日痛みを記録してもらいました。

今度は、痛みと湿度・気圧・風の間に関連が見つかりました。その関連は小さいものでしたが、確かにありました。つまり、2つの研究の答えが違ったのは、痛みの測り方が違っていたことも一因なのです。

4択リーディングクイズ

Q1. What is the main point of the passage?

Q2. What was a weakness of the 2017 Harvard study?

Q3. Why might counting doctor visits miss some pain on rainy days?

重要単語

  • jointB1
    名詞関節My knee joint hurts when I walk. 形容詞では「共同の」(joint research=共同研究)。品詞で意味が変わる多義語。
  • humidityB2
    名詞湿度High humidity makes the air feel heavy. 形容詞 humid(蒸し暑い)。It's hot and humid. は夏の定番表現。
  • atmospheric pressureC1
    名詞(句)気圧Atmospheric pressure drops before a storm. 日常的には air pressure、天気予報では barometric pressure とも言う。
  • beliefB1
    名詞信念、思いこみThis belief is very common among older people. 動詞 believe。複数形は beliefs(believes は動詞の三単現)。
  • patternB1
    名詞規則性、型People tend to see patterns in random events. ランダムな中にパターンを見てしまう傾向は「錯誤相関」として心理学で頻出。
  • proxyC1
    名詞代わりの指標、代理Doctor visits are only a proxy for pain. 直接測れないものの代わりに測る指標。by proxy「代理で」。

4コマでわかる

「雨が降る前は関節が痛む」は気のせい? 1100万回の受診データとスマホ調査で答えが割れたの4コマ漫画
「雨の前は関節が痛む」説。アメリカの高齢者の受診1100万件を調べたら、雨の日と関節痛の受診に関係はなかった。でもスマホで毎日痛みを記録した2,658人の調査では、湿度・気圧・風と痛みに"小さな関係"があったらしい。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Jena et al. (2017) Association between rainfall and diagnoses of joint or back pain: retrospective claims analysis, BMJdoi.org
  2. Dixon et al. (2019) How the weather affects the pain of citizen scientists using a smartphone app, npj Digital Medicinedoi.org
  3. Smedslund & Hagen (2011) Does rain really cause pain? A systematic review of the associations between weather factors and severity of pain in people with rheumatoid arthritis, European Journal of Paindoi.org
  4. Redelmeier & Tversky (1996) On the belief that arthritis pain is related to the weather, PNASdoi.org