「低気圧で頭が痛くなる」は気のせい? 34万件の頭痛記録とマウスの耳が教えてくれたこと

読む前に予想してみよう!
天気が崩れると頭が痛くなるのは、気の持ちようで医学的な研究はない
気圧の低下と片頭痛の関連を調べた研究は多数ある。ただし個人差が大きい。
- 対象
- 片頭痛の患者・頭痛アプリ利用者/マウス
- 規模
- 28人〜約4,400人/動物実験
- 研究の種類
- 観察研究+動物実験+レビュー
- 確かさ
- ★★★☆☆
気圧の低下と頭痛の増加に関連があるという研究は複数ある。内耳とつながる脳の部分が、マウスで気圧の低下に反応した。ただ結果はばらつき、個人差も大きい。
ひとことで言うと天気で頭が痛くなる人は本当にいるみたい。でも、みんなじゃないよ。
「明日は雨だな。頭が痛いから」
天気予報より先に、自分の頭痛で雨を当ててしまう人がいます。最近は「気象病」「天気痛」という言葉もすっかり広まりました。
でも「気圧で頭痛」なんて、本当にあるのでしょうか。周りに理解されず「気のせいでしょ」と言われて、つらい思いをしている人もいるかもしれません。研究を見てみると、答えは「ある人にはあるらしい」です。
01日本の患者さんの日記が示したこと
まずは、片頭痛の患者さんを1年間追った日本の研究です。
別の日本の研究では、片頭痛の患者さん34人の記録から、標準的な気圧より6〜10ヘクトパスカルほど下がったあたりで片頭痛が起こりやすかったと報告されています。台風ほどの大きな変化でなくても、わずかな低下が引き金になる人がいるようです。
02スマホアプリの「約34万件」の頭痛記録
もっと大規模なデータもあります。
日本の研究チームは、頭痛を記録するスマホアプリの利用者約4,400人分、約34万件の頭痛記録と気象データを分析しました。その結果、気圧が低いとき、気圧が下がっているとき、湿度が高いとき、雨のときに頭痛の記録が増えていました。
03気圧を感じているのは「耳の奥」?
でも、なぜ気圧で頭が痛くなるのでしょう。注目されているのが内耳です。
内耳は、音を聞くだけでなく、体のバランスを感じるセンサーでもあります。愛知医科大学などのチームは、マウスを入れた部屋の気圧を40ヘクトパスカル下げる実験で、内耳からの情報を受け取る脳の部分(前庭神経核)の神経が活発になることを確かめました。

内耳が気圧の変化を感じ取り、その信号が自律神経や痛みの回路に影響する――という仮説です。乗り物酔いしやすい人が天気痛にもなりやすい、という話があるのもこの仮説と合っています。ただし、人間で仕組みがすべて確かめられたわけではありません。
04ただし「全員に」「必ず」ではない
ここで冷静になっておきたいこともあります。
海外のレビューでは、気圧と頭痛の関係を調べた研究は結果がばらばらで、関連が見られた研究もあれば見られなかった研究もあると指摘されています。天気が頭痛に影響する人がいる一方、まったく影響しない人もいる。個人差がとても大きいのです。
また、「雨の日は頭が痛い」と思っていると、雨の日の頭痛ばかりが記憶に残る、という心のクセもあります。自分の頭痛日記をつけて、本当に天気と関係があるのかを確かめてみるのはよい方法です。
05まとめ
- 気圧が下がるときに頭痛が増えるという研究は、日本を含め複数ある
- 内耳からの信号を受ける脳の部分が、気圧の低下に反応することがマウスの実験で示されている
- ただし結果は研究ごとにばらつき、影響を受けるかどうかは人によって大きく違う
「気のせい」と片付けず、でも「天気のせい」と決めつけすぎず。記録をつけて、自分の頭痛のパターンを知ることが第一歩です。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany people in Japan talk about "weather pain," such as headaches that come before rain.
音声
4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Some people get a headache before it rains. Is this real? Scientists in Japan looked at about 340,000 headache records from a phone app. There were more headaches when the air pressure was low or falling.
In an experiment with mice, a part of the inner ear seemed to sense changes in air pressure. But the weather does not affect everyone. Some people never get weather headaches.
67 words ・ CEFR A2
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雨が降る前に頭が痛くなる人がいます。これは本当なのでしょうか。日本の科学者たちは、スマホアプリの約34万件の頭痛の記録を調べました。気圧が低いときや下がっているときに、頭痛が多くなっていました。
マウスを使った実験では、耳の奥の一部が気圧の変化を感じ取っているようでした。しかし、天気は全員に影響するわけではありません。天気で頭痛にならない人もいます。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
雨の前の頭痛は本当か、という話がテーマなので B。
Q2. When were there more headaches?
more headaches when the air pressure was low or falling とあるので C。
Q3. In this passage, "sense" means to ...
sense は動詞で「感じ取る・気づく」。耳の奥が気圧の変化を感じ取る、という意味なので A。
Many people in Japan talk about "weather pain," such as headaches that come before rain. Research suggests this is not just imagination. In one study, 28 patients with migraine kept a headache diary for a year, and their records were compared with daily air pressure. Their headaches tended to increase when the pressure dropped sharply, and 18 of them showed a link to the weather.
A larger study analyzed about 340,000 records from a headache app and found more headaches during low or falling pressure, high humidity and rain. Why? An experiment with mice suggests that the inner ear, which controls balance, may sense pressure changes. However, results differ between studies, and many people are not affected at all.
119 words ・ CEFR B1
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日本では、雨の前に来る頭痛のような「天気痛」について話す人が多くいます。研究によると、これは単なる思い込みではないようです。ある研究では、片頭痛の患者28人が1年間頭痛日記をつけ、その記録が毎日の気圧と比べられました。気圧が大きく下がると頭痛が増える傾向があり、そのうち18人で天気との関連が見られました。
より大規模な研究では、頭痛アプリの約34万件の記録を分析し、気圧が低いときや下がっているとき、湿度が高いとき、雨のときに頭痛が多いことがわかりました。なぜでしょうか。マウスの実験は、体のバランスを保つ内耳が気圧の変化を感じ取っている可能性を示しています。しかし、結果は研究によって異なり、まったく影響を受けない人も多いのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the 28 patients do in the first study?
28 patients with migraine kept a headache diary for a year とあるので B。
Q2. According to the passage, which part of the body may sense pressure changes?
the inner ear, which controls balance, may sense pressure changes とあるので D。
Q3. What can we infer from the last sentence?
results differ between studies, and many people are not affected とあり、個人差が大きいと推測できるので C。
Headaches blamed on the weather are often dismissed as imaginary, yet several studies point to a real association, at least for some people. In a Japanese study, 28 patients with migraine kept a headache diary for a year near a weather station in Utsunomiya. Migraines tended to increase when barometric pressure fell by more than 5 hectopascals from the day of a headache to the next day, and 18 of the 28 participants, or 64 percent, showed a link with weather changes.
Another study found that migraine was more likely when pressure was about 6 to 10 hectopascals below standard. On a much larger scale, an analysis of roughly 340,000 records from about 4,400 users of a headache app found more headaches during low or falling pressure, high humidity and rain.
A possible mechanism comes from mice: when pressure in their chamber was lowered by 40 hectopascals, neurons in the part of the brain that receives signals from the inner ear became more active. The evidence has gaps, though. International reviews describe inconsistent results, the mouse findings have not been fully confirmed in humans, and app users are not a representative sample. People may simply remember rainy-day headaches more vividly.
200 words ・ CEFR B2
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天気のせいにされる頭痛は気のせいだと片付けられがちですが、いくつかの研究は、少なくとも一部の人にとっては本当の関連があることを示しています。日本のある研究では、片頭痛の患者28人が宇都宮の気象台の近くで1年間頭痛日記をつけました。頭痛の起きた日から翌日にかけて気圧が5ヘクトパスカルを超えて下がると片頭痛が増える傾向があり、28人中18人、つまり64%で天候の変化との関連が見られました。
別の研究では、気圧が標準より約6〜10ヘクトパスカル低いときに片頭痛が起きやすいことがわかりました。はるかに大規模なものでは、頭痛アプリの利用者約4,400人による約34万件の記録の分析で、気圧が低いとき・下がっているとき、湿度が高いとき、雨のときに頭痛が多いことがわかりました。考えられる仕組みはマウスの研究から示されています。
実験用の部屋の気圧を40ヘクトパスカル下げると、内耳からの信号を受け取る脳の部分の神経細胞が活発になったのです。ただし、証拠には穴があります。海外のレビューは結果が一貫していないと述べており、マウスの結果は人間ではまだ十分に確かめられておらず、アプリの利用者は代表的な標本ではありません。また、人は雨の日の頭痛をより鮮明に覚えているだけかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the author's overall conclusion?
a real association, at least for some people と述べつつ The evidence has gaps, though と限界を挙げているので C。
Q2. What percentage of participants in the Utsunomiya study showed a link with weather?
18 of the 28 participants, or 64 percent とあるので B。
Q3. Why does the author say app users are "not a representative sample"?
representative sample は「母集団を代表する標本」。アプリを使う人は一般の人々と性質が違う可能性がある、という限界の指摘なので A。
重要単語
- barometric pressureC1名詞(句)気圧Barometric pressure drops before a storm.
baro-(重さ・圧力)+meter で barometer「気圧計」。日常では air pressure でもよい。 - migraineB2名詞片頭痛She gets a migraine when the weather changes.
ギリシャ語 hemikrania(頭の半分)が語源。発音は /ˈmaɪɡreɪn/。 - triggerB2名詞・動詞引き金、誘因/引き起こすLack of sleep is a common migraine trigger.
銃の「引き金」から。trigger an allergy「アレルギーを引き起こす」など動詞用法も頻出。 - inner earB2名詞(句)内耳The inner ear helps us keep our balance.
outer ear(外耳)、middle ear(中耳)とセットで覚える。 - humidityB2名詞湿度High humidity makes me feel tired.
形容詞は humid(蒸し暑い)。hot and humid は天気の定番表現。 - associationB2名詞関連、結びつきThere is an association between low pressure and headaches.
研究では「関連はあるが因果とは限らない」というニュアンス。be associated with ~ も頻出。
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「雨の前に頭が痛くなる」は気のせいじゃないかも。日本の頭痛記録アプリの約34万件のデータを分析したら、気圧が下がるときに頭痛が増えていたらしい。マウスでは"耳の奥"が気圧センサーになっている可能性も。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Katsuki et al. (2023) Investigating the effects of weather on headache occurrence using a smartphone application and artificial intelligence, Headachedoi.org
- Kimoto et al. (2011) Influence of Barometric Pressure in Patients with Migraine Headache, Internal Medicinedoi.org
- Sato et al. (2019) Lowering barometric pressure induces neuronal activation in the superior vestibular nucleus in mice, PLOS ONEdoi.org
- Maini et al. (2019) Headache and Barometric Pressure: a Narrative Review, Current Pain and Headache Reportsdoi.org
- Denney et al. (2024) Whether Weather Matters with Migraine, Current Pain and Headache Reportsdoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。












