「3秒ルール」は細菌に通用しなかった。落とした食べ物で2,560回実験した大学の結論

読む前に予想してみよう!
床に落とした食べ物は、すぐ拾えば細菌はほとんど付かない
実験では1秒未満でも細菌が移った。特に水分の多い食べ物は移りやすい。
- 対象
- 実験室の食品と床材
- 規模
- 2,560回の測定
- 研究の種類
- 実験研究
- 確かさ
- ★★★☆☆
落とした食べ物には1秒未満でも細菌が移る。移る量は時間より「食べ物の水分」と「床の種類」で大きく変わる。3秒なら安全、という線引きに根拠はない。
ひとことで言うと細菌は「3秒待って」くれない。落ちた瞬間にくっつくこともある!
ポテトチップスが床にポロリ。すかさず拾って「3秒ルール!」。
日本では「3秒」、アメリカでは「5秒」と言われることが多いこのルール。誰もが一度は使ったことがあるはずです。
でも、細菌は本当に「3秒」待ってくれるのでしょうか? この素朴な疑問に、アメリカの大学が2,560回も食べ物を落として答えを出しました。
01スイカ、パン、グミ…本気で落としまくった
研究したのは、アメリカ・ラトガース大学の食品科学者ドナルド・シャフナー教授らのチームです。
結果、細菌は1秒未満でも移っていました。たしかに長く置くほど移る量は増えましたが、「何秒までなら安全」という境目はありませんでした。
02時間より大事だったのは「水分」
この実験でいちばん効いていたのは、時間よりも食べ物の水分でした。
- スイカ:最も多く細菌を拾った
- グミ:最も少なかった
細菌は自分で歩いて移動するわけではなく、主に水分を通じて移ります。だから、みずみずしい食べ物ほど危ないのです。
意外だったのは床の種類。カーペットは、タイルやステンレスより細菌が移りにくかったのです。毛足のすき間で、食べ物と細菌の接触面が小さくなるからだと考えられています。

03床の細菌は、何週間も生き残る
そもそも床にはどれくらい細菌がいるのでしょう。
別の研究では、サルモネラ菌(食中毒の原因菌)をタイル・木・カーペットに付けておくと、乾いた状態でも数週間生き残ることが報告されています。そして、タイルや木の床に食べ物を5秒置いただけで、細菌がしっかり移っていました(カーペットからは移りにくい結果でした)。
つまり問題は「何秒落ちていたか」より、「その床にどんな細菌がいるか」なのです。
04なぜ「3秒ルール」は広まったのか
それでもこのルールが世界中で生き残っているのは、たぶんほとんどの場合、何も起きないからです。
健康な人なら、少量の細菌を食べても体の防御で問題にならないことが多い。だから「落としたものを食べても平気だった」という経験が積み重なり、ルールが「正しそう」に見えてしまいます。
それに、食べ物を捨てるのはもったいない。3秒ルールは、「もったいない」と「なんとなく大丈夫」の気持ちを正当化してくれる、便利な合言葉なのかもしれません。
05まとめ
- 細菌は1秒未満でも落ちた食べ物に移る
- 移りやすさを決めるのは、時間より食べ物の水分と床の汚れ
- 「3秒なら安全」という境目に科学的な根拠はない
どうしても食べたいなら、乾いたお菓子をきれいな床に落としたときだけにしておきましょう。スイカは、潔くあきらめて。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerFood scientists at Rutgers University dropped food on the floor again and again, on purpose.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
When food falls on the floor, some people pick it up quickly and say, "Five-second rule!" They think the food is still safe.
Scientists at a university in the US tested this idea. They dropped food on the floor 2,560 times. Bacteria moved onto the food in less than one second. Wet food, like watermelon, picked up the most bacteria. So the rule is not true. Bacteria do not wait for you.
72 words ・ CEFR A2
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食べ物が床に落ちると、すぐに拾って「5秒ルール!」と言う人がいます。
その食べ物はまだ安全だと考えているのです。アメリカのある大学の科学者たちがこの考えを調べました。彼らは床に食べ物を2,560回落としました。細菌は1秒もかからずに食べ物に移りました。スイカのような水分の多い食べ物が、最も多く細菌を拾いました。だから、このルールは正しくありません。細菌はあなたを待ってくれないのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
落とした食べ物の「5秒ルール」が本当かを調べた話なので C。
Q2. How many times did the scientists drop food?
They dropped food on the floor 2,560 times. とあるので A。
Q3. In this passage, "wet" food means food that ...
wet は「ぬれた・水分の多い」。例としてスイカ(watermelon)が挙げられているので B。
Food scientists at Rutgers University dropped food on the floor again and again, on purpose. They wanted to test the "five-second rule," the idea that food is safe if you pick it up quickly. They used four kinds of food, including watermelon and gummy candy, and four surfaces, such as tile, wood and carpet.
The food stayed on each surface for different times, from less than one second to five minutes. In total, they took 2,560 measurements. Bacteria moved onto the food in less than one second.
Longer contact meant more bacteria, but no amount of time was safe. Moisture mattered most. Watermelon picked up the most bacteria, and gummy candy picked up the least. Carpet, oddly enough, passed on fewer bacteria than tile or steel.
126 words ・ CEFR B1
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ラトガース大学の食品科学者たちは、わざと何度も何度も食べ物を床に落としました。すぐに拾えば食べ物は安全だという「5秒ルール」を確かめたかったのです。スイカやグミを含む4種類の食べ物と、タイル・木・カーペットなど4種類の表面が使われました。
食べ物は、1秒未満から5分まで、さまざまな時間それぞれの表面に置かれました。測定は合計2,560回にのぼりました。細菌は1秒もかからずに食べ物に移りました。
接触時間が長いほど細菌は増えましたが、安全と言える時間はありませんでした。いちばん重要だったのは水分です。スイカが最も多く細菌を拾い、グミが最も少なかったのです。意外なことに、カーペットはタイルやステンレスより細菌を移しにくかったのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the researchers want to find out?
「5秒ルール」、つまりすぐに拾えば食べ物は安全だという考えを確かめるための実験なので B。
Q2. Which food picked up the fewest bacteria?
gummy candy picked up the least とあるので D。水分の少ない食べ物ほど移りにくい。
Q3. What can we infer from the passage?
Moisture mattered most とあり、時間に安全な境目はない。よって乾いた食べ物の方がリスクが低いと推測でき A。
The "five-second rule" suggests that food retrieved quickly from the floor has not had time to become contaminated. A team led by food scientist Donald Schaffner at Rutgers University put this idea to a systematic test. They combined four foods, namely watermelon, plain bread, buttered bread and gummy candy, with four surfaces, namely stainless steel, tile, wood and carpet, and four contact times ranging from under one second to five minutes, plus two ways of preparing the bacteria.
Each of the 128 combinations was repeated 20 times, producing 2,560 measurements. Bacteria transferred in less than a second, and although longer contact generally increased transfer, no threshold separated safe from unsafe. Moisture proved more influential than time, since bacteria travel mainly through water; watermelon was the most contaminated, gummy candy the least. Carpet transferred surprisingly little, probably because its fibers reduce contact.
Another study showed that Salmonella can survive on dry floors for weeks. That said, the experiment used a harmless substitute bacterium applied at high concentrations, which may not reflect real floors. The real risk therefore depends on how dirty the floor is and how vulnerable the eater is.
189 words ・ CEFR B2
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「5秒ルール」は、床からすぐに拾い上げた食べ物は汚染される時間がなかった、という考えです。ラトガース大学の食品科学者ドナルド・シャフナー率いるチームは、この考えを体系的に検証しました。彼らは、スイカ・食パン・バター付き食パン・グミという4種類の食べ物と、ステンレス・タイル・木・カーペットという4種類の表面、そして1秒未満から5分までの4通りの接触時間、さらに菌の調製法2通りを組み合わせました。
128通りの組み合わせをそれぞれ20回くり返し、2,560回の測定を行いました。細菌は1秒未満で移り、接触が長いほどおおむね移る量は増えたものの、安全と危険を分ける境目はありませんでした。細菌は主に水分を通って移動するため、時間より水分の方が大きな影響を持つことがわかりました。スイカが最も汚染され、グミが最も少なかったのです。カーペットは意外なほど細菌が移りませんでしたが、これはおそらく繊維が接触を減らすためです。
別の研究では、サルモネラ菌が乾いた床で数週間生き残れることが示されました。それでも、この実験は無害な代用細菌を高濃度で付けたものであり、実際の床を反映していない可能性があります。したがって実際のリスクは、床がどれほど汚れているか、そして食べる人がどれほど弱いかによって決まるのです。
4択リーディングクイズ
Q1. What did the Rutgers study mainly show?
1秒未満で移ること、Moisture proved more influential than time が中心的な結果なので C。
Q2. How was the total of 2,560 measurements reached?
Each of the 128 combinations was repeated 20 times, producing 2,560 measurements とあるので B(128×20=2,560)。
Q3. Why does the author say the experiment "may not reflect real floors"?
used a harmless substitute bacterium applied at high concentrations が理由として直前に述べられているので A。実験条件と現実の違いという研究の限界。
重要単語
- contaminationB2名詞汚染Cross-contamination can happen in the kitchen.
動詞 contaminate(汚染する)。cross-contamination は「交差汚染(食材間で菌が移ること)」。 - transferB1動詞・名詞移る、移す/移動Bacteria can transfer to food in seconds.
trans-(向こうへ)+fer(運ぶ)。電車の「乗り換え」の意味もある。 - moistureB2名詞水分、湿り気Moisture helps bacteria move onto food.
形容詞 moist(湿った)から。moisturizer は「保湿剤」。 - surfaceB1名詞表面Clean the surface before you cook.
sur-(上)+face(面)。on the surface で「表面上は・一見したところ」。 - foodborne illnessC1名詞(句)食品が原因の病気(食中毒)Foodborne illness is often caused by bacteria.
-borne は「~で運ばれる」。airborne(空気感染の)、waterborne(水系の)も同じ仲間。 - thresholdC1名詞境目、しきい値There is no safe threshold for contact time.
もとは「敷居」。the threshold of pain「痛みの閾値」など科学系長文で頻出。
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「3秒ルール」をアメリカの大学が本気で検証。4種類の食べ物×4種類の床×4つの時間などの条件で合計2,560回落としたら、細菌は1秒未満でも移っていたらしい。一番ヤバかったのはスイカ。
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出典・参考文献(2件)タップで表示
- Miranda & Schaffner (2016) Longer Contact Times Increase Cross-Contamination of Enterobacter aerogenes from Surfaces to Food, Applied and Environmental Microbiologydoi.org
- Dawson et al. (2006) Residence time and food contact time effects on transfer of Salmonella Typhimurium from tile, wood and carpet: testing the five-second rule, Journal of Applied Microbiologydoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。













