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シュリーマンの「1言語6週間」学習法を科学で検証。使える部分と"盛った"部分

シュリーマンの「1言語6週間」学習法を科学で検証。使える部分と"盛った"部分

読む前に予想してみよう!

シュリーマンの「1言語6週間」は、当時の先生の記録で裏付けられている

研究カード(どんな研究?)
対象
中国の英語スピーチ・ディベート大会の入賞者などの学習者
規模
3人の聞き取り〜メタ分析21研究
研究の種類
自伝の検証+質的研究+メタ分析
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

シュリーマンの「音読・作文・添削・暗唱」は、今の研究から見ても筋がいい。ただ「6週間でペラペラ」は本人の自伝だけが根拠で、話を盛るクセも指摘されている。

ひとことで言うとやり方はマネする価値あり。でも「6週間」はうのみにしないで!

もくじ
  1. シュリーマン式は「4点セット」だった
  2. 「作文→添削」は、今の研究でも効く
  3. 「暗記・暗唱」も、成功者の共通点だった
  4. でも「6週間でペラペラ」は、割り引いて読もう
  5. まとめ

伝説の都市トロイアを掘り当てた考古学者、ハインリッヒ・シュリーマン。教科書や英語の長文で、彼の名前を見たことがある人も多いはずです。

彼にはもう一つの伝説があります。十数か国語を操った語学の天才。自伝には、英語とフランス語をそれぞれ半年ほどで身につけたあと、オランダ語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語は、それぞれ6週間ほどで書いて話せるようになったと書かれています。

6週間で1言語。マジか!? 今回は、その学習法を第二言語習得の研究で検証します。

01シュリーマン式は「4点セット」だった

自伝によると、彼のやり方はとてもシンプルです。

  1. とにかくたくさん声に出して読む(いちいち訳さない)
  2. 興味のあるテーマで作文を書く
  3. 先生に直してもらう
  4. 直った作文を暗記し、次のレッスンで暗唱する

さらに、英語の小説を丸ごと暗記したり、用事で出かける道でも本を手放さなかったりしたと言います。

移動中も本を手放さなかったという。いわば19世紀の「スキマ時間学習」
移動中も本を手放さなかったという。いわば19世紀の「スキマ時間学習」

02「作文→添削」は、今の研究でも効く

まず、作文を書いて直してもらう部分。これは研究の裏付けがかなりあります。

シュリーマンは添削された作文を「暗記して暗唱」していました。直された正しい形を、自分の口で何度も再現する。これは、誤りに気づき、正しい形を定着させる流れとしてよくできています。

03「暗記・暗唱」も、成功者の共通点だった

暗記は「古い勉強法」と思われがちです。でも、中国で英語のスピーチ大会やディベート大会に入賞した大学生3人に詳しく話を聞いた研究では、全員が英語の文章を大量に暗記し、まねしていたことが報告されています。

覚えた文は、話すときに使える「部品」の在庫になります。いわば、頭の中に例文のストックを作る作業です。

04でも「6週間でペラペラ」は、割り引いて読もう

ここからがツッコミどころです。

第一に、根拠が本人の自伝だけだという点。歴史家のトレイルは、シュリーマンの日記や手紙を細かく照らし合わせ、彼が自分の経歴や発掘のエピソードを脚色していたことを示してきました。語学の話だけが正確だったと考える理由は、あまりありません。

第二に、言語どうしの距離です。ドイツ語を母語とし、英語・フランス語を学んだ人にとって、オランダ語・スペイン語・イタリア語・ポルトガル語は単語や文法の共通点がとても多い言語です。日本語話者が英語を学ぶのとは、スタート地点がまったく違います。

第三に、「話せる」の基準。商社で働いていた彼にとっての「書いて話せる」は、商売の手紙ややりとりができるレベルだった可能性があります。

05まとめ

シュリーマン式の中身は、音読・作文・添削・暗唱。これは今の研究から見ても、かなり理にかなった組み合わせでした。

ただし「6週間」は、近い言語をすでにいくつも知っていた人の、本人による話。日本語話者の私たちは、方法だけを借りて、期間は気長にいきましょう。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerHeinrich Schliemann, the archaeologist who discovered Troy, wrote in his autobiography that he could write… 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Heinrich Schliemann, the archaeologist who discovered Troy, wrote in his autobiography that he could write and speak Dutch, Spanish, Italian and Portuguese after about six weeks of study each. His method had four steps. He read aloud a lot without translating, wrote essays on interesting topics, had a teacher correct them, and memorized and recited the corrected essays. Research supports several of these steps. A 2015 meta-analysis found that written corrections improve grammatical accuracy.

Another study found that three Chinese prize winners in English speech and debate contests had all memorized large amounts of text. However, the six-week claim comes only from his autobiography, and historians have shown that he tended to dramatize his life story.

116 words ・ CEFR B1

和訳を見る

トロイアを発見した考古学者ハインリッヒ・シュリーマンは、自伝の中で、オランダ語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語を、それぞれ約6週間学んだ後に書いたり話したりできるようになったと書きました。彼の方法には4つのステップがありました。訳さずにたくさん音読し、興味のあるテーマで作文を書き、先生に直してもらい、直された作文を暗記して暗唱したのです。研究はこれらのステップのいくつかを支持しています。2015年のメタ分析は、文章の添削が文法の正確さを高めることを明らかにしました。

別の研究では、英語のスピーチ大会やディベート大会で入賞した中国の学習者3人が、全員大量の文章を暗記していたことがわかりました。しかし、6週間という主張は本人の自伝だけが根拠であり、歴史家たちは、彼が自分の人生の物語を劇的に脚色する傾向があったことを示しています。

4択リーディングクイズ

Q1. According to the 2015 meta-analysis, what do written corrections improve?

Q2. What did the three Chinese prize winners have in common?

Q3. What is the author's view of the six-week claim?

重要単語

  • autobiographyB2
    名詞自伝His autobiography made his life sound like an adventure. auto(自分)+bio(人生)+graphy(書くこと)。biography は「伝記」。
  • memorizeB1
    動詞暗記するShe memorized the whole speech in a week. memory の動詞形。learn ~ by heart と言い換えられる。入試の同意表現で頻出。
  • corrective feedbackC1
    名詞(句)誤りの訂正・添削Corrective feedback helped me fix my article errors. 第二言語習得研究の重要語。written(文章での)と oral(口頭での)に分けて論じられる。
  • exaggerateB2
    動詞誇張する・話を盛るDon't exaggerate how fast you learned French. 綴りの gg に注意。名詞 exaggeration。It is no exaggeration to say that ~「~と言っても過言ではない」は頻出構文。
  • reciteB2
    動詞暗唱するThe students recited the poem in front of the class. re(再び)+cite(呼び出す)。名詞 recitation、音楽の recital(独奏会)も同語源。
  • fluentB1
    形容詞流暢なHe became fluent after years of practice. be fluent in English「英語が流暢だ」。名詞 fluency は accuracy(正確さ)と対で使われる。
  • imitateB2
    動詞まねる、模倣するThe learners imitated lines from movies. 名詞 imitation。intimate(親密な)と綴りが似ているので注意。

動画でもっと知る

トロイア遺跡を掘ったシュリーマンは「オランダ語もスペイン語も6週間で話せた」と自伝に書いた。音読・作文・添削・暗唱というその方法、実は今の研究でも筋がいい。ただし本人には"話を盛る"前科があった…。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Traill (1986) Schliemann's Mendacity: a Question of Methodology, Anatolian Studiesdoi.org
  2. Ding (2007) Text memorization and imitation: The practices of successful Chinese learners of English, Systemdoi.org
  3. Kang & Han (2015) The Efficacy of Written Corrective Feedback in Improving L2 Written Accuracy: A Meta-Analysis, The Modern Language Journaldoi.org
  4. Bitchener & Knoch (2010) Raising the linguistic accuracy level of advanced L2 writers with written corrective feedback, Journal of Second Language Writingdoi.org