語学・英語学習ビミョー

大人の外国語学習は「脳トレ」になる? 高齢者の実験は結果が割れた

大人の外国語学習は「脳トレ」になる? 高齢者の実験は結果が割れた

読む前に予想してみよう!

高齢者が外国語を学ぶと、記憶力や知能がはっきり向上することが実験で確かめられている

研究カード(どんな研究?)
対象
18〜78歳の成人・65〜75歳の高齢者
規模
67〜160人
研究の種類
ランダム化比較試験+準実験+レビュー
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

外国語学習で注意の切り替えや実行機能が少し伸びた研究がある一方、160人のランダム化実験では記憶も知能も伸びなかった。脳トレより「楽しみ」で続けるのが現実的。

ひとことで言うと外国語の勉強が脳にいいかは、まだ研究中。でも楽しく続けるのはおすすめ!

もくじ
  1. 効いた派①:1週間の集中講座で「注意の切り替え」が向上
  2. 効いた派②:語学アプリ vs 脳トレアプリ
  3. 効かなかった派:160人のランダム化実験
  4. まとめ

「定年したら英語をやり直したい」「ボケ防止に語学を始めた」

大人、特にシニア世代の外国語学習が人気です。新しい単語を覚え、文法を考え、知らない音を聞き取る。いかにも脳に良さそうですよね。

では実際に、外国語学習は「脳トレ」として効くのでしょうか。研究を並べてみると、結果は意外にもきれいに割れていました。

01効いた派①:1週間の集中講座で「注意の切り替え」が向上

エディンバラ大学のバックらは2016年、スコットランド・ゲール語の1週間の集中講座に参加した33人と、比較グループ34人(語学以外の集中講座の参加者と、普段どおり過ごした人)を比べました。その結果、

  • 講座の終わりに、語学グループでは注意を切り替える力が向上していた
  • この効果は18〜78歳のどの年齢でも見られた
  • 9か月後に再検査した17人のうち、週5時間以上ゲール語を練習し続けた人は全員、最初より成績が良かった

短期間でも、新しい言語に集中して取り組むことが、注意の働きに影響する可能性を示した研究です。

02効いた派②:語学アプリ vs 脳トレアプリ

カナダの研究では、65〜75歳の76人を、

  • 語学アプリでスペイン語を1日30分・16週間学ぶグループ
  • 同じ時間、脳トレアプリで練習するグループ
  • 何もしない(待機)グループ

にランダムに分けて比べました。すると、実行機能を測るいくつかのテストで、語学アプリのグループは脳トレアプリと同じくらいの改善を示しました。ただし、反応の速さ(処理速度)では脳トレのグループだけが大きく伸び、語学アプリは楽しさの評価が高かったことも報告されています。

語学と脳トレ、どちらが脳にいい? 研究の答えはまだ揺れている
語学と脳トレ、どちらが脳にいい? 研究の答えはまだ揺れている

03効かなかった派:160人のランダム化実験

一方で、はっきり「効果なし」と出た研究もあります。

健康な高齢者を対象にした研究をまとめた2018年のレビューも、プラスの効果を示す研究はあるものの、研究数が少なくため、はっきりした結論は出せないとしています。

04まとめ

外国語学習は、注意や実行機能に少し良い影響を与えるかもしれない。でも、記憶力や知能がはっきり上がるとまでは言えない——これが今の研究の現在地です。

だからこそ、「脳トレのため」より「やってみたいから」。新しい言葉で広がる世界そのものが、大人の語学のいちばんのごほうびです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerCan learning a foreign language keep older brains sharp? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Can learning a foreign language keep older brains sharp? In 2016, Bak and his colleagues found that people aged 18 to 78 who took a one-week intensive Gaelic course improved their ability to switch attention. In a Canadian study, 76 people aged 65 to 75 were randomly assigned to learn Spanish with an app, use a brain-training app, or do nothing.

The language group improved on some tests of executive function as much as the brain-training group. However, in a 2020 Swedish study, 160 healthy older adults studied Italian or took a relaxation course for 11 weeks. There was almost no difference in memory or intelligence.

106 words ・ CEFR B1

和訳を見る

外国語を学ぶことで、年をとった脳を元気に保てるのでしょうか。2016年、バックらは、1週間の集中的なゲール語講座を受けた18〜78歳の人々が、注意を切り替える力を高めたことを見いだしました。カナダの研究では、65〜75歳の76人が、アプリでスペイン語を学ぶ、脳トレアプリを使う、何もしない、のいずれかにランダムに割り当てられました。

語学のグループは、実行機能のいくつかのテストで、脳トレのグループと同じくらい伸びました。しかし、2020年のスウェーデンの研究では、160人の健康な高齢者が11週間、イタリア語を学ぶかリラクゼーション講座を受けました。記憶力や知能には、ほとんど差がありませんでした。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2016 Gaelic course study find?

Q2. In the Canadian study, how did the language-app group compare with the brain-training group?

Q3. What can be concluded from the passage?

重要単語

  • cognitive declineC1
    名詞(句)認知機能の低下Staying active may slow cognitive decline. cognitive(認知の)は cognition の形容詞。decline は「低下(する)、断る」の多義語。
  • executive functionC1
    名詞(句)実行機能(計画・切り替え・抑制などの頭の働き)Executive function helps you switch between tasks. executive は「実行の、管理職」。脳の「司令塔」の働きを表す心理学用語。
  • randomized controlled trialC1
    名詞(句)ランダム化比較試験A randomized controlled trial is strong evidence. 略称 RCT。参加者をくじ引きでグループに分けるため、偏りが入りにくい。医療・教育系の長文で頻出。
  • attention switchingC1
    名詞(句)注意の切り替えLanguage learning improved attention switching. switch は「切り替える」。multitasking(マルチタスク)の話題でも出る概念。
  • lifelong learningB2
    名詞(句)生涯学習Lifelong learning keeps life interesting. lifelong は「一生の」。高齢化社会をテーマにした長文で頻出。
  • control groupB2
    名詞(句)対照群(比較のためのグループ)The control group did relaxation training. 介入を受けるグループは experimental group(実験群)。この対比は実験系長文の基本。
  • negligibleC1
    形容詞無視できるほどの、ごくわずかなThe difference between the groups was negligible. neglect(無視する)+-ible。negligent(不注意な)と混同しやすいので注意。

動画でもっと知る

「外国語の勉強は最高の脳トレ」は本当? 集中講座で注意の切り替えが伸びた研究や、語学アプリが一部の実行機能テストで脳トレアプリ並みに改善した実験がある一方、65〜75歳の160人のランダム化実験ではリラクゼーション講座と比べて記憶も知能もほとんど差がなかった。結論はまだビミョー。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Bak et al. (2016) Novelty, Challenge, and Practice: The Impact of Intensive Language Learning on Attentional Functions, PLOS ONEdoi.org
  2. Berggren et al. (2020) Foreign language learning in older age does not improve memory or intelligence: Evidence from a randomized controlled study, Psychology and Agingdoi.org
  3. Meltzer et al. (2023) Improvement in executive function for older adults through smartphone apps: a randomized clinical trial comparing language learning and brain training, Aging, Neuropsychology, and Cognitiondoi.org
  4. Klimova (2018) Learning a Foreign Language: A Review on Recent Findings About Its Effect on the Enhancement of Cognitive Functions Among Healthy Older Individuals, Frontiers in Human Neurosciencedoi.org