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「1万時間やれば一流」は語学にも当てはまる? 元の研究を追試したら…

「1万時間やれば一流」は語学にも当てはまる? 元の研究を追試したら…

読む前に予想してみよう!

練習時間の多さだけで、技能の個人差のほとんどが説明できる

研究カード(どんな研究?)
対象
音楽家・スポーツ選手・学習者など
規模
88研究のメタ分析+追試
研究の種類
メタ分析+追試研究
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

「1万時間の法則」の元になった研究は追試で再現されなかった。練習量は大事だが、成績の差のうち練習で説明できるのは分野により1%未満〜26%。語学は「時間×質」がカギ。

ひとことで言うと長くやれば上手になるのは本当。でも「時間」だけじゃなく「やり方」も大事!

もくじ
  1. 元ネタは、ベルリンのバイオリン学生
  2. 追試してみたら……
  3. 語学では「時間」と「練習の質」の掛け算
  4. まとめ

「どんな分野でも、1万時間練習すれば一流になれる」

一度は聞いたことがある「1万時間の法則」。英語もそうだ、と言われると、「じゃあ1日3時間で約9年か……」と計算したくなりますよね。

でも実は、この法則の元になった研究は、のちの追試で再現されなかったのです。では、語学の「練習量」はどう考えればいいのでしょうか。

01元ネタは、ベルリンのバイオリン学生

この研究が、のちにベストセラー本で「1万時間の法則」として広まりました。ただ、エリクソン自身は「1万時間」を魔法の数字として扱うことには批判的でした。

02追試してみたら……

2019年、心理学者マクナマラとマイトラは、この有名な研究を、二重盲検化など一部を変えた同じ方法で追試しました。結果は、

  • 「練習量が腕前のレベルにきれいに対応する」という中心的な結果は再現されなかった
  • 練習の効果自体はそれなりに大きかったが、元の研究よりかなり小さかった

さらにその前、2014年には、88の研究をまとめたメタ分析も行われています。成績の個人差のうち意図的練習で説明できたのは、

  • ゲーム(チェスなど):26%
  • 音楽:21%
  • スポーツ:18%
  • 教育:4%
  • 仕事:1%未満

練習は確かに大事。でも、それだけで決まるわけではないことがわかります。

同じ時間を歩いても、道の選び方や歩き方でたどり着く場所は変わる
同じ時間を歩いても、道の選び方や歩き方でたどり着く場所は変わる

03語学では「時間」と「練習の質」の掛け算

では、語学ではどうでしょう。英語の上達に膨大な時間が必要なのは事実です。日本語を母語とする人にとって英語は遠い言語で、何千時間単位の学習が必要だと考えられています。

ただし、時間を「ただ過ごす」だけでは足りません。応用言語学者の鈴木祐一、中田達也、デカイザーは2019年、第二言語の練習を最適化するカギとして「望ましい困難」という認知心理学の枠組みを紹介しました。

  • 一度に詰め込むより、間隔をあけてくり返す
  • 同じ種類の問題ばかりより、混ぜて練習する
  • 見て覚えるより、思い出す練習をする

こうした、少し難しく感じる練習のほうが、長く身につきやすいというのです。

04まとめ

「1万時間の法則」は、元の研究が追試で再現されず、そのままの形では言いすぎでした。練習は大事、でもそれだけですべてが決まるわけではありません。

語学でも同じ。時間をかけることに加えて、弱点を狙い、思い出し、フィードバックを受ける。練習の「質」を上げれば、同じ1時間がもっと価値のある1時間になります。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerThe famous '10,000-hour rule' comes from a 1993 study by Ericsson and his colleagues. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

The famous '10,000-hour rule' comes from a 1993 study by Ericsson and his colleagues. They found that the best violin students at a music school in Berlin had practiced alone for about 10,000 hours by the age of 20.

However, when the researchers Macnamara and Maitra repeated the study in 2019, the main result was not replicated. A 2014 meta-analysis of 88 studies also showed that practice explained 26% of the differences in performance in games, 21% in music and 18% in sports, but only 4% in education. For language learners, researchers suggest 'desirable difficulties', such as spacing out reviews and practicing recall.

103 words ・ CEFR B1

和訳を見る

有名な「1万時間の法則」は、エリクソンらによる1993年の研究から来ています。彼らは、ベルリンの音楽学校の最も優秀なバイオリン専攻の学生が、20歳までに約1万時間ひとりで練習していたことを見いだしました。

しかし、2019年にマクナマラとマイトラがその研究をくり返したところ、中心的な結果は再現されませんでした。88の研究をまとめた2014年のメタ分析も、練習で説明できた成績の差は、ゲームで26%、音楽で21%、スポーツで18%でしたが、教育ではわずか4%だったことを示しました。言語学習者に対して、研究者たちは、復習の間隔をあけることや思い出す練習をすることなど、「望ましい困難」を提案しています。

4択リーディングクイズ

Q1. How much of the difference in performance did practice explain in education?

Q2. What happened when the 1993 study was repeated?

Q3. Which learner follows the advice in the passage?

重要単語

  • deliberate practiceC1
    名詞(句)意図的練習(弱点を狙ってフィードバックを受けながら行う練習)Deliberate practice is different from simple repetition. deliberate は「意図的な、慎重な」。動詞(熟考する)では発音が /dɪˈlɪbəreɪt/ に変わる。
  • expertiseC1
    名詞専門的な技能・熟達Expertise takes years to develop. expert(専門家)の名詞形。アクセントは ex-per-TISE(最後)。
  • varianceC1
    名詞ばらつき・分散Practice explained 21% of the variance in music. vary(変わる)の名詞形。「説明できる分散の割合」は研究系長文の定番表現。
  • replicateC1
    動詞追試する・再現するThe researchers failed to replicate the main result. fail to replicate「再現できない」。replica(複製品)と同語源。
  • automaticityC1
    名詞自動性(考えなくてもできる状態)Practice leads to automaticity in speaking. automatic の名詞形。技能習得理論のゴールとなる状態。
  • desirable difficultyC1
    名詞(句)望ましい困難(少し難しいほうが身につく練習)Spacing your reviews creates a desirable difficulty. desirable(望ましい)と difficulty(困難)という逆説的な組み合わせ。学習科学の重要概念。
  • accumulateC1
    動詞蓄積する、積み重ねるHe accumulated thousands of hours of practice. 名詞 accumulation。ac(~に)+cumul(積み上げる)。accumulated knowledge「蓄積された知識」。

動画でもっと知る

4コマでわかる

「1万時間やれば一流」は語学にも当てはまる? 元の研究を追試したら…の4コマ漫画
「1万時間練習すれば誰でも一流」。この法則の元になったバイオリン奏者の研究を追試したら、中心的な結果は再現されなかった。88研究のメタ分析でも、練習量で説明できる成績の差は音楽で21%、教育ではわずか4%だった。

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出典・参考文献(4件)タップで表示
  1. Ericsson, Krampe & Tesch-Römer (1993) The role of deliberate practice in the acquisition of expert performance, Psychological Reviewdoi.org
  2. Macnamara, Hambrick & Oswald (2014) Deliberate Practice and Performance in Music, Games, Sports, Education, and Professions: A Meta-Analysis, Psychological Sciencedoi.org
  3. Macnamara & Maitra (2019) The role of deliberate practice in expert performance: revisiting Ericsson, Krampe & Tesch-Römer (1993), Royal Society Open Sciencedoi.org
  4. Suzuki, Nakata & DeKeyser (2019) The Desirable Difficulty Framework as a Theoretical Foundation for Optimizing and Researching Second Language Practice, The Modern Language Journaldoi.org