語学・英語学習ホント

英語のジョークで笑えないのは「単語力」のせいじゃなかった。脳波が示す2段階

英語のジョークで笑えないのは「単語力」のせいじゃなかった。脳波が示す2段階

読む前に予想してみよう!

英語のジョークがわからないのは、オチの単語を知らないからだけだ

研究カード(どんな研究?)
対象
中国の大学生(英語学習者)
規模
42人
研究の種類
実験研究(脳波・ERP)
確かさ
★★★☆☆
3秒でわかる

英語のジョークを読む学習者の脳波を測ると、「ズレに気づく」段階は両グループで同じ。「なるほど!」と解き直す段階は、英語に多く触れている群だけに現れた。

ひとことで言うとジョークの「おかしい」には気づける。でも「わかった!」には英語の量が必要!

もくじ
  1. ジョークは「2段階」で理解される
  2. 同じ英語力の2グループを比べた
  3. 「?」は両グループ、「!」は英語漬けの群だけ
  4. まとめ

英語の映画やドラマで、周りが笑っているのに自分だけ笑えない。単語は全部わかったはずなのに……。そんな経験、ありませんか?

2026年9月30日、言語学の専門誌『Bilingualism: Language and Cognition』に、中国の暨南大学と華南師範大学の研究チームが、その「笑えない瞬間」の脳の中をのぞいた論文を発表しました。

対象は、中国語を母語とする英語学習者の大学生42人。英語のジョークを読んでいるときの脳波を測ったところ、「ズレに気づく」反応は両グループに見られたのに、「なるほど!」と解き直す反応が出るかどうかは、英語に触れる量で分かれることが見えてきました。

01ジョークは「2段階」で理解される

心理学では、ジョークの理解は2つのステップで進むと考えられています。

  1. ズレに気づく:「え、なんか変だぞ?」
  2. 解き直す:「あ、そういう意味か!」→ ここで笑いが生まれる

たとえば、「Why did the student eat his homework?(なぜその生徒は宿題を食べた?)」に「Because the teacher said it was a piece of cake.(先生が“朝飯前(a piece of cake)”だと言ったから)」と返すようなダジャレ系のジョーク。オチで一瞬つまずき、「cake を2つの意味で読み直す」ことで笑えるわけです(※これは説明用の例で、研究で使われたジョークではありません)。

02同じ英語力の2グループを比べた

比べたのは、同じオチが「ジョークとして」出てくる場合と、「ふつうの自然な答えとして」出てくる場合の脳の反応です。

03「?」は両グループ、「!」は英語漬けの群だけ

結果ははっきり分かれました。

  • N400(意味のズレに反応する脳波):両グループとも、ジョークのオチで大きくなった
  • P600(読み直し・再解釈に関わる脳波):英語に多く触れる群だけに現れた

正答率も、英語に多く触れる群のほうが高い結果でした。研究チームはこれを、触れる量が少ない学習者はジョークを「見つける」ことはできても、「解く」ところまで進めなかったとまとめています。

「ズレに気づく」までは同じ。そこから先の「解き直し」で差がついた
「ズレに気づく」までは同じ。そこから先の「解き直し」で差がついた

04まとめ

英語のジョークで笑えないのは、単語を知らないからとは限りません。「ズレ」には気づけている。足りないのは、意味を素早く読み替える経験の量なのかもしれません。

その経験は、教科書よりたくさんの英語に触れることで育ちます。好きな海外ドラマやコメディを、ちょっとずつ英語で楽しむ。それがいつか「あ、今の笑うところだ!」につながるはずです。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerWhy can learners understand every word of a joke but still not find it funny? 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Why can learners understand every word of a joke but still not find it funny? Researchers in China measured the brain waves of 42 Chinese university students while they read short English jokes. One group majored in English and had 12 to 20 hours of English classes a week. The other group had only 2 to 4 hours. Both groups had similar English test scores.

In both groups, a brain wave called the N400 grew larger at the punchline, which means they noticed that something did not fit. However, only the group with more English exposure showed the P600, a signal linked to rethinking the meaning. The researchers suggest that exposure, not just knowledge, helps learners get jokes.

118 words ・ CEFR B1

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学習者はジョークの単語をすべて理解できるのに、なぜおもしろいと感じられないことがあるのでしょうか。中国の研究者たちは、中国人の大学生42人が短い英語のジョークを読んでいる間の脳波を測りました。1つのグループは英語を専攻し、週に12〜20時間の英語の授業を受けていました。もう1つのグループは2〜4時間だけでした。両グループの英語のテストの点数は同じくらいでした。どちらのグループでも、オチの部分でN400と呼ばれる脳波が大きくなりました。

これは、何かが合わないことに気づいたという意味です。しかし、意味を考え直すことに関わる信号であるP600が現れたのは、英語に多く触れているグループだけでした。研究者たちは、知識だけでなく英語に触れる量が、学習者がジョークを理解する助けになると示唆しています。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the researchers measure?

Q2. How many hours of English classes did the English majors have each week?

Q3. What does the P600 result suggest?

重要単語

  • punchlineB2
    名詞(ジョークの)オチEveryone laughed when they heard the punchline. punch line と2語でも書く。「決めの一撃(punch)になる行」のイメージ。
  • exposureB2
    名詞(言語・環境などに)触れること、さらされることDaily exposure to English helps listening. 動詞 expose。exposure to ~「~に触れること」の to をセットで覚える。
  • majorB1
    動詞・名詞専攻する/専攻She majored in English at university. major in ~「~を専攻する」が入試頻出。形容詞では「主要な」。
  • incongruityC1
    名詞不一致、ちぐはぐさHumor often comes from incongruity. in-(否定)+congruous(一致した)。ユーモア研究の「不一致理論」の中心語。
  • reinterpretC1
    動詞解釈し直すThe ending made me reinterpret the whole story. re-(再び)+interpret(解釈する)。名詞は reinterpretation。
  • comparableB2
    形容詞同程度の、比較できるThe two cities have comparable populations. アクセントは第1音節 /ˈkɑːmpərəbəl/ が標準。be comparable to ~「~に匹敵する」。
  • sarcasmC1
    名詞皮肉、いやみIt is hard to notice sarcasm in a second language. 形容詞 sarcastic。irony(皮肉・反語)より相手を傷つける意図が強い語。
英語学習者42人に英語のジョークを読ませて脳波を測ったら、オチの「ズレ」に気づく反応は両グループに出たのに、「あ、そういうことか!」と解き直す脳の反応は、週12〜20時間の英語の授業を受けている英語専攻の群だけに出たらしい。

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出典・参考文献(3件)タップで表示
  1. Peng, Zhou & Xie (2026) L2 exposure intensity modulates the time course of verbal humor comprehension: An ERP study, Bilingualism: Language and Cognitiondoi.org
  2. Coulson & Kutas (2001) Getting it: human event-related brain response to jokes in good and poor comprehenders, Neuroscience Lettersdoi.org
  3. Kutas & Hillyard (1980) Reading Senseless Sentences: Brain Potentials Reflect Semantic Incongruity, Sciencedoi.org