英語の授業で日本語を使うのは悪いこと?「英語だけ」より単語が身についた実験と、その落とし穴

読む前に予想してみよう!
英語の授業では、日本語を一切使わないほうが必ず英語が伸びる
母語で短く意味を説明したほうが単語の学習に有利だった研究が多い。ただし使いすぎは英語に触れる量を減らすので「ほどほど」がカギ。
- 対象
- 外国語を学ぶ子ども〜大人
- 規模
- 24研究・計2,138人
- 研究の種類
- メタ分析
- 確かさ
- ★★★☆☆
母語での短い説明は、英語だけの説明より単語が身につきやすいという研究が多い。ただし研究の質はまちまちで、使いすぎれば英語に触れる時間が減る。
ひとことで言うと日本語を少し使うのは「ずる」じゃなく、わかるための近道!
「授業は英語で行うことを基本とする」。日本の高校の学習指導要領には、2009年の改訂でこの方針が入り、中学校にも広がりました。
英語に触れる時間が少ない日本では、授業中くらいは英語漬けにしたい。その考えには説得力があります。一方で「先生が日本語を使うのは手抜き」「子どもが日本語で聞き返すのはダメ」と感じている人もいるかもしれません。
ところが研究をのぞくと、母語を上手に混ぜたほうが単語が身についたという結果が少なくありません。
01韓国の729人で比べたら「母語ありチーム」が勝った
もっと小さな子どもでも、同じ傾向が報告されています。韓国の5〜6歳児72人に英語のお話を聞かせた研究(2019年)では、先生がほんの短く母語に切り替えて単語の意味を伝えたほうが、英語だけより単語が身につき、2週間後もその差が残りました。子どもたち自身も、英語だけの授業には否定的な反応を示したといいます。
02母語が助けになる理由
理由はシンプルです。知らない単語を英語で説明すると、その説明にまた知らない単語が出てきて、意味があいまいなままになりやすい。母語なら一瞬で、はっきり伝わります。
浮いた時間で、その単語を使う練習に進めます。2026年に発表されたメタ分析(24研究・2,138人)でも、母語を活用する授業は英語だけの授業より学習成果が高く(効果量 d = 0.49)、特に初級者で効果が出やすいと報告されました。

03どんでん返し:研究の質と「英語に触れる量」の問題
ただし、「日本語をどんどん使えばいい」という話ではありません。
教室での母語活用(トランスランゲージング)の効果を調べた研究を集めたシステマティックレビュー(2023年)では、条件を満たした研究は10件だけ。母語活用を支持した5件のうち4件はバイアスのリスクが高いと判定されました。研究者は「確かな因果関係を言うのは難しい」と慎重です。
逆の結果もあります。スペインの公立中等学校の生徒60人を比べた研究(2023年)では、単語は英語だけで教えたほうがよく覚えた一方、文法は母語も使ったほうがよいという結果でした。
そもそも、日本の子どもが英語に触れる時間は授業が中心です。母語を使いすぎれば、その貴重な英語のシャワーが減ってしまいます。
04まとめ
英語の授業で日本語を使うのは、悪いことではありません。研究が示すのは、短く、目的をもって使えば、特に子どもや初級者の単語学習を助けるということ。
ただし、使いすぎれば英語に触れる時間が減ります。「英語だけ」か「日本語ありか」の二択ではなく、日本語は意味への近道、英語は練習の本番。そんな役割分担が、研究から見た落としどころです。
この研究を英語で読もう原田英語の English CornerIn Japan, high school English classes are expected to be taught mainly in English.
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4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く
原田英語の English Corner
この研究を英語で読もう
Should English teachers use only English in class? Many people think so. But some studies say a little Japanese, or another first language, can help. In a Korean study, children and adults learned new English words better when the teacher explained them quickly in Korean. The effect was bigger for children.
However, too much first language means less English practice. So teachers should use it for a short time and for a clear reason.
74 words ・ CEFR A2
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英語の先生は授業で英語だけを使うべきでしょうか。多くの人がそう考えています。しかし、少しの日本語、つまり母語が助けになると言う研究もあります。韓国の研究では、先生が韓国語で短く説明すると、子どもも大人も新しい英単語をよりよく覚えました。その効果は子どものほうが大きかったです。
しかし、母語が多すぎると英語の練習が減ります。だから先生は、短い時間、はっきりした理由のために使うべきです。
4択リーディングクイズ
Q1. What is the passage mainly about?
英語の授業で母語を少し使うことがテーマなので A。
Q2. In the Korean study, who benefited more?
The effect was bigger for children とあるので B。
Q3. What is the problem with too much first language?
too much first language means less English practice とあるので B。
In Japan, high school English classes are expected to be taught mainly in English. The goal makes sense, because students have few chances to use English outside school. But research suggests that a little first-language use can help. A Korean study compared English-only explanations with brief explanations in Korean for 443 elementary school children and 286 university students. Both groups learned more new words when Korean was used, and the children benefited more.
A 2026 meta-analysis of 24 studies also found an advantage for approaches that use the first language, especially for beginners. However, a review found that many such studies had a high risk of bias. The best approach may be to use the first language briefly for meaning and English for practice.
124 words ・ CEFR B1
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日本では、高校の英語の授業は主に英語で行うことが求められています。生徒が学校の外で英語を使う機会は少ないので、この目標は理にかなっています。それでも研究は、母語を少し使うことが助けになりうると示しています。韓国のある研究は、443人の小学生と286人の大学生を対象に、英語だけの説明と韓国語での短い説明を比べました。どちらのグループも、韓国語が使われたほうが新しい単語をより多く覚え、子どものほうがより大きな恩恵を受けました。
24件の研究をまとめた2026年のメタ分析も、母語を使う方法に、特に初級者で利点があることを見出しました。しかし、あるレビューでは、そうした研究の多くがバイアスのリスクが高いとされました。最善の方法は、意味の確認には母語を短く使い、練習には英語を使うことかもしれません。
4択リーディングクイズ
Q1. Who took part in the Korean study?
443 elementary school children and 286 university students とあるので B。
Q2. What problem did a review find?
many such studies had a high risk of bias とあるので A。
Q3. What is the writer's conclusion?
最終文 use the first language briefly for meaning and English for practice と一致するので C。
For decades, many language teaching experts have argued that classes should be conducted entirely in the target language, and Japan's high school curriculum now states that English lessons should, in principle, be taught in English. The reasoning is that learners in a foreign-language setting receive little input outside the classroom. Empirical studies, however, give a more mixed answer.
In a large Korean study, both 443 primary school children and 286 university students learned more vocabulary when teachers briefly used Korean to explain new English words, and the advantage was greater for the younger learners. A study of five- and six-year-olds reported a similar benefit that was still visible two weeks later. A 2026 meta-analysis of 24 studies estimated a moderate advantage for multilingual approaches, particularly for beginners.
But the evidence has weaknesses. A 2023 systematic review found only ten eligible studies, and four of the five that favored translanguaging were judged to have a high risk of bias. A Spanish study, by contrast, found that vocabulary was learned better through English-only teaching. The sensible conclusion is not that teachers should switch freely between languages, but that brief, purposeful first-language use can save time without sacrificing valuable English input.
198 words ・ CEFR B2
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何十年もの間、多くの語学教育の専門家は授業を完全に目標言語で行うべきだと主張してきました。日本の高校の学習指導要領も現在、英語の授業は原則として英語で行うとしています。その理由は、外国語環境の学習者は教室の外でほとんどインプットを受けないからです。
しかし実証研究が示す答えは、もっと入り混じっています。韓国の大規模な研究では、小学生443人と大学生286人のどちらも、先生が新しい英単語の説明に韓国語を短く使ったほうが多くの語彙を覚え、その利点は年少の学習者のほうが大きくなりました。5〜6歳児の研究でも同様の利点が報告され、それは2週間後にもまだ見られました。24件の研究をまとめた2026年のメタ分析は、複数言語を使う方法に、特に初級者で中程度の利点があると推定しました。
しかし証拠には弱点があります。2023年のシステマティックレビューでは、条件を満たした研究は10件しかなく、トランスランゲージングを支持した5件のうち4件はバイアスのリスクが高いと判定されました。一方、スペインの研究では、語彙は英語だけの指導のほうがよく覚えられました。妥当な結論は、先生が自由に言語を切り替えるべきだということではなく、短く目的をもった母語の使用は、貴重な英語のインプットを犠牲にせずに時間を節約できる、ということです。
4択リーディングクイズ
Q1. According to the passage, why do some experts prefer English-only classes?
learners in a foreign-language setting receive little input outside the classroom とあるので A。
Q2. What did the 2023 systematic review find?
four of the five that favored translanguaging were judged to have a high risk of bias とあるので B。
Q3. Which statement best reflects the author's view?
最終文 brief, purposeful first-language use can save time without sacrificing valuable English input と一致するので C。
重要単語
- first language (L1)B1名詞(句)第一言語・母語Using the L1 can make meanings clear quickly.
L1=母語、L2=第二言語。mother tongue / native language も同義。 - code-switchingC1名詞コードスイッチング(言語の切り替え)The teacher used code-switching to explain a difficult word.
code(言語・方言などの体系)+ switching(切り替え)。バイリンガルの日常的な行動でもある。 - translanguagingC1名詞トランスランゲージング(複数言語を資源として柔軟に使うこと)Translanguaging treats all of a learner's languages as resources.
trans-(越えて)+ languaging。ウェールズの二言語教育から広まった概念。 - judiciousC1形容詞賢明な・分別のあるJudicious use of the first language can support learning.
judge(判断する)と同語源。judicious use of ~「~の賢明な使用」は論文の定番表現。 - nuancedC1形容詞微妙な違いをふまえた・きめ細かなThe research paints a more nuanced picture.
nuance(ニュアンス)の形容詞形。paint a ~ picture「~な状況を描く」と組み合わせて使う。 - risk of biasC1名詞(句)バイアスのリスク(結果がゆがんでいる可能性)Several studies had a high risk of bias.
システマティックレビューで研究の質を評価するときの用語。 - in principleB2熟語原則としてClasses should, in principle, be taught in English.
principle(原理)と principal(校長・主要な)のつづりの違いに注意。
公式・一次情報をチェック
- 学習指導要領等(平成20年3月・平成21年3月)(文部科学省)mext.go.jp
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「英語の授業は英語だけで」が理想と思われがち。でも韓国の小学生443人と大学生286人の研究では、母語で短く説明したほうが単語が身についた。特に子どもで効果大。ただし研究の質には課題も多く、使いすぎは英語の時間を削る。
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出典・参考文献(5件)タップで表示
- Lee & Macaro (2013) Investigating age in the use of L1 or English-only instruction: Vocabulary acquisition by Korean EFL learners, The Modern Language Journaldoi.org
- Song & Lee (2019) The use of teacher code-switching for very young EFL learners, ELT Journaldoi.org
- Zhang & Brown (2026) The Effectiveness of Multilingual Versus Monolingual Approaches to L2 Teaching and Learning: A Meta-Analysis of Learning Outcomes, Language Teaching Researchdoi.org
- Huang & Chalmers (2023) Implementation and Effects of Pedagogical Translanguaging in EFL Classrooms: A Systematic Review, Languagesdoi.org
- Shabaka-Fernández (2023) The effect of teacher language use in Spanish EFL classrooms, The Language Learning Journaldoi.org
※本記事は上記の研究・公開資料をもとに、原田英語が独自の言葉で解説したものです。引用は著作権法第32条の範囲で行い、出典を明記しています。画像はすべてオリジナルのイメージです。研究結果には限界や個人差があります。誤りのご指摘は原田英語のお問い合わせフォームから。








