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幼児は動画から言葉を覚えられる? 59本の研究が示した「ビデオ欠損」と、ビデオ通話の意外な弱点

幼児は動画から言葉を覚えられる? 59本の研究が示した「ビデオ欠損」と、ビデオ通話の意外な弱点

読む前に予想してみよう!

ビデオ通話なら相手が反応してくれるので、2歳児も対面と同じように新しい言葉を覚えられる

研究カード(どんな研究?)
対象
0〜6歳の子ども
規模
59本の研究報告(効果量122個)
研究の種類
メタ分析
確かさ
★★★★☆
3秒でわかる

幼い子は、同じ内容でも画面越しだと対面より学びにくい「ビデオ欠損」がある。年齢とともに縮まり、大人の関わり方しだいで差は小さくできる。

ひとことで言うと小さい子は、動画より目の前の人から言葉を覚えやすい!

もくじ
  1. 59本の研究をまとめると「平均で約半分の差」
  2. ビデオ通話なら学べた…けれど
  3. どんでん返し:ビデオ通話「だけ」では足りなかった
  4. まとめ

「英語の動画を毎日見せておけば、自然に英語を覚えるはず」。忙しい親ほど、そう期待したくなります。

でも発達心理学には、「ビデオ欠損(video deficit)」という有名な現象があります。幼い子どもは、まったく同じ内容でも、画面越しだと対面よりも学びにくいのです。

では、相手が反応してくれるビデオ通話ならどうか。ここに、意外などんでん返しがありました。

0159本の研究をまとめると「平均で約半分の差」

言葉、まねっこ、隠されたおもちゃ探しなど、いろいろな課題でこの差が見られます。2歳ごろまでの子にとって、「画面の中の出来事」と「目の前の世界」を結びつけるのは、大人が思うより難しいのです。

02ビデオ通話なら学べた…けれど

画面の何がいけないのか。注目されたのが、相手が自分に合わせて反応してくれるか(応答性)です。

アメリカのローズベリーらの実験(2014年)では、2歳〜2歳半の子ども36人に新しい動詞を教えました。すると、対面とビデオ通話では言葉を覚えられたのに、別の子とのビデオ通話を録画した映像を見せた場合は覚えられませんでした。「やっぱり反応があれば画面でもOK!」と言いたくなる結果です。

画面と子どもをつなぐのは、画面の外にいる大人かもしれない
画面と子どもをつなぐのは、画面の外にいる大人かもしれない

03どんでん返し:ビデオ通話「だけ」では足りなかった

ところが2018年、トロセスらが2歳と2歳半の132人で行った実験では、話がそう単純ではありませんでした。

目の前の人が反応しながら教えると、子どもは言葉を覚えました。しかし、ビデオ通話で同じように反応しながら教えても、どちらの年齢の子も覚えられなかったのです。研究者は、応答性だけでは不十分だと結論づけています。

では何が助けになるのか。ストラウスらの実験(2018年、2歳半の88人)では、画面の人物が反応してくれると子どもは楽しそうに参加したものの、言葉の習得を伸ばしたのは、横にいる親が画面に応える姿を見せたことでした。

さらに、63件の研究(計11,413人)をまとめたメタ分析(2023年)では、実験で特定の言葉を教えた場合には画面からも学べる一方、ふだんの視聴時間と語彙の多さには、全体としてほぼ関係が見られませんでした(教育番組に限ると小さな正の関係)。

04まとめ

幼児は動画から「まったく学べない」わけではありません。でも、同じ内容なら対面のほうが学びやすいのが基本で、ビデオ通話もそれだけでは万能ではありませんでした。

動画の力を引き出すカギは、画面の中ではなく画面の外。となりで「これ、なんだろうね?」と話しかける大人こそが、いちばんの英語教材なのかもしれません。

この研究を英語で読もう原田英語の English CornerMany parents hope their children will pick up English from videos. 音声 4択クイズ9問A2・B1・B2タップして開く

原田英語の English Corner

この研究を英語で読もう

Many parents hope their children will pick up English from videos. However, developmental psychologists have long described a "video deficit." Young children tend to learn less from a screen than from a live person, even when the content is the same. A 2021 review of 59 research reports found that the gap was about half a standard deviation on average and became smaller with age.

Video chat was expected to solve the problem, because the adult on screen can respond to the child. In one study, toddlers learned new verbs both in person and over video chat. In another study of 132 toddlers, however, video chat alone was not enough. In a third study, children learned better when a parent beside them responded to the screen.

126 words ・ CEFR B1

和訳を見る

多くの親は、子どもが動画から英語を自然に身につけることを期待します。しかし発達心理学者は昔から「ビデオ欠損」を指摘してきました。幼い子どもは、内容が同じでも、生身の人より画面から学ぶことが少ない傾向があるのです。59本の研究報告をまとめた2021年のレビューでは、その差は平均で標準偏差の約半分で、年齢とともに小さくなりました。

画面の大人が子どもに反応できるので、ビデオ通話がこの問題を解決すると期待されました。ある研究では、幼児は対面でもビデオ通話でも新しい動詞を覚えました。しかし132人の幼児を対象にした別の研究では、ビデオ通話だけでは不十分でした。さらに別の研究では、子どもは、そばに座った親が画面に応えるとよりよく学びました。

4択リーディングクイズ

Q1. What did the 2021 review find?

Q2. Why was video chat expected to help?

Q3. What does the last part of the passage suggest?

重要単語

  • video deficitC1
    名詞(句)ビデオ欠損(画面からだと対面より学びにくい現象)The video deficit is strongest in children under three. deficit は「不足・赤字」。trade deficit(貿易赤字)、attention deficit(注意欠如)など。
  • toddlerB2
    名詞よちよち歩きの幼児(1〜3歳ごろ)Toddlers learn many new words every week. toddle(よちよち歩く)+ -er。infant(乳児)→ toddler → preschooler の順。
  • contingentC1
    形容詞相手の反応に応じた・〜次第のA contingent reply comes right after the child speaks. be contingent on ~「~次第である」は論説文で頻出。名詞 contingency。
  • co-viewingC1
    名詞(大人と子どもが)いっしょに見ることCo-viewing can turn screen time into talk time. co-(共に)+ viewing。co-worker、co-author などと同じ co-。
  • publication biasC1
    名詞(句)出版バイアス(目立つ結果ほど論文になりやすい偏り)Publication bias can make an effect look bigger. メタ分析の限界として必ず出てくる用語。bias は「偏り・先入観」。
  • transferB2
    動詞・名詞(学んだことを別の場面に)移す・応用するChildren must transfer words from the screen to real objects. trans-(向こうへ)+ fer(運ぶ)。transfer to another school「転校する」。

動画でもっと知る

幼い子は同じ内容でも、動画からだと対面より学びにくい。59本の研究をまとめると、その差は平均で標準偏差の約半分。ビデオ通話なら大丈夫かと思いきや、それだけでは言葉を覚えられなかった実験も。カギは「画面の外の大人」だった。

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出典・参考文献(5件)タップで表示
  1. Strouse & Samson (2021) Learning From Video: A Meta-Analysis of the Video Deficit in Children Ages 0 to 6 Years, Child Developmentdoi.org
  2. Roseberry, Hirsh-Pasek & Golinkoff (2014) Skype Me! Socially Contingent Interactions Help Toddlers Learn Language, Child Developmentdoi.org
  3. Troseth, Strouse, Verdine et al. (2018) Let's Chat: On-Screen Social Responsiveness Is Not Sufficient to Support Toddlers' Word Learning From Video, Frontiers in Psychologydoi.org
  4. Strouse, Troseth, O'Doherty et al. (2018) Co-viewing supports toddlers' word learning from contingent and noncontingent video, Journal of Experimental Child Psychologydoi.org
  5. Jing, Ye, Kirkorian et al. (2023) Screen media exposure and young children's vocabulary learning and development: A meta-analysis, Child Developmentdoi.org